目を覚ますと、そこはどこかの公園だった。
「やっと起きたのね」
秀一のそばにゴスロリ風に着飾った少女がちょこんと座っている。
秀一はその少女の顔に見覚えがあった。
同じクラスの林原ゆう子だった。
「・・・ゆう子さん?」
一体何が起こったのかを思い出そうとする。
ピンク色の光、不穏な会話、巨大な怪物・・・。
記憶が逆再生されていった。
「自分に何が起こったのか把握したようね」
「・・・ええ、なんとか」
「驚いたわよ。今更、原作介入するようなバカがいたなんて」
「・・・げんさく?」
秀一が耳慣れない言葉だった。
「まさか魔法少女リリカルなのはを知らないの?」
「・・ま、魔法少女?」
その間にもCogitoを通じて、いくつかの情報が頭に入ってくる。
全ての人間はCogitoと細々と通じているのだ。
現在、ゆう子からはローゼンメイデンという単語だけを得ることができた。
細々となので、得られる情報も必然的に少なくなってくるのだ。
ぶっちゃけ、殴ったほうが多くの詳しい情報を得られるのだ。
「むう、その様子だとカミサマから何の説明も受けなかったのね」
「神様?」
「・・・ちょっと待って。アンタ、この世界にどうやって来たのよ?」
「うーん、ちょっとややこしい話だけど?」
「構わないわ。そうじゃないと、どうしてアンタがあんな力を持ってるのかわからないから」
秀一はできる限り、一般人(?)であるゆう子にもわかりやすいように説明した。
自分が別の世界の出身であること。その世界にはボーグというものが存在したこと。
ボーグとは人の心を汲み取って動く釣瓶であること。
そして、自分は深淵たるCogitoを汲み取ることに成功し、この世界に来たことを。
もちろん、その目的も話した。
「・・・頭が痛いわね。つまり、アンタは人間以上の存在になって、この世界に来たってこと?」
「そう理解していただければ」
ゆう子は頭を掻きむしる。
「無茶苦茶なことをするわね・・・。逆に転生者だと思われないわけね」
「そういえば、ゆう子さんはどうやってこの世界に?」
「私の場合は事故で死んだあとにカミサマに転生させられたわ。まあ、アンタの方が神様のような気もするけれど」
その瞬間、ゆう子から漆黒の翼が生えてくる。
「あのカミサマは気前だけは良かったわ。これが私が貰った特典。ローゼンメイデン達の力を使うことができるの。たぶん、その様子だとローゼンメイデンのことも知らなさそうだけど」
「ええ、知りません」
「やっぱり。まあ人形たちが戦う物語だと思ってもらえば結構ね。さっきは魔力弾を避けていって、なんとかアンタを回収したの」
ゆう子は翼をパタパタと上下させる。
「そうでしたか。ありがとうございます」
「まあ、そのお礼として・・・この指輪をつけてちょうだい」
ゆう子から指輪を手渡される。
「いいんですか?これだと僕がお礼を受け取っているような気がするんだけど」
「いいのよ。何も考えずにつけてちょうだい」
ゆう子の言う通りに指輪を人差し指につける。
すると、秀一に流れていたCogitoがゆう子の方にも流れるようになったのを感じた。
「ふふふ・・・いいわね。これよ、これ!このみなぎるパワー!」
ゆう子の翼が輝く。
「ありがとねえ。アンタのおかげで、またアリスに近づけるわ」
「アリス?」
「乙女の最高峰よ。私はそれを目指してるの。私が持ってる人工妖精はまだ借り物だけど、いつかは自分の人工妖精を手に入れて、本当のアリスになってみせるわ」
ゆう子は秀一に手を差し出す。
「でも、そのためにはエネルギーが必要なの。多量のエネルギーが。でも・・・」
「Cogitoをエネルギーとして、それを解決したというわけですか」
「そうよ。これでアリスにまた一歩近づいたわけね。アンタの目的もちょっぴりとは果たせたわけだし」
「ええ、僕自身を釣瓶としたんですからね」
秀一は差し出された手を握る。
すると、体が浮上する。ゆう子が飛び始めたからだ。
「アンタの家まで送ってあげるわ。しっかり掴まっててね」
「あっ、ありがとうございます」
「ここが地球・・・えっ、あれなに?」
フェイトの目に映ったのは、翼を広げて飛ぶ少女とそれに掴まる少年。
「・・・何も見なかったことにしよ」