ふうま父子二代の女難   作: 小次郎

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第十八話  VS 二車の幹部

 驚愕するほどの速さでキーボードを打ち込むは、ふうま宗家の御息女、ふうま時子(小)様。 

 母である時子様より受け継いだ邪眼千里眼を用い、二車家アジトのコンピューターにクラッキングをかけています。

 二車家も組織運営の心臓部であるコンピューターには相応のセキュリティーを取っている筈ですが、何ら障害になっていないようでプロテクトが次々に突破されている模様。

「完了です、二車家本拠ビルのセキュリティーは全て掌握しました。後は兄様の連絡を待つだけです」

 私、槇島あやめも心願寺紅様の従者として電子部門にそれなりに精通していると自負していますが、このまだ幼いともいえます外見の少女には諸手を挙げて降参ですね、正に天才です。

「御見事でございます。どうぞ、お飲み物をお持ちしました」

「ありがとうございます、頂きます」

 宗家の御息女であります時子(小)様が心願寺家のアジト内において作業を行っていますのは、二車家の暴走を止める為にと宗家の若様が紅様に助力を願われた為で、それ故に私も一助として時子(小)様の護衛を務めています、二車家がクラッキングに気付き直接襲撃してくる事への備えとして。

 ですが此処には警備している配下の者が多勢におり、更には先代当主でありふうま八将でもありました幻庵様までもがいらっしゃいます、例え二車に居場所が知れたとしましても全く問題は無いでしょう。

 これ以上に安全な場所など在るとは思えませんが、それでも私にまで時子(小)様の護衛を依頼された若様は中々に過保護ですね。

 その若様は紅様達と共に二車家アジトに向かっています。

 準備は全て整えられ今日中にケリを付けると仰っていました、若様の行いを目の前で見ました私にその言葉は大言でも虚言でもなく、実際その通りになるのでしょう。

 今回の二車家の行いは看過できぬ事ですが、紅様は心願寺家当主としては軽々に動く事も出来ず、相当に苦々しく思ってられました。

 そこへ若様が、宗家次期当主ではなく心願寺家当主に対してでもなく二車家当主にでもなくて、ただ幼馴染みを助けたいという個人的な願いを持ち込まれ、義を旨とする紅様は友人の為なら致し方なしと大義名分を得た訳です。

 もっとも個人の想いが多分を占められているのは周知の事実ですが、私達は温かな目で紅様を見守らせていただいています。

 ・・・しかし、

「時子(小)様は此度の若様の行いをどう思われているのですか?」

 若様の思惑は悪くありません、むしろ関係者は歓迎するでしょう。

 ですが何と言いましょうか、果たして此の行いを認めてもいいのでしょうか?

「流石は兄様と思っていますが、何か?」

 即答ですね、・・そうでした、この方も紅様と同じで若様に盲目と為られていたのでした。

 紅様のお幸せの為に惜しむものなど何もありませんが、私の力では及ばぬ事が確実に紅様の未来に待っていますね。

 ふうま宗家直系の男の血筋の者は何と言いますか、女にとって色々と・・・、まあ若様は現当主や先々代に比べれば性格が至極善良ではありますが。

 

 

ふうま父子二代の女難  第十八話

 

 

「ち、畜生、この僕が・・・」

 首筋への当身で意識を失った少年を受け止める、年齢に見合わぬその力量、次に会った時はどこまで成長しているか楽しみな事だ。

「雫!」

 私の知る御仁の孫であり鬼蜘蛛の名を継いだ娘が声を上げるが、相方である蜘蛛の足半分は切断させてもらった、命に別状は無いが戦闘は最早無理だろう。

「安心したまえ、気を失っているだけだ。それに君も無理に動かぬ方がいい、鬼蜘蛛の傷口を広げることになる」

「くっ」

 さて、私の役目は後一人。

「矢車、若者二人にはおとなしくなって貰ったが、君はどうするかね?」

 矢車弥右衛門、先までの二人と違い歴戦の強者、殺さず無力化させるは至難だが必ず果たす。

「・・やめとくわ。というか、佐郷、貴様が出てくるのは反則じゃろう!宗家の嬢ちゃんに仕えとったんじゃなかったのか?」

 その通り、私の御役目は時子(小)様の従者だ。

 だが若様より時子(小)様を通したうえで直々に頼まれ、それが私の望む未来に沿う願いとあらば受けぬ理由など何一つあろうか。

「確かに御館様からの御指示は受けておらぬが、ふうま一門への大いなる想いを託された故に馳せ参じた」

「・・・フン、宗家の若様かい」

「それに私も其方等に問いたくはあった。何故に二車家若君の暴挙をお止めしなかったのか、先代二車家当主が今の状況を望まれる訳がなかろう!」

 弾正様の下で共に戦い、真にふうま一門の為にと生を尽くした元戦友であり同胞。

 その御子息が、・・あの世に往った時に彼に何と伝えればいい。

「うるさいわ、儂は小難しい事など知らん。骸佐様が働けというなら働くだけじゃ」

 その態度に、どうやら思うところが無かった訳ではない、か。

「ちょっと!だったらどうして戦わないのよ!」 

 我等の会話に鬼蜘蛛の娘が口を挿むも、矢車は宥めるように返事をする。

「仕方ないじゃろうが。このサイボーグ男は佐郷文庫、コードネーム・ライブラリーともいって、ふうま一門最強とも言われとる忍じゃ。そんなのを相手に一対一ではどうにもならん」

「それなら私も加勢する!」

「その状態でか?そもそも儂が止めたにもかかわらず自信満々でコイツに突っかかって、それであっさりと返り討ちに合ったのはお前らじゃろうが、今さら遅いわ」

「う~~~~~~~~~」

 娘は口惜しげだが、無茶な真似を繰り返す事は無さそうだな。

 矢車は粗野ではあるが馬鹿ではない、それに仲間を大事にする心も持ち合わせている。

「で、儂らをどうするんじゃ?」

 どうやら私の役目は無事遂げられたな。

「すまぬが暫し此処で留まって居て貰いたい、なに、そう長くは掛からぬだろう」

 

 

 こいつはやられたな。

 突如本拠ビルの明かりが全て落ちて、だが室外の景色には変化が無く、明らかに此処のみを狙ったピンポイントでの襲撃だ。

 襲撃に関しては骸佐様の予想通りではあったが、相手も隠す気が無かった予定調和の行動だと踏まえると、・・怖えな。

 予備電源が働いたと同時にビル内のあちこちから急報が届き、骸佐様の傍で控えていた俺や比丘尼の婆さん、あと傭兵のツバキまでもが各所に走らざらず得なくなった。

 俺は最悪に備えて脱出ルート最重要場所である屋上の確保に向かったが、警備してたのは全員昏倒していた。

 その屋上で待ち構えていたのは、ふうま天音。

「・・よりにもよって『悪鬼羅刹』が相手とはね。いいのかい、お付きが若さんから離れてよ」

 コイツは俺が知る限りで五本の指に入る手練れだ、そういった意味じゃ血が滾ってくる相手ではあるけどな。

「安心しろ、お前が相手なら殺すつもりでいいと言われているのでな、直ぐに終わる」

「おいおい、勘弁してくれ」

 全ては宗家の若様の掌って事かよ。

「若は一門であるお前達の命を奪う気は無い、なれば当然私は若の意思に従う。それ故に他の者になら手心を加えるが、若より『槍の権左』が相手ならば私の命を優先しろとの仰せだ、貴様の実力を認め私を信頼してくださっての御言葉でもある」

「・・・・・・・・・・」 

「・・・そしてお前は、骸佐の為に必ず死より生を選ぶとな」

 ・・まいったぜ、どこまで見透してるんだか。

 俺の土遁の術も秘していて知る者はいない筈なんだが、ビルの屋上に誘き出されたってのは、そういう事なんだろうな。

 まあ目抜けなんて下らねえ中傷を言ってんのは、何も分かってない馬鹿共の戯言だって事は知ってたけどよ、その事実をこう目の当りにすると厄介極まりねえな。

「私も久しぶりに本気を出せる相手を得て気が漲っている。貴様も若に認められているのだ、早々と死ぬは若への侮辱と心得ろ」

「色々と間違っていないかねえ」

 何のかんの言ってても、結局は自分の主の称賛じゃねえか。

 俺と同じで主への忠義に生きている者だが、傍から見たら俺もこんな感じなのか?コイツと同類に思われんのは流石に遠慮してえんだが。

「では、いくぞ」

 ・・おっと、軽口もここまでだな。 

 静かに構える天音に冷や汗が流れやがる、こりゃ余計な事を考えたら即終わりだ。

 ・・・骸佐様、申し訳ありませんが、ここからは執事ではなく一匹の狂犬に戻らせていただきます。

 

 

「して、我等のお相手は貴女達という事ですか」

 心願寺家現当主の心願寺紅、そして紫藤家が娘の紫藤凛花、二車家と並び、ふうま八将に連なる家門の血筋。

「比丘尼殿、お久しぶりです」

「このような形でお会いする事は残念ですが」

 この二人が動く事は予想の範疇でしたが、姿を隠さずに現われるのは思慮の外でした。

「己が立場を忘れていてか?二車は心願寺と紫藤を敵と見做しますぞ」

 此度の二車に対しては宗家を含め他家は干渉を控えていました、なのに二車家の本拠地を混乱に貶めている者と同行し手を貸したとあっては、最早言い逃れは出来ません。

「今すぐに引くならば見て見ぬ振りをして差し上げましょう。今後は斯様な軽はずみな行いは慎むようにと長く生きた者としての忠告です」

 心の思うままに生きるは若者の特権ゆえ否定はしませぬが、それだけで世を通らぬのです。

「・・・私達は、同門であり幼馴染である友が誤った道に進むのを止めに来た」

「自身の立場など百も承知です。ですが動かねば生涯の悔いとなると、そう判断し参りました。比丘尼様、貴女の上辺の忠告など私達には届きません!」

 二人が構えます、・・やはり引きませんか、困ったもの。

 それに上辺とは、言ってくれるものです、あの童たちも何時の間にか大きくなっていたのですね。

 先程、小憎らしくも堂々と骸佐様の所へ歩み向かった宗家の若様も。

 ・・・二車家においての呼称、宗家に血筋でありながら邪眼に目覚めぬ目抜け。

 骸佐様ご自身か取り巻きからのものかは分かりませんが、その蔑称を先代二車当主や心あるものは良しとせず、私としても口に出したいものではありません。

 ですがあの子、骸佐様の御心を思うと諫言もできず、今に至っております。

 ・・・如何に長く生きようとも、正しき答えだったと胸を張れたことなど私には皆無に等しい、何と情けなき事か。

「・・どうもコッチが悪者側のようだけど、雇われの身なんで悪いけど妨害させて貰うわ」

 私と共に動いておったツバキの言葉に意識が戻る、そう、今は骸佐様の為に!

「構わぬさ、我等も言葉だけで事が済むなどと思ってはいない」

「比丘尼様、参ります!」

 

 

 俺を孤立させるというアイツの思惑通りなのは分かっていたが、ビル内の混乱を治める為には権左達を向かわせるしかなかった。

 だがそれならば俺の手で討てばいいだけだと覚悟を新たにしていた所に、呼んでもいない卍鉄が来て用件を告げる。

「何だと!!それは本当か、卍鉄!!」

「忌々しい事ではありますが、真で御座いますぞ、骸佐様」

 いつもの気持ち悪い笑みを漏らさぬ程に卍鉄も慌てている、確かに最悪の報告だ。

 至急に権左達を戻して対応しなければ、そして全てが繋がる。

「クソッ、これがアイツの本当の狙いか!」

 甘かった、そうだ、アイツの真の恐ろしさは・・・・。

「骸佐様?・・ヒョッ、誰じゃ!?」

 俺が許可しなければ入れない筈の電子扉が開く。

 

「・・・骸佐、チェックメイトだ」

 

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