【対魔忍RPG】稲毛屋のアイス その後 作:unko☆star
「――ッ!!」
がばっ、と顔を上げたガルシアは、自分がまだほら穴の中にいることに気づいた。
べったりと寝汗をかき、心臓が激しい運動をした後のように鼓動している。
「ウ……アア…」
荒い息を整えながら手のひらで顔の汗をぬぐい、先程見ていた悪夢について考える。
夢にしては妙に現実的な――まるで、過去の記憶を回想しているかのような夢。
そして、あの謎の声。
任務で傷つき、死の淵に落ちるといつも頭の中から聞こえてくる声。
強敵に打ちのめされ、意識が薄れゆくとき、必ず自分を励ましてくれる声。
いつもあの声に救われてきた。
声の主は誰なのか?
なぜ、自分を救ってくれるのか?
いや、そもそも本当に実在する人物の声なのか?
なにひとつ、わからない。
それでも、ガルシアは決心したのだ。
(あの人に会いに行かなくてはならない)
あのまま研究所で臓器を抜かれ、ただ死を待つことはできない。
トーキョーに行けば――かつてガルシアを死闘を演じた“あの男”に会えば――。
なにか、手がかりが掴めるかもしれない。
その思いひとつを胸に、ここまで逃亡してきた。
――――――
――――
――
とりあえず身体を洗おう――。
ガルシアは服を脱ぎ、滝の側へと下りていった。
水辺から漂う冷気が心地良い。
ガルシアは顔を洗う姿勢で水辺にしゃがみ込み――
――突如、水中にあった拳大の石を掴み、背後の茂みへと投げ込んだ。
バキッ!
「えっ!?」
茂みの中から麻酔銃でガルシアを狙っていた刺客――甲河アスカは驚愕した。
闇夜の中、無防備な背中を晒していたはずのターゲットが、寸分の狂いもない投石でこちらの銃を弾き飛ばしたのだ。
そして彼女が不意を突かれた一瞬の隙に、ガルシアは水辺から姿を消していた。
「あっ――」
と思ったのもつかの間、頭上から飛び掛かってきたガルシアに取り押さえられ、頭部を地面に叩きつけられてしまう。
ゴッ!
「がっ!?――このっ!“
ビュオッ!!
アスカは忍法で小さな竜巻を起こし、背中にのしかかっていたガルシアを突き飛ばした。
彼女の操る“風神の術”は本来、かまいたちを発生させて即座に相手をズタズタに切り刻むことも可能なのだが、今回の任務は生け捕りが絶対故に加減せざるを得ない。
「…!?」
さすがのガルシアも忍法をその身に受けるのは初めてらしく、受け身を取るのが精一杯だった。
すかさずアスカが躍りかかり、転倒したガルシアの右足を脇に抱え、その大腿部に自分の足を絡めて固定する。
関節技、“ヒール・ホールド”の体勢だ。
「ごめんね~。命までは取らないから…足一本、ちょうだいっ!」
アスカが全体重をかけて後ろに倒れ、てこの原理でガルシアの足を捻りあげた。
膝関節が可動域を超えてねじられ、靱帯がブチブチと音を立てて断裂する。
――はずの手ごたえが、ない。
それどころが、ガルシアの足関節・腰関節がありえない方向に曲がり、まるで軟体動物のようにスルリとアスカの関節技を外してしまった。
「――えっ?」
“ボーン・コントロール”。
ガルシアは人間が本来、自分の意思では動かすことのできない“第3の筋肉”を使い、関節の可動域を広げることができる。
これにより相手の関節技を無効にすることはもちろん、腕や足を変形させて変則的な攻撃を行うことも可能だ。
技を外した勢いそのまま、今度はガルシアがアスカの左足を抱きかかえる様に両腕でロックし、さらに両足を首に絡ませて頸動脈を締め上げる。
「あっ…ぐっ…」
アスカの顔にみるみる血が上っていく。
相手の足と頭を固定し、そこから自らの体を回転させ、遠心力で敵の頸椎をへし折る――。
これこそがガルシアの必殺技、“ボーン・トルネード”だ。
「……」
ガルシアは、今まさに生殺与奪権を握った相手に一瞥をくれ――
無情にも、その体を渾身の力で回転させた。
バキッッ!!!