ふうま父子二代の女難 作: 小次郎
ご容赦願います
何も言わなくても相手の目を見ただけで気持ちが理解しあえる、そんな恋人同士って素敵だと思うの。
だから今のふうまちゃんと蛇子は心が通じ合ってる恋人なのかなあ、・・って前向きに考えた方がいいよね?だって絶対に互いの気持ちを分かりあってるから、これ以上は無いくらいに。
(蛇子!俺は席を外すから後は任せた!)
(ふうまちゃん!蛇子、急用を思い出したから後はお願いね!)
((・・・・・・・・・・))
(オマエ、俺の従者だろ!主の役に立て!)
(ふうまちゃん、蛇子の主君でしょ!家臣を護ってよ!)
((・・・・・・・・・・))
・・・うん、無理、見つめ合ってるんじゃなくて睨み合ってるし。
だって同じテーブルに着いてる二人からのプレッシャーが凄くて、とにかく逃げ出したい事しか頭にないだけだから。
・・その二人が同時に湯呑みを手に取ろうと動いて、それだけで蛇子とふうまちゃんは体の震えが止まらないよ、そして遂に火蓋が切られる時がきちゃった。
「ようこそ御越し下さいました、ですが事前に連絡の一つでも入れるべきではないかと、・・・若様の『執事』として御意見申し上げます」
天音さんの先制攻撃、でも、
「妹が兄を訪ねるのに連絡が必要でしょうか?・・ああ、『自称執事』でしたら確かに必要かもしれませんね、心に留めておきましょう」
容赦無しのカウンターを繰り出すは、ふうまちゃんの数多い妹の一人で、ふうま宗家直系の、ふうま時子(小)ちゃん!
互いの目から雷がぶつかって、背後に龍虎のオーラが見えて、室内の温度が急激に冷え込んで、・・・・誰か助けてっ!!
この二人は絶対に近付けないようにって、ふうま一門では共通の認識になってるほどで、とにかく仲が悪いの。
理由が明白だから誰も間に入れなくて、一度不用意に入った御館様は二人の完璧なコンビネーションで悶絶する羽目に、・・誰が言い始めたのかは知らないけど、ふうま一門のアンタッチャブル、って言われてる諍いなんだから!
そして一度始まったら必ずと言っていい程、ふうまちゃんが力尽きる事になるの、大体三日間くらい。
二人が同時に立ち上がろうとして、ふうまちゃんの顔色が青から白に変わりかけた時、待ち望んでた救世主が声を掛けてくれたの。
「若様、時子(小)様、おやつのスフレが出来ましたので、どうぞお召し上がり下さい。蛇子君と天音も良かったら食べてくれ」
時子(小)ちゃんの従者、佐郷文庫さんの登場。
爆発しかけた空間が一気に沈静化して皆でご相伴、佐郷さんの背後から後光が見えるよ。
佐郷さんの料理の腕は三ツ星レストランのシェフに匹敵すると言われるくらいで、出されたスフレは淡雪の様に口の中で溶けて本当に美味しい。
改めてふうまちゃんとアイコンタクトを交わして、
((今は幸せを噛み締めよう))
うん、後の事は後でだよね。
ふうま父子二代の女難 第八話
いいんだろうか?いや、確かに校長から三日間の許可は貰ったが、本当にいいんだろうか?
「はじめまして、ふうま時子(小)と申します。兄がお世話になっており、お礼申し上げます」
此処は五車学園で、盟を結んでいるとはいえ敵陣で、通学の年齢にも達していない少女が教室で挨拶をしているんだが。
そして挨拶を受けた奴等の反応は、
「うわあ、本当にふうまの妹かよ?信じられねえ」
「おい、鹿之助!」
いいさ、言われ慣れてる。
「達郎、気を使わなくていいわよ、皆そう思ってるもん」
「私、磯崎伊紀です、仲良くしてくださいね、時子(小)ちゃん」
・・妹よ、兄に対し皮肉を言ったゆきかぜには笑顔で、友好的な伊紀に冷淡なのは何故だ?
そしてクラスメートだけでなく、俺の顔見知り全員を紹介しろと言われ、学園内を説明しつつ回る事に事になった。
「可愛い~、お姉ちゃんと遊ぼっ!」
「さくら、お前の方が精神年齢が低いのではないか?」
紫、そうでもないぞ、時子(小)はしっかりしてはいるが結構甘えただ。
「・・あの兄だから、この妹ってことかしら?」
アサギ、兄が不出来だから妹が優秀、とでも言いたいのか?自画自賛になってるぞ、否定はしないが。
粗方紹介したら次は教師と、もう好きにしてくれ。
とまあ、こんな感じで時子(小)の学園訪問は概ね歓迎はされている、俺の評価と噂に大きな変動を及ぼした事と引き換えにだがな。
流石に初めてお会いする方ばかりだと緊張して疲れました。
兄様が私の状態を察してくれたのか、御友人達に一時別行動をお願いし私と二人で屋上に連れてきてくれました。
おかげで一息付けた気分です、・・兄様のお気遣いはとても嬉しいですが、そういうところが女性を惹きつけていると考えると少し悩ましいです。
尤も兄様は女性だけでなく男性にも人気があります、変な意味ではなくて皆から好かれています。
歯痒い事ですが兄様は邪眼に目覚まれていません、ですが兄様の日々の研鑽は一門全員が分っていて、腹正しい目抜けなどという蔑称には誰もが憤っているんです。
「ほれ」
「ありがとうございます、兄様」
飲み物を頂き喉を潤します、私の好きなオレンジジュース、もう、だからです、だから時子(小)は・・。
「よう、目抜け」
チッ、しくじったか。
先にも言ったが五車学園はふうま一門にとって基本敵陣、俺に対する嫌がらせは日常茶飯事で、時に度を越える馬鹿がいる。
俺だけならいざ知らず、時子(小)にまで手を伸ばそうとしたので流石に切れて殴り飛ばす。
他の連中が喚き掴みかかってきた。
幸いコイツ等は俺にのみ向かってきたので相手をする、忍術無しの肉弾戦オンリーなら何とかなる、後はどう収拾したものかと考えていたら、最初に俺の殴った奴がよりによって忍術を使って火を放って来やがった。
馬鹿野郎!!殺傷レベルじゃねえか!!
時子(小)を背に隠し、失う覚悟で両腕を盾にする、・・・だが、俺の背後から放たれた苦無によって火は消失する。
・・時子母さんの邪眼千里眼を継いだ、・・真の天才である時子(小)によって。
火を消された奴は時子(小)の仕業と知るや逆上し、懲りずに仕掛けようとして其の場で転倒する、またも放たれた時子(小)の苦無を受けてだ。
・・馬鹿の身体は傷付いていない、にも関わらず重心を崩され転倒させられた、天才と言われた母さんよりも幼くして習得した神業によって。
「無駄です、貴方はもう立てません」
・・・連中は言葉を失って、少しして蛇子たちが来たので騒ぎは収拾した。
俺は校長に報告して謝罪、お咎めは無しで済んだ。
時子(小)は賢いし物分かりもいい、自分のせいで俺に迷惑を掛けたと落ち込んでいる。
だから俺は本心を伝えるだけでいい。
「時子(小)、ありがとう」
「は・はい、これからも兄様は時子(小)が御護りします!」
・・・・で、次の日。
「時子(小)ちゃん、可愛い!!」
「時子(小)ちゃん、最高!!」
「時子(小)ちゃん、妹になってくれっ!!!」
Tokiko(small)・Body・Gard、通称T・B・Gが結成されていた。
・・・ちなみに団長は昨日の奴だった。
今後の嫌がらせに妬みの要素が加えられた訳で、・・俺の平和は何処にあるのだろうか。
「御館様、どうかなさいましたか?」
「時子(小)への連絡が取れないんだ、あの馬鹿にも、どういう事だ!」
聞いた感じですと着信拒否されていますね、時子(小)はともかく小太郎も?連絡の大事さを知っているあの子が?
「佐郷の奴は問題ないと言ってるが、やはり行かせるべきじゃなかった、クソッ!」
弱みと取られぬように普段は素っ気無く見せてますが、御館様は小太郎以外の娘たちには大変過保護です。
「ですが御館様、行かせてあげなかったら、今でもあのままでしたよ?」
「うっ!」
小太郎が御館様の命で五車へ遣された事に、時子(小)を筆頭に子供達が猛抗議して御館様に口を利かなくなってしまいましたから。
小太郎がラインでの時間を作ってくれたおかげでどうにか静まっていたものの、もう限界が来ていたからこそ時子(小)が五車に行くのをお認めになったのではないですか。
他の子達も順番が来るのを心待ちにしています。
「クソッ、何でアイツばかり慕われるんだ」
・・・・自覚が無いのが一番の問題かと、多感な子供に普段の御館様の言動は少々、私達は慣れておりますから。
・・二組、か。
既に時は深夜、若様も時子(小)様も休まれている。
「・・フン、佐郷、放っておいていいぞ、あれは若が五車に来てからの奴等だ」
姿を消している私に天音が声を掛けてくる、つまり疾うに監視者共への対策は打ってあるという事か。
「それより貴様、何故馬鹿共を始末しなかったのだ、若に手を出す輩など生きている価値は欠片も無い!」
まったく若様の事になると相変わらずだ。
「無理を言うな、若様の御立場に影響が有ろう」
「それにあの母ありてあの娘だ、若に迷惑を掛け負って」
執事である時子様への対抗心も未だ健在か。
「・・まだ、御館様の事を許せぬのか?」
天音にとって弾正様は絶対だった、疑問を持ちつつ戦っていた私と違って。
御館様は弾正様を失った我等を無条件で受け入れられ、それまでの行いを咎めるどころか厚遇し役目を授けられた。
・・言外に語られていた、ふうま一門の当主として、骨肉の争いに巻き込んですまなかったと。
「さあな、・・だが、若に会わせてくれた事だけは感謝してやってもいいかもしれん」
夜空を眺めながら微笑む天音がいた、・・もう雪解けは始まっているのだな。
「そうか。ならば時子(小)様と張り合うのも控えて貰いたいのだがな」
「それとこれとは話が別だ」
フッ、果たしてどちらが先に大人になることやら。
私も夜空に目を送る。
現状に不満が有る訳ではない、が嘗ての我等の理想にはまだまだ遠い。
・・ああ、楽しみですよ、若様。
貴方様が当主となった時、ふうま一門は、我等はどのような道を進んでいるのかと・・・。