「えっぐ…」
「おい…いい加減泣き止めよ、男だろ」
「うん…」
「落ち着いたか?」
「うん…」
カイザーの襲来から何とか落ち着いた翼だった。ちなみにカイザーは明日香に引きずられて自身の部屋に連れて行かれた。
「全く、心配したんだぜ」
「ごめん…」
翼は十代の言葉で自身が何日も目が覚めなかったことに気づいた。
「それで、僕って何日寝てたの?」
「何日って、ほら…」
十代は保健室にある日めくりカレンダーを指差した。
「えっ⁉︎そんなに」
あまりに日数が経っていたため翼は身を乗り出して驚いた。
『闇の
「うわっ、闇の
十代が今さらながら闇の
『今更感半端ないけどね…』
「…?どういうこと?」
「あー、セブンスターズとの戦いな、殆ど終わったんだ」
「え、えええええええええええええええええええええっ⁉︎」
十代が衝撃の真実を翼に伝えた。
『セブンスターズはあと一人だけだ。あれだけ寝てたんだから当たり前だ』
「それで、みんな大丈夫だったの?」
すると十代は笑いながら親指を立てて答えた。
「勿論!クロノス先生が人形になったり三沢がタバスコ飲むようになったりしたけど皆無事だ!」
「何それ!?本当に皆無事なんだろうね!?」
「ああ!」
「物凄く心配だ…」
十代の言い方から解決はしているみたいだが結構ヤバいことが起きたことに翼は本当に皆が無事なのか心配になってきた。
『ずっと眠ってた君が言えることじゃないんだけどなぁ…』
ヴェーラーは心配になっている翼に呆れた。
すると保健室のドアが開いた。ドアの先には翔、隼人、万丈目、三沢、明日香、大徳寺先生と、人形になっていたと聞かされたクロノス教諭がいた。
「風龍さん!目が覚めたんスね!」
「良かったんだな」
「ふん、寝すぎだ」
「しかしなぜここまで眠っていたのだろうか…」
「そうだな」
「全く起きないからてっきりもう目覚めないかと思ったニャ~」
「心配したノーネ」
「…」
クロノス教諭が翼に近づくと翼は思わずクロノス教諭が人形じゃないことを確かめるため体を触りはじめた。
「な、何をするノーネ!?」
「良かった…人形じゃない」
「いきなりなんですノーネ!?まぁシニョーラ風龍が無事でよかったノーネ」
「で、みんな集まったんだ。翼、色々と説明してもらうぞ」
「…何を?」
翼はそんな約束したっけと首を傾げた。
「お前の後ろにいる精霊二人のこととか、なんで闇の
「えっと…」
なんて説明すればいいのか困惑する翼だった。
『翼、私たちが
「え、分かったミスティル…」
ミスティルの助言通り翼は
「うおっ、いきなりどうした」
三沢は翼の意味不明な行動に疑問を持った、が直ぐにその疑問ははじけ飛ぶ。
『ふむ、これで全員に見えるようになったな』
『便利だよねこれ』
「し、喋った!?」
「馬鹿な!?ソリットヴィジョンが喋るなんてありえない!」
三沢たちはいきなりソリットビジョンが喋ったことに驚きを隠せなかった。だが十代や万丈目といった精霊にあったことのある面々は特に驚く様子はなかった。
「何をいまさら、闇の
「俺にもウザいのがいるがな」
『え~、そんなこと言わないで下さいよアニキ~』
万丈目は自身の横に浮いているおジャマ兄弟を嫌そうに指差した。
「五月蠅い!!」
万丈目が一喝したがおジャマ達は喋るのを止めなかった。
『さて、色々と説明する前に言っておくよ、質問は話がひと段落してからすること。話の腰を折ったらはっ倒すからね。特にそこのウザい奴ら』
『は、はい!』
しかしヴェーラーが脅すとおジャマ達は一気に黙った。
「で、なんでお前らは翼に憑いてるんだ?」
『そうだね、精霊界に関わることだからあまり深く言えないけど…』
「精霊界?どういう!?」
三沢が話の腰を折ろうとするとヴェーラーのローリングソバットが三沢にヒットした。
「み、三沢!?大丈夫か三沢!?」
『話の腰を折ったらはっ倒すっていたよね?』
「ねぇ、ヴェーラーってこんな性格だったっけ?」
『お前が起きないせいで心労が溜まってたからな…』
今日のヴェーラーはどこかおかしいと感じる翼だった。
『精霊界とは文字通り精霊の住む世界の事だよ。ちなみにこの世界を僕たちは人間界と呼ぶよ』
「そんな世界があるのか…」
『で、精霊界に危機が迫ってるから翼に協力してもらってる。以上!次に翼が闇の
ヴェーラーが詳しく説明せずに話を終わらせようとすると十代が突っかかってきた。
「おいおいおいおいおいおい!もっと詳しく話せよ!全く分からないじゃないか!」
「そうナノーネ!胡散臭いノーネ!」
「先生、今さら言っても虚しくないですか?ここ数日あんな経験したのに…」
「う、五月蠅いノーネ!」
三沢の冷静なツッコミにたじろぐクロノス教諭だった。
『ん~、どうしようかな?』
ヴェーラーは話すのを躊躇っていた。そこまで教えて何かメリットがあるのかと考えていた。
『精霊界は今未曾有の事態に陥っている。具体的には精霊が忽然と消えるという現象だ』
『ちょっとミスティル!?』
するとミスティルが詳しく話し始めた。その行動にヴェーラーは驚愕した。
『どうせ話しても影響はない。違うか?』
『…それもそうだね』
ミスティルの目の前の皆の信頼を得たいという思惑をヴェーラーは察した。
「精霊が消えるって、どういうことだ?」
『文字通りだ。そこに何もなかったかのように消えるのだ』
『勿論精霊界は大混乱。そんな事態に風の征竜、テンペストが原因の動いたんだ』
「風の征竜?ということは他に属性の征竜もいっ!?」
『話の腰を折る奴は消毒だー!』
「うおっ、危ねぇ!」
ヴェーラーが話の腰を折ろうとした十代にドロップキックを掛けたが十代は何とか躱した。
『やめろヴェーラー。確かに精霊界には風の他に炎、水、そして地の征竜がいる』
「闇と光の征竜は?」
『いないよ。まぁ、精霊界は人間界みたいに領土に線を引いたり国を決めたりしてない、かなり自由な世界だ』
『属性よりどちらかというと種族で固まって暮らしてる精霊の方が多い。だが征竜だけはそんな精霊界の中でかなり影響力をもつ竜だ』
『で、テンペストはここにいるミスティル以外の信頼する精鋭たちを連れて原因の究明をしたんだけど…』
「なんでミスティルだけ置いていかれたんだ?」
『不測の事態に備えてね、もし自分たちが失敗してもミスティルに託せるように…ね』
『結果は我が王も精鋭たちも帰ってこなかった。そして私は翼の元に来た、ということだ』
この話をしているとき、ミスティルは悔しそうな顔をしていた。ミスティルはテンペストの策は理にかなっていると思いながら、納得しながらも本音は自分もテンペストと共に戦いたかったのだ。
「ねぇ、なんでその風の征竜は翼にミスティルを託そうとしたんスか?」
翔の素朴な質問に二人は渋い顔をした。
『それは…知らん』
『…ボクも知らないよ』
「精霊の力を受け取りやすいから…かな?詳しくは知らないけど…」
「何だよ、てっきり翼にはもっと凄い力があるのかと思ったぜ」
「精霊が見えるって時点で凄いと思うッスよ兄貴…」
十代の気楽発現に突っ込みを入れる翔だった。
「それで、精霊なんてこいつらみたいにウザいだけだと思うが…何か利点はあるのか?」
『ひどいっすよ兄貴~』
「そうだ!一体どんなことになるんだ!」
万丈目はおジャマ達を指差して質問し、復活した三沢も同調した。
『翼とダークネスの
するとその
「身長が伸びる?」
「髪が伸びる…かしら?」
「綺麗になる…ッスか?」
「全体的に大きくなる?」
正直あの時のことを忘れて欲しいと切に願う翼だった。なぜならあの時男なのに胸が膨らむという衝撃的なことが起きたのだ。
『ま、それもあるね。でも本領はそこじゃないんだ』
『精霊の力を人間に与えるととんでもない力を発揮する。メカニズムはあまり分からんが…』
『ま、
「成程!じゃあハネクリボーが俺を助けて…」
十代が傍にいるハネクリボーを見て喜んだ。
『だが小さい精霊では大きな効果のあるものじゃないぞ』
「何だよ、やっぱり役立たずじゃないか」
万丈目はおジャマ達を見て悪態をついた。
『大きな効果を期待できないとは言ったけど効果がないとは言ってないよ?』
結局効果があるのないのか曖昧なんだと理解する二人だった。
「それで、なんで翼は闇の
「闇の
翼が俯きながら答えると万丈目が突っかかってきた。
「おい貴様、それは俺たちがひ弱だと言いたいのか?少なくともお前よりましだ」
「そ、そんなことないよ万丈目君…僕はただ」
「こういう時に友達に、仲間に頼らなくでどうする!」
「十代君…」
「そうよ、一人で背負うよりみんなで背負う方が楽でしょ?」
「明日香さん…」
「そうだぞ、もっと頼ってくれ!」
「三沢君…」
「そうッスよ!僕じゃあ力不足だけど頼って欲しいッス」
「丸藤君…」
「そうなんだな、俺にできることは少ないけど…」
「前田さん」
「生徒を守るのは教師の義務ナノーネ」
「クロノス先生…」
「そうだニャ、こういう時に頼ってもらわないと先生の威厳が…」
「大徳寺先生、みんな…」
みんな、翼が思うよりもずっと翼のことを友人だと、仲間だと思っていた。翼は今日、仲間に頼ることも信頼のあかしだと知った。
『仲間に…恵まれたな』
「うん!」
「それにしても良かったな翼、学園祭までに起きられて」
「学園祭…か…」
十代が学園祭と口にすると翼の脳裏に嫌な思い出がよみがえった。翼は中学時代、友人がおらず一人ぼっちだった。そのため楽しい学園祭の思い出がないのだ。むしろ出店の当番等を押し付けられて遊んだ記憶がほとんどない。
『どうしたの?』
「いや、あんまりお祭りにいい思い出が…」
「なら一緒に学園祭まわろうぜ!絶対楽しいから!」
すると十代が笑顔で誘ってきた。その笑顔は翼にとって太陽のようにまぶしかった。
「うん分かった、一緒に回ろうね!」
その光景はまさに仲良しの男女のようだった。この光景を見て明日香はミスティルに疑問を投げかけた。
「最後に一ついいかしら、えっとミスティルさんと…ヴェーラーさん」
『なんだ?』
「私、鮎川先生に聞いたんです。風龍さんって本当は男の体なんだって」
「何だと!?」
「ファッ!?」
「あ、ありえないッス!」
「ほ、本気で言っているのかなんだな!」
「な、なんですと!?」
「ほ、本当なのかニャ?」
明日香の発言に皆先程ミスティルが喋った時よりもさらに驚いた。翼はそれを涙目で見ていた。
『そうだ、というよりいつも翼が言ってるじゃないか』
『ま、初対面で分かれって方が無理な話だよ』
「何で皆間違えてるんだよ。どこからどう見ても翼は男じゃないか」
「そう、十代だけは一目で風龍さんを男と分かった。そして十代には精霊が見えてる。これには何か関係があるのかしら?」
確かに、という考えが皆の頭の中をよぎる。
『無いだろう。精霊だから翼の性別を見分けられるというわけではない。実際ヴェーラーは間違えた』
『ただ単に十代君の目が凄いってだけじゃない?』
「え…?でも…」
だがそれだと一つおかしい点があった。
「あ、レイちゃんの時は…」
それは早乙女レイという男装をしてアカデミアに来た女の子の時、十代はずっとレイのことを男と疑わなかった。
「「「「「「「「『『あ…』』」」」」」」」」
この場にいる全員は、このことを考えるのを止めた。
『これは…永遠の謎だな』
「そんな…」
『ま、いいじゃない。別に損してるわけじゃないんだし』
「僕は、男に見られたいんだよ!」