「…前回は…色々とあって僕が女の子に間違われることになりました…」
『大半は貴様のせいだ』
翼は部屋の隅で落ち込んでいた。それもそうだ、自分の行動が原因なのだがオシリスレッドの生徒から女の子と誤解されることになったのだから。
『貴様、いつまで落ち込んでいるのだ。今日から授業が始まるのだぞ』
「…もう僕外出たくない。今日は休みたい」
翼は体育座りのまま顔を俯かせていた。それもそうだろう、初めて自分を女の子だと勘違いしなかった遊城十代の目の前であんなことになったのだから。
『貴様があそこで叫びさえしなければこんなことにはならなかったのだ』
「でもお父さんとお母さん以外に裸を見られたのは初めてだから、つい…」
恥ずかしさで赤面する姿はまさに初心な女の子だった。こういうところを直さない限り翼は一生女と間違われ続けることになるだろうとミスティルは呆れた。
『とにかく貴様には我が王を救出できるまで頑張ってもらわなくてはならん。さっさと支度をしろ』
「分かった…」
ミスティルはまるで引き籠りを無理矢理学校に行かせるような気分になった。取り敢えずデュエルアカデミアに行かせることには成功した。
だがデュエルアカデミアは無意識に翼の心を打ち砕こうとする。
「ではフィールド魔法の説明を、シニョーラ風龍にお願いシマース」
まずクロノス教諭の授業で早速クロノス教諭に女の子と思われていた。本来男にはシニョールと呼ぶべきなのだがクロノス教諭は翼をシニョーラと呼んだ。
「僕は男なんですが…えっとフィールド魔法はフィールドに一枚しか存在できない魔法です。フィールド魔法の多くはお互いに効果を及ぼすものですから自分だけではなく相手にも好影響を与える場合があるため使用には少し注意が必要です」
だがこういった勘違いには慣れているのか翼は自分を男と主張してさらに与えられた質問をあっさりと答えた。
「ふむよろしいデース」
「良かった、ちゃんと言えた」
翼は小さくガッツポーズをした。フィールド魔法は入学試験の実技試験で使ったため何とか覚えていた。そして翼の近くで授業を見ていたミスティルは少し疑問を感じた。
『なぜデュエルで基本的なことをなぜ教えているんだ?』
「基本は大切だからだよミスティル」
が、それを翼は小声でだれにも気づかれないように答えてあげた。
この授業の他にも普通の高校生がやるべき国語、数学といった普通の授業も行われた。翼は普通の科目ならとびきり優秀なため簡単にこなせた。だが次にある授業は翼にとって最も苦手なものだった。
『次は体育とやらだ』
体育、それが翼が一番嫌いな科目である。だから翼が体操服に着替えるために男子更衣室へ向かう道を歩く足取りはかなり重たかった。
「やだなぁ、体育は苦手なんだよ」
『身体を動かすだけではないか』
「運動オンチなんだよ僕は…」
ようやく着いた男子更衣室には誰一人としていなかった。
『誰一人いないな』
「さっき僕が来るのを想定して皆が早く着替えて出ていくのが見えた…はぁ」
翼がそう言ったのを聞いて辺りを見渡すと更衣室には慌てて出たからできたと思われるロッカーにいれるはずの靴が置かれていたり、制服がロッカーから少しはみ出していている所がいたるところにあった。流石に被害妄想が過ぎるとミステュルは呆れた。
『全く貴様は…なんだこれは?』
そこでミスティルは翼のロッカーの近くに手紙が落ちてあるのが見えた。翼もそれに気づきその手紙を手に取った。
「これ、ラブレターかな?」
見た感じ、そうとしか思えなかった。だが無造作に床に落ちているのは不自然だった。翼もミスティルも同じ考えだった。
『なぜ地面に放置されているのだ?』
「わからないけど…ちょっと読んでみようか」
翼は少し申し訳ないと思いながらその手紙を開け、読んでみた。その手紙の文字はお世辞にも綺麗とは呼べず女の子が書いた文字とは思えなかった。内容は今日の深夜、女子寮の裏で待っているとのことで名前は天上院明日香と書かれていた。
「う~ん、明日香さんって確かさっき授業で魔法カードの説明をしてた人だよね。こんなに汚い字を書くようには見えなかったけど…」
『翼』
「なに?」
その時のミスティルは真剣でピリピリとした緊張感を漂わせていた。
『これは私たちを狙いに来た刺客が私たちをおびき寄せるために書いた物かもしれん』
「な、なんだって!?」
流石に驚いた。何故なら入学して早々こんなにも早く刺客が来ていると言われたのだから。
『分からないがこの手紙を書いた者がその明日香という
「確かにその通りだけど…」
低能な精霊が罠を仕掛けるのかなと翼は考えたがとにかく精霊の事はあまりわかっていないのでミスティルの言う事を信じてみることにした。
『この手紙には深夜に女子寮の裏にボートで来いと書かれているがこの場所に罠があるのは明確だな』
「そうだね、じゃあこれは無視して…」
翼は続けてやり過ごそうと言おうとしたがミスティルは逆の提案をした。
『いや、逆に誘い込まれてやろう』
「ど、どうして!?罠だって分かりきってるのに!?」
明らかに無茶だと思った。敵の刺客はどんな精霊なのか正体が全く掴めていない状態でそれは無茶だと思わざるを得なかった。
『もしかしたら我が王の手掛かりを掴めるかもしれん、早速来たチャンスを逃す気はない』
翼には明らかにミスティルは焦っているように見えた。
「でももし、もしもの話だけどこれが刺客の仕業じゃなかったらどうするの?それに僕下手したら退学になる事なんてできないよ」
そう、この手紙が罠だという確証はない。本物の可能性は少ないがあるのだ。しかも翼は簡単に女子寮に入れる勇気はない。もし女子寮に無断で入ったのがバレれば即退学なのだから。
『知っている。異性の寮に無断で侵入したら退学なのだろう?だが貴様にはアレがあるではないか』
アレという単語を切り出されると翼は真っ先に一つの物が思い浮かんだ。
「アレって…もしかしなくてもアレのこと?僕持ってきてないんだけど」
『心配するな、こんなこともあろうとこれを持ってきてある!』
ミスティルが勢いよく取り出したのは、翼が押入れの奥の奥にしまったはずのデュエルアカデミアの女子制服だった。
「…これを着て行けと?」
翼は明らかに嫌そうな感じでその制服を見ていた。
『無論だ。これを貴様が着用して女子寮に向かえば退学になるというデメリットもなくなる』
確かにその通りなのだがそれを着ているのを他の人に知られればもう女の子としか見られなくなるというデメリットが生まれてしまう。
「…条件がある」
翼は葛藤の末に見つかりさえしなければいいという結論に至った。
『なんだ?』
「これが終わったらそれを処分する、それならいいよ」
『分かった、おそらくこんなこと一回だけであろうからな』
本当にこれっきりであってほしいと翼は心の底から願った。ちなみに体育の授業は大幅に遅れて担当の鮎川先生に怒られてしまった。
そして深夜、女子の制服に着替えた翼は隠れながら誰にも見つかることなく女子寮へ向かった。
安全に誰にも見つからないように女子寮へ向かうにはまず女子寮の周りにある池をボートで向かう必要がある。
「なんでっ、僕がっ、ボートをっ、漕がないとっ、いけないんっだ!」
翼が漕いでも漕いでも全く進まない。非力だからなのか漕ぎ方が悪いからなのか分からないがとにかく進まなかった。
『私たち精霊は人間界にある者に基本的に触れないからな、仕方ない』
さっき制服触ってたじゃんとツッコみたい翼だったが今はボートを漕ぐことだけに集中することにした。
「はぁ、はぁ、運動は苦手なのに…」
『それでも男か貴様!』
「男だよ!」
だがミスティルの言葉に終始あまり集中できなかった。
「…ここってまさか」
翼が必死にボートを漕いで岸に着き、辺りを少し散策するとそこには断ちこめる湯気と女の子の声がした。
「わっ!ここ女子浴場じゃないか!逃げないと!」
急いでその場から立ち去ろうとする翼だったがミスティルはそれを止めた。
『待て!せめて精霊がここに来るのを待ってからにしろ!それに貴様は今
「僕は男なの!女の子の裸なんて見たらいろいろとまずいの!今の格好なんて全く関係ないの!」
そうやってミスティルの制止を振り切りその場から離れようとボートへ向けて走り出そうとした。
「あなた、そこでなにをしてるの?」
だがその瞬間、後ろから声を掛けられた。見られてしまったとショックを隠し切れない翼が後ろを振り返るとそこには件の天上院明日香がいた。
「あっ、あなたは…」
『手紙の名前に書かれていた明日香という
どうやら少なくとも刺客の仕業ではないことが分かって翼は心の中で安堵した。だが危機的状況には変わりない。何故なら見られてしまったからだ、あろうことか同級生に女装している姿を。
「あなた、風龍翼さんよね?男子の噂になってた」
「はい、そうですけど…」
こうなったら事情を説明するしかないと思い翼は勇気を振り絞って話そうとした。
「その恰好、やっぱりあなたって女の子だったのね」
「あっ、いやっ、これは!」
だが翼が話すまでもなくあっさりと勘違いされてしまった。
『まぁいいではないか。間違えられて不都合があるわけでもないではないか』
不都合だらけなんですけど!と翼はミスティルを初めて殴りたいと思った。
「どうしてここにいるのかはさておき、そういえばあなた入学試験の時にクロノス教諭に1ターンキルをしたわよね?よかったら私と
「えっ、でも…」
いきなり
『いいではないか。この前貴様が戦ったときは私が指示をして貴様がその通りに動いただけに過ぎない。今回精霊は関係ないようだし正真正銘貴様の初
確かにミスティルの言う通りであった。それにここで
「…いいですよ、
ちなみに翼の
「「
ミスティルは翼に
「私が先行で良いわね、ドロー!私は《エトワール・サイバー》を攻撃表示で召喚するわ。そしてカードを一枚伏せてターンエンドよ」
《エトワール・サイバー》
効果モンスター
星4/地属性/戦士族/攻1200/守1600
このカードは相手プレイヤーを直接攻撃する場合、
ダメージステップの間攻撃力が500ポイントアップする。
場に大人っぽいバレリーナが現れた。ミスティルはなぜこのモンスターを攻撃表示にしているのか気になった。だが翼は全く気にしている様子はなかった。
「では僕のターン、ドロー!」
翼は手札を見て一目散に一番攻撃力が高いモンスターを選んで召喚した。バトルでは基本的に攻撃力が高いモンスターが勝つというルールのことしか考えていないからだ。
「僕は手札から《ドラグニティ-ミリトゥム》を攻撃表示で召喚!そして《ドラグニティ-ミリトゥム》で《エトワール・サイバー》を攻撃!」
《ドラグニティ-ミリトゥム》
効果モンスター
星4/風属性/鳥獣族/攻1700/守1200
1ターンに1度、自分の魔法&罠カードゾーンの
「ドラグニティ」と名のついたカード1枚を選択して発動できる。
選択したカードを特殊召喚する。
翼のフィールド上に右手に刀、左手に短剣を持った鳥人間が現れ、そのまま《エトワール・サイバー》に右手の刀で斬りかかろうとした。
「リバースカードオープン!
《ドゥーブルパッセ》
通常罠
自分フィールド上の表側攻撃表示モンスター1体が
相手モンスターの攻撃対象になった時に発動できる。
そのモンスターの攻撃は自分への直接攻撃になる。
その後、攻撃対象になったモンスターで相手に直接攻撃する。
だが《ドラグニティ-ミリトゥム》の攻撃は《エトワール・サイバー》ではなく明日香の方へ向かった。
「このカードの効果により《ドラグニティ-ミリトゥム》の攻撃は《エトワール・サイバー》から私に移す、ぐっ!」
明日香LP4000⇒2300
「そして《ドゥーブルパッセ》のもう一つの効果、このカードで攻撃から免れたモンスターははダイレクトアタックできる!行きなさい《エトワール・サイバー》!そして《エトワール・サイバー》はダイレクトアタック時のダメージステップの間攻撃力が500アップするわ!」
「嘘っ、うわぁ!」
破壊を免れた《エトワール・サイバー》が翼に近づきそのまま攻撃した。
《エトワール・サイバー》攻撃力1200⇒1700
翼LP4000⇒2300
モンスターを破壊しようとしたら逆にダメージを負ってしまった。同じだけダメージを与えたがモンスターを場に残してしまった事がどれだけ不利に働くか、それを翼は理解できている様子を見せたのを見てミスティルは翼の才能はそれなりにあると感じた。
「あんなカードを伏せてたなんて…ターンエンドです」
「私のターン、ドロー!私は手札から
《融合》
通常魔法
手札・自分フィールド上から、融合モンスターカードによって決められた
融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体を
エクストラデッキから特殊召喚する。
「手札の《ブレード・スケーター》とフィールド上の《エトワール・サイバー》を融合!《サイバー・ブレイダー》を攻撃表示で特殊召喚!」
《ブレード・スケーター》
通常モンスター
星4/地属性/戦士族/攻1400/守1500
氷上の舞姫は、華麗なる戦士。
必殺アクセル・スライサーで華麗に敵モンスターを切り裂く。
《サイバー・ブレイダー》
融合・効果モンスター
星7/地属性/戦士族/攻2100/守 800
「エトワール・サイバー」+「ブレード・スケーター」
このモンスターの融合召喚は上記のカードでしか行えない。
相手のコントロールするモンスターが1体のみの場合、
このカードは戦闘によっては破壊されない。
相手のコントロールするモンスターが2体のみの場合、
このカードの攻撃力は倍になる。
相手のコントロールするモンスターが3体のみの場合、
このカードは相手の魔法・罠・効果モンスターの効果を無効にする。
手札から現れた腕に刃を付けたスケーターと場の《エトワール・サイバー》が合わさり、赤色と藤色の衣装を身に纏った長髪のスケーターが現れた。
「《サイバー・ブレイダー》で《ドラグニティ-ミリトゥム》を攻撃!『グリッサード・スラッシュ』!」
翼LP2300⇒1900
「これでターンエンドよ」
「僕のターン、ドローします!僕は
翼は取り敢えず効果が簡単で覚えていたカードを使った。
《死者蘇生》
通常魔法
自分または相手の墓地のモンスター1体を選択して発動できる。
選択したモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。
「墓地の《ドラグニティ-ミリトゥム》を特殊召喚します。そして《ドラグニティ-ミリトゥム》を生贄に《ドラグニティ-プリムス・ピルス》を攻撃表示で召喚します!」
さっき復活した《ドラグニティ-ミリトゥム》が消え、鞭を持った屈強な鳥男が出現した。
生贄召喚は基本的ルールだから覚えていた。翼は基本的ルールをうろ覚えなところもあるが数日で理解した。だが難しいルールや相手の行動の予測、デッキの特性などはまだ覚えられていない。
《ドラグニティ-プリムス・ピルス》
効果モンスター
星5/風属性/鳥獣族/攻2200/守1600
このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、
自分フィールド上の「ドラグニティ」と名のついた
鳥獣族モンスター1体を選択して発動できる。
デッキからレベル3以下の「ドラグニティ」と名のついた
ドラゴン族モンスター1体を選び、
装備カード扱いとして選択したモンスターに装備する。
「《ドラグニティ-プリムス・ピルス》の効果を発動!デッキからレベル3以下のドラグニティと名のついたドラゴン族モンスターを選択して自分フィールド上のドラグニティと名のついた鳥獣族モンスターに装備できます!僕はデッキから《ドラグニティ-ブランディストック》を《ドラグニティ-プリムス・ピルス》装備させます!」
デッキから短剣が頭にある小さなドラゴンが現れそのまま《ドラグニティ-プリムス・ピルス》に小さい短剣が装備された。
「それは確かクロノス教諭を倒した時のカード…」
この場面で《ドラグニティ-ブランディストック》を選ぶところをみるとモンスター効果もそれなりに理解できている、これなら少しの時間でいい
「バトルです!《ドラグニティ-プリムス・ピルス》で《サイバー・ブレイダー》を攻撃!」
《ドラグニティ-プリムス・ピルス》は手に持っていた鞭で《サイバー・ブレイダー》を攻撃した。
明日香LP2300⇒2200
だが《サイバー・ブレイダー》は破壊されず場に残っていた。それに翼は心底驚いた。
「えっ!?《サイバー・ブレイダー》が破壊されてない!?」
「《サイバー・ブレイダー》の効果よ、相手フィールド上のモンスターが一体のみの場合、このカードは戦闘では破壊されないの」
だが相手のモンスター効果、フィールド上全域を意識するのはまだ先になりそうだとミスティルは思った。
「それならもう一回攻撃します!いけっ、《ドラグニティ-プリムス・ピルス》!」
もう一度攻撃しても《サイバー・ブレイダー》は破壊されない。だが翼は100ポイントだけでもいいからLPにダメージを与えるために攻撃をした。
明日香LP2200⇒2100
「これで僕はターンエンドです」
《サイバー・ブレイダー》を破壊は出来なかったが翼は取り敢えずこの有利な状況に笑みを浮かべていた。このまま初勝利し、目の前の明日香に褒められてミスティルに認めてもらうという想像をしていた。
「私のターン、ドロー!私は《サイバー・チュチュ》を攻撃表示で召喚、そしてバトル!《サイバー・チュチュ》は相手フィールド上にこのカードよりも攻撃力が高いモンスターしか存在しない場合ダイレクトアタックできるわ!行きなさい《サイバー・チュチュ》!」
《サイバー・チュチュ》
効果モンスター
星3/地属性/戦士族/攻1000/守 800
相手フィールド上に存在する全てのモンスターの攻撃力が
このカードの攻撃力よりも高い場合、
このカードは相手プレイヤーに直接攻撃する事ができる。
赤色と水色の衣装を着た可愛らしいスケーターが現れ、《ドラグニティ-プリムス・ピルス》を躱してそのまま翼に攻撃をしてきた。
翼LP1900⇒900
「カードを一枚伏せてターンエンドよ」
先程まで翼が持っていた余裕は直ぐに消えた。顔には出さないが内心は物凄く焦っていた。
「僕のターン、ドロー!」
『(確か《サイバー・ブレイダー》は相手モンスターの数が4体以上になると効果を発揮しなくなる。ならばこのターンはモンスターをできるだけ展開すればいい。もしくは効果破壊をすればいいのだが…その前に《サイバー・チュチュ》を破壊せねば次のターンで終わってしまう。それにあの伏せカードも気になる所だ。さて、これからどうする?)』
「僕は《ドラグニティ-パルチザン》を攻撃表示で召喚します!」
翼の前に金色の剣が頭にある小さなドラゴンが現れた。
《ドラグニティ-パルチザン》
効果モンスター
星2/風属性/ドラゴン族/攻1200/守 800
このカードが召喚に成功した時に発動できる。
手札から「ドラグニティ」と名のついた鳥獣族モンスター1体を特殊召喚し、
さらにこのカードを装備カード扱いとして装備する。
だがまたもや翼は手札の中で一番攻撃力の高いモンスターを選んでフィールド上に出してしまった。流石に手札からコンボを考えるという域には達せていなかった。
「この瞬間《サイバー・ブレイダー》のもう一つの効果が発動!相手フィールド上にモンスターが2体のみの場合このカードの攻撃力は倍になるわ!『パ・ド・トロワ』!」
《サイバー・ブレイダー》攻撃力2100⇒4200
「そんなっ!?」
「ううっ、なら僕は《ドラグニティ-プリムス・ピルス》で《サイバー・チュチュ》を攻撃します!」
翼は一矢報おうと攻撃を仕掛けた。だが明日香はまるで翼を弄ぶかのような笑みを浮かべた。
「カウンター
《攻撃の無力化》
カウンター罠
相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。
相手モンスター1体の攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了する。
《ドラグニティ-プリムス・ピルス》の攻撃はカードから出た渦に飲み込まれてしまった。
「あっ…」
『終わったな』
翼には次のターンをしのぐ策はない。つまり敗北が決定した。
「ターンエンド…」
「私のターンドロー、そのままバトルへ!《ドラグニティ-プリムス・ピルス》を《サイバー・ブレイダー》で攻撃!『グリッサード・スラッシュ』!」
そのまま《ドラグニティ-プリムス・ピルス》が破壊され、翼のLPが0になった。翼の初
翼LP900⇒0
「ハハハ、負けちゃいました。強いですね明日香さん」
「そうね…」
明日香は実際に
「ねぇあなた、もしかして…」
「明日香さま!」
「ももえ、ジュンコ!」
「一体どうしたの?」
「明日香さまが一向に女子寮から帰ってこないものですからジュンコと一緒に探していたんです!」
「まさかこんな所に居るとは思いませんでした…一体今まで何を?」
「さっきまでここで
「そうですか、何事もなくてよかったです」
翼はそのままこっそりとその場から立ち去ろうとした。すると浜口ももえがそれに気づき、そして翼に近づいていって優しく翼の頬を触った。
「あなた、確か男子が噂していたあの…風龍翼さんよね?」
「はいそうですけど…どうして顔を触るんですか?」
「いえ、すごく可愛らしい顔ですねと思って…」
「やっぱりいつもは男子の振りをしていても夜くらいは女子のままでいたいですよね」
枕田ジュンコは翼の制服姿を見て、翼のありもしない深く重い事情を想像し同情した。
「いや、あの…」
「よっぽどの深い事情があるのでしょう?大丈夫、先生たちには秘密にしてあげますから」
「それにしてもその制服、男子の制服を着ているよりよっぽど似合っていますね!」
浜口と枕田は2人だけで盛り上がっていくが翼にとっては苦痛以外の何物でもない。
「す、すみません!僕もう直ぐ戻らないと…」
「あらそう、残念ですわ…」
「辛いことがあったらいつでも来てもいいですわよ」
見るからに二人は残念そうな顔になった。
「今日は楽しかったわ、話はまた今度にしましょう」
「はい…」
そして翼はまるで逃げるかのようにそこから立ち去った。
この日から、翼はオベリスクブルーの女子から男子のフリをしているカワイイのに断層を余儀なくされている可哀想な女の子だと思われるようになる。そして偶に翼の部屋の玄関になぜか可愛らしい服が送られてくるようになった。
「今日の最強カードは私が使った《サイバー・ブレイダー》よ。相手フィールド上にいるモンスターの数によって効果が変わるわ。でも相手フィールド上に4体以上モンスターがいると効果がなくなっちゃうの」
「状況に応じた対応が出来るカードだよ」
『召喚条件が厳しいがそれに似合う強力な効果を持っている。あるコンボを成功させれば相手が何もできなくなる状況にさせることが可能だ』