緑のアイツ   作:くらうす

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今回は些か不快になる表現が含まれます

くれぐれも納得の上で御一読ください


生きるということ

時を戻し、リフェが天界より追放された後

 

 

 

自身の不始末により天界からの追放刑をうけた天使改めリフェは呆然としていた

 

彼女は反体制派、つまり反エリス、アクアの派閥においては中堅どころの天使だった

さぼりがちな性格ではあったが上にへりくだり、下の天使や体制派には高圧的に接していた

 

正直なところ関わりたくない部類の天使であったのだ

 

更に天使としての力量も平均的であり、本来ならば倦厭される事はあっても、優遇されるものではなかった

 

 

 

しかしながら真面目なエリスと異なる、少々不真面目な点もあるアクアには少なからずの交流があり、アクアからの信用を勝ち得ていた彼女であった

 

故に体制派の重要な女神アクアとの関係を重視した派閥の上層部は彼女の横暴を黙認した。然るべき時には女神アクアの声望を落とす為のカードとして

 

本人はその様な事情は知らずに、横暴を極める事となり結果として天界の上層部に危険視され、天使の力を剥奪した上での追放となった

 

 

なお、余談となるが彼女が追放された直後に天界にて大幅な『整理』が行われ、反体制派の上層部は身動きがとれなくなった

 

 

 

リフェからすれば、いつも通りにしていたらいきなり厳罰をくらったのである

 

「天使の力も、魔力も使えないなんて、本当に無力な人間になったの?

嘘でしょ?何で私がこんな目にあうのよ」

 

 

職務怠慢、体制への批判。この二つのみでも天界では重罪なのだが、好き放題していたリフェが解る筈もない

 

 

「な、何?か、蛙?」

 

王都付近では珍しいジャイアントトードである

 

対応策さえとれば、初心者冒険者でも討伐出来る

が、下界の事など知るはずもないリフェに解る訳もなかった

追放刑である以上、金属製の防具などない。それどころか、平服であった

 

加えて、リフェの戦闘スタイルは力によるごり押しである。修行等よりも他者を利用する事で今まではなんとかしてきた

 

当然

 

「な、なによ。私は天使なのよ。アンタみたいな下賎なモンスターなんかとは比較にならないものなの

ちょっ、舌を伸ばして何する気?」

 

 

 

勿論、目の前の小うるさい『餌』を食べる為である

 

 

「わ、わかった。下賎なモンスターなんて言って悪かったわよ。だから、ね?」

 

 

この状況でモンスターに交渉しようとするリフェだったが

 

「え、ちょっ、マジ、や、やめっ」

 

 

パックンチョ♪

 

そんな擬音のしそうな程に見事に補食されました

 

 

 

はっきり言うなら、リフェは此処で死んだ方がマシであった

 

だが

 

「おいおい、ジャイアントトード?珍しいな」

 

「いやいや。今誰か食われただろ?

助けないと」

 

「おま、マジで言ってんのかよ。弱いやつは死ぬだけだろ?ほっとけよ」

 

「そうもいかないだろ?おりゃっ!」

 

二人組の冒険者が偶々通りかかり、渋る相方を無視してリフェを助けた

 

 

「う、うぐっ」

 

「大丈夫ですか?」

 

「美人だが、粘液まみれかよ」

 

ジャイアントトードより助けられたリフェだったが、粘液まみれである。それでも心配する冒険者とリフェの容姿を気にするその相方だった

 

「あ、ありがとう」

 

「いえ、無事で何よりです

もう少し早く助けていればこのような目には会わなかったでしょうに、申し訳ない」

 

「・・・」

 

お礼は言うリフェとすまなそうに謝る冒険者

 

「とりあえず、王都まで行きましょう。そこで」

 

「悪いな」

 

 

ザシュッ!

 

「な、何、を」

 

「いやいや、こんな美人で今なら抵抗も出来そうにないだろ?お前は邪魔だから、死んでくれよ」

 

いきなりリフェを助けた冒険者を切りつけた男は歪んだ笑みで話す

 

「アンタにゃ世話になった

だが、モブキャラには用は無いんでな」

 

 

ザシュッ!

 

男は冒険者の首を切り落とした

 

「ひっ!」

 

「まぁ、そう怖がるなって」

 

仲間を殺しておきながらも全く悪びれない男

 

 

 

 

彼もまた転生者

 

皮肉にもリフェが転生の担当をしたものであった

リフェの容姿が少しは変わっていたのが幸いだったのかも知れないが

 

「アンタには怨みは無いんだ。が、転生の時に見たクソ天使に似ている自分の容姿を恨むんだな」

 

「ち、近寄らないで!」

 

「は、丸腰で粘液まみれの女に何が出来んだよ

大人しくしてるなら、殺しはしねぇ

ああ、王都ならあっちだぜ?逃げれるもんなら、逃げてみな?」

 

男は後ずさるリフェにゆっくり近づきながら王都の方向を示す。まるで意味の無いリフェの抵抗を愉しむかの様に

 

 

だが、男は気付くべきであった。リフェが男が殺した『冒険者の死体』に向かって後退りしていた事に

 

故に

 

「さてと、何時までも遊んでたら近くに冒険者が居たら面倒だ、から、な?」

 

「ふ、ふざけんじゃ、ないわよ!」

 

男は冒険者の落としていた短刀にて心臓を刺されていた

 

「こ、この、クソお、ん、な」

 

男は息絶えた

 

 

 

この後、リフェは死んだ冒険者と殺した男の装備やお金等を奪って王都に向かって行った

 

 

 

 

 

 

 

その後王都に着いたリフェは粘液まみれの体を宿で綺麗にした後で道具屋に行った

 

其処で店主に買い取りを頼み、済ませたまでは良かったのだが。天使について聞いてみたところ、エリス教徒である店主は知らなかった為に口論となり、警察へと連行された

 

連行と言っても、1日ばかり騒動の罰として警察署で過ごして終わりの筈であった

 

 

 

 

しかし、リフェは王都の至るところで自分が天使である事を吹聴して回った事により、王都の貴族の物好きが反応した

 

 

 

 

「ですから、犯罪者と言うほどではありません」

 

「しかし、軽いとはいえど『犯罪』を犯したから警察署に収監されておるのであろう?

加えて、身元引き受けもおらぬとか」

 

「そ、それは確かに」

 

「であるからこそ、貴族である私が保護しようと言うのだよ

身元引き受けが居ないのでは、何時までも収監せねばなるまいて。署長たる君にも負担であろう」

 

「・・・」

 

リフェが収監されて、暫く後に警察署へ一人の貴族が訪れた。彼はリフェの身元引き受けを要求していたのだ

 

彼は所謂『好事家』であり、珍しいものは手に入れたくなる性分だった

天使と名乗るリフェの噂を聞き付けて態々警察まで来たのである

 

「何、君や警察には迷惑はかけぬよ」

 

「明日までお待ち頂きたい。明日の解放の時間になっても身元引き受け先が見つからない場合はご連絡しますので」

 

署長の精一杯の譲歩だった

 

本人は女神アクアの知り合い等と言っていたが、かといってアクシズ教徒に確認するのも疲れる

 

『彼等には話が通じない』王都の前にアルカンレティアの警察署長を勤めていた彼はそう確信していた

 

 

一方でギルドや街中の至るところにリフェの似顔絵を掲示し、身元引き受け先を捜させていた

 

 

今は昼過ぎであり、解放の時間は明日の夕方である以上は署長たる彼にはリフェの身元引き受け先を探す義務があると思っていた

 

たとえ、貴族の意に反するとしても

 

 

「そうですな。署長である貴殿の立場を考慮すべきでしたか

承知しましたぞ。もしも引き受け先が見つからない時には連絡頂けるのですな?」

 

「必ずや」

 

「うむうむ。王都の治安を守る警察のトップが貴殿の様な人物である事は民衆にとっては心強い事でしょうな。今回の非礼については申し訳ない

ではこれにて、失礼するとしよう」

 

「ご要望に沿えず、申し訳ありません」

 

「なんのなんの」

 

 

 

こうして、リフェの身柄が貴族に渡る可能性を残したまま、解放の時間を迎える事になる

 

 




転生者とて、悪い方に転がるものもいる。という話

リフェが危うく への扉を開きかけたのはくらうすの未熟故

まぁ、ここまでお読み頂けたなら「何を今更」でしょうが


後一、二話はナタル達がお休みとなりますのでご了承ください

後、本日の活動報告にちょっとしたものを書きますので、よろしければ御覧ください

では御一読ありがとうございました

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