遊戯王の世界に転生したがろくな事が起きない   作:アオっぽい

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第三十八話 試練を受けるとろくな事がおきない

 飛行船に戻って一人でいる間、私は目を背けていた真実について考えていた。

 お父さんは赤い帽子を目元が隠れるまで深く被り、赤いジャケットを着ていた。

 それにデュエルディスクはものすごく目立つ金色。

 

「コナミ君、だよね……」

 

 コナミ君とは前世でやっていたタッグフォースというゲームの主人公である。

 精霊だったりデュエルマシーンだったり、なんかすごいバイクに乗っていたりして何でもできちゃうような超人。

 おそらく、たぶん、私のお父さんがコナミ君、何だと思う……。

 

「うわぁ……なんで気づかなかったんだろう」

 

 誰もいないことをいいことに私は頭を抱えた。

 幼い頃、お父さんが赤い帽子やジャケットを着ていなかったとしても共通点はあったはず。でもお父さんだからみたいな理由で流していた。

 というかお父さんがコナミ君ならおじいちゃんは?

 もしかしてお父さんとお母さんは別次元から来ておじいちゃんに拾われて一緒に暮らしてきたとか?

 ありえないと表面上は否定しつつもなんだかありえそうで苦笑いが浮かぶ。

 そしてふとあることに気づいた。

 私にはお父さん、コナミ君の血が受け継がれている。

 精霊に好かれたりしてデュエルが強いのもこの血のおかげ、なのかな?

 それだと私自身の……。

 首を振ってこれ以上深く考えるのはやめた。

 気分が落ちているとみんなに心配かけるだろうし。おとなしくみんなを待っていよう。

 

 しばらくすると遊馬君たちが戻ってきた。

 お父さんは先ほど精霊世界で遣り残したことがあったといっていたからか、一緒に戻ってこなかった。

 まぁ、お母さんはこの場にいなかったしお母さんを置いて元の世界には戻れないよね……。

 両親がまだ生きていたってことが分かっただけでも嬉しいことだし。

 早くそっちのことを終わらせて帰ってくると良いな……。

 

 何の話をしていたのかブラック・ミストに聞いてみたが、お前は知らなくていいみたいなことを言われた。

 おそらく私に関してのことだと思うんだけど、無理やり聞いて雰囲気が悪くなるのもいやだし、それ以上は追及しなかった。

 みんなで飛行船に乗り、アストラルが飛行船を動かす。

 今度は何の問題もなく起動し、私達は気を取り直してNo.を探すために出発した。

 異次元トンネルに突入し私達は甲板に出て、周りの様子を見てみる。

 電流があちこちで発生しなんだか荒れているようだった。

 アストラルや遊馬君たちがアストラル世界のことを話している間、私はお父さんから預かった神のカードを観察していた。

 三幻神の効果はこんなものだった。

 

 レベル10 オシリスの天空竜 攻撃力:? 守備力:?

・このカードを通常召喚する場合、モンスター3体をリリースして召喚しなければならない。このカードの召喚は無効化されない。このカードの召喚成功時には魔法・罠・効果モンスターの効果は発動できない。特殊召喚したこのカードはエンドフェイズ時に墓地へ送られる。このカードの攻撃力・守備力は自分の手札の枚数×1000ポイントアップする。また、相手モンスターが攻撃表示で召喚・特殊召喚に成功したとき、そのモンスターの攻撃力を2000ポイントダウンさせ、攻撃力が0になった場合そのモンスターを破壊する。

 

 レベル10 オベリスクの巨神兵 攻撃力:4000 守備力:4000

・このカードを通常召喚する場合、モンスター3体をリリースして召喚しなければならない。このカードの召喚は無効化されない。このカードの召喚成功時には魔法・罠・効果モンスターの効果は発動できない。このカードはカードの効果対象にはならない。特殊召喚したこのカードはエンドフェイズ時に墓地へ送られる。また、自分フィールド上のモンスター2体をリリースして発動できる。相手フィールド上のモンスターすべてを破壊する。この効果を発動するターン、このカードは攻撃宣言できない。

 

 レベル10 ラーの翼神竜 攻撃力:? 守備力:?

・このカードは特殊召喚できない。このカードを通常召喚する場合、モンスター3体をリリースして召喚しなければならない。このカードの召喚は無効化されない。このカードの召喚成功時には魔法・罠・効果モンスターの効果は発動できない。このカードが召喚に成功したとき、ライフポイントを100ポイントになるように払って発動できる。このカードの攻撃力・守備力は払った数値分アップする。また、1000ライフポイントを払って発動できる。フィールド上のモンスター1体を選択して破壊する。

 

「ヲーじゃねぇか……」

 

「おい、どうした?」

 

 隣にいる凌牙が怪訝な表情を浮かべて問いかけてきたのでなんでもないと手を振る。

 

「ラーの翼神竜だけ特殊召喚できないんだな。なんか」

 

「それ以上はいけない」

 

 斜め後ろで私が持っている神のカードを覗き込んでいたブラック・ミストが何か言いかけようとしたので止めた。

 ま、まぁ私のデッキに入れるわけじゃないから良いんだけどさ。

 レベル高いからデッキに入れると重くなるし。

 そう自己完結して神のカードは別のデッキケースに入れる。

 

「何だ、あれは!?」

 

 凌牙の声に顔を上げると飛行船の進行方向から紫色に光る物体が此方に向かってきていることが分かった。

 その光の物体はそのままスピードを緩めず飛行船と衝突する。

 

「きゃああぁ!」

 

「うわああぁ!」

 

 衝突した衝撃に耐え切れず、私達の体は投げ出された。

 

 

 

「い、たた……ここは?」

 

 気がついたときには私は木がたくさん生えている場所にいた。

 改めて周りを見渡してみるが、見事に木しかなく道のようなものは一切なかった。

 おそらくどこか山奥なのだろう。

 

「刹! 無事か?」

 

 少しはなれたところにブラック・ミストは落ちたのか、木々をすり抜けて此方に近づいてきた。

 

「うん、大丈夫。そっちは?」

 

「こっちも平気だ。ただ、アストラルなんかとは離れたようだ」

 

 そういってこっちだとブラック・ミストはNo.の気配を頼りに遊馬君たちのもとへ進んでいった。

 こういう迷子になったとき、便利だよね。

 途中小鳥ちゃんの悲鳴が聞こえたので走って向かうと石造りの建物が見えてきた。所々にコケなどが生えており、おそらく遺跡なのだろう。

 その遺跡の前にはアストラル、遊馬君のほかに凌牙と知らない男性が立っていた。

 

「遊馬君! 凌牙!」

 

 知らない人間がいるのを考慮してブラック・ミストにはエクストラデッキに戻ってもらい、3人の元に駆け寄った。

 

「刹!? よかった、無事だったのか!」

 

「うん、そっちも無事みたいだね」

 

 遊馬君は私に気づくと表情を明るくさせた。

 3人とも無事なようで一安心した。

 

「それで、その人は?」

 

 私はワイシャツに黒いベストを着込み、灰色の髪が獣耳のような形をしたメガネをかけた男性を見た。

 

「私は、旅行者のナッシュだ」

 

「旅行者?」

 

 もしかして遺跡を見に来たとか?

 それにしてもと怪しまれない程度にナッシュさんを見てみる。

 服は何かあったのか右肩らへんが破れており、所々汚れている。

 そのほかには荷物のようなものは見当たらない。

 

「熊に襲われてる所を俺が助けたんだよ」

 

 遊馬君の言葉に納得がいった。

 熊に襲われて荷物とか失くしたのかな?

 ふと服が破れているところから血が流れているのが見えた。

 

「あ、怪我していますね。ちょっと待ってください」

 

 ポケットからハンカチを取り出してナッシュさんに近づこうとしたら、凌牙が私の腕を掴んだ。

 

「ちょっ、なに?」

 

 力強く引っ張られナッシュさんに背を向ける形なると顔を近づけナッシュさんに聞こえないように小さな声で話し始めた。

 

「バカ! さっき飛行船であったことを忘れたのか!? 飛行船にぶつかってきたあのエネルギー体がバリアンだとしたら、あいつはバリアンかも知れないんだぞ!」

 

 凌牙に言われて私はやっと気がついた。

 いや、なんかナッシュさんってデュエリスト特有の奇抜な外形をしていないというか、無害そうな顔をしているというか……。

 真月のときはカードたちが反応してくれたから警戒できたし。

 

「いやあぁ! 遊馬あぁ!」

 

 突然遺跡の中から小鳥ちゃんの悲鳴が聞こえ、私達は急いで遺跡の中に入った。

 小鳥ちゃんは璃緒ちゃんと一緒に地面に倒れている壊れた柱の上にいた。

 その下には無数の蛇が取り囲んでいる。

 遊馬君と凌牙は蛇に向かっていき蹴り飛ばした。

 

「え、ちょっと! 危ないよ!」

 

 毒蛇かもしれないのに容赦なく蛇を蹴り飛ばしている2人に言うが、大丈夫だと言われてしまう。

 そうこうしていく内に蛇たちは一匹残らず逃げていった。

 

「あら、アストラル! 飛行船の外なのにあなたの姿が見えますわ。もしかして私もランクアップしたのでしょうか?」

 

 璃緒ちゃんはアストラルの姿を捉えると嬉しそうにそういった。

 私は近くにいるナッシュさんに視線を向けてみる。

 ナッシュさんはアストラルが見えるとか普通なら変に思う言動を見ても表情を変えていなかった。

 逆にナッシュさんの視線は少しの間アストラルに向けられていた。

 

「(これは、黒か)」

 

『ま、そうだろうな』

 

 私の言葉にブラック・ミストは肯定した。

 ……お父さんと再会できたからって気が緩んでいたのかな?

 その間に凌牙は遺跡の奥に進んでいた。

 しかし行き止まりになっており、壁には赤、緑、青の大きな四角い模様が左から順に描かれていた。

 

「どうやらここから先は行き止まりのようだぜ」

 

 凌牙は青色の壁に片手を当てながら言う。

 

「ま、まじかよー」

 

「なにか仕掛けとかあったりしないかな?」

 

 遊馬君が赤色の壁のほうに行き、私は緑色の壁を調べようと進むと何かの音と共に右足が沈んでいくのを感じた。

 

「「なに!?」」

 

「え?」

 

 すると遺跡全体が揺れ始め、次の瞬間には一番後ろにいたナッシュさんの背後に上から壁が落ちてきた。

 

「出口が!」

 

 四方は石の壁に覆われ私達は閉じ込められてしまった。

 凌牙は舌打ちをした後、出口の方に歩いていく。

 

「璃緒、下がってろ。何がおこるかわからねぇからな」

 

 何か上から音が聞こえ、不思議に思い視線を向けてみると上から石の壁が2枚降りてこようとしていた。

 しかも1枚は凌牙が歩いている位置に降りてこようとしている。

 

「凌牙、上!!」

 

 焦って声を荒げる。脈絡もない言葉に凌牙は意図が汲み取れずにいたが上に視線を向け、降りてくる壁に気づいた。

 

「なっ!?」

 

「くっ!」

 

 驚いたために動けなかった凌牙をナッシュさんが飛びついて無理やり青色の壁のほうへと移動させた。

 それと同時に私の両隣に石の壁が下まで降りて分断されてしまった。

 ちょうど色の付いた壁ごとに分けられているようで私の後ろには緑色の壁がある。

 

「おい、シャーク! 刹!!」

 

「凌牙! 刹! 無事!?」

 

 左の壁から遊馬君と璃緒ちゃんの声が聞こえる。

 

「こっちは大丈夫だ!」

 

「私も平気!」

 

 右の壁から凌牙の声が聞こえ、私も遊馬君たちに無事を知らせるため大きな声を出した。

 すると目の前の緑色の壁が上がっていき、奥には緑色の壁をした通路が現れた。

 遊馬君や凌牙のほうにもそういう仕掛けがあったのか通路が現れたといっている。

 

「どうやら進むしかないようだな」

 

 ブラック・ミストがエクストラデッキから出てきてそう告げた。

 後ろには壁しかないし、ブラック・ミストの言うとおりこの先に進まないといけないみたいだ。

 

「それにしてもナッシュといったが、あいつがバリアンならどいつだろうな?」

 

「消去法でいくなら凌牙とデュエルしていたバリアンだと思うけど……」

 

 確か凌牙とデュエルしていたバリアンは灰色の体をしていて胸の辺りに装飾とかあったけどミザエルとかと違って布の類がまったくなかった筈。

 所謂全裸にベルトが付いている状態だったような。

 歩いていると緑色の扉が見え、開けてみると少し開けた場所にたどり着いた。

 

「また行き止まりか」

 

 部屋の中心には緑色に輝く大きな四角い画面のようなものが1つ浮かんでおり、それ以外には何もない。

 中央まで歩いていくと扉はかってにしまってしまった。

 

「ここで何かするのかな?」

 

 周りを見渡すが緑色の画面以外にはなにもない。

 また何か仕掛けがあるかと壁に寄ろうとしたとき、緑色の画面の両隣に光の粒子が現れ、それは球体を作った。

 球体が浮かび上がるとそこに映像が映し出される。

 

「遊馬君に凌牙!」

 

「遊馬たちはデュエルをしているようだな」

 

 左には遊馬君たち、右のほうには凌牙とナッシュさんの姿が映し出されていた。

 遊馬君はDゲイザーをして白い鎧を着た長い金髪の男性とデュエルをしている。

 凌牙の方はよく見てみると左右の壁がすごくゆっくりだが迫ってきているのが分かった。

 不安になって私達がいるほうの壁を見てみるが動き出す気配はない。

 

「刹!? そっちは大丈夫なの?」

 

 デュエルを見ていた璃緒ちゃんが私達に気づいたようで心配そうな表情を浮かべていた。

 

「こっちは平気。緑色の画面みたいなのがあるけど、それだけだし……」

 

「緑色の画面?」

 

「そっちにも仕掛けがあるのでしょうか?」

 

 文字も何も書かれていない画面をみるが、何のためにこれがあるのかまったく分からなかった。

 ひとまず遊馬君のデュエルを見てみる。

 遊馬君の場にはガガガマジシャンとレベルが4になったガガガキッドがいた。

 なにか魔法カードでも使ったのか2体のモンスターの攻撃力は500ポイント上がっていた。

 男性の場には伏せモンスターと伏せカードが2枚ある。

 

「いっけー! ガガガマジシャン、守備モンスターに攻撃!!」

 

 ガガガマジシャンはもっている鎖を投げて男性の場にある裏守備のモンスターに攻撃をした。

 攻撃をしたモンスターは両手に長い盾を持ったモンスターで守備力は1800。

 ガガガマジシャンの攻撃力は2000となっているので、そのモンスターは破壊された。

 モンスターが破壊されると同時に目の前にある緑色の画面に文字が浮かび上がった。

 

【攻撃力0の効果モンスターの名前を5つあげろ】

 

「え? な、なにこれ?」

 

「刹! とりあえず言ってみろ!」

 

「わ、わかった。えっとおジャマ・ブルー、おジャマ・レッド、おジャマ・イエロー」

 

 ブラック・ミストに促されとりあえずすぐに思いついた攻撃力0のモンスターを上げていくがおジャマ・イエローの名前をあげた途端ブーと大きな音が鳴り響いた。

 あ、おジャマ・イエローは通常モンスターだった。

 

「壁のスピードが速くなったぞ!」

 

「そんな、シャーク!」

 

 映像から凌牙と遊馬君のそんな声が聞こえ私は焦りながら攻撃力0のモンスターの名を答える。

 

「ユベル! ユベル-Das Abscheulich Ritter! ユベル-Das Extremer Traurig Drachen!!」

 

 長いモンスター名を叫ぶように告げるとピンポーンとクイズ番組で正解だと知らせる音が鳴り響いた。

 

「凌牙たちは!?」

 

「とりあえず大丈夫そうだな」

 

 凌牙が映っていた画面に視線を向けると壁が迫っていた部屋から脱出したらしく安堵の息を吐いていた。

 

「うぅ、心臓に悪い……」

 

 これで時間切れになったら凌牙とナッシュさんは壁に挟まれてぺしゃんこに。

 その光景を想像して体を震わせる。

 しかも間違えると壁のスピードが速まるとか……。

 

「刹、なにかモンスターの名前を言っていたようだけれど、どうしましたの?」

 

「ガガガマジシャンが攻撃したときにさっき言った緑色の画面に問題が出されて……」

 

「どうやら、遊馬たちのデュエルで何かしたときこっちに問題が出されてそれに正解すれば凌牙たちは助かるらしいな」

 

 趣味が悪い。

 ブラック・ミストの言葉に表情をゆがめて文句を心の中で一つ呟く。

 遊馬君とアストラルも同じようなことを思っているのか、ブラック・ミストの説明を聞いて表情をゆがめていた。

 

「にしても、なんであんな名前の長いモンスターを答えた?」

 

「とっさに出てきたのがこれだったんだよね……」

 

 悲しみ、苦しみ、ビタミン……うっ、頭が。

 話している間に男性は破壊されたモンスターの効果を使用していた。

 

「破壊されたドルイド・ウィドの効果を発動! このモンスターが破壊されたことで手札から永続魔法、決断の迷宮を発動! さらに私は2枚の手札を墓地へ送り永続罠、不公平条約を発動!」

 

罠を発動したとき、凌牙たちがいる部屋の天井が動き始めた。

 

「くそ、シャーク! 絶対に助けてやるからな! いっけー、ガガガキッド! ダイレクトアタックだ!」

 

 ガガガキットは手に持っていた棒付きアイスを食べると口から吹雪のようなものを吐き出して攻撃する。

 

男性LP:4000→2700

 

「刹!」

 

 ブラック・ミストの声に緑色の画面に目を向けるとまた文字が浮かびあがった。

 

【いまから出される3つの問題を答えろ】

 

【Q1:《強制脱出装置》にチェーンして《砂漠の光》を発動し、ライトロード・ハンターライコウをリバースした後手札に戻された場合、その後ライトロード・ハンターライコウの効果は発動するか?】

 

【Q2:《ゴブリンドバーグ》の効果で手札からモンスターが特殊召喚されたとき、《激流葬》は発動できるか?】

 

【Q3:《邪帝ガイウス》の効果で装備カードとなっている闇属性モンスターを除外した場合ダメージは与えられるか?】

 

 裁定に関しての問題か……。

 

「Q1は発動できない。Q2は発動できない。Q3は1000ダメージを与えられる」

 

 言い終えるとピンポーンとどこからか音が鳴り響いた。

 正解したと同時に凌牙達がいる部屋の壁の一部が開かれ、凌牙達は走って滑り込むようにその部屋から脱出した。

 

「決断の迷宮の効果、発動! 相手プレイヤーが攻撃したとき、バトル終了時私は600のライフを払い相手プレイヤーの手札1枚を墓地へ送る」

 

「俺の手札を?」

 

「さらに永続罠、不公平条約を発動! このカードは自分の永続魔法を発動し私がライフを払わねばならない時、そのライフポイントをお前に払ってもらう」

 

 実質あの男性のほうにはデメリットがないといことか……。

 遊馬君は手札を1枚墓地に送り、600のライフポイントを支払い4000から3400に減る。

 

「さぁ、この試練どう切り抜ける?」

 

「何が試練だ! ふざけやがって! 俺はレベル4のガガガマジシャンとガガガキットでオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚! 現れろ、No.39希望皇ホープ!!」

 

 遊馬君の前に現れた穴から光が爆発を起こすとそこからホープが現れる。

 

 ランク4 No.39希望皇ホープ 攻撃力:2500 ORU:2

 

「俺はこれでターンエンドだ!」

 

「それが君のNo.か……。私のターン、ドロー! 私は暗躍のドルイド・ドリュースを召喚!」

 

 男性の場に身の丈ほどある杖を両手に持ったローブを着た人型モンスターが現れる。

 

 レベル4 暗躍のドルイド・ドリュース 攻撃力:1800

 

「このカードの召喚に成功したとき、墓地にいるドルイドモンスター1体を特殊召喚できる。蘇れ! 暗躍のドルイド・ウィド!」

 

 ドルイド・ドリュースの隣に先ほどガガガマジシャンが破壊したモンスターが現れる。

 

 レベル4 暗躍のドルイド・ウィド 攻撃力:0

 

「では、私のNo.をお見せしよう。レベル4のドルイド・ウィドとドリュースでオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚!」

 

 2体のモンスターが紫色の光の玉となり男性の前に現れた穴に入っていくと光の爆発が起こる。

 

「現れろ、No.44!」

 

 光の中から出てきたのは三葉虫の化石に似たもので、そこから本来の姿に戻るために動き出した。

 背中と思われる場所から白い翼が生え、次に体は馬の形へと変わり前足をあげて嘶いた。

 

「悠久の大義よ、今こそ古の眠りから目覚め、天空を駆ける翼となれ! 白天馬スカイ・ペガサス!」

 

 ランク4 No.44白天馬スカイ・ペガサス 攻撃力:1800 ORU:2

 

「現れたか……」

 

「あれがあの人が持つNo.」

 

 出てきたモンスターは物語などでよく見かけるペガサスそのものだった。

 

「このNo.がお前達に新たな試練を課す。私はスカイ・ペガサスの効果を発動! オーバーレイ・ユニットを1つ使い、相手モンスター1体を破壊する! 私が破壊するのは希望皇ホープ! ただしお前がライフを500払うことでこの効果を無効にできる」

 

 モンスターを破壊されるかライフを払うかの2択か……。

 いまの状況だとホープを失えば遊馬君のフィールドはがら空きになる。

 スカイ・ペガサスの攻撃力は1800、ダイレクトアタックを受けるより500払ったほうが被害も少ない。

 遊馬君たちもそう思ったのかライフを500払い、ホープを守った。

 

遊馬LP:3400→2900

 

「この瞬間、スカイ・ペガサスのモンスター効果発動!相手がライフポイントを払うとき、その分のダメージを相手に与える!」

 

「なに!?」

 

 スカイ・ペガサスの翼が輝き始めそのまま遊馬君に向かって空中を走り、突進を繰り出した。

 

「ぐああぁ!!」

 

遊馬LP:2900→2400

 

 遊馬君は後ろに吹き飛ばされるが体勢を立て直して地面に着地をした。

 これであわせて1000のダメージを受けたことになる。

 

「遊馬、刹!」

 

 ふと凌牙とナッシュさんが映像を映し出す球体を見つけたのか体をこちらに向けていた。

 

「凌牙、此方ではデュエルが始まっているわ」

 

「いきなりNo.の精霊が出てきて……」

 

 え、あれってNo.の精霊だったの?

 凌牙は小鳥ちゃんの言葉に訝しげにあの男性を見た。

 まさかカードの精霊がデュエルを挑んでくるなんて……あ、普通だったか。

 そんなことを思っているとアストラルが凌牙達に遊馬君のデュエルと凌牙達がいる部屋の罠が連動していることを説明した。

 

「じゃあ、壁のスピードが速まったのは」

 

「ごめん。私が答えを間違えたせい……」

 

 気持ちが落ち込み、凌牙に謝ると何か言いかけ口を開くがため息を吐いて後頭部を掻いた。

 

「気にしてねぇよ。だからそんな顔すんな」

 

「ごめん。ありがとう」

 

 なんかデュエルとは違うから気持ちの持ちようがぜんぜん違う。

 落ち着くために深く息を吐いているとアストラルが私と凌牙に部屋にデュエルのヒントになりそうなものがないか聞いてきた。

 

「こっちには何もないけど……」

 

 壁には何か描いている様子もなく、触ってみても仕掛けが発動することもなかった。

 その間に凌牙たちは壁画を発見した。

 昔の文字で書かれているため凌牙は読めないと言うが、ナッシュさんが壁に書かれている文字を読み始めた。

 内容はこうだった。

 

 遠い昔、国に仕える勇敢な騎士達がいた。

 その一人は愛馬ペガサスに乗る英雄で、その英雄が故郷に里帰りしている間に一部の騎士達が王を裏切り謀反を起こした。

 

 その壁画にはそこまでしか書かれていないようだった。

 ナッシュさんが読み終えるとまた凌牙達がいる部屋の仕掛けが作動したらしく上から石が落ちてきていた。

 

「凌牙!? 遊馬、さっさとデュエルを進めなさい!!」

 

 一歩間違えれば大怪我をする状況に璃緒ちゃんは強い口調で遊馬君に言い放った。

 

「分かってる! 俺のターン、ドロー!」

 

『遊馬、攻撃だ!! 我々のライフを削ってでもシャーク達を助け、敵のNo.を破壊するんだ!』

 

「おう! ホープでスカイ・ペガサスを攻撃!」

 

 遊馬君はすぐさまホープに攻撃の指示を出し、ホープは剣を持ってスカイ・ペガサスに近づき剣を振りかざした。

 

「永続罠、陰謀の盾を発動! このカードは自分のモンスターの装備カードとなり装備モンスターが攻撃表示のとき、1ターンに1度バトルダメージを0にして破壊を無効する!」

 

 ホープの攻撃はスカイ・ペガサスの前に現れた盾によって阻まれたがホープが攻撃したことで此方に問題が映し出された。

 

【レベル11のモンスターを2つあげよ】

 

 その問題を見た瞬間眉間に皺がよる。

 レベル11のモンスターは全レベルのなかで一番少ない。

 私は頭に片手を当てて目を瞑り、答えた。

 

「ゲート・ガーディアン! ユベル-Das Abscheulich Ritter!」

 

 ピンポーンという音を聞きホッと息を吐いた。

 凌牙たちは開いた扉に向かって走っていくのが見える。怪我もなく無事に隣の部屋に移動したようだった。

 

「この瞬間、決断の迷宮と不公平条約の効果を発動! これでお前のライフは600減り、さらに手札を1枚墓地へ捨てねばならない」

 

「くっそー!」

 

 遊馬君は男性に言われたとおり手札を1枚捨てライフコストを払った。

 

遊馬LP:2400→1800

 

「さらに、スカイ・ペガサスの効果発動! 相手がライフポイントを払うときその分のダメージを相手に与える!」

 

「ぐああぁ!」

 

 金色の光に包まれたスカイ・ペガサスが突進し、遊馬君は衝撃に吹き飛ばされて地面へと倒れこむ。

 

遊馬LP:1800→1200

 

「くっ、俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ!」

 

『シャーク! その部屋に壁画の続きは!?』

 

「あぁ、あったぜ!」

 

 アストラルの問いかけに凌牙は頷く。そしてナッシュさんが壁画に書かれている英雄の物語の続きを読み始めた。

 

 英雄は城に戻り謀反を起こした騎士達を説得しようとしたが失敗。

 その騎士達と戦うことになったが、英雄は仲間を斬ることが出来なかった。

 無抵抗にやられている英雄の前に愛馬ペガサスが英雄を守ろうと庇うが、騎士達に斬られペガサスは命を落としてしまった。

 

「それで? その続きは?」

 

「残念だが、この続きは風化して読むことが出来ない」

 

 私はここまで何も言わずに待っていてくれている男性をみる。

 No.の精霊というからにはもしかしたらこの伝説になにか繋がりがあるのかもしれない。名前もスカイ・ペガサスというのだからもしかしたら……。

 

「私のターン、ドロー! 私はスカイ・ペガサスのオーバーレイ・ユニットを1つ使い、相手モンスターを破壊する! しかし、お前がライフを500払うことでこの効果を無効にできる」

 

 スカイ・ペガサスの翼が輝き、角に青色の光が集まり始める。

 

「遊馬、これ以上ライフを削られたらこのデュエル勝てねぇ! 俺達のことは気にするな! ホープを破壊しろ!」

 

「なっ……」

 

「仲間を守れ! ホープを守るんだ、遊馬!!」

 

 凌牙の言葉に何を言ってるんだと口を開こうとしたらナッシュさんが大きな声でそういった。

 

「てめぇ、何をいっている!?」

 

「私は! この伝説を知っている!!」

 

「なに?」

 

 部屋の床が崩れ始めているというのにナッシュさんは話の続きを語りだした。

 その後、倒れたペガサスを見て英雄はペガサスを見捨てて逃げることは出来なかった。

 その場にとどまりペガサスと共に息を引き取ったという。

 

「分からないのか!? この伝説は仲間を守り、人を信じる気持ちを語っている!! 遊馬! ホープを守り、私を信じろ!!」

 

 ナッシュさんは真剣な表情で遊馬君に語りかけていた。

 

「てめぇ、何でそんなことを! まさかお前は……っ!」

 

 凌牙がいた場所の足元が崩れ落ち、ナッシュさんに気を取られていたせいか反応することも出来ずそのまま下へと落ちる。

 だが、ナッシュさんが凌牙の腕を掴み間一髪で助けられた。

 

「凌牙!」

 

 無意識にとめていた息を吐き出す。

 ハラハラしながら映像を見ていると凌牙から赤いオーラのようなものが現れ、それがナッシュさんに流れていっているように見えた。

 

「そうだ、凌牙。私は……私は!」

 

 ナッシュさんの体が一瞬輝き、光がなくなるとナッシュさんの姿はあの灰色のバリアンの姿に変わっていた。

 

「私はバリアンだ!」

 

「なっ!? てめぇは、ドルベ!!」

 

 一緒にいた相手がバリアンだと分かり凌牙はドルベの言葉を信じるなと言った。

 遊馬君もその言葉を聞いてベクターのことを思い出したのかつらそうな表情をしていた。

 

『遊馬、君が何を信じるのか。君に託そう』

 

 私はホープを守るように口を開きかけるが、思い直して口を閉じた。

 ここは、遊馬君を信じてみよう。

 話の区切りが付き、男性はスカイ・ペガサスの効果を発動しホープを破壊しようとスカイ・ペガサスが走ってくる。

 

「俺は、500ライフを払いホープの破壊を無効にする!」

 

 スカイ・ペガサスから放たれた光がホープに当たる前に消えた。

 そしてライフを払ったことでスカイ・ペガサスの効果が発動しさらに500のダメージを遊馬君は受ける。

 

遊馬LP:1200→200

 

「よかった……」

 

「何がだ?」

 

 安心して思わず呟くとブラック・ミストが首をかしげて聞いてきた。

 

「ライフコストは基本的に決められた数値よりライフポイントが少ないとカードの効果は発動できない。相手の永続罠、不公平条約は自分で払うはずのライフポイントを相手に払わせるもの。いまの遊馬君のライフはたったの200。相手の永続魔法、決断の迷宮で払うライフポイントより下回った」

 

「もう不公平条約の意味はなさないというわけか」

 

「そういうこと」

 

 でも強制の維持コストの場合はライフと払うライフポイントが同じだったとき、ぴったり支払われて敗北することになる。

 アストラルも同じ事に気づいたのか、遊馬君のターンになると攻撃の指示を出した。

 

「わかったぜ! ホープでスカイ・ペガサスを攻撃!」

 

 ホープはスカイ・ペガサスに攻撃を仕掛けるが相手が発動している陰謀の盾により攻撃が阻まれる。

 攻撃を行ったことにより、緑色の画面にまた文字が現れた。

 

【カード名を答えよ】

 

【Q1:相手ターンのメインフェイズ1に自分フィールド上モンスター1体を選択して発動する。

選択したモンスターがフィールド上に存在する限り、このターン相手がモンスターで攻撃を行う場合、選択したモンスターを攻撃対象に選択しなければならない。】

 

【Q2:ウマとサカナの体を持つモンスター。海中を風のように駆け抜ける】

 

 おそらくこれはカードテキストに書かれている文章だと思うけど、Q2は通常モンスターか……。

 Q1は立ちはだかる強敵は攻撃宣言時だったはずだから。

 

「Q1は挑発。Q2はシーホース」

 

 ピンポーンという音が鳴り響き、凌牙はドルベに引っ張られながら次の部屋に移動していた。

 よかった、わかるやつで……。

 

「決断の迷宮により君の手札1枚は墓地へ」

 

 遊馬君が手札を1枚墓地に送る。ライフコストを払わなければいけないと身構えているが、ライフは減る様子もなく遊馬君や璃緒ちゃん達は困惑していた。

 なぜ何もおきないのか先ほど私がブラック・ミストに話した同じ内容をみんなに説明していた。

 そして黒い穴が男性の前に現れるとそこから爆発が起こり、男性は吹き飛ばされた。

 

男性LP:2700→2100

 

『君の選択は正しかった! いけ、遊馬!』

 

「おう! 俺はさっき墓地へ送ったカウンター罠、超速攻!(ハイパークイック)を発動! このカードが手札から墓地へ送ったとき、デッキからカードを1枚ドローしてそれが魔法カードだった場合、速攻魔法として扱う! かっとビングだ、俺!!」

 

 固唾をのんで見守り、遊馬君は勢いよくカードをドローする。

 ドローしたカードを見た瞬間、遊馬君の表情は明るくなり笑みがこぼれた。

 

「来たー!! 俺はRUM-ヌメロン・フォースを発動! このカードはモンスターエクシーズをランクアップさせる! 俺はランク4の希望皇ホープでオーバーレイ!1体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを再構築、エクシーズ召喚! カオスエクシーズチェンジ!」

 

 ホープは金色に輝く球体になると開かれた穴に入り込む。すると穴から青色の光が爆発を起こした。

 ホープの腕には赤、体や足などには白や青色の装甲が取り付けられその姿を変えた。

 

「現れろ、CNo.39! 希望に輝く魂が、森羅万象を網羅し未来を導く力となる! 希望皇ホープレイ・ヴィクトリー!」

 

 ランク5 CNo.39希望皇ホープレイ・ヴィクトリー 攻撃力:2800

 

「ホープレイ・ヴィクトリーの効果発動! オーバーレイ・ユニットを1つ使い、このモンスターがバトルするとき、相手モンスターの攻撃力を自分の攻撃力に加える! ヴィクトリー・チャージ!」

 

 ホープレイ・ヴィクトリーの腕が4本に増えそのすべての手には大きな剣を持っている。

 スカイ・ペガサスの攻撃力分、攻撃力が上がったためにホープレイ・ヴィクトリーの体から赤いオーラがあふれ出していた。

 

 ランク5 CNo.39希望皇ホープレイ・ヴィクトリー 攻撃力:2800→4600

 

「いけ! ホープレイ・ヴィクトリー!! ホープ剣・ダブルヴィクトリースラッシュ!!」

 

 遊馬君の指示に従いホープレイ・ヴィクトリーは4つの剣でスカイ・ペガサスを斬る。

 スカイ・ペガサスは攻撃されたことにより爆発を起こし破壊された。

 男性は叫び声を上げながら後ろに吹っ飛ばされ、LPは0となりデュエルの終了を告げる合図が鳴り響いた。

 すると緑色の画面と球体は光の粒子となって消える。

 私達の目の前にある壁の一部が動き出し、そこから上へと続く階段と外から漏れる光が見えた。

 

「こういうのは、嫌だな……」

 

 手を握り締めて呟く。ブラック・ミストから視線を感じるが私はそれ以上なにも語らなかった。

 一歩間違えれば、凌牙は死んでいたかもしれない。

 それが、たまらなく嫌だった。凌牙だけの話じゃない。ブラック・ミストも遊馬君やアストラル、璃緒ちゃんや小鳥ちゃん、私の仲間が目に見えて命の危険にさらされているのを黙ってみているのが嫌なのだ。

 まぁ、それは遊馬君達も感じていることだと思うけど。

 

「行こう、ブラック・ミスト。はやく遊馬君達と合流しよう」

 

「……そうだな」

 

 私とブラック・ミストは出口に向かって歩き出した。

 それにしても、なんでドルベが凌牙の腕を掴んだとき赤いオーラが出てたんだろう?




今回はちょっとだけ変えて問題を出してみました。
たぶん答えはあっている、筈。間違ってたらすみません。

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