「はあ…お腹空いたな…」
あの後アパート中を探してみたのだが、結局ロクな食い物が見つからなかった。あったのはお茶くらいである。そのまま空腹のまま眠れない夜を過ごした。
うーむ、訓練の一環でエネルギーがまともに補給できない環境で過ごすなんてこともやったけど、その時とはまた別の辛さだ。光の国に居た時は基本的に光エネルギーを吸収してれば良かったのだけれどもヒューマノイドの姿で長時間過ごすのは初めてなのだ。
「学校に行けば給食にありつけるかな…」
ウルトラ族だろうとなんだろうと空腹のままはいけない。かつてウルトラ兄弟の1人ジャックが残した言葉「腹ペコのまま学校へ行かぬこと」に反するが今現在食事にありつける当ては学校しかない。
ということで空腹で弱った身体を押して怪獣墓場学園へ向かうことにした。
◇ ◇ ◇
「ロメオ君おはよ~~!」
「げ…昨日のウルトラ族か…」
学園へ行く途中、エレキングとメフィラス星人に出会った。エレキングは笑顔で挨拶してきたがメフィラス星人は嫌そうだった。なんかああ露骨に態度にだされると、ちょっと心外だな…
いやウルトラ族の活動を考えるとむしろメフィラス星人の返しが正常なのかもしれないけど。沢山感謝もされるけど、沢山恨みも買うのが宇宙警備隊だからな。
「おはようございます…」
そんなことを考えながらこっちも挨拶を返した。
「ん?なんかロメオ君昨日より元気ないね」
「実は昨日の夜から何も食べてなくて…」
「はっウルトラ族が空腹で力がでないとはとんだお笑い草だな。ウルトラマンがいたら奴も笑うだろう」
む…馬鹿にされたが…空腹なのは事実、今の状態だとチブル星人と殴り合いになっても負けるだろう。
「すいません…なにか食事の当てはあるでしょうか…正直今のままでは給食までもつかどうか…」
「えー?誰か炎を吐ける子にお願いしてガッツ鳥を丸焼きにしてもらうとか?」
「なっ、エレキングお前なんて残酷なことを考えるのだ…!」
ガッツ鳥って昨日見かけたガッツ星人にそっくりな鳥か。あれって食えるんだ…
「腹に入るならなんでもいいかな…」
「じゃあ誰か呼んで来るね~」
「待て待て!私がそこの菓子屋のスイーツを奢る!だからガッツ鳥を焼くのは無しだ!」
ということでメフィラス星人にスイーツを奢られることになった。
「ありがとうございますメフィラスさん。ご馳走さまでした」
「フンッ!別にお前を助けたわけじゃないからな!後、今度金返せよ」
「メフィラスちゃんごちそうさま~」
◇ ◇ ◇
学園に登校した俺は教室に入ったのだが、早々に怪獣達から質問攻めにあった。
「光の国ってどんな所?」
とか
「地球に行ったことある?」
とか
「バラバラになっても再生できる?」
とか
「腐腐腐…彼氏はいる?」
とかなんか後半変な質問だったけど気にしないでおこう。
そんなこんなで授業が始まるのを待っていたが。
「授業をはじめるだわよ」
と青いハサミ状の手をした小柄な少女が教壇に立った。
自分は小声で近くにいたレッドキングに『あの子がこの学園の先生?』と聞いた。
「いや、テンペラーは同じ生徒なんだけど勝手に先生面していつも何かおっぱじめるんだよ」
レッドキングによると少女、テンペラー星人は先生では無いらしい。じゃあ、先生はどこにいるんだろうか?
なんて考えているとテンペラー星人が話し始めた。
「あんた達は怪獣としての本分を忘れているだわよ!」
「怪獣は暴れるのが仕事!宇宙人は侵略するのが仕事!そしてウルトラ兄弟を倒す!」
「なのになんなんだわよ!よりによってウルトラ族の存在を許すとわ!」
ビシッとテンペラー星人の手がこちらへ差される。
「えっ俺?」
「お前以外誰がいるだわよ!」
テンペラー星人はこちらを睨んでくる。星人の姿ならまだしも少女の姿だからそこまで威圧感は感じないが。
「あの…話がみえないんですが…」
「お前が気にくわないんだわよ!」
ええ~…またか、やっぱり恨み買ってるんじゃないですか。
「ちょっと待ってください!確かにウルトラ族とテンペラー星人は敵対関係にありますけど、ここは中立地帯みたいなものでしょ!?自分達が積極的に争う事はないですよ!」
「ふんっそんなこと知ったこっちゃないだわよ。ウルトラ兄弟ほどじゃないけどウルトラ族は不俱戴天の仇!生かしちゃおけないだわよ!」
テンペラー星人は腕をこちらに構える。自分も自然とファイティングポーズをとっていた。くっ…やるしかないのか?相手はテンペラー星人。まだ正式な隊員にさえなってない自分が勝てる相手なのか?
テンペラーと睨みあう。そして何秒か経過した。
「くら「はい。ストップー」なんだわよ!?」
「メトロンさん!?」
自分達の間にメトロン星人が割り込んできた。
「二人ともこんな所で喧嘩はご法度だよ」
「むっ止めるなメトロン!ウルトラ族は仇なのだわよ!」
「そうはいかないんだよー」
「メトロンさん。俺も戦いたくないんですが、相手が来るとなると…」
「まあまあ落ち着いて」
メトロン星人は笑顔を絶やさず俺達を制止する動作をする。そしてテンペラー星人の方を向く。
「テンペラーちゃん。貴女が倒したいのはウルトラ族というよりウルトラ兄弟でしょ?」
「確かにそうだわよ。でもそいつは…」
「確かにロメオ君もウルトラ族だよ。でも彼はね、まだ正式な宇宙警備隊隊員じゃないんだ」
「えっ?なぜそれを!?」
「校長から聞いてるからね。まさかテンペラーちゃんウルトラ兄弟どころか一人前のウルトラ戦士ですらない子を倒して勝ち誇るつもり?」
「そっそれは…」
テンペラー星人がたじろぐ。心なしかさっきまで感じていた殺気も弱まっている気がする。
「それに流血沙汰は校長が許さないよ?ましてやゲストさんが大怪我するような事態を見逃すと思う?」
メトロン星人は笑顔のままだが、なんとなくテンペラー星人とは別種の圧を感じる…
「うっ、校長が…」
テンペラー星人の顔が青ざめる。どうやらあの校長には逆らえないらしい。
「だからね、好き嫌いはあっても二人とも喧嘩はしないでほしいな」
メトロン星人はそう話をしめる。
テンペラー星人は暫く身じろいだ後、
「ふ、ふん!ロメオとかいうやつ、今回はこれで勘弁してあげるだわよ!」
と言って教室を出ていった。
一部始終を見ていたギャラリーはざわざわと騒ぐ。
「へー、ロメオ君ってウルトラマンの卵だったんだ。略して『ウルたま』だね!」
「お前それ別の作品のネタだろ…しかし、ウルトラ族にして通りで覇気がないと思った」
エレキングがのんきに言いそれにメフィラス星人がツッコミをいれる。
俺はメトロン星人にお礼を言うことにした。
「すみませんメトロンさん…助かりました」
「うんうん。気にしないで。それにああ言ってたけどテンペラーちゃんも根は悪い子じゃないから」
「肩書は極悪宇宙人だけどな…」
メトロン星人の言葉にメフィラス星人がぼそりと呟く。
結局ざわざわとした空気は放課後まで続いた。
◇ ◇ ◇
――放課後
夕暮れに染まった校舎を背に俺は校庭を歩いていた。
「はあ…割と大変な1日だった…」
空腹に苦しめられるわ、好奇の視線に晒されるわ、仕舞には一触即発の事態だもんな。トラブル続きである。
何より悔しいのが今回見逃されたことの理由の半分が、自分が半人前ということだ。
自分もそれなりに鍛えて、光の国で同期のゼットらと切磋琢磨して来たというのに、まだまだ鍛錬は足りないらしい。
「全く。学園生活なんて送っている場合じゃないんじゃないか?」
そんなふうに黄昏ていると、ワンワンと犬の鳴き声が聞こえて来た。
何だと視線を鳴き声のする方に向けると、
「た、食べないでくださーい!」
少女が怪獣グドンに似た犬に襲われていた。
俺は思わずそちらにいった。
「やめろ!この子から離れろ!」
グドン犬をおい払うべく身体のエレルギーを循環させ、腕力を強化するそして、グドン犬少女から引き離した。
すると、4~5匹いたグドン犬は何処かへ行ってしまった。
俺は倒れた少女に駆け寄った。
「怪我はない?」と抱き起こしたツインテールの少女は「あ…ありがとうございます」とお礼をいった。
「俺はロメオ、留学生です。君の名前は?」
「ツインテールです…」
ツインテール。グドンと食物連鎖の関係にある怪獣か。名は体を表すと言うが髪がツインテールだ。
「ロメオさん…知ってますウルトラ戦士の方ですよね。どうして私を助けたんですか?私は怪獣なのに…」
「君が困っていたじゃダメかな」
「でも私、グドンから逃れるために大きな被害を出しました。そうなのに…」
「外ならともかくこの怪獣墓場は色々事情が違うらしい。」
「それに困っている相手が怪獣や宇宙人でも手を差し伸べるのもウルトラマンじゃないかと思って」
「……うう」
「どうして泣くんですか?まさか傷が!?」
「いえ、産まれてからこんなに優しくされたのは初めてで…」
「そうですか…俺もここに来てから人助けをしたのは貴女が初めてです」
「じゃあ私は第1号なんですね。ふふふ…」
ツインテールが笑う。
「じゃあ俺はこれで。また、貴女が襲われることになったら助けますから」
「ウルたまがですか…」
「いつか誰もウルたまなんて呼ばせないくらいの者になりますよ」
◇ ◇ ◇
ツインテールと別れた俺は寝床であるアパートに戻った。
アパートの前には一週間分の食糧が校長からの詫び状と共に置いてあった。
食糧をアパートの中に運びこみながら俺はこの怪獣墓場で鍛錬を怠らないことと、困っている人はできる範囲で助けることを胸に誓うのだった。
閲覧ありがとうございました。
ツインテールさん電撃版よりPOP版のデザインの方が好きなんですよね。
ロメオの実力は素のゼットより少し強い程度です。
独自の設定にはなりますがクライシス・インパクト次にはゼットや同期達はまだ正式な宇宙警備隊隊員になってない感じです。
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