ふうま父子二代の女難   作: 小次郎

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第十七話  言葉で届かないなら

「兄貴、やっぱり二車の馬鹿をぶっ殺しに行くのだ!あのウンコ共、調子に乗って俺らに傘下へ入れって命令して来たのだ!」

 妹分のトラジローの言葉に周りも同調する。

 一ヶ月前にゾンビ化ガスなんぞ使って龍門のシマを奪い、更に周りへ圧力を掛けてやがる奴等は俺ら獣王会に限らず東京キングダムじゃ憎悪の的だ。

 勿論俺も八つ裂きにしてやりたいが、療養中の親父に代わって会を任せれてる責任がある。

「まあ待て、親父に手を出した落とし前は当然付けるさ。だがよ、その親父の件で世話になったふうまの若さんに、時間をくれと頭下げられちゃ無碍には出来ないだろ」

 ゾンビ化した親父に困り果ててた俺等の所へ若さんが錬金術師の薬を持ってきてくれたから親父の命は助かった。

 タイミングの良さにマッチポンプも疑ったが、事情を聴いた俺達は信用し協力する事になった訳だ。

「若さんは今回の事に筋を通すと言った、だったら俺等も信義を守らなきゃいけないだろ。それに親父も全面戦争なんかになってカタギの衆に迷惑を掛けないようにと言ってたろ、わかったな、トラ」

 実際やらなくちゃいけない事は山積みだ、親父が助かったのを知って大勢の住人や二車にやられたのが救いを求めてきてる、そんな誇らしい親父の名を汚す訳にはいかないからな。

「分かったのだ。でも二車はどうするのだ?」

 言動は幼ねえがトラジローは意外に頭がいい、ここは退いてくれた。

 そうだな、・・おっとメールか、こ、この着信音は!?

『オオカミちゃんへ by蛇子』

 ワオオオオオオオオン♪蛇子さんからのメール!!

 内容は若さんからの依頼だったが、蛇子さんからの初メール、ロック、急ぎロックだ、永久保存だ!

 そ、そうだ、返信返信、何か気の利いたセリフは、

「GAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」

 いきなりの大咆哮に振り返ったら、トラ、おまえ何で突然獣化してんだよ!

「・・オイ、ソノメール、オレニモミセロ!!」

 その後、30分以上トラと揉み合う事になったが、俺は様々な交換条件で蛇子さんのメールと登録を死守できたのだった。

 

 

ふうま父子二代の女難  第十七話

 

 

 フム、これは嵌められましたか。

 骸佐様の指示で会合の場へと赴いたのですが、誰も居らず挙句に扉を開けても室内に戻るだけで外に出られません。

 魔術によるトラップですかね、一先ず室内を隈なく探りましたところ、地下への階段を発見しました。

 ならば進みましょう、何が待ち構えていますかは見当も付きませんが、人の居た形跡が示されていますので此のまま放置されるだけではなさそうです。

 ・・それにしても、骸佐様への協力に返事を延ばしていました件で促しに来たのですが、こうも直接的に敵対の意思をみせてくる事は想定外でした。

 彼は此度の我等の行いに眉を顰めていましたが、公然と非難していた訳ではありませんからね。

 ですがセンザキを牛耳る一人の彼は、どうしても味方に引き込まねばいけません、このまま四面楚歌の状況が続きましては二車は潰えてしまいます、・・・おそらくは宗家の御館様が周辺組織の本格的な蜂起を抑えて下さっているのでしょうが、もう限界は近いでしょう。

 手段を選ばないというのは他を圧倒します、ですが先を見れば愚者の選択です。

 それは相手にも使う口実を与える事になり、そうなれば後は泥沼の戦いに突入するだけ、そして次なる相手もそうなり終わりの無くなるメビウスの帯と化します。

 時折そういう行いをする者も見かけますが、権力を持つ者の庇護があるから出来る事なのだと、最期の時まで気付かないのでしょうね。

 自由に生きていると勘違いしている裸の王様。

 ・・おっと、いけません、自嘲が過ぎましたか。

 最早栓無き事、私は私の為すべき事を全うするだけです。

 そして歩んだ先に待っていました者は、旧知の者であり私と同様に二車家の臣である家柄に連なる少年。

「よっ、尚兄、待ってたぜ」

「銃兵衛くん、久しぶりですね」

 

 

「尚之助と連絡が取れないだと?どういう事だ!」

「は、はい、骸佐様。定時連絡が無くて私から何度も掛けたんですが、全く繋がらないんです」

「そいつは穏やかじゃありませんな、他ならいざ知らず尚之助ですぜ」

 その通りだ、例え不測の事態があったとしても尚之助なら連絡を取ってくるだろう。

「尚之助は銃兵衛の所に向かった、銃兵衛には問い合わせたのか」

「そ、それが銃兵衛も尚兄と同時に行方知れずなんです。情報屋や潜り込ませている草にも当たってみましたが、二日前から姿を見ないと一致していてセンザキでも動揺が広がっていると・・・」

 三郎は尚之助の失踪を銃兵衛の仕業と確信している、だが奴自身も姿を消しているのは俺もそうだが予想外だったんだろう。

 銃兵衛はセンザキの顔役だ、不在になれば他の輩の野心が出てくるのも重々承知の筈。

 ・・・銃兵衛が素直に従わないのは分かり切っていた、だが強かな銃兵衛なら露骨な反抗は起こさないと思っていたが、・・甘く見過ぎていたか?

 そして、銃兵衛の行動の裏には・・・。

「三郎、矢車と雫を共に尚之助を探せ、多少の無茶は許す」

「はい!」

「但し、三人共、単独行動は絶対にするな、厳命だ!」

「は、はい?」

 俺の言葉に疑問を持ちながら三郎が退出する、残っている権左は半ば気付いているようで苦笑していた。

「人手が足りなくなるんですがね」

「仕方ない、幹部を個別撃破しようとするアイツの策略に乗る訳にはいかん」

 そう、銃兵衛にリスクの高い行動をさせる事が出来るのは、アイツだけだ。

 既に尚之助を抑えられた、これ以上は失えん。

「比丘尼とツバキを戻せ、俺の首を取りに来るアイツを迎撃する」

「卍鉄はどうしますか?」

「奴は信用できん、そのまま仕事をさせておけ」

「御意、ですが長期戦は拙いですぜ」

 その通りだ、殆どの幹部が動けなくなれば折角奪った領土も形骸化する。

「問題ない、アイツは直に来る」

 俺達が動けず無秩序な状況が続けば、それこそ無法地帯となり犠牲者が膨れ上がる、ゾンビ化ガス以上にな。

 ・・・そんな状態を良しとできる、アイツじゃない。

 ガキの頃からそうだった、だがその甘さが命取りだ。

 アイツを殺せば宗家とも戦争になるが、其の時はもう一度アレを使う、もう躊躇いはない。

 俺の行く手を阻む奴は、全て殺す!

 

 

 

 ひょひょ、面白くなってきおったわ。

 わしのプランではもう少し宗家との戦争は先だったのじゃが、世を何も理解しとらぬ二車の小僧は宗家の目抜けを感情のままに殺すじゃろう。

 そして再度ガスを使い宗家を滅ぼす、実に愚かよ、敵ばかり作りよるわ。

 所詮あのガキは寛大なフリしか出来ぬ小者よ、上に立つ器ではない。

 じゃがこれで宗家の血筋を滅ぼす名分が出来上がる、後はわしが残った者を纏め上げればよい、鉄華院家が世に出るのじゃ。

 さてさて、内調やノマドにご機嫌伺いしておくかの、ひょひょひょ♪

 

 

 

 

 

 

「若、揃いました」

「ああ」

 準備は整った。

 ・・・それじゃ、あの馬鹿を殴りに行くか。

 

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