緑のアイツ   作:くらうす

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仕事が空いたので投稿します

今回も割と暗めな話となっております

というより温度差が激しいですが、どうぞ


現世という名の地獄 異世界という世界

あの後リフェは最低限の食事を与えられ、最低限の武器や防具を与えられて貴族の男が用意したモンスターとひたすら戦わされていた

 

「う、うわぁぁぁっ!」

 

泣き声を上げながらもモンスターを必死に倒していくリフェ

 

貴族の男もそこまで危険度の高いモンスターは用意しておらず、幸いにもリフェでもどうにかなるレベルであった

 

「痛い、痛い、痛い!」

 

モンスターとの戦いの後には必ず尋常でない痛みがリフェに襲いかかる

 

 

というのも、リフェはレベルが上がらない為に内にある器がダメージを受けているからである

 

 

以前天界の者達が話していた様に、本来ならば内にある器は経験値を得る事で拡張する筈である

 

だが、リフェは忘れがちだが『罪人』である

リフェを現界させる際にレベルアップを防ぐ為、器には固定化の細工を施されていた

 

故に限界値を越える経験値はリフェに激痛をもたらす事になる

普通の生物ならば、その時点でマトモではいられなくなるか、死亡する。がリフェは元とはいえども天使である

 

天使や悪魔は魔力で構成されている以上、魔力の扱いには精通している

 

だからこそ、リフェは何とか生きている。それだけである

 

そして時間と共に経験値という名の魔力は器から染み出していく為に激痛は収まる

だが、その魔力は全身に行き渡る頃には一般的なレベルとは比較にならないほど減衰しており、目に見える形での能力向上には繋がらない

 

レベルアップによる身体的能力の向上は全く見えないのであった

 

 

 

 

 

 

 

「閣下。あの者は本当に天使なのでしょうか?

既に相当数のモンスターを討伐させているにも関わらず、一向にレベルアップや能力向上の様子が見られませぬ」

 

貴族の男に仕える壮年の男は疑問を述べる

 

「ジェスターよ、やはり貴様もそう思うか

確かに妙だな」

 

貴族の男も同意する

 

「冒険者登録でもさせれば分かりやすいのですが」

 

「その場合アレをギルドに連れて行かねばならぬだろう。それは無理であろうよ

かと言っても騎士団に連れて行くわけにもいくまい」

 

「そうですな

それと閣下。例の話は如何しますか?」

 

「む?

ああ、あのキャベツの養殖の話か

ジェスター、貴様はどう見る?」

 

「理屈は理解出来ます

されど、実用化するまでの障害が多いのではなかろうか、と」

 

「だが、妄言と取るには些か以上に勿体ない話だろうな

 

仮に成功すれば、王国軍にも貸しが出来る上に王家にも優位に立てる可能性もあろう」

 

「閣下の言われる事は理解出来ますが」

 

 

 

 

貴族の男は王国でも屈指の影響力を持つ大貴族である。そして、現体制に公然と反発しても処罰されないだけの政治的な権力もある

 

彼は魔王軍と戦う事にほぼ国力を使いきってしまう現状に不満があった

 

時が経つにつれて際限なく増えていく戦費。進まない魔王軍の攻略。常に予算の奪い合いをする軍人と文官の対立

果ては追加の支援の為だけに隣国エルロードへと王女を嫁がせようとする一部の動き

 

停滞する魔王軍との戦いを何とかしなければこのベルゼルグ王国はそう遠くない内に崩壊しかねないと思う程度には危機感を持っていた

 

 

それ故に彼は外法とも云える『悪魔召喚』を目指しているのだ

 

絶大な力を有する悪魔だが、彼等は契約には忠実であると聞く

ならば、魔王とまではいかずとも幹部クラスを討伐させることにより、魔王軍の侵攻を弱めようとしているのである

 

その為の媒介として天使である筈のリフェを必要としているのだ

 

 

なお、正確には『強力な魔力』であり、必ずしも天使である必要はないのだが、彼等は誤解していた

 

 

 

 

 

 

キャベツ狂いとして名を馳せるレフェルは研究の為のパトロンとして王国でも屈指の権勢を誇る貴族の元に来ていた

 

一度話をした際には微妙な対応だったために諦めていたが、相手方から呼び出されたのだ

レフェルならずとも期待するのは仕方ない事だろう

 

 

「態々すまぬとは思う

で、貴殿の発案する計画はどの程度完成しておる?

また、かかる費用は目処がついておるのか?」

 

「恐れながら公爵閣下

私の計画は未だ机上の空論と云える段階でございます

しかしながら、成功は間違いないかと

費用については用地の確保、秘密を洩らさない人員の選抜が最もかかるかと」

 

「かかる費用や手間についてはこの際、貴殿は気にせずとも良い

実際にどの程度の支援が必要なのか、具体的に話せるのか?」

 

おや?とレフェルは内心首を傾げた

今までの相手とは話の進み方が明らかに違うのである

 

「具体的でございますか」

 

とはいっても相手はこの国きっての大貴族。不興を買えば唯の一般人であるレフェルにはどうしようもない

その不安から容易な答えが出来なかった

 

「・・・貴殿の懸念するところは理解は出来る

が、儂の名誉と名前に誓う。貴殿が如何なる発言をしようとも貴殿を害する事はない

それでも信じられぬならば誓約書を交わす事も構わんが」

 

「いえ、失礼しました。公爵閣下に対して失礼でありましたな。我が非礼をお許し願います」

 

レフェルの懸念を察知した公爵の決意に変わり者として有名なレフェルも謝罪する

 

「では先ず用地ですが、一般的な貴族の邸宅程度の広さは必要ではないかと愚考します」

 

「ふむ、なるほどな。確かにキャベツは活発に動き回るものだ。狭い場所では厳しかろう

となれば、それなりの警備に充てる人員が要る訳か」

 

「仰る通りです」

 

「その程度ならば造作もあるまい

ジェスターよ、用意するならばどの程度の時間がかかるか?」

 

レフェルの話に同意しながら、準備期間を同室している騎士の男に尋ねた

 

「レフェル殿。用地と柵以外に必要とするものはありますか?」

 

「当座はそれで良いかと思っております」

 

「なれば4日程頂ければ問題ないかと」

 

レフェルへの追加の注文を確認したジェスターは主君に報告すると部屋より退室した

 

「ふむ、よかろう

して、レフェル殿。キャベツの手配は如何するつもりかね?」

 

「はっ、アクセルの街から少し離れたところで数匹のキャベツが確認されたとの噂を聞きました

先ずはそれを調べるべきかと」

 

これはアクセルと王都を往き来する商人から聞いた噂であった

 

曰く、アクセルの街から少し離れた森にキャベツが居たと

 

「となれば、アクセルまで少しばかりの戦力を送るとしよう

確認され次第、追加で戦力を送る。それとアクセルの領主アルダープにも私兵を出させよう」

 

「有り難き幸せ」

 

「では、そうだな。レフェル殿にも簡易的であるが住居を用意しよう

出来る限り近くで経過を見たいであろうからな」

 

「公爵閣下のお心には感謝に堪えません

では、早速準備をしたいので今日は失礼させていただきます」

 

「うむ、ご足労かけた事感謝しよう

キャベツの事が判明次第連絡させる」

 

 

 

 

 

レフェルは公爵の屋敷から自宅に帰るまでの間、上機嫌だった

 

自身の野望が叶いそうなのだから、当然ではある

 

「まさか、公爵の協力を得られるとは」

 

薔薇色の未来を幻視するレフェルだった

 

 

 

 

 

 

一方、以前公爵からの監視の依頼を受けていた仮面の男はとある部屋で地に伏せていた

 

「あ、が」

 

「ごめんなさいね?

別に貴方の事は嫌いではなかったのだけど」

 

と美しい銀髪の女は男に語りかける

 

「ただ、ね?

どうも貴方は危険らしいのよ。残念だけど、ね」

 

「て、テメェ」

 

男は今にも視線だけで人を殺せそうな視線を女へと向ける

 

「あら、怖い

貴方にはしっかり貢いで貰ったから、このままでも良かったのだけどね?

幾ら凄んでも貴方を刺したナイフには遅効性の猛毒が塗ってあるの

意識はあっても体は動かないでしょう?」

 

女は少し気落ちした様な顔を一瞬したが

 

「あと一時間もしない内に貴方の命は終わる

本当に残念」

 

と言い残して部屋を後にした

 

 

 

 

ここはとある草臥れた宿

 

主人も今は買い出しでおらず、男を始末するには最適であった

 

「何をしたのかは知らないし、知りたくもないけどね」

 

彼女は二階から一階への階段を降りながら呟く

 

 

男は確かに『良い』人間ではないだろう。だが、彼女なりに好意を持っていた

 

だが、『命令』には逆らえない

 

 

一階に降りた彼女は焦げ臭いと思った

 

 

 

 

 

 

公爵の領地の僻地にある草臥れた宿がこの日焼け落ちた

 

焼け跡からは二つの遺体が見つかっている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この頃、アクセルの街で佐藤和真は女神アクアと共に労働に勤しんでいた

 

「おい、カズマ!次はこっちだ!」

 

「はい!」

 

カズマはスコップを片手に穴を掘っていた

 

「カズマ!水はきちんと飲めよ!倒れたら洒落にもならんからな!」

 

「うっす!」

 

同僚達と声を掛け合いながら不慣れな作業をしていた

 

元々引きこもりのカズマには些か以上に荷が重いものではあったが、それでも何とかこなしていた

 

 

「アクアの嬢ちゃん!次は向こうだから、終わったら頼むぞ!」

 

「わかったわ!もう少しで終わるから」

 

向こうでもアクアが壁に塗料を塗っていた

 

 

 

何故、異世界に来てカズマ達が建築現場で働いているかと言うと、『お金がない』からである

 

 

 

 

この世界に来たカズマとアクアは直ぐに冒険者ギルドへと向かった

 

が、登録料が払えなかった為に2人して途方に暮れていた

 

 

そこに偶然、建築現場の親方が現れカズマとアクアの話を聞いた

 

地方から来て無一文の2人に同情した親方は自身の現場で働く事を提案した

 

本来ならば、既に昼時であり半日分の給料であるにも関わらず1日分の給料を出すと言ってである

 

 

カズマとアクアは一生懸命働き、親方や同僚からも気に入られた為に今も働いていた

 

 

 

「うっし、今日もご苦労さん

カズマもアクアの嬢ちゃんもしっかりやってくれているから、少しだが給料を上げておいた

また明日も来てくれるとありがたいぜ」

 

「「ありがとうございます!」」

 

「おう。お疲れさん」

 

「「お疲れ様です!」」

 

 

 

仕事を終わらせた2人は親方の好意により、シャワーで汗を流した後、ギルドへと向かった

 

 

「「かんぱーい!!」」

 

2人で乾杯し、夕飯をギルドの隣の酒場で食べていた

 

「今日はどうだったの?カズマは」

 

「ああ。親方が褒めてくれたよ「お、いい感じに速く正確になってきた」ってさ

アクアはどうなんだよ?」

 

「やったじゃない!おめでとう

私?職長が「ムラなく綺麗に仕上がってる」って褒めてくれたわ」

 

「良かったじゃないか」

 

仕事中の話をしながら、笑顔の2人だった

 

「で、アクアには悪いんだけど」

 

「え?ああ、登録の話でしょ。別に急がなくてもいいと思うわよ」

 

「それもだけど、馬小屋ってのも」

 

「気にしないで良いのよ!

別に野宿するのだって冒険者になるならあり得る話じゃない

それに比べたら雨風を凌げるだけマシと思うけど」

 

「いや、でもなぁ」

 

アクアはこう言っているが、カズマとしては女神であるアクアにはきちんとした宿に泊まって欲しかった

 

だが

 

「嫌よ!

私は貴方の仲間なのよ?貴方が馬小屋なのに私だけ宿に泊まるなんて絶対に嫌!」

 

と言って聞き入れてくれない

その上

 

「それに冒険者になったからって直ぐにお金に余裕が出来る訳じゃないんだから、そんなお金を使う位なら貯金しましょう」

 

と言われてしまうとカズマも反論しづらい

 

「それに折角助けて貰ったんだから、直ぐに冒険者登録しないっていうカズマの主張も分かるのよ」

 

 

 

そう、カズマは親方に助けて貰った事から少なくとも一月は建築現場にて恩返ししようと考えていた

 

彼は既に家族に恩返しが出来ない状態である

だから受けた恩は返しておきたいのだ

 

その話をおそるおそるアクアにした時に

 

「いいじゃない!そういう考えなら私は賛成よ!」

 

と満面の笑みで肯定された時にカズマが真っ赤になったのは仕方ない事なのだろう

 

 

冒険者ギルドのすぐ隣にある酒場で冒険者以外のカズマとアクアが飲食しているのは割と目立つ

 

だが、誰も声をかけない

 

 

 

正確には声を掛けられないのだ

 

 

一度、美人のアクアを平凡な見た目のカズマが連れていた事と冒険者になるお金に困っていた事を知っていた金髪のチンピラ冒険者がカズマに難癖をつけた事があった

 

曰く「冒険者になるお金に困っているのに美人の姉ちゃんを連れ回すなんて良いご身分と」

 

ところが

 

「ふざけないでよ!カズマは自分のペースで頑張っているの!

貴方にとやかく言われる筋合いはないわ!」

 

と絡まれているカズマでなく、アクアが怒ってしまい、カズマは危うく殴りかかるアクアを必死に止めた事があるからだ

 

その後何とか怒りを収めたアクアだったが、この騒ぎを放置していたギルド職員にも文句を言った

 

「冒険者を管理しているなら、止めに入るくらいしなさいよ!」

 

カズマはアクアに「いや、当事者が言うなって」と頭を少し小突いたが

 

 

以来、カズマとアクアには近づかない様にギルドからも注意が出ていた

 

 

 

因みにこの注意のせいで迂闊に近付け無くなった紅魔族の少女がいたのだが、今回は割愛させて頂く

 

 

カズマとアクアの冒険者としての活躍はあと一月程後の事になる




とりあえず、戦線離脱していたVita君が蘇生したので喜びの投稿

コロナ第二派っぽいせいでまた仕事が激減しそうな予感

もう無理

暫くは頻繁に更新出来る様に頑張ります

では御一読ありがとうございました
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