勇者パーティから追放された武闘家の男、最強すぎる彼が追放された理由はふんどし一丁だから!? 作:平成忍者
「ハダマ、この条件が飲めなければ君はクビだ」
「そ、そんな・・嘘だろ」
勇者パーティのリーダー、ルクスから言われた突然の言葉に俺は唖然とする。
最初は冗談かと思ったが、野営中の焚火に照らされた仲間たちの表情は真剣だ。
とても冗談を言ってるようには見えない。
「何故だ!俺たち仲間だろう!?どうして急に・・」
「全部アンタのせいでしょうが!」
焚火の反対側に座る魔導士の少女が吐き捨てる。
肩まで伸ばした黒髪に気の強そうな碧い瞳。
少しばかり目つきは悪いが、とても美しい少女だ。
黒のローブは体の線が出にくいというのに、大きく押し上げられた胸元からは彼女の発育の良さが伺える。
彼女の名はマナ。
若くして『災害』の二つ名を持つ才女だ。
「これに関しちゃオレも同意見だ」
「ザンまで!?」
マナの隣に座る青年の名はザン。
『剣王』の異名を持つ青年だ。
短く刈り込んだ茶色い髪に、餓狼のような眼光を宿している。
顔が怖くて口調も乱暴だが、このパーティで一番優しい男だということを俺はよく知っている。
親友のザンはまるでマナを守るかのように隣に寄り添っている。
(なんだよ!俺が一体何をしたっていうんだ!)
俺は訳も分からず叫びたくなる気持ちを押さえつける。
仲間たちが意味もなく自分を切り捨てるはずがない!何か理由があるはずだ。
「ルクス!教えてくれよ!なぜ俺がクビなんだ!?」
「・・・」
クビ宣言の後、ずっと黙り込んでいたルクスに縋るような視線を向ける。
ルクスには普段の優しい雰囲気が微塵もなく、珍しく苛立っていることがわかる。
ルクスはどこか遠い目をして言葉を探す。
そして絞り出すように言葉を紡いだ。
「ハダマ、君がパンツ一丁だからだよ。・・なんで服着ないのさ?」
俺は目を見開く。
何だ、それは。一体それはどういった冗談なのか。
たかがその程度のことで仲間を追い出すとは人のやることとは思えない。
それ以前にこれはパンツではない。
「前から言ってるがこれはパンツじゃない。“ふんどし”だ。俺はフンドシストとしてふんどしの文化・魅力・効果を宣伝する義務があるのさ!」
俺はそういうと漆黒のフンドシが良く見えるようにポーズをきめる。
ベヒーモスの皮で作った特注品だ。
ちなみにふんどし以外は一切身に着けていない。
武闘家の俺にとって、この鋼の肉体こそ武器にして防具。
服など不要だ。
決して鍛え上げた肉体を見せつけたいからこんな格好をしているわけではない。
ルクス達3人は熱弁する俺を見て深くため息をついた。
それを見て苛立ったように俺は声を張り上げる。
「別に迷惑かけてないからいいではないか!」
「何言ってんだオメーは!?しっかりかけてんだっつーの!」
ザンの鋭いツッコミが入る。
だが俺にはパーティのみんなに迷惑をかけた記憶がない。
一体どういうことかと俺は首を傾げる。
「ハダマ、お前マジで記憶にないってか」
ザンは信じられないといった表情を浮かべる。
ルクスはため息をつくとゆっくりと口を開いた。
「先月、教皇様にお会いしたよね?その時のことを覚えてないのかい」
ルクスの言葉に俺は先月の記憶を辿る。
確かに教皇様とお会いしたがそんなに失礼なことをしただろうか?
俺はあの時に何が起きたのか、もう一度順番に思い出すことにした。
◇
宗教国家ロマリア共和国。
教皇を中心に政が行われる聖王教会総本山だ。
首都システィーナの中央には荘厳なエルトロ大聖堂がそびえ立つ。
純白の穢れなき宮殿は一生に一度は観ておきたいと、旅人や巡礼者は必ず見物に来ることで有名だ。
そんなエルトロ大聖堂の一室で、勇者ルクス一行は教皇との謁見に備えていた。
「ほら、ザン。胸を張って」
「あ、ああ」
ザンは平民出身でこういった事に慣れていない。
彼は先ほどから儀礼用の衣装に身を包み、窮屈そうに縮こまっていた。
恋人のマナがザンの緊張を解しつつ、衣装をチェックする。
服に着られている印象が強いが、まあ及第点だろうとマナは判断した。
「ルクス様。儀礼用のお洋服、とてもお似合いですわ!」
「ありがとう。聖女殿」
「もう!私のことはカタリナとお呼びください」
花が咲くような笑顔で美しい少女がルクスにすり寄る。
彼女の名はロマリアの聖女カタリナ。
腰まである金色の長髪はまるで絹糸のように美しい。
青い瞳は水晶のように透き通り、すべてを見通すかのようだ。
元伯爵家の次女であったカタリナだが、幼少期に高い回復魔法の適性を見出され、教会へと預けられた。
稀代の神聖魔法の使い手として成長し、齢15にして聖女となった才女だ。
貧乏な男爵家の息子で、勇者に任命されるまでは村人とあまり変わらない生活していたルクスにとってカタリナは雲の上の人であった。
そんな相手に様つけで名を呼ばれることに未だに慣れない。
そんなルクスの気持ちを知らず、無邪気な笑顔でカタリナはグイグイと距離を詰めてくる。
美少女に詰め寄られてルクスの心臓が高鳴る。
(お、落ち着け!これはきっとハニートラップとかいう奴だ)
ルクスは深呼吸して気分を落ち着かせる。
危ないところだった。
カタリナが幼女体型でなかったら篭絡され、教会の意のままに動かされていたかもしれない。
ルクスは自分が巨乳好きであることに初めて感謝した。
ルクスが落ち着きを取り戻すと、勇者一同の待つ控室が開かれた。
迎えの者が来たのかと視線を向けた勇者一同は目を見開いた。
やってきたのはハダマだ。
それ自体は別におかしくない。
彼もパーティの一員で一緒に謁見をするからだ。
問題なのはその格好である。
純白のフンドシのみ。
彼はそれ以外を一切身に着けていなかった。
◇◇
「えっ?ちょっとお前それで謁見いくのかよ」
ザンが恐る恐る尋ねてきた。
珍しく怯えを含んだ表情だ。
俺がいない間に何かあったのだろうか。
「当たり前だろ?見ろよ、特注品だぜ!絹でできているんだ」
俺は宝物を見せびらかすようにフンドシを風になびかせた。
((この男、マジでこの姿で謁見に行くつもりだ))
ザンは二の句が継げず、ルクスは遠い目をする。
何故か表情の抜け落ちた顔つきのマナとカタリナはピクリとも動かない。
「勇者ルクス御一行、謁見の準備ができました。速やかに教皇の間へ・・え」
若いシスターがやってきたが、彼女は俺を見て絶句する。
一体どうしたのかと俺は首を傾げた。
だが、すぐにその理由に思い至る。
(ああ、俺の肉体美に身惚れたのか)
俺はなんと罪作りな男なのか。
だがまあ、それも仕方ないことだろう。
今日のためにしっかりと鍛えこんできたのだ。
今宵の俺の肉体は一味違う。
俺が最高のスマイルでウインクをすると、シスターはかすれた声を出して後退りした。
シャイな彼女には少し刺激が強すぎたのかもしれない。
「よし!みんな準備はできたな?さっそく行こうか」
ルクスを差し置き、俺ははルンルン気分で教皇の間へとスキップしていく。
きっとルクス達はお偉いさんとの謁見に緊張しているのだろう。
こういう時は俺が自慢の肉体で彼らの盾になるべきだ。
ルクス達が慌てて後を追ってきたが一足遅い。
俺は教皇様との謁見の間へと足を踏み入れた。
◇
「先に入っていったな・・」
「嘘だろ・・」
謁見の間の手前で、勇者ルクスはごくりとつばを飲み込む。
仲間達の表情も硬い。
ふとルクスは圧倒的な魔物の大群に立ち向かい、死を覚悟した時のことを思い出していた。
あの時よりも遥かに恐怖を感じるのは気のせいだろうか。