ふうま父子二代の女難   作: 小次郎

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第十二話  質の悪い極悪人

 ええい、ちょこまかと逃げて、それに何時の間に学園内に逃走用の罠を設置しておいたのよ、その用意周到さが本当に腹立たしいわ!

「待て待て待て!アサギ、施設を破壊し過ぎだ、後で先生にドヤされるぞ!」

「全ての元凶は、小太郎、アナタでしょ!」

 よくも、よくも私にあんな辱めを、絶対に許さない!

「否定はしないが、話せば分かる、さくらや紫も分かってくれたぞ?」

 後日にお詫びの買い物に付き合うとは聞いたわよ、でもそれって只のデートじゃないのっ!

「その二人を簡単に篭絡する手口が気にいらないのよ、この似非ホスト!」

「ひでえ言われようだな、オイ」

 ああもう、この数々の罠、本当に煩わしいわね、設置した人間の性格が顕著に現われてるわ。

「俺だって配慮はしたんだぞ、生娘だから膜と唇は勘弁してやってくれって」

 ・・・・殺す、もう絶対に殺すわ!!

「対魔殺法・光陣キャッ!?」

 いきなり煙が吹きかかってきて、ゲホゲホゲホッ、何よコレ、小麦粉?

 煙が晴れて目も開けれる頃には小太郎の姿は既に無くて、

「くっ、小太郎、本当に逃げ足だけは一級品なんだから」

 一体どこに・・・・。

 

「フッ、お嬢さん、どうやらお困りのようだね」

「あの悪逆非道な極悪人、ふうま小太郎を倒そうとするのなら、我等が力を貸そうじゃないか」

 

 

ふうま父子二代の女難  第十二話

 

 

 ・・おかしい。

 試験の事でゆきかぜに追い掛け回されるのが続いてて、今日からアサギも加わったが、何故アサギには今日だけで連続に見つかるんだ?

 ゆきかぜもそうだが、アサギの性格を分析して裏をかいている筈なのに、実際ゆきかぜは完全に撒いている。

 この騒動に関しては校長先生から訓練という形で周りに伝わってて、授業終了から日没までと取り決めが決まっている、・・俺にとっては嬉しくも何ともないが。

 おまけに試験の第二陣もリストアップ中らしくて、完成までに落ち着かせておいてとの無茶振り、・・・ふうまの実家に帰りたい!

 とにかく状況を見直しだ、スマホで連絡。

 

「こちら蛇子、稲毛屋周辺にはいないよ」

「鹿之助だ、山道へは誰も来ていないぜ、オーバー」

「ふうまくん、学校の屋上から二人の姿は確認できていないよ」

「先輩、校庭にもいません」

「颯だ。いいか、ふうま。この騒動を早く鎮火させるんだ、もしも私の事が家の耳に入ったら、・・図書館に異常無し」

「馬鹿野郎、てめえ、いつか燃やしてやるからな!校舎裏には誰もいねえよ」

「ふうま君か?見知らぬ者を見かけたと聞いたぞ」

「ふ、ふうまか?ゆきかぜは地下訓練室に来てたんだけど、なんか連絡を受けたみたいで飛び出ていったぞ!」

「あっ、こた君、デート楽しみにしてるよ~。お姉ちゃん、ゆきかぜちゃんと会ってたよ」

「ヤ、ヤレ男!死ぬなよ」

 

 拙い、完全に居場所がバレてる感じだ。

 おそらく二人が合流したのは、罠を警戒しての挟み撃ちにするつもりで間違いない。

 だが何故だ?俺の居場所を正確に把握するなんて、あの二人には色々な意味で無理だ。

 逆に誰なら出来る?俺の知る限り学生で心当たりは無い、流石に教師は手を貸さないだろう。

 ・・・じゃあ、学園外なら?

 

 

 むっ、アルベルタからの報告メールが届いているな。

 若から頼まれた試験の手伝いとやらで、本来は機密ものだが我等にとっては関係ない、若の信用に関わるゆえ他所には漏らさぬがな。

 アルベルタはあの男の愛人ではあるが、聡明で若への信頼も厚く娘も懐いているので問題無いだろう。

 ・・試験対象者は七名か、特に優秀な者が選抜されたとあるが内容に目を通すと酷いものだった、この者達は脳味噌が筋肉で出来ているのか?

 まだ学生とはいえ、これでは若のお役に立たぬ。

 近年の対魔忍は質が落ちているとは聞いていたが、学園という形は若者を集めるにはいいが、忍としては甘やかしているのかもしれんな。

 取り敢えずはデータを更新しよう。

 

 No、4  秋山凛子

井河家の家来筋、名門秋山家の跡取り娘、空遁の術の使い手

戦闘力 ★★★★★★★★★

指揮力 ★★

交渉力 ★★★

※備考

 斬鬼の対魔忍と称される逸刀流の達人、空遁の術も応用力が高く剣術にも用いている。

 だが精神が忍ではなく侍であり、思考の柔軟性を著しく欠く。

 

若への好感度 ★★★★★★

 弟の良き友人として接しており、当人の色恋話は聞かないが隠れた本命がいるとみる。

 

※備考追記

 見た目や態度からは想像し難いが、完全に世間知らずで悪意に鈍い。

 

(う~む、能力だけなら有用なのだが、・・・・しばし保留だな)

 

 

 No、5  神村舞華

火遁の術の使い手

戦闘力 ★★★★★★★★

指揮力 ★

交渉力 ★★

※備考

 火遁使いとしては最高レベルの火力を誇るが、制御に難があり広範囲攻撃となる為に他者との連携が難しい。

 姉は高名なヴァンパイアハンター、神村東。

   

若への好感度 ★★★★★★★

 恋愛感情までに至ってはいないが、能力と人格が興味対象にはなっている模様。

 

※備考追記

 外見に比べ中身は乙女、強引にされる方が内心は喜ぶタイプ。

 

(あの言動でか、かわいいものだな、若なら問題ないだろう)

 

 

 No、6  弓走颯

弓の名門、弓走家の跡取り娘、風遁の術の使い手

戦闘力 ★★★★★★★

指揮力 ★★★★★★

交渉力 ★★★★★

※備考

 弓の達人、風遁の術を併用しての距離や威力の増強、軌道変化と必殺の矢を持つ。

 融通が利かない性格であり、本人も気にしている模様。

 

若への好感度 ★★★★★★

 不真面目さに怒ってはいるが能力は認めている、厳しい家風の為か気安く接してくるのを嬉しく思っている様子。

 

※備考追記

 家名に傷を付けないようにと退く事に強い抵抗を持つ為、逆に状況に流されてしまうタイプ。

 

(後方支援職は欲しいが、このタイプは思い込みが激しいからな)

 

 ふむ、これら三名は今後も注視しておくか、どうにも危なっかしい面が見られるも能力はなかなかのものだ、今回の試験を受けて反省が見られれば精神面に成長の余地はあるだろう。

 さて次は・・・。

 

 

 

 

 日課になりつつある放課後のふうま探しをしていたら、井河さんから連絡があって共闘を持ち掛けられたのよ。

 居場所が分かるっていう魔族の力を借りてるらしくて、半信半疑だったけどおかげで後一歩のところまで追い込めたわ、と思ったら、いきなり身体に力が入らなくなって立ち上がる事も喋る事も出来なくなって、一体どういう事?

 ・・これって、痺れ薬?もしかして対峙した時に微かに香ったのって。

「よし、効いたな」

 おのれ、バカふうまっ!重ね重ねやってくれたわね、もう絶対に許さないんだから!

「ヤレヤレ、ゆきかぜ、俺の方に地の利があったのは明白だったろう。そんなトコに無策で突っ込む奴がいるか」

 ぐぬぬぬぬぬぬ、うっさいわね!

「とにかく、こんなとこで寝かせとくわけにもいかないから、怒るなよ」

 えっ!?

 なに、なに、これって、お姫様抱っこ!?

 急激に頭に血が上るのが分かったけど、顔を反らす事も手で覆う事も出来なくて為すがままに運ばれる。

 そしたら少し先のところで井河さんが横になってた、こっちを凄い目で睨んでるけど井河さんも動けないみたい、おそらく私と同じ目にあったんだと思う。

 そして私も井河さんと同じように横たわされて、ふうまも座り込んで私達の口元に丸薬らしきものを持ってきた。

「ほれ二人共、解毒剤だ。飲み込めないなら口移しで飲ましてやるが」

 意地でも飲んでやると必死で飲み込む、苦っ!

「三十分もすれば効いてくる、その間に話をしたいから聞いてくれ。・・だがその前に、ミナサキ、リリム、出てこい!」

「なんだよお、ふうまの癖に生意気だな」

「そうそう生意気~」

 ふうまの呼び掛けに二人の魔族が現われたけど、なんか全然魔族らしくなくない?それにふうまと知り合いなの?

「今さらお前等に理由なんて聞く気はない、だが一体アサギに幾ら請求した!」

「フッ、これは正当な取引さ、君には関係ないね」

「そうそう、部外者は引っ込んでてよね~」

 一応こちら側みたいだけど、何かしら、凄くムカつくんだけど。

 ふうまは無言で懐に手を伸ばして、何かを二人に差し出した。

「流石はおやびん、分かってらっしゃる!」

「一生ついていきますぜ、あのドケチなふうま当主を倒す時は是非ともお供に!」

「いいから、とっとと帰れっ、小動物共!」

 魔族の二人は怒声も何のそので騒がしく帰っていったわ、あれって、絶対にお金の遣り取りよね。

「まったくアイツ等は・・・・・」

 あの二人、ふうまが生まれる前から一門に居候、というか寄生しているトラブルメーカーなんだって。

 特殊能力持ちで使えはするけど、当主やふうまは散々迷惑を掛けられてて、制裁しても全く懲りない鋼の精神の持ち主らしいわ。

「もう相手をするくらいなら金を渡した方がマシだ」

 でもあの子達、ふうまを襲うのに手を貸してたじゃない。

「アイツ等にまともな論理は通用しないから」

 ・・なんでそんなの受け入れてるの?

「俺も親父も抵抗はした、ただ何故か一門の皆がアイツ等に甘いんだ」

 ふ~ん、ふうま一門って多種多様なのが集まってるって聞いた事はあったけど、やっぱり当主や跡取りが変人だからかしら。

 ちなみに未だ私と井河さんは口を利けない、ふうまが私達の表情から読み取っての対話よ。

 ふうまが改めて横になってる私達の間に入って座り込む、顔は前を向いて独り言みたいに話し始める。

「今回の事はすまなかった。謝ったくらいで許される事じゃないのは分かっているが、あの試験は俺から校長に提案したものだ」

 えっ、どういう事よっ!

「お前達は間違いなく強い、並みの相手なら十倍の敵でも容易く蹴散らすだろう。・・・でもな、名が広がれば広がるほど相手はまともに掛かって来やしなくなる、分かるだろ」

 それは・・・。

「対魔忍は役目柄上、どうしたって後手に回る。それに少数または単独での任務が適当だから、現場では個人の力に頼らざるを得ない。悪意が待ち構えていないか、自力で見抜くしかないんだ」

 ふうまの言ってる事は今なら確かに分かる、分かるけど・・・。

「・・・ズルい」

「そうね、・・ズルいわ」

 解毒薬が利いてきたのか、私が、そして井河さんが二人して似た言葉を漏らす。

 ・・・だって私の態度は、怒るより本当は悲しかったからだったんだから。

 最初ふうまに裏切られたと思った時、自分でも信じられないくらいにショックを受けて、本当に辛くて悲しかったから・・・。

「・・その通りだ」

 ふうまは言い訳もせずに私達の言葉を受け止める。

 ・・ホントにズルい、私達だって分かってる、アンタが正しいって。

 今回の事はなにもかも私達の為にお膳立てされたことで。

 なのに、そんな風に自分ばっかり悪者になって、ちょっとは弁解したらいいじゃない、恩を着せたらいいじゃない、全部一人で背負って、なんかすっごくモヤモヤしてきた!

「ふぅ、もういいわ」

 そう言って井河さんが立ち上がる、えっ、もう回復しきったの?私はまだなのに。

「小太郎、さくらや紫と同様に私にも付き合ってもらうわよ、いいわね」

「えっ、アサギ、それでいいのか?」

「今回はこれで勘弁してあげるわ、・・そのお節介さに免じてね」

 笑顔になった井河さんが軽い足取りで去ったけど、私は聞き捨てならない言葉を確認する。

「ふうま、井河さんの言った事、説明しなさい」

「いや、それだがな・・・」

 ・・成程成程、お詫びに買い物に付き合うと、・・ってフザケテんじゃないわよ、誰がどう聞いてもデートじゃない!

「このバカふうまあああああああ!!!」

 

 

 

 

 No、7  水城ゆきかぜ

次期対魔忍のエース、雷遁の術の使い手

戦闘力 ★★★★★★★★★

指揮力 ★★★

交渉力 ★★★★★★★

※備考

 雷撃の対魔忍の異名を持ち、その破壊力は随一。

 プライドが高く勝ち気で負けず嫌い、秋山家の息子と友達以上恋人未満。

 

若への好感度 ★★★ ~ ★★★★★★★★★

 本人的には嫌ってると思っているようだが、傍目から見ればバカップルに見える親密度。

 

※備考追記

 本心に気付くまでというより認める迄に時間のかかるタイプ。

 賢さもあるが持続時間が短く、遂には猪のような行動に出るので、傍にブレーキ役が要必要。

 

 

 ・・相性はピッタリという事か、さっさと素直になればいいものを。

 

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