これまでお付き合い頂いた皆様に深く感謝致します
最後は短くなりましたが、どうぞ
知られざる戦いは終わった。天界より追放されし哀しき天使リフェは最大の禁忌を犯し、堕天した
かの者はベルゼルグ王国屈指の公爵を始めとして様々な命を奪った
その最期にはアクセル領主アルダープすら手に掛けたとされる
しかし反逆の闇に染まりし天使は冒険者サトウカズマを中心としたパーティーにより討伐された
天上の天使すらも道を誤る事があるのだ
備えよう、心構えを。伝えよう、この物語を
私達は未来へと歩む。先に旅立った者達の思いを背負い
著者不明『始まりの詩』
堕天使との戦いはかろうじてカズマ達、冒険者の勝利となった
だが、犠牲も出た
アクセルの領主で悪徳領主と言われていたアルダープは悪魔マクスウェルを使役し、モンスターを召喚するという大悪を犯しながらも自身の領地たるアクセルの街を守り抜いた
彼の遺体は悪魔マクスウェルが地獄へと連れ去った
その際にアルダープの所有していた神器は全て女神エリスに没収されたが、マクスウェルにはどうでもいいことだった
そして
「ナタルさん、ナタルさん!しっかりして下さい!」
ゆんゆんの悲鳴にも似た声が響く
「ん、ああ、やったんだな、カズマ」
力ない声でナタルは確認する
エクスプロージョンを放った後、ナタルの意識は直ぐに落ちた
覚悟はしていた
魔王軍の幹部、ベルディアは言っていた
「貴様、何を考えている!
爆裂魔法というのは、強大な魔力を持つ紅魔族の魔力すら一撃で空にするのだ!
貴様の様に魔力の塊が魔力を失う事でどうなるか等、予測できぬ訳でもあるまい!」
ナタルは知っていた
自身が爆裂魔法を撃つ時。それは自分が死ぬ時と
だが、後悔は、ない
護りたい女性を護れたのだから
「ああ、アイツは倒したよ」
「そっか、よかったよ」
「無茶な事を」
あるえは吐き捨てる
「元々さ、俺はレタスだから、長生きは出来なかっただろうし、ロマン砲の爆裂魔法を放てたのだから後悔はないさ」
「貴方はっ!」
めぐみんは怒っていた。折角ゆんゆんを任せてもいいとめぐみんとあるえは愚か、そけっと、ねりまき、ふにふら、どどんこにめぐみんの母親のゆいゆいすらも認めていた
里の男達の説得とて上手く行くと思っていたのにである
「もしかして、貴方言葉が」
アクアは察した様である
『スキルの書』のデメリットはこれで習得したスキルを使用した場合、他のスキルを失う。である
異世界言語は転生時に最初に与えられる『スキル』なのだ
つまりは、そういうことであった
まさしく『乾坤一擲』、『最後の切り札』なのだ
「※○ヾ ○○?※」
ナタルの光を失いつつある眼は眼を泣きはらしている好きな娘の姿があった
最早言葉は分からずとも、意味はなんとなく解るのだ
僅か一年にもなるかならないかの付き合いであったが、目の前の少女はナタルにとってかけがえのない大切なヒトになっていった
実のところは自身がレタスであることを呪ったことも少なくなかった
でも、今はそれでいいと素直に思える
この娘を幸せにすることは俺には出来ないのだから
悲しくはあるし、寂しくもある
でも、最後に泣き言を言うのは嫌だ
たとえレタスの体であっても精神は男なのだから
だから、精一杯見栄をはろう
「ありがとう、さようなら」
ナタルと呼ばれ、異世界にてレタスの体で生きてきた人物の時はその刻みを止めた
その後、カズマ達はナタルの遺体を元レタスの畑に埋葬した
カズマは異世界での先輩を失った事を嘆き
アクアは自分の横着が結果として色々な悲劇を生んだ事にショックを受け
めぐみんは自身の初めての弟子で、自分のライバルの想い人が失われた事を悲しみ
ダクネスは自身の力の無さを痛感し
あるえはいざという時に役に立てなかった自分に苛立ち
ゆんゆんは好きだったヒトが亡くなったことに悲しむ毎日が続いた
それから一月程して
改めてカズマ達だけでナタル達の供養をしようとクリスこと女神エリスにも声を掛けてレタスの畑へと向かっていた
あの一件の後、女神エリスとアクアは天界を訪れ、リフェの件についての連絡が無かった事を痛烈に批判した
その頃にはリフェが所属していた反体制派は残党も含めて『適切に処理』されていた
本来ならば静観を決め込んでいた天界上層部も責任の追及を免れないところだったが、彼等は反体制派に全ての責任を押し付ける事で、反体制派の根絶と女神エリスとアクアの非難をかわそうとしていた
クリス改め、女神エリスはナタル達の墓前で謝る事を決めていたが、彼等はナタルの墓の側に来て驚いていた
地面が掘り返されている中でナタル達の墓の周囲に若芽が出ていた
それも一つ以外はキャベツの若芽であり、ナタルの墓の正面にレタスの若芽が出ていた
まるでナタルの周りに群がっていたキャベツ達の様に
墓前でそれぞれがナタル達へと報告をして終わると、最後にゆんゆんがナタル達の墓前で
(ナタルさん、今でも貴方が居なくなったなんて実感がわきません
ごめんなさい、私はまだ貴方の事を)
ゆんゆんは自然と涙を流していた
この一月はゆんゆんにとっては厳しいものだった
二日に一度は会っていたナタルと二度と会えないのである
夜中に悪夢で飛び起きた事も数えるのが億劫になる位あった
気がついたらナタルと一緒に過ごした場所に行っていた
生きている事に絶望した事すらあった
それでもめぐみんやあるえ、カズマ達仲間が助けてくれた
ゆんゆんは胸に下げている魔力のないマナタイトを触った
これは最後の時にナタルが用意していたものであり、ゆんゆんとめぐみんにとってはナタルの形見の様なものであった
(ごめんなさい、ナタルさん。私まだ、心の整理がついてないみたいです)
カズマ達はナタル達の墓の周りを今度綺麗にしようと話をしてアクセルの街へ戻る事とした
ゆんゆんは
「ナタルさん、行ってきますね」
と小声で呟いた
(行ってらっしゃい、ゆんゆん)
ゆんゆんにはナタルの声が聞こえた気がした
後に『野菜の園』と呼ばれる様になるアクセルの街から少し離れた所にある場所がある
そこではキャベツやレタスの自然に育ちやすい環境を用意し、冒険者サトウカズマのパーティーやエリス教徒、果てはアクシズ教徒も管理に訪れる
あくまでも、環境のみ準備し、人工的な養殖等は行わない事としていた
そんな野菜の園の一角に一つのお墓があった
そこにはこちらの言葉でない文字が書かれているものの殆んどの人間には読めなかった。ただ、サトウカズマのパーティーやアクシズ教のプリーストであるセシリーなどが頻繁に訪れ、お墓に物を供えたり、掃除をしていた
其処には日本語でこう書かれていた
緑のアイツが眠る場所、と
という訳で『緑のアイツ』完結となります
後は蛇足で色々と小話を投稿するとは思いますが、その際には完結のタグは消すと思います
なお、アンケートでとっていた魔王軍編はある程度のストックを溜めてから投稿するつもりです
ここよりは小話となりますので興味がない方はスルーして下さい
元々は何故かこのすばの動画を見ていたら、夢でキャベツが出てきた事から始めたこの話です
様々な方に応援を頂いたり、名前の案を頂いたりもしました
更にこの様な拙い小説擬きにも関わらず、評価して頂いたり、お気に入りをして頂いたりと本当に感謝してもしきれない位です
もう少し色々と掘り下げれば良かったのかとも考えていましたが、今の私の表現力ではこれが精一杯でした
では、最後となりますが、今までこの作品を御一読頂きましてありがとうございました!
また、機会があれば御目にかかりたく思います