ふうま父子二代の女難   作: 小次郎

20 / 21
一年ぶりの投稿です。
それもこれもRPGメインの話が一向に進まないから好き勝手に書こうとしていましたのに、そしたらいきなり骸佐メインの話が来て書き辛くなり、それで控えてたらまた骸佐の出番無しが続く、もう知らんということで投稿しました。



第二十話  一応決着

「目抜けよ、いま何と言った?」

「聞こえなかったのか?だったらもう一度言ってやる、ノマドも内調も此処には来ないと言ったんだ、卍鉄!」

 俺の発した言葉に泰然としていた卍鉄に初めて動揺が表れた、そしてこれまで雑魚扱いの見下しオンリーだった俺への態度が変わり、その目は敵を認識して見極めようとする超熟練の忍びのものとなる。

 ・・・それだけで場が冷たくなり、重々しい威圧から背に冷や汗が流れる。

 この妖怪爺と俺とでは忍びとして積み重ねたものが違い過ぎる、面と向かっての戦闘や駆け引きで俺に勝ち目なんてまず無いだろう。

 蛇子や骸佐も同様で、三人がかりでも無理だと想像に難くない。

 一応は対応策も講じているが、これは最終手段であって出来れば使いたくない。

 だったら、

 

「・・・卍鉄、取引をしないか?」

 

 

ふうま父子二代の女難  第二十話

 

 

 背後に控えるリーナ達は何時でも剣を抜ける姿勢を見せている、無論私も同様の心積もりで対話を続けている。

 ・・・全く何故に私がこのような真似をしているのか、今の自身の立ち位置に不満は募るが、しかし、それでも貫かねばならん。

 そんな私に問うてくるはヒュルスト、我等が偉大なるブラック様にお仕えする同胞であり、ノマドの幹部が一人だ。

 この者は手を組んでいる二車より危急の要請を受け、ここヨミハラより東京キングダムへと出向く直前だったが、その行く手を同じノマドの一員であるこの私が遮ぎ立ち塞がり、現在の状況となっている。

「改めてお聞きしますが、どうして私の邪魔をされるのですか?・・理由をお聞かせ願いたいのですがね、魔界騎士イングリッド殿」

 言葉は丁寧だが不愉快さを隠し切れぬヒュルスト、だがそれは此方も同じ事。

「耳が遠くなったか?二車への干渉を認めぬと言ったのだ、今度こそ聞こえたか、ヒュルスト!」

 我等の問答に互いの部下達の殺意が場を覆い始める、一触即発となったこの状況。

 どちらかが退かねば内部抗争の引き金と成るやもしれん、が、それでも私から退く事は絶対に無い!

「・・・理解できませんね、ノマドへの利益を提供してくれてるのですよ?」

 であろうな、ゾンビ化ガスの実地使用データや他にも馬超なる強化人間を二車から譲り受けたともあった、よりにもよってブラック様とあのアサギの細胞を用いていたと、フザケおって、万死に値する。

 尤も間抜けな事に研究施設は襲われ、実験体を失い設備半壊との事だがな。

「愚か者が!貴様と二車との繋がりは既に世の周知だが、事の起こりを貴様が唆したとあれば話が違う。現在の二車への非難がそのままノマドへの非難となるのが分からぬのか!」

 半月程前に二車家とやらが、東京キングダムにおいて五強の一つである龍門から領土簒奪を行ったのは耳にしていた。

 人族同士の争いゆえ関わり無き事と流していたが、先日に私を訪ねてきた者から事の裏を知らされた、この目前の愚か者がお得意の謀を用い、二車にゾンビ化ガスの使用を促したのだと。

 訪問者の放置出来ぬ言葉に急ぎ私も調べ上げたが、その者の言は何一つ偽りなく、挙句このままヒュルストを放置するならば、真実を世に公表すると脅してきたのだ、この私に対して!

 ・・・我等ノマドに悪評は珍しくなくとも、流石に限度というものがある。

 ゾンビ化ガス使用の共犯者とあれば表社会にての反発は必至、要らぬ敵を増やす事に繋がり、それこそ国家レベルでの影響が起こりかねない。

 ヒュルストはノマドの権威に逆らう者などいないと考えているのだろうが、力で押さえつける事は一見上手い手の様で隙間だらけ、存外脆い物なのだと私は知っている。

 そもそもノマドに籍を置く者にはブラック様への忠誠以外に共通する理念など無いと言っていい、個々に好き勝手している者が溢れており幹部ですら余程の事でない限り協力などしない、故に派閥ごとに距離を取るのが基本スタンスで干渉する事は互いに避ける、・・・だが此度はそうはいかん!

 ヒュルストのブラック様への忠誠は腹立たしくも疑わぬが、その増上慢な精神が行動にも現れる為にか、企てた事は直ぐに穴が開き破綻させる事が多く、此度も例に漏れていない。

 しかし皮肉な事にヒュルスト個人の非常識さは周知の為、これ迄の悪趣味かつ傍迷惑な行いはノマドと別で認識されていた。

 だが二車のゾンビ騒動は規模が大きく、無関係な多くの一般人を巻き込んでいる。

 事の真相が世に漏れれば、流石にノマドへの追及は避けられまい。

 例え表立った動きは無くとも、水面下の敵が顕現するのは想像に難くない話だ。

 だからこそ訪問者の交換条件を呑み、こうして直々にヒュルストの制止に来たのだ。

「・・・仕方ありませんね。魔界騎士殿が態々おいでになさった事ですし、貴女のお顔を立てて手を引くことに致しましょう」

 ヒュルストは目を反らしていた事を突き付けられた為か、もしくは面倒になったのか、如何にも感謝しろという感じで言葉を並べ始める。

 魔剣ダークフレイムで燃やし尽くしたい衝動に駆られるが、・・残念だがそうもいかん、こ奴にはして貰わねばならぬ事が在る故に。

 私もすべき事が山積みだ、一刻も惜しい程に、そう、全てがあの者の掌で踊らされている。

 ・・・おのれっ、ふうまの跡継ぎめ!

 以前に出会った折には油断ならぬ者と思っていたが、立場も顧みずにぬけぬけと敵地を訪れ事の収拾に私を巻き込み片棒を担がせるとは、だが他の選択肢は既に無く、こちらにとってのメリットまで提示してきた以上、提案に乗らざる得なかった。  

 あの忌々しい現ふうま当主である父に劣らぬ奸智。 

 これはもう決定事項だ、父親共々、ブラック様の御為にも必ずや燃やし尽くしてくれる!

 

 

 東京キングダムへの唯一の陸路である掛橋、いつもなら賑わっているところでしょうけど今は静かなもの。

 アチラは大騒ぎの最中でしょうけど、残念ながら今夜の私達の役目は橋の門番。

「アサギ様、どうやら来たようです」

「そのようね」

「ニャハハ、お祭りへの途中参加はダ~メなんだよね~」

 通路上の私達を見咎め、何台もの装甲車が停まり兵士たちが降りてくる。

 完全装備の歩兵部隊のみならず、十体以上の強化外骨格、それなりの数ね、暴徒鎮圧などといって兵器や部隊の実地試験をしようってところかしら。

 腐った政府を体現したかのような内調の神田旅団とやら、聞きしに勝る外道のようね。

 指揮官らしきサイボーグ大男が声を掛けてきた。

「貴様、井河アサギだな?一体何の真似だ、五車は我等内調の敵となる気か?」

「あら何の事かしら?私達は騒動の起こっている東京キングダムの治安維持を行っているだけ、敵だなんてとんでもないわ」

 私達は対魔忍として当然のことをしているだけ、余計な部外者を入れない為にね。

「ならば我等とて同じ、そこを通して貰おう、どくがいい」

「それは聞けないわね。ただのデモ活動にそんな重装備の兵士が現われたら、それこそ逆に火種となりかねないわ」

 いま東京キングダムでは小太郎の扇動したデモ活動でお祭り騒ぎの真っ只中、呆れはしてるけど無用な血を流させない為のものだもの、私としても悪い気分じゃない。

「最終通告だ、どくがよい!」

 デカ男の声と共に兵士たちも構えを改める、あらあら、強行突破する気の様ね、解り易い事。

「アサギ様」

「ええ。紫、手加減は不要よ。武器を持たない一般人に銃を向けるようなテロリストにはね」

「はい!」

 蟻一匹、通さないわ! 

「死・ん?・・待てっ!!」

 いざと思ったら、何かデカ男が一人芝居を始めて怪訝に思ったけど、どうやら連絡が入ったみたいで通話を始めたわ、そして部隊に撤退の指示を出す。

 こちらを睨んだ後にお決まりな捨て台詞を言ってたけど、記憶に留めておく価値は零ね。

「アララ、すんなり帰ちゃったね。サクラちゃん驚き」

「確かにな、どう思われますか?アサギ様」

 わからないわ、・・・でも、

「・・・どうせ小太郎が何かしたんでしょ、・・・私達に頼み事をしておきながらも裏で何かを、ね」

 まったく、本当にまったく。

「あっ、何か凄い納得」

「ハァ、ヤレ男め、本当にアイツは・・・」

 

 

 傭兵のツバキという者が両手を挙げ、もう戦意は無いと意思表示してきました。

「降参よ、一応給金分は働いたと思うしね」

 私の見たところではまだまだ手を隠しているように思えますが、これ以上の闘いを望まないのは私も同様ですので降参を受け入れます。

 比丘尼様の御相手をしている紅さんの闘いは継続中ですが、助力は無用の様子で流石ですね。

「ふう、それにしても貴女たちの雇い主って随分変わっているのね、正直なところ闘う気を失くすわ」

「雇い主ではなく友人ですがね、まあ言わんとすることは分かります」

 ふうま一門に連なる紫藤家の娘として、宗家の小太郎くんとは幼少の頃からの付き合いですが、昔から彼の発想は理解の範疇を超える事が多々ありまして、ですから幾分かの耐性があるんですよ。

「ねえ、貴女達この後どうする気なのかしら?ヤバイ事になりそうなら退散しようと思うのだけど」

 小太郎くんの住民を矛であり盾とした案。

 凡そ正義を為す立場の対魔忍としては素直に受け止め難いのですが、この案以外ではどうしたって血生臭い方法しか無かったとも思いますし、・・少なくとも私には思い付きません。

「後処理については話がついていると聞いてるから、下手に単独で動かない方がいいと思うわ。逆に目立たない場所では不埒な真似をする者が出るかもしれないから」

 カランカラーン!

 甲高い音に視線を向けますと比丘尼様の錫杖が地に落とされていました、どうやらあちらも終わったようですね。

「・・・見事、です。・・・さあ、お斬りなさい」

「・・・比丘尼様」

「比丘尼様!貴女は「待て、待ってくれ、紅、凛花!」

 ・・・骸佐・くん?

 

 

 

 

「御館様、二車家の件ですが、先ほど小太郎が収めたようです」

「・・・フン、やっとか、まったくチンタラしやがって。それで?」

「はい。市民には酒が振る舞われお祭り騒ぎになっていると、二車の放棄したシマに関しましては、獣王会、ペルソナに少々の譲渡がされ、大部分は龍門の支配下に戻るとの事で話がついているそうです」

「よし、時子、この騒動で取り込んでいた連中を使って改めて龍門のシマを奪うぞ。あの馬鹿の名も上手く使え、今回の事で住民の心象が悪くないだろうからな」

「御意、ですがあの子が怒りませんか?」

「知った事か、アイツにはこれからも働いてもらう、俺の駒としてな」

 

 

 

 

 卍鉄が去り、そして骸佐も出て行った部屋で俺は床に背から身を投げ出す。 

「痛つつ、あの野郎、ちょっとは手加減しろよ!」

「まったくもう、殴り合って仲直りなんて、一体いつの時代のドラマなのって、蛇子呆れちゃう」

「別に仲直りなんかしていないだろ、俺だってアイツにムカついてたから殴っただけだ」

 きっちり3発は入れてやった、ざまあみやがれ。

「ふうまちゃんが素手で骸佐ちゃんに勝てる訳無いでしょ、ホントに二人とも素直じゃないんだから」

 フン、殴られた8発は倍返ししてやる予定なんだよ、俺の執念深さは海より深いぞ。

 骸佐め、次に会った時は覚えてろ、・・・とはいえ当分会う事は無いだろうが。

 ・・・ま、とにかくこれで最悪の事態は免れたかな。

 元々俺は今回の騒動を耳にした時から、骸佐を知る者として、どうしても違和感が拭えなかったんだよ。

 骸佐の決断で行使されたのは間違いないだろうが、ゾンビ化ガスの使用で領土奪取するなんてのは非道の手段としても外れ過ぎだ。

 そもそも骸佐を始め二車の幹部陣は一級の忍びであり誇りを持つ連中で、有効とは言えゾンビ化ガスの様な外道な手を使おうとする気質じゃない。

 ならばそれを唆した奴がいると自然に行き着く、そして探ってみれば予想通り該当者が二人いた、それがヒュルストと卍鉄だった。

 そうとなれば事を治めるには、骸佐とヒュルストと卍鉄、三者それぞれへ対応策を講じる必要があって、その為にあちこち頼る事になった、どんだけ借りを作った事やら、今後の返済が大変そうだ、ハァ、やれやれ。

 ・・・うん、室外から複数の足音が、誰か来たか?

 現れたのは天音、時子(小)、紅、凛花、あやねさん、ライブラリーの協力してくれた面子で、皆の顔を見て改めて終わったのを実感する。

「若、二車の連中は全て逃走した様子、流石は我が主、この天音、執事してこれ程に鼻が高きことは・・・・・・・若ァ、その御顔の傷はっ!!あ奴等ァ、皆殺しにしてくれるっ!!!」

「待て待て待て!蛇子、紅、天音を止めてくれ!」

「無茶言わないでよ!!」

「いや、天音さんが正しい、私も義によって加勢に行く!」

「・・・・・兄様、御指示通りに二車家の秘密口座には手を出しませんでしたが、時子(小)はやはり手落ちだと思いますので根こそぎ回収いたしますね。あっ、そうでした、ついでに莫大な借金を科しておきましょう、うふふふ、では兄様、失礼しますね」

 時子(小)!?それをやったら二車の息の根が止まっちまう、赦してやって!

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。