廊下に出ると二組の男女が凶極刀を奪いあっていた。
男の方は東洋人風でありながらソンブレロを被っている。女の方はブロンドヘアーが腰まで伸び、胸元がはだけ艶やかさが際立つ服装をしている。
「ちょっとサザン!そいつを離しなさいよ!アタイがロウから刀を持ってくるように指示されたんだから!」
「ノーノー、それはちょっと違うヨ。ティアラに同行するように頼まれたのはボクネ。だからこれもボクのものサ」
「ふざけたこと言ってないで、さっさと返しなさい!この欧米かぶれの東洋人野郎!」
「よくそんな口が聞けるもんだヨ。猫かぶり整形サイボーグに言われたくないネ!」
ネフェルは仲間割れする二人の間に割って入ろうとブレーダーを起動した。
「君たち、ジェットのサザン・シュナイダーとティアラ・インダスキーだろう?何故刀を持ち出したんだ?」
ネフェルの問いに二人の怒りが増す。敵意を感じ腰に差していた長剣に手をかけた。
「そこの者、助太刀致す」
「君はさっきの……今までどこに?」
「身嗜みを整えていた。推して知るべし」
装備は万全のようだ。ラーシュは身構える。
「このまま見逃がしてはくれないようだネ。ティアラはあの女を頼むヨ」
「言われなくたって。サザンこそ、手抜くんじゃないよ!」
「まさかジェットとやりあうなんて思ってもみなかった。気が引けるけど、そうも言ってられないみたいだ」
ネフェルはティアラのブレーダーがまだ起動していないと判断し、先制攻撃を仕掛けた。
「ごめんよ――」
「ちょ、ちょっと待ちなって!?」
ネフェルの剣はティアラの太ももを切り裂いた。血が床に滴り落ちる。
「ジェットのブレーダーはスピード型だから先手を打たせてもらった。まだやるって言うのなら次は本気で行くよ」
「本部の人間が来てるなんて予想外だったヨ。けどこっちにはこれがあるからネ」
サザンは凶極刀を抜き軽く振った。ブンという音と共に、とてつもない衝撃波が三人を襲う。ラーシュは体勢を床すれすれまで低くしなんとかやり過ごした。ティアラはブレーダーを起動し耐え抜く。ところがネフェルは刀の近くにいたことで正面から受けてしまい、壁に叩きつけられてしまった。
「アハハ!凄いネ凄いネ!これなら誰にも負けないヨ!」
サザンは喜びのあまりその場でステップしている。
「ぐっ……ぐぅぅぅ……」
「大丈夫か?」
「これは……参ったな……」
「私が
「でもそれじゃ私の来た意味が――」
凶極刀がラーシュを見ている。
(ヒッヒッヒ……どうだ。我が力は強大であろう?)
「これ以上、貴様の好きにはさせぬ!」
(ならば我が力を崇めよ。ラーシュ・ダスティヒ……ヴィルヘルム!)
「私に力を授けると申すか?目的を述べよ」
(あるべき魂をあるべき場所へと還す。それが我が使命)
「フッ」
(面白いか?)
「そこまで言うのなら俺にその力、示してみろ」
(ヒッヒッヒ、良かろう!後悔したなどと泣き声を言わないことを祈るぞ!)
「笑止千万!我が武士道と騎士道に後悔の文字はありはせぬ!」
ラーシュは槍を持った。
「貴女の力を借りたい。動けるか?」
「あ、ああ。最初からそのつもりだったから」
「ノーノー、無駄な足掻きネ。魔刀の前に全ては無力だヨ」
「いざ、勝負!」
ラーシュのチェストガードが熱を帯びる。高温に熱せられた水分が蒸発し湯気が出始めた。
廊下一帯が白煙となり誰がどこにいるのかもわからない。
「這いよること影の如し……!!」
「はぁぁぁっ!!」
叫び声と共にネフェルがサザンに斬りかかるが、もう一歩のところで避けられてしまった。
「チッチッ、惜しかったネー」
サザンは再び凶極刀を振り上げた。
「やらせぬ!」
真っ白の視界の中から弾丸のようなものが飛ぶ。ラーシュが放った槍が凶極刀に当たり弾き飛ばした。
「な、なんダ!?一体、何が起こったって言うんダ!?」
ラーシュは凶極刀を拾い居合いの構えで狙いを定めた。サザンは必死にソンブレロで煙を払っている。
「その身で受けよ――
ラーシュが手にした凶極刀がさらに視界を悪化させた。その場にいる人間に、まるで蜃気楼が起きているかのような錯覚に陥らせる。
ブレーダーを急発進させ、無防備のサザンを斬りつけた。倒れた音がする。ティアラが気づいた時にはサザンは口から泡を吹いていた。
ラーシュはふらつきながら、その場から去ろうとしている。
「ちょっと待って!」
ネフェルの呼び掛けも虚しくラーシュの姿は見えなくなった。
反対側からパドンが走ってくる。
「あっ!さっきのお姉さん?ラーシュの兄貴はどこに行ったんだ?」
「それがさっきまで一緒にいて、いつの間にいなくなってたんだ」
「えー、それはヤバイな。なんか警察みたいなのがゾロゾロ来てるみたいだし、お姉さんも早くずらかった方がいいぜ!」
「長居はかえって危険か。ラーシュ・ダスティヒ……また君に会えるかな?」
床に落とした写真を拾い上げるとポケットに大事そうにしまった。