遊戯王 渓谷の戦士   作:Σ3

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「最後のセブンスターズ、大徳寺先生との戦い。後半戦だよ」

『頑張れ翼!』





第18話《VSアムナエル さよなら先生》

 

 

 

 

 

現在の状況

 

アムナエル LP1600 手札3枚

モンスター なし

魔法、罠 《エレメンタル・アブソーバー》《錬金釜-カオス・ディスティル》

 

翼 LP2500 手札1枚

モンスター 《ドラグニティ-ジャベリン》《ドラグニティ-ブラックスピア》《ドラグニティ-ミリトゥム》

魔法、罠 《DNA移植手術》(指定、神)《竜操術》

 

 

翼は《エレメンタル・アブソーバー》を回避するため、属性を神属性に変更するという驚愕の発想でアムナエルのライフを大きく削った。だが翼の表情は暗い。

 

「先生…一つだけ、聞いてもいいですか?」

 

「…いいですよ」

 

「今まで僕たちが先生と作ってきた思い出は嘘だったんですか?」

 

アムナエルは何も答えない。いや、答えられないの間違いだろう。もし本当だと言ってしまえば翼の覚悟が揺らぐ。だが偽物だと言えない。なぜならその思い出は本物で、偽物だと言えないほどにかけがえのない物だったからだ。

 

「…分かりました、僕はこれでターンエンド」

 

沈黙から答えを悟った翼は何も言わなかった。これ以上は涙が出そうになるから、これ以上は覚悟が鈍るから。

 

「私のターン、ドロー、私はカードを二枚伏せてターンエンド」

 

アムナエルはモンスターを召喚せずにターンを終了した。このままだと翼の勝利だが明らかに伏せカードが怪しい。

 

「僕のターン、ドロー!このままバトル!いけ、ミリトゥム!」

 

翼は伏せカードを気にしながら攻撃を指示した。この攻撃が通れば翼の勝ちだ。

 

「ふっ、よく見ておけ!これが私が行きついた究極錬金術!永続罠、《マクロコスモス》!自分フィールド上の《錬金釜-カオス・ディスティル》を除外して発動する!」

 

錬金釜が爆発しそこから発生した光に翼は目を暗まされた。

 

 

 

《マクロコスモス》

 

永続罠

自分フィールド上に存在する「錬金釜-カオス・ディスティル」を除外して発動する。

このカードの発動時に、手札・デッキから「原始太陽ヘリオス」1体を特殊召喚できる。

また、このカードがフィールド上に存在する限り、

墓地へ送られるカードは墓地へは行かずゲームから除外される。

 

 

 

「ここは、宇宙?」

 

再び翼が目を開けるとそこは宇宙だった。だが息はできる、立つこともできている。フィールド魔法の類なのだろう。

 

「今我々の決闘(デュエル)は、人間の世界を飛び越え宇宙へと転換された」

 

アムナエルはこれからライフを0にするダイレクトアタックを受けるというのに全く動じていない。言葉通り先生の切り札なのだと翼は直ぐに理解した。

 

「《マクロコスモス》の効果により手札またはデッキから《原始太陽ヘリオス》を特殊召喚できる」

 

 

 

《原始太陽ヘリオス》

 

効果モンスター

星4/光属性/炎族/攻 ?/守 ?

このカードの攻撃力・守備力は、

ゲームから除外されているモンスターの数×100ポイントになる。

 

 

 

召喚されたのは頭が太陽で女性の体をもつという異質なモンスターだった。さらに近くにあった惑星がそのモンスターに近づいていくのがさらにその不気味さを体現していた。

 

「世界の真実は一つの物質から生まれそれが様々に変化し天空を、地上を作り上げている。それゆえ全ての物はつながり互いに影響を与えあっているミクロコスモスである人間の世界とマクロコスモスである天空の世界も」

 

「人間と宇宙の繋がり…ですか」

 

翼には直ぐにアムナエルの言葉を理解できなかった。

 

「フッフッフッ、現代科学にかぶれた君では到底理解できまい。だが錬金術は不可能を可能にする奇跡の学問、これが私の最後の授業だ!」

 

「最後…ですか。でも今の僕は負けるわけにはいかない!」

 

「速攻魔法発動、《惑星直列》」

 

傍にあった惑星が直列に並んだ。そして空間にゆがみを生み始めた。

 

 

 

《惑星直列》

 

速攻魔法

自分フィールド上に「マクロコスモス」が存在する場合に発動する事ができる。

相手フィールド上に存在するモンスターを全て破壊し、

相手に300ポイントのダメージを与える。

 

 

 

「惑星直列によって生み出した重力波は相手モンスターを全て破壊し相手プレイヤーに300ポイントのダメージを与える」

 

翼のモンスターが悲鳴を上げながら全て破壊された。

 

翼LP2500⇒2200

 

「うわぁ!」

 

そして並んでいた惑星たちが元の場所へと戻った。

 

『まずいな、ここにきてモンスターが全滅か』

 

「う…僕はカードを伏せてターンエンド」

 

翼は少し気押されながらターンを終了した。

 

「私のターン、ドロー。魔法カード《黄色の過程-キトリニクス》発動。このカードは《原始太陽ヘリオス》を生贄に《ヘリオス・デュオ・メギストス》を召喚する」

 

《原始太陽ヘリオス》は光を放ち頭の太陽に一つの衛星のような小さな太陽が現れ、さらに太い身体となった。

 

 

 

《黄色の過程-キトリニクス》

 

通常魔法

自分フィールド上に存在する「原始太陽ヘリオス」を1体リリースして発動する。

デッキまたは手札から「ヘリオス・デュオ・メギストス」1体を特殊召喚する。

 

 

 

《ヘリオス・デュオ・メギストス》

 

効果モンスター

星6/光属性/炎族/攻 ?/守 ?

このカードは自分フィールド上の「原始太陽ヘリオス」1体を

生け贄に捧げる事で特殊召喚する事ができる。

このカードの攻撃力と守備力は、

ゲームから除外されているモンスターカードの数×200ポイントになる。

1ターンに一度このカードが破壊された場合、

攻撃力・守備力を300ポイントアップさせて特殊召喚される。

 

 

 

「《ヘリオス・デュオ・メギストス》は除外されたモンスターカード1枚に付き攻撃力を200ポイント上昇させる。私がゲームから除外しているカードは8枚、よって《ヘリオス・デュオ・メギストス》の攻撃力は1600!」

 

攻撃力?⇒1600

 

「『ウルカヌスの炎』!」

 

《ヘリオス・デュオ・メギストス》の全身が燃え上がり、その炎が翼へと向かった。ライフにはまだ余裕がある、だが翼はここからの追撃を予期し罠を発動した。

 

「罠発動、《ガード・ブロック》!ダメージを無効化して僕はカードを一枚ドローします!」

 

炎は翼に当たる直前で分散した。そしてドローしたカードを見た翼の脳内はこの決闘(デュエル)の結末のシナリオが出来始めた。

 

 

 

《ガード・ブロック》

 

通常罠

相手ターンの戦闘ダメージ計算時に発動する事ができる。

その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、

自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 

 

 

「防いだか、私はこれでターンを終了する」

 

アムナエルが何もカードを伏せなかったことから翼は一つの読みを確信へと変えた。翼の手札にはアムナエルを完璧に封じる策が出来ようとしている。あとはドローにす全てを賭けるのみ。

 

「僕のターンドロー!…来た、カードを二枚伏せてターンエンド!」

 

『ちょ、これヤバいよミスティル!』

 

翼は先程のアムナエルと同じように何も召喚せずにターンを終了、それを見たヴェーラーは焦りを見せ始めた。なぜならドラグニティは墓地のドラグニティモンスターに依存する傾向にある。《マクロコスモス》の効果によりモンスターは除外される為このままずるずると相手のペースに乗ってしまうと反撃の機会すらなくなり確実に負けるからだ。

 

だが焦るヴェーラーを余所にミスティルは落ち着いていた。自信満々に伏せたカードはブラフではない、この決闘(デュエル)の行方を左右するカードだと確信していた。それはアムナエルも同じだった。だが先延ばしにする意味はない、ここで何もせずに待つのもありだがそれでは弱気すぎる。それに翼の性格からあれは攻撃してきたときに発動するカードでもう1枚はこちらがそれを無効化してきた時の保険だと読んだ。なら使わせないと

 

「《ヘリオス・デュオ・メギストス》の攻撃!『ウルカヌスの炎』!」

 

《ヘリオス・デュオ・メギストス》の炎が翼に襲いかかる。

 

「罠発動《ディメンション・ウォール》!」

 

翼の目の前が歪み炎はそこに吸い込まれアムナエルの背後に吐き出された。

 

 

 

《ディメンション・ウォール》

 

通常罠

相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。

この戦闘によって自分が受ける戦闘ダメージは、

かわりに相手が受ける。

 

 

 

「ふっ、速攻魔法、《グランドクロス》!」

 

読み通りと笑ったアムナエルが発動した魔法カードにより惑星が十文字に並び、また重力波を発生させた。

 

 

 

《グランドクロス》

 

速攻魔法

自分フィールド上に「マクロコスモス」が存在する時に発動する事ができる。

相手ライフに300ポイントダメージを与え、

フィールド上のモンスターを全て破壊する。

 

 

 

「グランドクロスの重力波はフィールドのモンスター全てを破壊し、相手に300ポイントのダメージを与える」

 

『自分のモンスターを破壊して攻撃を回避した!?』

 

《ヘリオス・デュオ・メギストス》は砕け散り、翼はその衝撃にさらされた。

 

「うっ…」

 

翼LP2200⇒1900

 

「そして《ヘリオス・デュオ・メギストス》は…」

 

「攻撃力を上げて復活する、ですか」

 

「!?」

 

アムナエルの説明しようとした言葉を翼が先に言った。効果は見せてない、それなのに当ててきた。《ヘリオス・デュオ・メギストス》はその通りに復活した。

 

《ヘリオス・デュオ・メギストス》攻撃力1600⇒1900

 

『…何だ?』

 

『これは…』

 

翼が今までに見せたことのない不自然な言動にミスティルとヴェーラーは驚きを隠せなかった。

 

「先生は錬金術は破壊と再生と言ってました。だからそのモンスターは絶対にそれを象徴する効果だと思ってました。カウンター罠発動、《昇天の黒角笛(ブラックホーン)》!《ヘリオス・デュオ・メギストス》の特殊召喚は無効です!」

 

 

 

《昇天の黒角笛(ブラックホーン)

 

カウンター罠

相手モンスター1体の特殊召喚を無効にし破壊する。

 

 

 

現れた羽の生えた黒い角笛から発生する歪な低音により《ヘリオス・デュオ・メギストス》は砕け散り、復活しなかった。

 

「何!?」

 

「…先生のモンスターに通常召喚できるモンスターはいない。おそらく先生のデッキには《錬金釜-カオス・ディスティル》を必要とする錬金獣とガルーダのようなモンスターを除外して召喚するモンスター、そしてヘリオスだけと読みました。そして今の手札にはそれらをサポートする魔法しかない。違いますか?」

 

アムナエルは残る二枚のカードは先程ドローした《錬金釜-カオス・ディスティル》を必要とする《白の過程-アルベド》と伏せカードを警戒して出せなかった《赤色化-ルベド》だった。翼の読みは完全に当たっていた。

 

 

 

《白の過程-アルベド》

 

通常魔法

フィールド上に「錬金釜-カオス・ディスティル」が存在する場合に発動する事ができる。

自分のデッキまたは手札から「黄金のホムンクルス」1体を特殊召喚する。

 

 

 

《赤色化-ルベド》

 

通常魔法

自分フィールド上に存在する「ヘリオス・デュオ・メギストス」を1体リリースして発動する。

デッキまたは手札から「ヘリオス・トリス・メギストス」1体を特殊召喚する。

 

 

 

「フフフ…全くその通りだ。でも君の手札のカードも前のターン召喚しなかったことから通常召喚できるモンスターではないのは確かだ。次のターン君がモンスターを…」

 

「引かなくても大丈夫です。僕のターン、装備魔法《(ディファレント)(ディメンション)(リバイバル)》を発動します。手札を一枚捨て墓地から《ドラグニティ-ミリトゥム》を復活させ装備させます」

 

翼は淡々とカードを発動させ、翼のフィールド上に発生した次元が歪みからミリトゥムが現れた。

 

 

 

(ディファレント)(ディメンション)(リバイバル)

 

装備魔法

手札を1枚捨て、ゲームから除外されている自分のモンスター1体を選択して発動できる。

選択したモンスターを表側攻撃表示で特殊召喚し、このカードを装備する。

このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊する。

 

 

 

「…私のデッキのカードをあそこまで読み切り、さらに止めまで抜かりがない、完璧な戦法だ。私の完敗だよ」

 

どんな手を使おうとも勝負が決まっていた。アムナエルは覚悟が決まればここまで違うものなのかと感心せざるを得なかった。

 

「…行きます、《ドラグニティ-ミリトゥム》で大徳寺先生にダイレクトアタック!」

 

ミリトゥムがアムナエルを切り付け、勝負が決まった。

 

アムナエルLP1600⇒0

 

「大徳寺先生!!」

 

攻撃を受け膝をついたアムナエルに翼は急いで駆け寄った。

 

「見事、としか言えない素晴らしい戦い方だったニャ…」

 

「ハハハ…このデッキには高攻撃力モンスターが少ないし融合もないから入れざるを得なかったんです」

 

『…翼って実は性格悪い?』

 

『いや、慎重なだけだ。しかしだからこそあらゆるパターンを計算してそれをデッキに取り入れ、苦戦必至の相手にも策が取れたのだ』

 

元の大徳寺先生だと安心したのもつかの間、先生の体が砕け始めた。

 

「え…先生の体が…」

 

「もう、限界みたいだニャ…」

 

「そんな、どうして!?これは闇の決闘(デュエル)じゃなかったのに!」

 

「言ったはずニャ、この身体は借り物でもうすぐ寿命を迎えると」

 

「そんな…僕は…」

 

泣きそうになる翼の頭を大徳寺先生は震えながら撫でた。

 

「風龍さんのせいじゃないニャ。これは私が望んでしたことニャ」

 

もう大徳寺先生の体は崩壊寸前だった。翼は涙をこらえるので精いっぱいだった。

 

「風龍さん、セブンスターズを裏で操っていた人間を、三幻魔の復活を止められるのは君たちしかいない。精霊と心を通わせられる十代君と君しか…」

 

「大徳寺先生…」

 

「頼んだ、ニャ…」

 

大徳寺先生は最後の言葉を翼に伝え、身体は砂になり死んだ。

 

「先生…ありがとうございました」

 

翼は立ち上がり元になった大徳寺先生だった砂に深く頭を下げた。

 

『翼…』

 

「大丈夫だよヴェーラー、大丈夫だから…」

 

ヴェーラが声をかけると翼は泣いていた。肩を震わせ、拳を握り、歯を食いしばって、嗚咽を吐かないように泣いていた。

 

『いや、そうじゃない翼。アムナ、大徳寺は…』

 

「…大徳寺先生は最後のセブンスターズにやられたってことにする。それなら皆納得する」

 

『…ああ、そうだな』

 

「帰ろう、二人とも…」

 

翼は涙を拭いてレッド寮に足を向けた。

 

その悲しい後ろ姿を見守るミスティルとヴェーラーの隣にはなんと、大徳寺先生がいた。なぜかは分からないが精霊化していたのだ。

 

『…どうする?』

 

『もう少し落ち着いた頃に私から話すニャ』

 

物凄く気まずそうに話すミスティルと大徳寺先生だった。

 

『それが一番だよね、今翼の目の前に現れたら色々とまずいと思う』

 

 

 

 

 







「今日の最強カードは《マクロコスモス》だニャ。墓地に送られるカードをすべて除外し《原始太陽ヘリオス》を特殊召喚できるようにするカードだニャ」

「ドラグニティみたいに墓地を利用したりするデッキには天敵といってもいいね」

『もし翼がデッキをいじってなかったら確実に勝てなかったねこれ…』

『主人公の勝ち方ではなかったがな』

「ひどい!」


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