ふうま父子二代の女難   作: 小次郎

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第十五話  次の舞台への鐘が鳴る

「今だ!アサギ、三秒稼いでくれ!」

「分かったわ、対魔殺法・光陣華!」

「くらいなさい、SuperFreeze、必殺・凍奔征走!!」

「いっけえええええ、必殺・対魔超粒子砲!!!」

 

 といった感じで、流石は学生といえトップクラスの戦闘力持ち、力を合わせれば強大な難敵でも倒せた、・・・そう、協力さえすれば。

 最初からそうしてくれと、だが愚痴は置いておこう、今はとにかく逃げる!

「・・小太郎、そのお荷物は捨てていきなさい、止むを得ない犠牲よ」

「そうよ。・・ちょっとアンタ、必要以上にくっつき過ぎでしょっ!」

「フッフ~ン、仕方ないじゃない♪」

 俺が胸の中に抱えてるアスカに対し、無情な宣告をするアサギに鬼崎先輩。

 だが戦闘で手足を失ったアスカはむしろ身体を寄せてくる、その方が安定はするんだが、まだ撤退中なんだから揉め事は勘弁してくれよ。

「いいからアンタ達はしっかり護衛するのよ、・・特にアンタはね」

「うっ、くっ・・わ、悪かったわよ」

 少し冷えたアスカの指摘に謝る先輩、まあな、アスカが手足を失ったのは間違いなく先輩の暴走によるミスだ。

 その際に先輩もかなりの負傷をして、鬼族の回復能力をもってしても戦線復帰には時間がかかり、闘いに一人残るアサギに大きく負担を掛けた。 

 俺も動けないアスカと先輩を護るのに精一杯だったし。

 それでも素直に自分の非を謝れる先輩は根が良い人だと思う。

 戦線復帰した時に自分から俺に指示をと言ってきてくれ、おかげで後の戦闘は三人の見事な連携が嵌まって標的を鎮静出来た。

 ただ余裕が無かったのも事実で、研究施設はおろか建物全体が半壊するレベルの騒ぎになってしまい、そりゃもう滅茶苦茶に怒ったノマドの追撃部隊に現在追われている訳だ。

「小太郎、よこしなさい」

「えっ!?」

 返事をする間もなく、アサギがアスカを俺から取り上げ米俵の様に肩に担ぐ、見事な早業だった。

「ちょっと、アサギ!何すんのよ!」

「うるさいわね。私だって嫌で仕方ないけど、小太郎だって傷を負っているのよ」

「「えっ!?」」

 あ、バレてたか。

 実は肋骨の何本かヒビいってると思う、鬼崎先輩が吹っ飛ばされた時のクッションになった代償だ。

「・・ひょっとして、あの時の?」

 思い当たる事に気付いた先輩は本当に申し訳なさそうで、咄嗟だと本音が正直すぎるのに何か年上だけど可愛く思えてきた。

「痛み止めを飲んでますから、大丈夫ですよ」

「フ、フン、気になんかしてないわよ!」

「そんな直ぐに効く訳ないでしょ、ましてや人一人抱えて走り続けてたのに。もう追っ手からは大分距離を稼げたから警戒は一人でもいいわ、その代わり先輩に預けているのは貴方が持ちなさい」

 完全にアサギの判断が正しい、言う通りにしとこう。

「分かった、ありがと。先輩、預けてたの下さい」

「う、うん」

 受け取ったものは実は火事場泥棒したものだ、皆には呆れられたがな。

「・・マダム、怒るわよ?」

 そうだろうなあ、でも仕様がないさ、見ちまったんだから。

「責任は取るさ」

「・・まったく、物好きね」

「・・ホント、何よ、格好つけちゃって。・・・男のくせに・・・」

 そんなこんなで任務は完了、アスカの負傷に火事場泥棒の件でマダムにはチビリそうな程に凄まれたが、アサギ達の弁護と俺の分の報酬は半額にすることでなんとか手打ちにして貰った。

 あと打ち上げでアスカにケーキを食べさせなさいと介助を命令されたり、何故か先輩が名前で呼びなさいと言ってきて一悶着あったのだが、もう疲れたから休ませて欲しいと切に願う・・・。

 

 

・・・儚い願いだったらしい、翌日五車に戻った早々に校舎裏へ連れ出されて集団で囲まれた、いじめ、格好悪い。

 顔をかなり紅潮させて、ゆきかぜが口火を開いた。

「きりきり吐きなさい、蛇子に何をしたのよ!!」

 

 

ふうま父子二代の女難  第十五話

 

 

「ハハハハハハハ、それでボロボロになっている訳だ」

「(うんうん、実にいい、あらゆる難に巻き込まれるのは物語を盛り上げる♪)」

「いや、流石にプライベートな事で文句言われる筋合いはないと思いますよ?」

 風紀隊のパトロール中に挙動不審なふうま君を見かけたので職務質問したんだが、返ってきた答えに僕もコロちゃんも笑いが止まらない。

 人の噂も七十五日と言うけど、ふうま君の場合は一つの噂が広まりきる前に次の噂が出てくると言った感じで、顔立ちや性格も悪くないし話題も豊富で実に面白いね。

 きららとの任務はどうだったかと聞いたら、苦労したのがアリアリの渋面で黙秘権の行使、更に可笑しくなって慰めに稲毛屋のアイスを奢ってあげたよ。

「・・それで、蛇子とは実際どうなんだい?」

「(なお、詮索は駄目)」

「いいじゃないか、僕としても気になるんだよね」

 僕は可愛いものが大好きだ、周りには男のくせにと昔から言われてるけど関係ないね、可愛いは正義だよ。

 単純な性差で測れない愛が僕にはある、そんな僕に今迄とは違う興味を持たせる彼の事は是非とも知りたいのさ。

「他の奴にも言いましたがノーコメントです」

「つれないね」

 少し揺さぶってみようかと、彼のネクタイを掴んで顔を近付けて見せる。

 フフ、どんな反応を見せるかな、ほら、もう少しで唇が触れるよ。

「・・先輩」

 だけど彼は特に変わらず、小声で呼ばれると同時に彼の吐息が唇に触れて、・・・逆に硬直してしまった。

「先輩、後ろです」

 えっ!?

「なおおおおおおお!!、アンタ、何してんのよっっっ!!!」

 物凄い大声に身体の硬直が解けて振り返ったら、仁王立ちのきららがいた、さながら鬼みたいに。

 あっ、きららは半分鬼だったね。

「(面白い所だったのに)」

「ふうま、アンタそこまで節操が無かったの!なおも、よりにもよって、お、お、男同士で、キ、キ、キスしようなんて」

「ち、違う、違うんだ、きらら!ちょっと揶揄おうとしただけで、本気じゃないんだ!」

「(かなり動揺してたけど♪)」

 コロちゃん、ちょっと黙ってて!

 とにかく誤解だと言葉を重ねるけど、きららは全然信じてくれない。

 普段は良い友人なんだが、美しくない無駄にデカい脂肪を持ってるからか人の言葉が通じない時があるんだよ。

「ふうま君、君からも説明してやってくれ」

「そうよっ、ふうま、説明しなさい!」

 まったく不本意だよ、クールにスマートが身上の僕がこんな、とにかく君が原因なんだ、何とかしたまえ。

 だけど返事が返ってこなくて、苛立った僕ときららが視線を向けると、先程の場所に彼の姿は無かった。

 コロちゃんが簡潔に告げる。

「(即、逃げた)」

 ・

 ・・

 ・・・フ、フフフフフフ、フハハハハハハ!

「ちょっと、なお?」 

 やってくれるじゃないか、見事な逃げ足だよ。

「なお、聞いてるの?」

 ・・・だが、覚悟するんだね、・・・君は、僕を怒らせた。

「コロ、こいつ、どうしたの?」

 必ず僕の魅力に平伏させてあげるよ、・・楽しみにしておくんだね!

「(ウスイ本が作れるかも?)」

「はあ?」

 

 

 こた君が任務を終えて帰ってきたから、早速蛇子ちゃんとの事をはっきりさせようとしたんだけど、今のやり方だとこた君は白状しそうもないなあ。

 だから内緒で影に入って様子を窺う事にしたんだけど、また新たな疑惑が出てきちゃったよ、それも相手は男!?

 ・・そういえば、こた君のお父さんって何でもありのケダモノって噂だったよね、その血を引いているんだから有り得ない事もないかも、・・・ちょっと興味あるかな。

 とにかく蛇子ちゃんの事だけでも何とかしないと、お姉ちゃん達の行動が頭に血が昇り過ぎててドンドン過激になってるし、皆、いよいよ本気になってきたのかなあ?

 そんな訳で尾行を続行、アレッ!?そっち家じゃないよね、ドコ行くの?

 バスに乗るみたいで、仕方なく私も乗り込む、影でだけど。

 で、今度は電車、一体ドコに行く気なんだろ。

 こた君は電車に乗っている間ずっと本を読んでる、それも難しそうなの、この電車は特急だから後一時間は停まらない。

 ・・もういいや、飽きたよ、だから影から出る。

「こた君、ドコ行くの!」

「・・・さくら、いつから影にいたんだよ」

「そんな事はどうでもいいの、ドコに行くのか聞いてるの」

 さくらちゃんの言う事は絶対。

「・・・ハァ、分かった、話すからオマエも席に座れ」

 そんじゃ遠慮なく~で隣りの席に座って、スキンシップも兼ねてこた君にもたれかかる、ホレホレときめいてもいいんだよ~。

「向かっているのは実家だ、ふうま一門のアジトだよ」

 

 へええ、なかなかに立派だね。

 此処はふうま一門の研究施設らしくて、私が居ていい場所じゃないと思うんだけど、こた君が当主の許可は取ったからって事で一緒に入室させて貰ってる。

 目の前には50cm位の水溶液が入ってるカプセルがあって、その中に胎児がいる。

 その胎児の以前の名前は馬超で、こた君とお姉ちゃん達が抹殺した筈の強化人間。

「ちょっと、こた君!?」

「美琴先生、様子はどうですか?」

「概ね安定しているわ、若様の見込み通りね」

 どういう事なの、馬超ってお姉ちゃんのお母さんとブラックの細胞を使った強化人間って聞いたよ、だから抹殺する為に任務を受けたんじゃなかったの?

 まさか、ふうま一門で利用する為に嘘ついたの?だったら見逃せる事じゃないよ!

「落ち着け、さくら。ちゃんと関係者全員に話してあるから」

 あっ、そうなの?でも、何で?

 聞こうとしたら部屋に女の子が飛び込んできて、問答無用でこた君を連れて行っちゃった。

 えっと、あの子も妹ちゃんなのかな、こた君の。

「娘がごめんなさいね、若様に代わって私が説明するわ。私は桐生美琴、魔科医よ」

「はあ、どうも」

 後でお姉ちゃんやむっちゃんに話したら物凄く驚いてたよ。

 あの変態、桐生佐馬斗先生の実の姉で、とんでもない実力と実績を誇る魔科医なんだって、それも悪い方の意味で。

 ふうま一門の有名な二大マッドの一人だって言ってた。

 取り敢えず馬超の事を説明して貰って、聞き終えた頃にこた君から連絡を貰った蛇子ちゃんが来てくれて、今日は蛇子ちゃんのお世話になる事になったよ。

 

 お風呂にも入って後は寝るだけだけど、この機会を逃す理由はないよねって事で蛇子ちゃんへの尋問開始。

「それでね、天音さんに言われて夜中にふうまちゃんの部屋に行ったの」

「ふんふん」

「その、蛇子ね、訪ねたのはいいけど何も言えなかったの。・・でも、ふうまちゃんが察してくれたみたいで、優しく押し倒されたんだ」

「ほうほう」

「それで、キ、キスして、その、触れてくれて、いよいよってなったの」

「・・・・ゴクッ」

「そして」

「そして!」

「・・・墨を、吐いちゃったの」

「・・・・・・・・・・・・・・はい?」

「だから、ふうまちゃんに墨を掛けちゃったの!」

 真っ赤になって発言する蛇子ちゃん。

 ・・・ええと、つまり余りにも緊張しちゃって、恥ずかしいのに耐えられなくなって、ついやってしまったと。

 当然続きなんか出来なくて、罪の意識に蛇子ちゃんは部屋に引き篭もり、こた君も臭いが落ちるまで学園を休む事にして、だから二人して数日学園に来なかったと。

 俯いてる蛇子ちゃんに、凄く申し訳ない気持ちになってきたよ。

 もうお開きにしよう、・・・って、ちょっと待ってよ、それじゃ辻褄が合わないような、・・・そうだよ、それじゃどうして蛇子ちゃんはニコニコしてたの、まだ何かあったんだよ!

 その点を追求したら、今迄は俯いてた顔を上げて、

「ふうまちゃんね、蛇子の心の準備が出来る迄いくらでも待つって、・・これからもずっと一緒なんだからって、言ってくれたの」

 やっぱり、なんだかんだ言って、こた君て優しいよね。

 先の馬超の事も、桐生さんが言うには自然のままに心身を成長させれば暴走する事はないって、兵器として利用しようと無理な成長をさせるから歪んで危険な代物になるんだって。

 こた君は「生まれた者に罪なんて無い、罪は行いが全てだ」って弱り切っていた馬超を保護した。

 その行為は対魔忍として失格かもしれないけど、だけど校長先生やマダム、それにお姉ちゃん達が最終的に認めたのは、皆にその気持ちがあったからだよね。

 うん、私だってその方がいい。

 幸せそうな蛇子ちゃんが羨ましいなって思いつつ、少し胸がチクりってした気がした。

 ・・実はこた君の事、お姉ちゃん程でもないけど、私も警戒はしてたんだよねえ。

 ほら、私もお母さんの事で内心では男に対して冷めた目で見てたから、表面には出さないようにしてたけど。

 でも接している内に信用できるかなって思えてきた、結構馬鹿だし。

 尤もこた君は最初から親しみがあった気がする、そこは不思議なんだけど。

 ・・・まさか、こた君と私は生き別れの兄妹じゃ、・・な~んてね、流石にそれは無いよね、こた君のお父さんて五車では無茶苦茶に嫌われてる存在だから。

 ま、それはおいとくとして、お姉ちゃんやむっちゃんには悪いけど、私も本格参戦しようかな。

 考えてみれば、どうせ一人で落ち着く訳ないもんね、こた君の彼女。

 後の事は後の事で、今は正直にイってみよう、その方が面白い気がするし。

 刃傷沙汰になる可能性は大だけど、大丈夫、こた君が頑張ればいいんだから、可愛いさくらちゃんも応援するし、ニャハハハ~。

 スッキリスッキリ、じゃ、おやすみ~♪

 

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