ふうま父子二代の女難 作: 小次郎
此処はふうまの保養地のひとつである温泉で、今回は皆で湯治に来ている。
アサギがノマドとの件で負傷している事を親父が耳にして、施設を利用していいと伝えてきたからだ。
あの鬼畜親父が善意で言う訳がない、何か企んでいるに決まっていると断ろうとしたが、時子母さんからも薦められた以上は是非もなく、それでもアサギは受けないだろうと思ったがアッサリ了承し、さくらと紫も一緒だ。
蛇子と天音は用事があり留守番、ご機嫌を取る為の土産は厳選せねば。
アサギ達は早速風呂に向かったが、俺はどうにも警戒感が納まらなくて室内を調べてみる、たが何もなく杞憂だったかとようやく安堵した。
・・俺も風呂に行こう。
脱衣場で服を脱ぎ、露天風呂への扉を開ける。
アサギ達は丁度身体や髪を洗っていて、入ってきた俺に気付く。
「よっ、まだ浸かってなかったんだな」
もっと後で来るのかと思ってたのか、三人共固まっている。
・・ふむ、流石に親譲りで抜群のプロポーションだな。
おっと、ムスコが元気になったぞ?
事に及んでいるならともかく肉親の裸を見ても何とも思わないが、身体は本能的に反応したようだ。
それを見て三人は軽く悲鳴を上げたが、まあ許せ、生理反応だ。
俺は湯船に近寄り掛湯して入る。
あ~、気持ちいいなあ。
風呂を堪能していたら後ろでバタバタと音がして、振り向いてみたら三人がいなくなっていた。
急用でも思い出したのかと扉に目を向けていたら、ド派手な音を立てて扉が開きバスタオルを身体に巻いた三人が再び入ってきて、何故か湯船に入ってきて俺を取り囲む。
「・・・ヤレ男、何か言う事はないか」
「あるよね、当然あるよね!」
「一応聞いてあげるわ、・・結果は変わらないけどね」
・・・何か怒っているような、確かに肉親とはいえ元気なムスコを見せてしまったのは拙かったか。
しかし、この反応、ひょっとして三人共、まだ処女か?
だったら流石にデリカシーが足りなかったか、素直に謝っておこう、だがその前に、
「湯船にタオルを巻いたまま入るのはマナー違反だと思うぞ」
ふうま父子二代の女難 第四話
温泉から帰ってきて部屋で休憩中、着信メロディが鳴ってスマホを手に取ると、見たくもない名前が表示されていたが仕方なくでる。
「おい、借りを返せ」
「いきなり何だ、馬鹿親父」
「保養地を使わせてやっただろう、その借りを返せと言ってるんだ、馬鹿息子」
俺が今すぐ一門の当主に就く方法は無いか、あれば即実行してやるのに。
「お前、露天風呂で暴れて施設を損傷させただろうが、請求書が届いたぞ」
・・その事か、だが俺は暴れていない、ボコボコにされただけで犯人はアサギ達だ。
「とにかく俺の為に働け」
畜生、絶対面倒事だ。
「・・・何をしろってんだよ」
「ねえ、ふうまちゃん、任務でもないのにどうしてこんな所にきたの?」
用事があるらしくて付いて来たんだけど、此処って東京キングダムの廃墟の多いエリアだよね、蛇子は初めてだよ。
それに此処数日、あちこちに連絡を取ってたし。
「そうね、一体何なのかしら」
「デートコースにしてはセンスが無いなあ」
「それは流石に違うだろうが、まさか人目の無い所で不埒な真似を」
アサギちゃん、さくらちゃん、紫ちゃんも疑問に思ってるよ。
「・・・お前達を呼んだ覚えは無いけどな」
皆の前で出かけるって蛇子に伝えたからね、ホントにふうまちゃんてば。
「もう少しで、・・いやがった」
・・えっ、あれって、御館様!?
どうして、と、とにかく御挨拶しなくちゃ。
「遅いぞ、それにどうして女ばかり連れてきてやがる、男はどうした」
「分かってる、時間をずらして順番に来てもらうようにしてるんだ、その方がいいだろ」
「フン、変に取り合いになるよりその方がいいか、だったら此方も一人づつ出す」
挨拶する間もなく御館様は踵を返しちゃった、アサギちゃん達も同じなので取り合えずふうま一門の御館様とだけ教えてあげる。
「ねえ、ふうまちゃん。もう教えてよ、一体何しに来たの?」
ここまで来ても言いたくないのか、溜息をついて顔を空に向けて、
「・・・見合いだ」
えっ?
「お、お見合い!?ふうまちゃん、結婚するの!?」
「貴方、まだ学生の身でしょ!」
「反対反対反対~」
「ヤ、ヤレ男、そんな大事な事はじっくりと考えるべきだ!」
いきなりの爆弾発言で蛇子達は大騒ぎ、ふうまちゃんの従者として之は反対案件だよ。
皆の言う通りまだ早いよ、まだ修行中の身だし、もう少し経てば蛇子も時子さん達みたいに素敵な大人になるんだから!
「落ち着け、俺のじゃない」
・・違うの?
良かった~、アサギちゃん達がホッとしてるのは気になるけど、取り合えずは良かったよ。
蛇子の立場だと御館様の決定だったら正直どうしようもなかったし。
「それなら、一体誰のお見合いなの?」
「うんうん」
「それに、どうしてヤレ男が呼び出されたんだ?」
最初の疑問に戻って、面倒臭そうにふうまちゃんが教えてくれた。
「やれやれ、お前等、鬼神乙女って魔界に住む鬼族を知ってるか?」
ふうま当主が再び姿を現し、そしてもう一人いる。
だがあの姿を人と言うには抵抗がある、全身を甲冑で覆ったようなあの姿は実は素肌だという。
それでも魔界に住む鬼族と聞けば少しは得心もいく。
魔族には我ら人と変わらぬ姿を持つ者も多くいるが、しかし細かな差異は幾らでもある、逆に魔族からすれば人は個性が無さすぎるとも言えるだろう。
姿形はそこまで重要ではないのだ。
ある意味では人より魔族の方が他者に対し平等に接している、尤もその分、強さに関しては絶対の差別を持つが。
彼女等、鬼神乙女は自分より強い男と子を成すとの事だが、個々が余りに強く相手に出会えぬ内に戦死してしまう者が多いという、悲しき運命にあるそうだ。
それ故、鬼神乙女と。
だが現ふうま一門当主は本来一人しか番えぬ彼女達を何と二人も娶り、子を成したそうだ。
その特別な縁から彼女達に相手を十年以上紹介し続けているという。
条件が本当に厳しいので最近は相手候補が見つけられず、それで小太郎にいないかと連絡してきたのが今回の顛末だった。
「御館様、見直しました」
「うむ、二人を娶った事に関してはコメントに困るが、鬼神乙女たちの幸せを十年以上後押ししてるのは立派な行いだ」
「ただの助平親父だと思ってたけど、いいとこあるんだね~」
敵対していた母さんと色々あったと聞いてたし、耳にした評判も酷いものだったけど、噂に過ぎなかったのかもしれないわね。
そして小太郎が男性を紹介する。
「こちらマッスル団のボスである、マッスルジョーさんです」