ふうま父子二代の女難   作: 小次郎

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第五話  鬼神乙女のお見合い(下)

「何と、この私の完全無欠の健康ボディに傷をつけるとは!いいでしょう、貴女は私の子を孕むのに相応しい女性です」

「そ、そんな情熱的な言葉で、プ、プロポーズしても、わ、私に勝てないと駄目なんだからね!」

 キャーキャーキャー、生でプロポーズなんて初めて見たけど、テレビのドラマなんかよりずっと素敵!

 建物が粉砕されたりアスファルトが陥没したり、臨場感が半端じゃなくてスッゴク盛り上がる。

 花束を持ってや指輪を出したりするのも好いけど、やっぱり気持ちを伝える情熱が大事だよね、女の子は男の子に一番そこを求めてるんだから!

 あっ、鬼人乙女さんがマッスルジョーさんの胸に飛び込んで、抱き合ってる。

 良かった、二人は遂に結ばれたんだね、感動だよ!

 

「なあ親父、あれって鯖折りじゃないか?」

「まあ、二人とも幸せそうだし、いいだろ」

「・・次、いくか」

「・・そうだな」

 

 

ふうま父子二代の女難  第五話

 

 

 先程の闘いは凄まじかったが、此度も負けてはいない。

 日本の甲冑を身に纏いし巨漢。

 常人では持ち上げる事すら不可能と思える巨大な金棒を手足の様に扱い、一振り一振りが暴風と化す恐るべき攻撃を繰り出す僧兵、千住院弁慶殿。

 前の二人は戦闘中よく言葉を交わしていたが、こちらは無言だ。

 かなりの傷を双方負っているが、闘志は衰えることなく闘いは続く。

 だが遂に決着が付く、弁慶殿の前に鬼神乙女が膝を付いた。

 見事な勝負だった、お二人はこれで心置きなく夫婦となるだろう。

 ・・それなのに、弁慶殿が背を向けた、何故だ?

「儂は為さねばならぬ事がある身、妻は持てぬ」

 そんな、私には分かる!弁慶殿は確かに鬼神乙女に魅かれていた、最初は能面だった顔が時が経つほど笑顔になっていたではないか。

「承知しております、貴方様の道をお止めすることなど出来ない事を、私には・うっ・・・」

 なんてことだ、二人には確かな絆がある。

 だがそれ故に結ばれることが叶わないのか。

 そして弁慶殿は去ろうとし、・・だがその歩みが止まる。

「・・儂の我儘だ、・・だが告げたい、・・・儂と共に、来てくれぬか?」

 あ。

 鬼神乙女が弁慶殿の背中に抱き着く。

「はい、はい、どこまでもついてまいります」

 素晴らしい、私達は感動で心を満たされ、夕陽を背にお二人が連れて去るのを見送った。

 ・・比翼連理、私もいつか・・。

 

「・・まだ昼だよな?何で夕陽が?」

「能力を使って演出したんだろ」

「・・次で最後だ、とっとと終わらせる」

「同意だ」

 

 ・・これは厳しいわね、余りにも実力に差がありすぎるわ。

「頑張れ~、五車学園の用務員のおじさん!」

「ファイトだよ!」

「諦めてはいけない、必ずチャンスは来るぞ!」

 さくら達が必死に声援を送っているけど、一方的なのは変わらない。

 三番手、五車学園の用務員で沼津・なんとかさん・といったかしら。

「俺の嫁になってください!!泥遁の術・泥人形!」

 十体近くの泥人形が現われたけど、この鬼神乙女はレーザーを使い瞬時に破壊、いや塵とする。

 地面を泥化させて地の利を取ろうとした作戦も、身体を浮遊されては意味が無いわ。

 ただ身体を泥化させるとほぼノーダメージらしくて、それで何とか戦闘を継続出来てるけど、決め手に欠けて文字通り泥仕合となってるわね。

 絶えず嫁にと訴え続ける気概は買うけど、鬼神乙女の心には届いていないかしら。

 

「おい、このままじゃ広範囲攻撃で蒸発させられるぞ?」

「仕方ないだろ、鬼神乙女の外見を気にしなくて、更に強い猛者なんて早々いるもんか!」

「ヤレヤレ、仕方ねえな。駄目だった時はお前の嫁にしろ、俺の魔門で力を奪っとけば勝てるだろ、後は得意の口先三寸でなんとか納得させとけ」

「ふざけんなよ!次を待ってもらえばいいだろ!」

「無理だ。今回の三人は特に拗れた奴等で、もう待てねえって直談判してきた奴等なんだよ」

「だったら親父が娶れよ!」

「ブリュンヒルドとロスヴァイセの二人だけでどんだけ大変だったと思ってんだ!セーフハウスを何軒潰したか分かってんのか!?」

「親父が女絡みでセーフハウス潰すのなんて日常茶飯事だろ!!」

 

 御館様、サイテー。

 蛇子の評価は奈落の底だよ、地下300メートルのヨミハラを突き抜けたよ。

 皆も白い目を向けてる。

 庇う気は全然無いけど、でもこのままじゃ、ふうまちゃんが。

 

「・・・ま、一応アドバイスはしといたけどな」

 

 遂に業を煮やしたのか、鬼神乙女の眼前に眩しい程の光が集まっている。

 脅威を察したのか用務員さんは防御の為に泥の鎧を身に纏う、でも鬼神乙女は構わずにレーザーを射出した。

 光が収まった後の残った景色には、蒸発したのか泥は全て消え失せていて、大きく抉られた地面だけが残っていたわ。

 ・・・用務員さんの姿は、無い。

 覚悟の上での勝負、分かっているけど、でも余りにも悲しい結末。

 鬼神乙女の静かに佇む姿から、その胸中を窺い知れる事はなかった。

「!?」

 突如、鬼神乙女を中心地に地面が泥化していく。

 勝負は付いたと体の浮遊を解いていた為、地続きになった足から泥に拘束され身動きの取れなくなった所に、同じく泥の中から現れた用務員さんが背後を取った。

 

「おい、どういう事だ?」

「泥は熱に弱いだろうけど、粘土なら耐えられるんじゃないかって言っただけさ。確信は無かったけどな」

 

 地中にある粘土を泥に加えて耐熱強度を上げて、光によって視界が悪くなった際に潜んだ訳ね。

 それでも耐えれるかどうかは運任せよね?

 だけど実力差を鑑みれば、確かに勝機はそこしかなかったと思うわ。

 そして勝負あった、皆そう思ったわ。

 ・・・それなのに用務員さんは拘束を解いて、再び鬼神乙女と対峙する位置に戻った。

 ・・どうして?

「・・何の真似だ、お前の勝ちの筈だ」

 此処にいる全員の疑問を鬼神乙女がぶつける。

「・・・俺は不細工で、この年まで女性とお付き合いしたことはありません。見合いの話を持ち込まれた時はそれこそ天にも昇る気持ちでした」

「ですが貴女の御友人やマッスルジョー殿達の、真っ直ぐな気持ちをぶつけ合う姿をみて悟ったのです。俺は一度でも本気で気持ちを女性に伝えた事があったかと、容姿を言い訳にして臆病な自分を繕っていただけだったのだと」

「先程の状況はふうま君のアドバイスのおかげです、勝てたと、いえるかもしれません。ですが俺は、自分の、自分だけの力でどうしても貴女に勝ちたい!貴女に胸を張って嫁になってほしいと言いたいのです。・・・たとえ、どれほど小さい可能性でも・・・」

 ・・・勝負が再開される。

 もう用務員さんは正面から突進しかしなくて、鬼神乙女の腕の一振りに跳ね飛ばされる。

 私達はただ見届け続ける、・・・そして、おそらくこれが最後であろう子供でも躱せる突進、鬼神乙女は健闘を称えてか、胸で受け止めた。

「・・・ありが・とう・・ござい・ました・・」

 用務員さんが礼を言った。

 私達に掛けられる言葉は無くて、静寂が訪れる。

「いや、貴方の勝ちだ。貴方の心は見事に私の心に打ち勝った。・・貴方は強い人よ」

「・・えっ!」

「どうか私に貴方の子を産ませて欲しい、・・だ・駄目だろうか?」

「ハ、ハイ、どうか俺の嫁になって下さい!!」

 ワァァァァァァァァァ!!!

 さくら達が二人に駆け寄りお祝いの言葉を贈る、もちろん私も。

 本当に、自分の事の様に嬉しかった。

 

 

「フウ、どうにかなったか」

 ぬけぬけと抜かすクソ親父に言いたい事は山ほどあるが、ここは我慢する、天罰を与える人達が来たからな。

「とても素敵だったわね、アナタ」

「ああ、ふうま、お前に出会った時の事を思い出したぞ」

「なっ、ブリュンヒルドにロスヴァイセ!!いつのまに!!」

「同胞の大事よ、見届けにくらい来るわ」

「その通りだ」

 二人がなんか身体をくねらせている、あっ、これ乙女モード入ってるわ、となると長居は無用だ。

「じゃあな、親父、報酬は貰ってくぞ」

「あっ、てめえ、俺の財布を!」

「アナタ、そろそろ二人目をつくりましょう」

「待てっ、ブリュンヒルド!私は既にスタンバイできているのだ、私が先だ!」

 くわばらくわばら、俺は蛇子たちの所へ避難する。

 

 皆で飯でも食べに行こうと歩きながら、蛇子たちが俺のスマホにある画像を見て賑わっている。

「へええ、この子たちが、こた君の妹ちゃん達?」

「そうだよ、ブリュンヒルドさんとロスヴァイセさんの子で、とっても強いんだけど花壇でお花を育てたり詩集を読んだりして、とっても可愛い女の子なんだよ」

 誰かさん達も含めて雄々しいのが圧倒的に多いけどな。

「マイハニー、庭付きの白い家を建てようと思うんだが、どうかな?」

「まあ、マイダーリン、だったら私、白いオオカミを飼いたいわ」

 うぜえ、とっとと二人でしけこめばいいだろうに、幸せを見せびらかしたいのか?

「おや?アサギ様、何やら騒々しい音が先程の場所の方から聞こえてきませんか?」

「大分離れたのに、隕石でも墜ちたのかしらね、なんて冗談だけど」

 ・・・それに匹敵する事が起こっているであろう場所に、おそらく拘束されて逃げられなくなってる親父の冥福を祈って、俺は足を進めるのであった。

 

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