ふうま父子二代の女難   作: 小次郎

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第十話  乙女を襲う魔の手

 だ、駄目、だ、・・や、やめてくれ!

「あらあら、もうまともに口も利けないのかしら?対魔忍の誇りはどこにいったの?ねえ、凛子ちゃん」

 そ、そうだ、わ、私は、正義を担う、対魔忍だ、こ、これしきの事で私は屈しない!

 身が汚される事など、覚悟の上だ。

「ふ~ん、じゃあこれはどう?」

 そ、そこは・・・。

 どれほど歯を食いしばりコブシを握り締めても、劣情が津波の如く押し寄せてきて抗う力と意志が消されていく。

 正しき心があれば如何なる困難にも立ち向かえると、そう心に決め対魔忍として生きてきた、・・・しかし、今の私は為されるがままに辱めを受けるだけ。

 ・・こんな、こんなにも私は弱かったのか。

 斬鬼の対魔忍、対魔忍次代のエースなどと呼ばれて、増長していただけだったのか。

 彼の、ふうま君の言葉が正しかったのか。

「何も知らない、何も分かっていない小娘だって、ようやく理解できたかしら?でももう遅いのよ、後悔しても時は戻らない、もう元の貴女ではいられなくなるの」

 ゆ、許して・・・。

「さあ、これからが本番よ、若様の為にたっぷり仕込んであげるわ、果たして何時まで正気でいられるかしら、フフフ」

 

 

ふうま父子二代の女難  第十話

 

 

「なあ、ふうま。本当に訳を知らないのか?」

「ああ、先も言ったが俺は現地で秋山先輩とは別行動だったんだよ」

 二日前に任務でふうまと凛子姉さんが組んで、それはいいけど翌朝に戻ってきた凛子姉さんが何故か俺を避けるようになった。

 俺を見かけたら足早に離れるし、逆に話しかけたら用事を思い出したと言って立ち去る。

 態度から何かあったのは明白だ。

「でもさあ、先輩は怪我とかしてる訳じゃないんだよな?」

「うん、動きにおかしなところは無かった」

 鹿之助の疑問は俺も一番に考えて、逃げるから遠巻きでの観察だけど異常は見られなかった。

 それに任務自体も大過なく終えたらしい、身体は問題ないと思う。

「だったら暫くはそっとしておいた方がいいんじゃないか?いくら先輩が目茶苦茶強いからって悩み位はあるだろ」

 ・・確かにそうかもしれない、姉さんだって超人じゃないんだ。

 俺も最近は潜入調査のスペシャリストに成る為に静流先生からマンツーマンで指導を受けてるけど、学ぶ事が有り過ぎて脳味噌がパンパンの状態だ。

 でも、だからこそ本当に良く分った、戦闘の強さなんて対魔忍の一面に過ぎないってことが、どんな状況でも対応するには知っておかないといけない事が山ほどあるんだって。

 姉さんが俺を避ける理由と直結するとは限らないけど、ふうまと組むと色々な事に気付かされるのは俺も体験してる、だったら姉さんもそうなのかもしれない。

「鹿之助の言う通りかもな。達郎、オマエは何時でも先輩の力になってあげられるように、そう気に掛けていたらいいんじゃないか?」

「・・そうだな、そうするよ」

 姉弟だからって何でも話せる訳じゃない、少し寂しいけど、こうして各々が自分の道を進んでいくのかなって思った。

「くわ」

 ん?

「わりい、昨日も任務で徹夜だったんだ、ちょっと中庭で寝てくるわ」

 いや、今から授業・・・、でも言っても無駄だろうから鹿之助と二人で見送る。

「そういえば、ふうまって最近任務が続いてるよな」

「だな。ずっと眠そうにしてるし」

 校長先生の育成方針で学生の任務は無理のない範囲でなんだが、やっぱり期待されてるんだろうな、組んでいるのも優秀な生徒ばかりだし。

 ・・おっと、先生が来た、・・静流先生、ウインクは止めて下さい。

 

 

 ふうまの奴、ま~たサボってるわね。

 一緒に昼食食べるつもりだったのに、蛇子が探しに行っちゃったじゃない!

 まったくアイツってば、蛇子に迷惑かけてんじゃないわよ、幼馴染だからって甘え過ぎよ!

 蛇子も放っとけばいいのに、あんなののどこがいいんだか、あっちこっちで女の子と仲良くしまくって、ホントむかつく!

 おまけにアイツの影響を受けたのか、達郎が後輩の娘とデートしたり高坂先生とは個人指導で密着なんかして、人の幼馴染に何してくれてるのよ、やっぱり一度締めとかないと駄目ね。 

 取り合えずは購買で買ったパンを中庭ででも食べようと思って歩いてたら、壁越しに何か覗き込んでる達郎と鹿之助を発見。

 あそこって確か、そうだっ、隠れ告白スポットって聞いた事ある!

 ひょっとして誰か、・・悪いとは思うけど好奇心が勝って私も近寄る。

 近くまで寄ったら鹿之助が気付いたみたいで振り返る、私は口に指を立てて驚いていた鹿之助も両手で口を防ぐ。

 まではいいんだけど、今度は鹿之助が必死に両手を振って来るなってジェスチャー。

 達郎は振り向きもしないし、一体何が?そこまでされたら逆に気になっちゃうに決まってるじゃない、私も覗いて、・・硬直する。

 隠れスポットで向かい合ってるのは凛子先輩と、・・・ふうま!?

 

 

 ど、どうすんだよ、この状況。

 偶々見かけた秋山先輩のらしくない急ぎ足の姿に、一緒にいた達郎が気になって追いかけ始めたから付いていっただけなのに、よりにもよってふうまとの逢引かよ!

 いや逢引と決まった訳じゃないけど、秋山先輩ずっと顔が真っ赤で、それ以外考えられないだろ。

 とにかく色々と拙そうだから達郎を連れて去ろうと振り返ったら、よりにもよってゆきかぜかよ!

 もう二人ともガン見だし、こうなったら俺だけでも逃げ、って、オイふうま!オマエ何やってんだよ、秋山先輩を壁に追い込んで顔の横の壁に掌底って、・・それってあの伝説の、壁ドン!!

 ま、マジかっ!あれって都市伝説だと思ってたのに。

 秋山先輩、完全に固まってるぞ、目も潤みまくってるし。

 そのまま無言で見つめ合ってて、耐えきれなくなったのか秋山先輩が顔を俯かせた。

 よ、よかった、そのままキスでもしようものならシャレにならなかったからな。

 とにかく、もう離れないと!

 なっ、ふうま!?

 更に追い打ちで秋山先輩のアゴを指に乗せて顔を上に向けなおすだって!!

 お、オマエは少女漫画の主人公かよ!ちょっとドキッとしちまったじゃねえか。

 ふうまと秋山先輩の唇が近づく、・・もう駄目だ。

 

『ピンポンパンポーン、・・ふうま君、至急校長室まで来るように」

 

 神の采配みたいな校内放送。

 呼ばれたふうまは何も無かったかのように先輩に挨拶して去っていった。

 その先輩は夢うつつって感じでへたり込んで、とてもじゃないけど茶化せる雰囲気じゃなくて俺達は無言で解散。

 おまけにふうまは教室に戻ってこないでそのまま任務に出たみたいでスマホも繋がらない、問い質す事が出来なくなった俺の頭の中はグッチャグチャ。

 達郎は完全に呆けてるし、ゆきかぜに至っては放電しっ放しで怖くて誰も近づけない有り様。

 ふうまあああ、頼むから説明してくれえええええ!!!

 

 

 

「さてと、次は神村か、今日も徹夜だな、やれやれ」

 

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