ふうま父子二代の女難   作: 小次郎

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第十三話  乙女の悩みはそれぞれ

「よし、帰投しよう、任務終了だ」

「いやあ、今回も無事に済んで良かったぜ」

「うんうん、良かったよね」

「・・・・・・・・・・・・・」

 鹿之助と蛇子は明るく返答してくるが、もう一人は明らかに不満気だ、だが藪を突く気はないのでスルーする、したいんだが、

「・・ちょっと、今回も戦闘が無かったじゃない!どういうつもりよ!」

 ・・・ここで問題だ、今回の任務は悪徳業者と政治家の密会現場を押さえることだ、そして前回の任務は倉庫にある密輸の証拠品を探す事だった、・・・・どちらも戦闘が必要だろうか?

 俺としては返答するのも面倒臭い、だが放っておいたら更に面倒臭くなるのも分かってる、・・・それに五車だと、この先輩に限った事でもないしな。

「確かに戦闘の可能性はありました、ですが先輩や鹿之助たちが的確な行動を取ってくれたからこそ避けられたんです、対魔忍として誇っていいと思いますよ」

「そ、そう言われると照れるぜ」

「えへへ~」

「・・そう?」

 先輩は訝しげだが、嘘じゃない、紛れもなく本心だ。

 平穏無事に済ませる、これ程に素晴らしい事があるだろうか、無いと断言できる。

「それに先輩がいたからこそ心に余裕を持てていたのも事実です、俺達三人だけでしたらもっと慎重になって更に時間を要したでしょう」

「・・・・・・・・」

 納得しきれてはいないだろうが反論の材料が思いつかないようだ、そうなるように話してるからだけどな。

 この先輩は俺に対し無条件に反発はしてくるが、為人や頭は決して悪くないと見た。

 抜けている所はあるが本能で最適解を選んでしまう天才型だ、だからこそ感情のコントロールをしないでもやってこれたんだろう。

 俺に対する辛辣さは男嫌いからきているようだが、人が生きていれば色々あるのは当たり前だしな、元々俺みたいなのとは相性が悪いタイプだし、暴走しないだけ御の字だ。

「そうですよ、きらら先輩、ふうまちゃんの言う通りです」

「だよな~、先輩がいれば百人力だぜ」

「フ、フフン、まあ分かってればいいわよ。でも私はもっと実力を磨きたいのよ。だから次は何とかしなさい、いいわね」

 ・・・どうしろと?

「善処します」

 それ以外に言い様がなくて、そもそも次も組むか分からないのだが、というか本来は先輩が指揮を執る立場の筈なんだが、更に言えば遠慮したいんだが。

 

 鬼崎きらら、強力な冷気を操る上級生。

 前回と今回は何とか回避できたが、さながら爆弾低気圧に等しい先輩を相手に、俺は今後も無事に過ごす事が出来るのだろうか?

 

 

ふうま父子二代の女難  第十三話

 

 

「ふ~ん、それできららは欲求不満な訳だ」

「ちょっと!なお、人を痴女みたいに言わないでくれる!」

「(そう聞こえてしまうのは事実)」

「狐路まで、そんなんじゃないに決まってるでしょ!」

 まったくもう、今の私には強くなることが全てなんだから。

 それなのにコソコソした任務が続いてて、腕の上げようがないわ、そもそもどうして私があんな弱そうな奴と組まなきゃいけないのよ、蛇子達は可愛い後輩だけど一人で充分なのに。

「しかし、そのふうま君だが、使えると思わないかい、コロちゃん?」

「(うん、聞いた限り素質あり)」

「はあ?どこがよ、臆病者なだけじゃない」

 不要に思える程にしつこく周りへの警戒を指示するし、単独行動は絶対に認めないし、とにかく事細かいんだから。

 でも私がそう言ったら、なおが溜息をついて両掌を上に向ける、何よ失礼ね。

「きらら、悪いが僕は彼を支持するよ、不要な戦闘は避けるべきだね」

「(彼が正しい)」

「な、何よ、二人して」

抗議するけど容赦なく流されて、挙句には二人が所属してる風紀隊に勧誘しようかなんて話してる、面白くない!

 ・・実はいつも任務後に貰ってた御小言が無くて褒められたのも事実なんだけど、・・仕方ないでしょ、男なんて認めたくないんだから。

 だって私は・・・。

 

 

 例によって校長先生に呼び出されたんだが、用件は鬼崎先輩の事だった。

「成程、そんな過去が」

「ええ、勝手に話すのは申し訳なくて酷い事だけど、それでも彼女には支えてあげる者が必要なのよ」

 母親を実の父親が殺した、か。

「・・そうですね、でもどうして俺なんですか?」

「フフ、君が適任だからよ」

 いや、そんな迷いの無い笑顔と言葉を向けられても、そもそも理由になっていない。

 だけど知ってしまった以上、何もしないのはなあ。

 今のままだと、碌な未来しか想像できない。

 正直あんな目立つ先輩をどうして調査系統の任務に派遣するのか疑問だったけど、確かに変わり身の術を持っているなら侵入とかには有用だろうし、今のままじゃ宝の持ち腐れだ。

 それだけでなく自分で自分の選択肢を減らして行動を縛るのも、いざという時の命取りに為りかねないだろう。

 どうしたもんかなあ、人の心に小細工なんて逆効果も甚だしいし、信頼なんて一朝一夕で築けるもんじゃないだろ。

 ゲームや漫画なら命がけで守って信頼を得るのが定番だが、そんな御都合主義な展開になる訳ないし、俺も命は無事でかつ大怪我しなきゃいけないなんて流石に御免だ。

 地道にやっていこう、きっとそれが一番近道だ。

 そう考えてコミュニケーションを取ろうと先輩の教室に向かったんだが、何故か二人先輩が追加されて話す事になってしまった。

 

 

「君が噂のふうま君か、僕は穂稀なお、よろしく」

「(死々村弧路、コロでいい)」

「あっ、どうも、ふうま小太郎です、穂稀先輩、コロ先輩」

「なおでいいよ。・・それにしても、コロちゃんの声が聞き取れたのかい?」

「いえ、実は唇の動きで何とか」

「読唇術かい、やるじゃないか」

「(探偵に必須、とてもいい♪)」

「ちょっと、アンタ、私に話が合って来たんじゃなかったの!」

 いきなり訪ねてきておきながら、私そっちのけで初対面の二人と仲良く会話って何なのよ!

 非常に面白くなかったけど、訪ねてきた理由が私の要求を叶える為に来たって言うから、仕方なく相手をしてあげる事にしたわ。

 男となんて本来ゴメンだけど、まあコイツ、他の男と違って私の胸に目を向けないのよね、対魔忍スーツを着用してる時でもそうだし、意外と紳士的なのよ。

 ・・でもそれはそれで腹が立つわね、私に魅力が無いみたいじゃない。

 ああもう、サッサと用を済ませなさい。

 ・・で、聞き終わったんなら帰りなさいよ、なお達と楽しそうに話してんでるんじゃないわよ。

 ホントにコイツ、何なのよ!

 

 

「てな感じでな、蛇子、すまんがフォローしてくれ」

「うん、分かったよ。でもさ、ふうまちゃんなら大丈夫だと蛇子は思うよ」

 だって、いつものパターンだし。

 最初は凄く嫌ってたのに任務が終わる頃には評価が引っくり返って必要以上に親しくなってるの、・・蛇子の予測ではきらら先輩だと後任務二回くらいかな。

 ふうまちゃんにはどんな感情であっても、一度関心を持っちゃったら引き込まれちゃうんだよね、蛇子もそうだったし。

 五車にきてからは何人目だろ、もう両手の指じゃ足りないよ。

 ・・でも、あんまり目の前でイチャイチャしないで欲しいんだけどなあ。

 ふうまちゃんが格好良かったのは分かるけど、どうして皆して二人の世界に入っちゃうかな、蛇子も近くにいるのに。

 ひょっとして蛇子は従者だから、ふうまちゃんの恋愛対象外に思われてるのかも。

 も~~、蛇子が一番多く責任取って貰わなくちゃいけない事をされてるのに~~。

 取り敢えず帰宅してからモヤモヤしつつ書いた報告書を天音さんに渡す、蛇子が得た情報は全て天音さんに伝える事になってるから。

「ふむ、鬼崎きらら、か。・・・上下関係をみっちりと教育せねばならぬようだが、一応リストには入れておこう。ご苦労だった、今後も頼むぞ」

「・・・はい」

「ん?どうした、元気がないようだが」

「い、いえ、そんな事ないです!」

「いいから話せ、判断は私がする」

 ・・これ、断れないよ、多分ふうまちゃんが関わってる事って察したんだと思う、だったら天音さんが引く訳ないし。

 だけど大人の天音さんになら相談してもいいかなって話してみた。

「成程、つまらん」

「す、すいません」

 悩んでる事を一刀両断されて謝る事しか出来なかったんだけど、続く言葉で頭が真っ白になっちゃった。

 

「蛇子、今宵、若に抱かれろ」

 

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