ふうま父子二代の女難   作: 小次郎

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第一話  ふうま小太郎 五車学園に派遣される

 闇の存在・魑魅魍魎が跋扈する世界・日本。

 人魔の間で太古より守られてきた相互不可侵の決まりは瓦解し、人魔結託した犯罪組織は増え続け、時代は混沌と化し人々の生活は脅かされる事となった。

 だが正義を胸に悪に立ち向かう者達が居た。

 人は彼等を‘対魔忍’と呼んだ。

 

 

ふうま父子二代の女難  第一話

 

 

 何だ?なんか身体が揺れているような、それに何かうるさいぞ?

「もう、ふうまちゃん、いい加減に起きてよ。学校に遅れちゃうよ!」

 その声、蛇子か。

「ちゃんと朝御飯食べないと天音さんに蛇子まで怒られるんだから!」 

 うるさい、俺は眠いんだよ、昨日は遅くまでオンラインゲーム「SEKIROUNINN」のトップランカー、Y-kazeXちゃんと対戦して寝たのは確か5時くらいだったんだからな。

「俺の事は放っておいてくれ、30戦全敗だったから腹立だしい事この上ないんだよ!」

「あ~、またゲームで夜更かししてたんだ!蛇子はふうまちゃんの従者として苦言を呈するからね!」

 しまった、余計な事を言っちまった、身体の揺れが酷くなるわ、ボリュームの上がった説教がウザいわで最早まともに眠れん!

 ・・だが俺はふうま宗家の跡継ぎ、ふうま小太郎。

 邪眼に目覚めず目抜けと言われようと誇りは失わない!

 ひょっとしたら誇りの持ち方が違うと時子母さんに説教されるかもしれないが、それでも従者にいいようにされていては駄目だろう、・・駄目な筈だ、・・・駄目なんじゃないかな、うん、そうに違いない。

 よって俺は俺の従者である蛇子に対し、主としての威厳を見せなければいけない!

 「ふうまちゃん、もう怒ったからね!墨を被って反省しなキャッ!」

 俺は素早く蛇子の腕を掴み布団に引っ張り込む、そして抱き枕の様に全力で拘束してやった。

 「ふ・ふ・ふ・ふ・ふ・・・・・・」

 フッ、俺の冷静かつ合理的な行動に蛇子は虚を突かれて言葉にならないようだな。

 これでようやく眠れる、そのまま大人しくしてるがいい。

 改めて意識が落ちそうになって、・・・だが急速に引き戻らされる。

 ・・・何か、良い匂いがするな。

 その基は俺の腕の中にいる蛇子からのもの。

 こいつ、香水でも使ってるんだろうか、気になって頑なに瞑っていた目を開いてみると、上目遣いで真っ赤になっている蛇子と御対面となった。

 そのまま何故か目が反らせず見つめ合って、・・あれ?・・こいつ、こんなに可愛かったっけ?

 俺の従者としてガキの頃から一緒だったが、女として意識した事なんて無かったんだけど。

 それというのも俺が思春期へ突入した頃に、クソ親父が対魔忍は女に慣れとかないと直ぐに死ぬと、エライ所に講師付きで放り込んでくれたおかげでな!

 いや、最初は浮かれてたと思うよ、人として自然の摂理だから。

 ・・だがな、女の恐ろしさを俺は知った。

 ホントによく生き残れたと思う、相手が魔族だろうが淫魔族だろうが人に不可能はないんだと俺は学んだんだ。

 血は争えないと言われたのは俺にとって良い事なのか悪い事なのか。

 そもそもあの鬼畜親父はそういう事に関して全く隠さねえから、時子母さんは怒るけど当主として必要な事と割り切ってもいるし。

 特殊な両親と経験を得ている俺は同年代と比べれば明らかに枯れているであろう、そんな俺が此の状況に何故これほどに動揺しているんだ?

 女なんて基本魔性の生き物なんだぞ、嫌って程に味わっただろう?

 だから蛇子、目を瞑るんじゃない!

 待て、俺の手よ、何処に触れようとしている?昔に比べてふくよかになった果実に向かう俺の左手よ!

 やばい、やばい、やばい、やばい、・・もう、止まらん!

「・・・若、従者との絆を深める事は必要な事で御座います。ですがふうま一門次期当主として優先すべき事が疎かとなりますのは執事として見過ごせませぬ」

 沈着冷静を体現したような声が雷鳴の如く耳に響き、俺と蛇子はベッドから跳ね起きた。

 

 

 

 

 

 

 

 五車学園。

 それは人々を闇や魔から守る為に設立された日本政府公認の対魔忍養成機関。

 闇に抵抗すべき力を持つ者を、特に古来より特別な力を持つ忍びの一族に連なる者が全国各地から集められ、日々厳しい訓練に励んでいる。

 

 

 ・・そんな学園に、どうして五車に属していない、ふうま一門の俺が通わないといけないんだ?

 朝から色々とあったが、今後の為に全て忘れる事にして蛇子と共に通学路を歩く。

 一時期は殆んど滅んでいたといっても過言じゃないふうま一門だが、俺の親父は時子母さんと共に闇の一大勢力にまで復興し発展させた。

 塵のような弱小勢力を巨大勢力であるノマドや米連、龍門などにまで一目置かれる組織にだ。

 だがその為にあの親父は対魔忍の総本山である五車に対し、話半分どころか十分の一でも引くような活動をしまくって、その存在は蛇蝎の如く嫌われている。

 当然その息子の俺もブラックリストに名前がしっかり刻まれているだろう。

 とは言え、それでも組織ってものは利用価値があるなら後ろ手に苦無を持っていても手を組む。

 その証として次期当主である俺が槍玉に挙がったわけだ、条件の一つとして五車学園に通わせられる事に。

 完全に人質、人身御供じゃねえか!

 自慢じゃないが俺は弱いんだ、逃げ足しか誇れるものはないんだぞ!

 それも付き添いは従者の蛇子と自称執事の天音の二人だけって、何考えてんだクソ親父!

「あ~あ、行きたくねえなあ。絡んでくる奴の相手すんの、面倒くせえんだよ」

 よくわからん対魔忍の誇りとかってお題目掲げてよ。

 図書室に直行したい、俺にとって唯一のオアシスだ。

「気持ちは分かるけど、鹿之助ちゃんとか達郎君とか友達も出来たんだから悪い事ばかりじゃないと蛇子は思うよ?ふうまちゃん、今まで男の子の友達いなかったんだから」

 それはまあ、な。

「大体ふうまちゃんは女の子とばっかり縁が有り過ぎるんだから、・・朝の事だって、まったくもう、まったくもうなんだから・・・」

 なんかブツブツ言ってる蛇子は置いとくとして、縁ではなくて難の間違いだろ。

 

 

 寝不足を解消する為の授業時間は大変有難かったが、この時間帯だけは寝る訳にもいかずサボることも許されない。

「今日の実技試験は三対三でのチーム戦だ、気合を入れていけ!」

 俺とチームを組むのは鹿之助と達郎なんだが、既に二人とも顔面蒼白だ、多分俺もそうなんだろう。

「ふざけんなよ、ふうま!何なんだよ、この有り得ない組み合わせは!」

「俺のせいか!?お前が上原先生を怒らしたんじゃねえのか!?」

「い~や違うね、絶対にお前のとばっちりだ!」

 上原燐先生、親父との因縁はあるだろうけど、多分私情は挟まない人だと思うぞ。

「ハハ、遺書書いてこようかな」

 そう、とてもじゃないが試合にならないのは明白な対戦相手。 

 よりにもよって同学年はおろか学園全体でもトップクラスの実力を持ち、教師陣でも歯が立たないとも噂されてる次代の対魔忍の担い手として有名な三人組。

「・・・・・・・・・」

「にゃははは~、こた君よろしくね~」

「戦う前から何だ、その態度は!しっかりしろ、ヤレ男」

 五車学園校長・井河アサギ、その妹である井河さくら、そして八津紫。

 一騎当千の言葉すら生ぬるい対魔忍最強の三傑。

 その遺伝子をしっかりと受け継いだ三人娘が本日の対戦相手、そりゃ絶望しかない。

「森林地帯を仮想戦場とし指揮官の武器を奪った時点で終了とする」

 俺が弱いから僻んでるのもあるだろうが、どうも五車でのカリキュラムは忍びにしては偏りを感じるんだが。

 そりゃ対魔忍の任務は死と隣り合わせ、戦闘技術や忍法の強化に努めるのは分かる。

 ただ俺も実家で何度か任務をこなしたが、勝算が高くなかったら基本戦闘は避けろと親父に言われてたぞ?

 他にも色々と思うところはあるが、処刑への時間は止まってくれない。

 脳をフル回転させ二人に指示を出す、二人も真剣に聞いてくれる、何しろ命が懸かってるからな。

 あと個人の事情として赤点では小遣いがヤバい。

 いざとなれば親父を脅してふんだくるネタは十分にあるが、時子母さんや天音にバレるリスクは避けたい。

 だから俺は頑張った、鹿之助も達郎も、これ以上無いくらいに頑張った。

 直接戦闘には正直向いていない俺達だが、搦め手に搦め手を駆使して粘りに粘った。

 だがそんな奮闘も最後はブチ切れた三人の強行突破で吹っ飛ばされたが、合格点を貰えたのでよしとする。

 三人娘は周りからチヤホヤされてるが、試験内容に納得出来ないようで不満が顔に出ていた。

 気持ちはどうあれ優しい心根の持ち主だから、未だに立ち上がれずに倒れてる俺達を介抱してくれたけどね。

 ・・・おそらく知らないと思うけど、マイシスタ-達、力業だけでは駄目だぞ、母親達の二の舞になるぞ~。

 

 

 

 どうにもスッキリしないわね。

 私達の勝利は最初から分かり切っていた事だけど、異様に戦い辛くてまさか全力を出す事になるなんて。

「まったくヤレ男め、嫌らしい手を使う事ばかり長けおって」

「こた君、一対一なら十秒も要らないんだけどね~」

 実際その通りね、対峙したら一忍びとして落第の戦闘力よ。

 だけどそこに至るまでの経過で、こんなに手こずったのは同じ学生相手での訓練では初めてだった。

 内容を振り返ってみても私達にミスは無かった。

 そう、誤った行動は採っていない、状況での選択肢は殆んど一本道で迷う事も無く、・・・えっ、それって!?

 つまり私達は、彼に戦闘自体をコントロールされていて、押している状況であっても主導権は常に取られていたって事?

 彼我の戦力を完全に把握して、尚且つ悟られない様に心理まで誘導した?

 ・・仮に彼が優秀な指揮官であったとしても、幾ら何でも、よね?

 

 これが私と小太郎の出会いであり、賑やかな日々の始まりだった。

 

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