下水道に近付くだけでも腐った臭いがもんわりと滲んできて、石畳は夜になっても生暖かい。
羽を持つ虫ポケモン達は時折街の中まで顔を出してきて、虫が苦手なゾロアークはいつの間にか覚えていた火炎放射を日によっては吐けなくなる程に使っていた。
石造りの街の外はそこまで暑い訳でもないけれど、外は外で虫ポケモン達が更に多い。特にゾロアークは出たがらない。元々群れで暮らすポケモンだとも言うし。
だから風通しの良い、そして虫ポケモン達が余り来ない場所が俺とゾロアークの寝床になっていた。
いつだって人の住んでいないアパートなどに忍び込めれば最高だけれど、そうでない時は屋上の物陰とかが寝床になっていた。
ただ、暑い夏は悪い事ばかりじゃない。落ちているお金を拾い集めたり、時々人の手伝いをしたりして手に入れるアイスとかはとても美味しいし、体を洗うのだって夏の間は全く苦じゃない。
そんな夏も過ぎて久しく、段々と寒さが身に染みるようになっている。
俺の毛もゾロアークの毛もすっかりふさふさに生え変わった。
*****
久々に身を寄り添って寝た朝の目覚めは、ルカリオが俺の髪の毛を抱いてしゃぶっている所から始まった。
「……」
これをカメラで押さえたら売れそうだなとか思いながら引っ張った。
ぐいっ、とバランスを崩したルカリオは無様に倒れる。それからのっそりと起き上がったルカリオは寝ぼけ眼な目で口元に垂れていた涎に砂をくっつけていた。
全く。
髪を爪で梳き直していると、涎を拭ったルカリオがのっそりと外に出る。
俺も髪の毛を程々に整え終えると、その公園の遊具の中から出て背筋を伸ばした。
ドーム状の遊具の中は入り口を何かで塞いでしまえば、冬になっても中々に寝心地が良い。枯れ葉などを敷き詰めてしまえばそれはもう最高だ。
ただ、毎日のように子供達が遊びに来て荒らすし、毎日のように籠っていたら人間達が出て行けと色々手を出し始めるし、長居するには向いてない。
ルカリオが木の上から木の実を投げて来る。手に取ると俺の好きなイアの実だった。紐が付いていて、吊るして干していたもののようだ。
ここらじゃ手に入らない木の実だし、手に入れた後にこっそりとこの公園の木を使って干していたんだろう。
どうやらルカリオなりの謝罪のようだ。齧ると、生で食べるのとは全く違う食感と濃い酸味が口の中に広がる。眠気が一気に吹き飛んで、思わずもう一口。
ルカリオにも一口位残した方が良いかと思っていたが、もう一つ投げて来たナナシの実も干されていた。この分だと結構な量を干していそうだ。
いつの間に。何か人間の手伝いをする代わりに結構な量でも貰ったのか。
ただ。一度風が吹けば、木から枯れ葉が一気に零れ落ちていく。それと共にルカリオの姿も多少露になり、ルカリオが干していた木の実も揺れているのも見えた。
もう食べないと、保存するも何も、誰かに取られてしまう。
降りて来たルカリオの手には、今丁度熟れている木の実が幾つかと、それと同じ量の干した木の実が手にあった。
まあ、とても十分な朝飯である。
熟したヒメリの実、うん、とても美味い。
*****
朝飯を食い終えれば、街の中をぶらぶらと歩く。
一筋の風が吹き、体に少し染みる。この早朝、すれ違う人々は基本的に厚着になりつつあった。寒がりな人間は帽子や手袋も身に着けていて、逆にランニングをしている人間はこんな時期でも毛皮が全くない手足を丸出しにしている。
夏にはほぼ毎日のように俺達を自らの手持ちにしようとして来る子供達も居たが、ガッコウとやらが始まるに連れて朝早くから迫って来る事は無くなった。
そんな、大した警戒もしなくて良い、ゆっくりとした朝。
そして今日はおやつまである。先日俺だけで人間の手伝いをした時に貰った木の実を干したら、良い具合になっていた。虫に食われてもいなかったし、腐る事もなかったし、とても良く出来ていた事にちょっと俺自身も驚いた。
ゾロアークも食べたら目を見張っていたし、そしてまだまだある。
干していた木の葉っぱが一気に吹き飛ばされつつあるから、もう全部食べるか隠し場所を見つけなきゃマズいんだが。
まあ、それは急ぐ事でもない。
指に紐を引っ掛けて、クルクルとその持ってきた干し果物を回す。ゾロアークに渡した干し果物もクルクルと回されている。
くるくるクルクル。
……まあ、今は腹空いてないしな。
ただ飽きても、しまう場所なんて無いんだが。何か手伝いでも見つかったら適当に隠しておこうか。
人間から手伝いを頼まれればそれをやって金やら飯やらにありつける。
ゾロアークと共に動いていなかった頃は手伝いに対しての報酬が割に合わない事も多かったんだが、損得勘定とかも良く分からなかったし、かと言って上手い交渉の仕方も分からなかったしで、ひもじい思いをする事も多かった。
多分、ゾロアークが居なかったらもう俺は人間と共に暮らすか、この街を去るかしていただろうな。
ゾロアークは人の言葉もちゃんと細かく分かるし、文字も読めるし。俺はまだ文字も読めない。正直に言うならば、波導で感情は分かるからそれで良いやと思ってしまっている驕りだ。
でもまあ、俺は本当に困らないと文字とか読めるようになろうとは思わないだろうな。
多分、ゾロアークは本当に困ったから文字を読めるようにもなったんだろうとも。
*****
暫く歩いて居ると、ルカリオが足を止めた。
その波導を見る目とやらは本当に便利だ。困っている人間とかをすぐに見つけられるし、そして嘘を吐いているか、やましい事がないかとかそんな事が簡単に分かる。
枯草がざあざあと言う程に振り落ちる道路の先には、老人が辟易とした顔をしながら箒に顎を乗せていた。
良くここらの道路を綺麗にしている老人だが、俺達が手伝いやらをした事は無い。
そんな様子にルカリオがさっくりと近付いて行った。
何だろうな、あの距離の詰め方。まるで親しい仲のような。
あいつがルカリオという種族だから出来る事であって、俺じゃ出来ないよなあ。そういう所は少しだけ嫉妬する。
俺も続いて歩いて行くと、話してくる声が聞こえて来た。
「あんたら、焼き芋は知ってるか? この時期のある種の芋はな、焼くと下手な菓子より甘くてな。
枯れ葉を集めて焼くのはかなりの楽しみなんじゃ」
焼き芋ねえ。美味いけどさ、そもそも芋って安いんだよな。
この量の枯れ葉搔き集めて一食分とかじゃ割に合わないぞ。
「もう歳かな、この量の枯れ葉を集めるのにもうんざりしてもうてな……。この落葉が落ち着くまで、毎日やってくれれば、満腹は約束しよう」
毎日焼き芋、かあ……。一日ならともかくなあ。
と思うが、ルカリオは食べた事が無いようで好奇心満々だ。
そんな様子を見れば、まあ良いか、と思える。少なくとも、腹が減る事は無いし。
顔を見合わせて頷くと、早速塵取りと箒を渡された。
乾いた風が吹く。つむじ風になってふわりと巻き上がる。天然のグラスミキサー。
塵取り、何回一杯になるんだろうか。
十回を超えてから、回数を数えるのはやめた。満杯になっていくゴミ袋の数もすぐに増えて行く。ただ、最初は箒を使わなくてもすぐに塵取りで数回掬うだけで一杯になったのが、流石に箒を使わないと集められない位にまでは減って来た。
けれどすぐに一杯になるのには変わらないし、そもそもこの手と爪で箒と塵取りを使うのも、ちょっと難しいところがあったり。
ただ、こうして人通りの多い場所でこういう手伝いをするのは良い事ずくめだったりする。人間にそういう仕事をやっている所を見られるし、それは俺達が人間に寄生するだけの存在ではなく、共生していこうという意志を持つ存在であるという事を示せるという事で。
特に、俺みたいな騙したりする事が得意な種族にとってはそういうアピールは必要不可欠だ。真面目ですよ、悪タイプだけど悪じゃありませんよ、騙したりしませんよ、と。
そもそも何だよ悪って。俺達生まれた時から悪者かっての。名付けたオーキドとか言うクソ研究者は悪タイプ全員から袋叩きにされても文句は言えないと思う。俺も袋叩きにして良いのなら、体に一生残らない爪痕を三、四本は残したい。
まあ、もうこの街では俺ももう馴染めている訳だが。
その手助けになったルカリオにはとても感謝している。多少気が抜けていて、そして余り人間の負の面を実際にはそんな強く受けて来なかったであろう幸せ者で、けれどだからこそか、人間の心の隙間にひょいひょい入り込める。
そういや、ルカリオと組んでから本当に腹が減って仕方がなくて、ゴミ箱とかを漁った事も無くなったなあ。
最後に漁ったの、いつだったっけな。
*****
沢山の、とても沢山の枯れ葉。
ゴミ袋十個分にもなる頃には流石にこの手伝いを毎日約束した事を後悔し始める。街路樹の枯れかけている黄色い葉っぱは、見る分には綺麗だけど、掃除するとなるともうゾロアークに火炎放射で木ごと焼き払ってしまえとお願いしたくなる。
まったくもう。
芋は最初生で食べたら、木の実を食べている方がよっぽどマシだと思える味だった。人間は焼いたり茹でたりして食べていると知ったのは結構後。
揚げた芋を食べた時は美味しさに驚いたなあ。口がどうしようもなくアレを欲する時が偶に来て、そういう時は人間に捕まっても良いと思ったりする。
焼いた芋は美味しいと聞くけれど、あの揚げた芋以上なんだろうか。
それ次第では明日以降も喜んでやるかもしれないし、逆に逃げるかもしれない。
掃いて、掃いて。塵取りが一杯になったらゴミ袋に入れる。ゴミ袋が一杯になったら口を縛って纏めておく。
ただそれだけの、簡単な手伝い。整った服装をした人間が画面と睨めっこしてタカタカするような事じゃない。アレ、何してるのか、俺の頭じゃ幾ら考えても分からないんだけどな。ゾロアークは知ってたりするんだろうか。あのボタンをタカタカして何か意味のある事を出来たりするんだろうか。
そして、また風が吹く。冷たい、寂しい風。そして新しく枯れ葉を無限に運んでくる嫌ったらしい風。
もう日は完全に昇って暖かくなってきたけど、枯れ葉は無限に運ばれてくる。いつまで掃いていればその焼き芋を食べられるんだろう。老人は
箒を置いて、ちょっと休憩。流石に少し飽きた。干し果物ももう少し食べてしまおうか。
爺さん、どこかに行ったきり戻って来ないし……あ、戻って来た。段ボール箱を抱えてる。中を覗けば、赤紫色の横長な芋がたっぷりと。
いつも食べる芋とは違う芋だ。
その爺さんはたっぷりの満杯なゴミ袋を見ると、
「うむ。今日はこれくらいで十分だろう」
そう言って、爺さんは段ボールを降ろすと腰から一つだけのモンスターボールを投げた。
中から出て来たのは四つ足の草ポケモン。首元の周りにつぼみがいくつも生えていて、ツンとした良い匂いがする。
「リーフちゃん、ゴミ袋運ぶの手伝ってくれ」
そのリーフちゃんは一鳴きすると、首元のつぼみから蔦を幾つも伸ばしてゴミ袋を一気に五つも持ち上げた。
結構力持ちだな……。
「それじゃあ、公園に行こうか。残りは頼むよ」
残りのゴミ袋は八つ。四つずつ。
俺がゴミ袋を抱いたら破れてしまうなあ。片手に二つずつ持てるかな。満杯でも一つは意外と軽いから何とかなるか。
公園にまで着くと、物を燃やしても良いような場所まで行って、バケツに水を汲まされる。
「風が強いからな。飛び散ったら大変だ」
そう言って、いつの間にか爺さんが集めていた枯れ枝とかも合わせて、なるべく枯れ葉が吹き飛びにくいように組んでいく。
枯れ葉もある程度ゴミ袋から吐いたところで、最後に新聞紙とアルミホイルを渡された。
なんだこれ?
「この紙を濡らしてこうして芋に巻き付けて、それからアルミホイルで包むんだ。
これで芋自体は燃えずに、蒸し焼きになる」
なるほど。
一つ一つ巻いていく。新聞紙を濡らして、芋に巻き付ける。その後アルミホイルをきっちりと巻く。
それらを全て枯れ葉と枯れ枝の山に入れていく。
リーフちゃんも蔦を使って丁寧に……俺よりよっぽど早い。ゾロアークも何か手馴れてるし、爺さんは言わずもがな。……え? 俺が一番遅いじゃん。ダントツに。
焦ってると、爺さんに言われた。
「雑にやると炭を食べる事になるぞ」
……何で俺が逆に心を見透かされてるんだか。
そして、最後にゾロアークがふっ、と炎を吐いて、枯れ木と一生懸命に集めた枯れ草はぱちぱちと燃え始めた。
*****
若干水分を含んでいるからか、煙も結構立ち上る。
炎が苦手なルカリオは若干距離を取って、そんな火をぼーっと眺めていた。リーフちゃんとやらも離れて、けれど老人は芋に火が通るように時々枝を使って枯れ枝や枯れ草を調整している。
風が吹いて、思わず咳をすれば、
「離れてていいぞ。十分助かったからな」
と言われた。
まあ、それなら。言葉に甘えて俺も火から離れた。
ふう、と一息吐けば、慣れない事を延々とし続けたからか、意外と疲れている事に気付いた。
ルカリオの方を見れば、ぼーっとしたままでぶっちゃけ良く分からない。ただ、俺より疲れてはいなさそうかな、とは思う。
格闘センスも俺の方が上だとは思うが、こいつは体力がかなりある。
瞬発力は俺の方が上だが、持久力で言うなら俺は簡単に負ける。何か物を巡ったりで手合わせをした事もあるが、俺がバテる前にルカリオを崩せれば勝ち、そうじゃなかったら俺の勝ち、と言ったところだ。
最初の方は俺が騙したりとかで勝率は良かったんだが、この頃は慣れられてちょっと負け気味なんだよな……。
「よっこらせ」
そう老人が立ち上がると、ゴミ袋を一つ掴んで枯れ葉をドサっと落とす。
炎が一気に老人の目の前で燃え上がり、俺とルカリオは少しビクッとなるが、老人は特に怯える様子も無く。
もう何年もこういう事をしているんだろうな、と思えた。
枯れ葉はどんどん燃えて行って、集めたそれはどんどん燃えて塵になっていく。
ゴミ袋は一つ、一つと気付けばもう二つだけになっていて、そして老人はとうとう枯れ葉の中から芋を取り出した。
「軍手でもありゃあ、すぐに手づかみで食えるんだが。まあ、そこは暫く待ってくれ」
そう言って、俺とルカリオの前に一つずつ転がされた。続いてリーフちゃんの前にも一つ。
アルミの中から香ばしい匂いが漂って来る。ルカリオはそれから目を離さない。時々待ちきれないように手を伸ばして、アチッと手を戻す。
そんな中、俺が爪先でぺりぺりと剥がしているとジト目で見られた。
……どうせ熱くて食えねえよ。
新聞紙も剥がして、そして中からは皮が半分焼け焦げた芋が出て来る。見た目は余り良く無いが、割ってしまえばそこは黄金色と言って良いような、今すぐにでも齧りつきたくなる中身が出て来る。
冷たい風が何度か吹く。それでも中まで完全に熱された芋は中々に冷めず、ルカリオが焦れに焦れて芋を水に漬けようかともする位にはそわそわする。
寒い日に熱いものを食べる喜びを知ってはいるからか、流石にそんな愚行まではやらないだろうけれど。
枯れ葉のゴミ袋はもう残り一つになり、芋は俺達の前に三つ、四つと転がっていく。リーフちゃんとやらものんびり、ただ待っている。
けれども、アルミを剥がしていた分だけ、俺の芋は先に手に取れる位には冷めてくれた。
手に取って半分に折る。
中からは黄金色の、甘い香りのする湯気をたっぷりと噴き上げる中身。
半ば恨めし気な目で見て来たルカリオに、その半分を分けてやった。
一気に目を輝かせて受け取ると案の定すぐにそれに齧りついて、口の中が一気に大変な事になる。
「ハフッ、ハフッ!? ウッ、ウフッ、ハーッ、ハーッ!」
「クククッ」
やると思ったよ、本当に。声が出る位に笑いが出た。
さて、俺はフーッと吹いて適度に冷ましてから食べますか。
フーッ、フーッ。
そして恐る恐る一口。……うん、とても甘い。下手な木の実よりよっぽど甘くて、そしてずっしりとしている。
この三、四本だけで夜まで何も食わなくても全く大丈夫だろうな。
ルカリオも何とか口を飲み込むと、また俺を少しジト目で見てから、今度はちゃんと冷ましてから食べ始めた。
久々に食ったが、やはり美味い。ただ……これを毎日はキツいなあ。
*****
こういう時に限ってチーゴやらラムやら持ってないのどうしてだ本当に。
美味いよ、本当に。けれどさ、舌を火傷しなかったらもっと美味かったと思うよ俺は。ねえゾロアーク? 俺がこうなる事まで見越して芋分けたんでしょ。本当にもう、俺はいっつも弄ばれる。
引っ掛かる俺も俺だけどさあ。ゾロアークが賢いんじゃなくって俺がバカなのか? そうだとしてもあんまり認めたくはない。
舌がチリチリする。二つ目もまだ熱いしさ。あー、水でも一回飲むか。
水を飲んで、焼き芋を四つも食べればもう腹は一杯だ。みっちりと中身の詰まった芋だったからか、お腹にずっしりと溜まっている。
いつも食べる芋とは全く違う、赤くて甘い芋。揚げた芋と同じ位に美味しかったけど、でもこれを毎日はちょっと飽きるかなあ。
揚げた芋はどうしてだろう、あれは毎日とまでは言わないかもしれないけど……うん、ほぼ毎日食べても良いかもしれない。
まあ、毎日手伝いには行かないかな。
そう
「実はな、この焼き芋は色々な食べ方があってな。
例えばバターって分かるか? モーモーミルクから作った脂なんだがな、それを焼き芋に塗って食べるともう倍は美味いね。他にも塩だったり、逆に冷たいアイスだったりな。食べ方は色々あるんじゃ」
俺はゾロアークと目を合わせた。
色々誘惑して毎日手伝わせるつもりだ、この爺さん。
ただ、その誘惑は中々に強い。特にこれに冷たいアイスを乗せた日なんて、きっと寝る時まで幸せが続くだろう。
毎日、毎日かぁ……。
そう思っていると、爺さんが仕方ない、と言うようによっこらせと立ち上がって、最後の芋を俺達の前に転がした。
「これからバターを持ってくるからな。それは食べずに待っているんだぞ」
そこまでするのか……。
まあ、待つけどさ。
爺さんが歩いて行くそのポケットにはゴミ袋がはみ出している。見れば十個の満杯だった枯れ葉はもう全て燃えカスになっていた。
搔き集めた時間の半分の半分以下の時間で燃え尽きてしまった。
……儚いなあ。
そして、バターをつけた芋は本当に美味しかった。
ゾロアークもがつがつと食べる程に美味しくて。
けれど、毎日これだけ食べてると、流石に太りそうだなとも。人間みたいに服である程度体型を誤魔化せる訳でもないし、ぽっこりしたお腹を見せびらかして歩くのは流石にみっともない。
まあ、これから冬だし、多少太ったところでお腹がいきなりぽっこりする訳でもないだろうし。それに痩せてる方が問題だし。
うん、大丈夫だろう、きっと。きっと。
そう思ってもう一つの芋を食べ終えたところで、爺さんが同じく満腹になって欠伸をしたリーフちゃんをボールに戻してから聞いて来る。
「明日も手伝ってくれるな?」
……何かさっきよりも口調が強いんだけど。
でも、まあ。
俺とゾロアークは顔を見合わせてから頷いた。
「よし。じゃあ、明日から頼むよ」
爺さんが去ってから、ゾロアークが背伸びをする。俺も欠伸をして、何だか一気に眠くなってくる。
昼過ぎで太陽は高く登っている。日当たりの良い屋根にでも登れば、とても良い眠りが訪れてくれる事は間違いない。
干し果物もまだまだ残っている事だし、幸せってこういう事を言うんだろうな、とまで思える。
「ウゥ?」
寝る?
「グゥ」
そうだな。
じゃあ、と一緒に歩き始める。
時系列としては、
焼き芋 => 夏の終わりに => 新入り => チキン・デビル
チキン・デビル見て貰えれば分かると思うけれど、まあ、はい。
この街は滅ぶ事が確定しております。
ネクスト
-
フライドポテト
-
カレー
-
クリームシチュー
-
ポフレ
-
SUSHI