アルマダ・ブレーダーズ   作:公私混同侍

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闘技祭編
中央本部役員


月一度、ブレーダー教習中央本部にて役員会議が行われている。教官と呼ばれる正規職員と中央本部の役員が顔を合わせる唯一の機会だ。

中央本部の役員には会長、副会長、本部長の他、広報や事務委員が任期に従って執務を行っている。

とりわけ会長であるシレジア・ミルビッチは別格の存在感を放っており、男女問わず教習生に絶大な人気を誇っている。

 

「あ~あ、かったるいわね」

 

「月に一回しかねぇってのに随分だらしのない女だな。月例報告はテメェの義務だ。仕事はしとかねぇと役員の面子が立たねんだよ」

 

シレジアの隣でたしなめているのは金色の狂犬こと副会長でもあるランブリング・リード。

幾度も死線をくぐり抜けてきた歴戦の兵士のような鋭い目つき、鍛え抜かれた強靭な肉体、金色に染められた頭髪はまるで狼の毛皮のよう。

金色の狂犬の異名は教官たちにつけられた。愛称はランバー。

 

「それで没落貴族の女の勧誘は上手くいったのかしら?」

 

「没落貴族?……ネフェルを心底嫌ってるテメェにしてはらしくねぇ質問だな、クソビッチ」

 

「クソは余計よ!あの女が構内をうろちょろしてるのが目障りなのよ。ワタシたちに断りもなく敷地の時間外使用なんて特別扱いも甚だしいわ!そんな勘違い女は本部で帳簿でもつけていてもらった方がよっぽど有意義よ」

 

「特別扱いを許しちまったのはオレたちの管理の甘さが招いた結果だ。今さらウダウダ言ってもしょうがねぇ。それに懸案だった夜間警備の件だがどうにか片がつきそうだ。テメェはそのまま役員会議で報告すりゃいい」

 

「アルマダ・ブレーダーズなんて、どんな人生を送ったらそんな枕に顔を押しつけて叫びたくなるような名前をつけられるのかしら?」

 

「名前なんてどうでもいい。それよりアルマダのラーシュ・ダスティヒとかいう男が持っている刀のことだが――」

 

「あの女がちゃんと見張ってなかったんでしょ?教官どもにどう報告するつもりなの?」

 

「ネフェルが逃がしたのもそうだが、事件性もなければオークション関係者からの情報提供もない。言論統制が敷かれているとみて間違いねぇ。それとこれは憶測に過ぎないが、オークション会場で何らかの取引があったんじゃねぇかってオレは睨んでる」

 

「ふーん」

 

「ジェットの奴らも絡んでいるとするなら、本部の人間も闇雲に頭を突っ込むようなマネはしねぇはずだ。まあ、ノーマン・エディンソン社長の娘がアルマダにいるっていうのも引っかかるが……」

 

「触らぬ神に祟りなしってこと?魔刀の事件といいセンスを感じさせないチーム名といい、ああ早く、刺激的なイベントが訪れないかしら!」

 

「いいニュースばかりじゃねぇぜ。アルマダの刀使いは無免許だ」

 

「はぁ!?男のクセに無免許!?生きてて恥ずかしくないの?」

 

「それでだ、ソイツは教習を受けながら警備の仕事も受け持つ話になってる」

 

「ちょっと待ちなさいよ!今から教習を受けるっていっても教官に空きはなかったはずよ!誰が面倒見るっていうのよ!」

 

「一人、暇をもて余してるヤツがいるだろ」

 

「……あっ」

 

――

―――

 

「ぶへっくしょーん!!」

 

構内の中庭でレアンドロ・バランゴは人目も憚らず大きなくしゃみをした。この男は中央本部の事務委員である。

 

「それで話ってなんすか?」

 

「へっへーん!ワンちゃんからの伝言だよん!バレンゴ君に重大任務を伝えまーす!」

 

「あのレインさん、いい加減名前覚えてくれないっすか?バ()ンゴじゃなくてレアンドロ・バ()ンゴです!」

 

「あれれぇ?そうだっけ?レインちゃんはうっかりやさんなのだぁ!」

 

悪びれもせずに舌をペロッと出す天然娘はレイン・カウンティ。シレジアやランバーと比べれば威厳こそないものの中央本部の本部長である。

 

「それで任務ってなんすか?嫌な予感しかしないですけど」

 

「ムフフ、それはね――ジャッジャーン!」

 

バランゴの前にラーシュとヒューガーが現れた。

 

「レインさん、コイツら何者なんすか?」

 

「またまたバレンゴ君、わかってるくせに~」

 

「いや、説明ないとわかんないっす」

 

「しょうがないにゃ~。このレインちゃんが紹介してあげよう!彼らこそ現代に生きるサムライ!その名も――」

 

「俺をラーシュと一緒にしないでくれ。というかその紹介いるか?」

 

「むっ、何を申されるか?主君と私は一蓮托生。如何なる困難が待ち受けようとも、弱きを助け強きを挫くの信念を貫くと誓ったではないか!!」

 

「俺はサムライじゃない!お前と一緒にするな!それに免許がなきゃ志もへったくれもないぞ。まず一日も早く免許を取らないことには何も始まらない」

 

ラーシュはヒューガーの言葉に冷静さを取り戻した。 レインは男同士の友情に目を輝かせている。

 

「ソイツ、免許持ってないんすか?」

 

「そうだよっーん!バレンゴ君にはシュシュ君の教官になってもらいまーす!」

 

「シュシュ?私のことだろうか?」

 

「マジ……すか?」

 

「ワンちゃんのご指名だからね。ドンマイドンマイ!」

 

「貴公の教えに従えば良いのだな?是非手取り足取りブレーダーの極意を叩き込んでもらいたい」

 

バレンゴは納得できないのか舌打ちする。ヒューガーは聞き逃さなかった。間合いを詰めラーシュの間に入る。

 

「どうしてこんなチャラけた格好をしたヤツにオレ様が時間を割かなきゃいけないんだよ」

 

悪態をつくバランゴにヒューガーが頭を下げる。

 

「間が悪かったのは謝る。だが服装なら指定されたものに着替えればいいんだろ?」

 

「そういう問題じゃない!オレ様はこう見えて忙しいんだ!ブレーダーの仕事を子供のお使い程度に考えてるお前らみたいなゴミクズの相手なんかするかよ!」

 

ヒューガーの体が熱気を帯びる。怒りが滲み出る。

ラーシュは口論に水を差すまいと距離を置いた。キョロキョロと辺りを伺う。いつの間にかレインがいなくなっていた。

 

「お前、ラーシュを侮辱したな?」

 

「だったらなんだっていうんだよ」

 

「人の気も知らないでよくそんな減らず口が叩けるな。本部の役員ってのは立場の弱い人間を平気で見下すのか?部下が無能だと組織がダメになるっていうのは本当みたいだな」

 

「な、なにぃ?オレ様に喧嘩を売るなんて中央本部に喧嘩を売ってるのと同じ。そんなに泣きべそをかきたいんなら、今この場で見かけ倒しの装飾ごと叩き壊してやるよ」

 

「やれるもんならやってみろ!仲間を馬鹿にされるぐらいないなら中央本部の人間だろうが容赦はしねぇ。後ろ楯がなければ力を発揮できないヤツに俺は負けない!」

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