中央本部役員会議が終わり、シレジアとランバーは役員室に向かった。部屋の中にはレインが会長席の机の上に突っ伏していた。ヨダレが漫画の吹き出しのように広がっている。
シレジアは履いていた純白のパンプスでレインの頭をひっぱたいた。
「どわっ!?なになに地震!?」
「本当に地震だったらあなたの頭、スイカみたくパッカーンって割れてたわよ。ってそんな話どうでもいいのよ。どうしてあなたがここにいるの?無免許
「シュシュ君のこと?ちゃんと伝言は伝えてきたよん。ねっ、ワンちゃん」
「犬呼ばわりすんじゃねぇよ。クソ暑苦しい女だな、テメェは。バランゴみたいに少しは従順になれねぇのか?」
「あら意外。あなたあんな下心丸出しのスケコマシのこと評価してたの?」
「役員としての働きはイマイチだが、事務委員としては及第点だ。事務委員としてはな」
「バレンゴ君が聞いたら、跳び跳ねるくらい喜んで泣き出しちゃうかも」
「逆じゃないかしら。跳び跳ねた勢いで窓から飛び降りる可能性もあるわね」
「オイ、役員室を勝手に自殺現場にするじゃねぇ。テメェらはバランゴを過小評価し過ぎだ。化然石が使えるってだけでも戦力として十分過ぎるくらいだってぇのに、こんなんじゃ満足できねぇって愚痴った暁には役員の連中は欲張りだなんて罵られちまう」
レインはウトウトしながら話を聞いている。ランバーはソファに移動した。
シレジアは会長席に座り、目を瞑って何かを思い出そうとしている。
「化然石の使用を認める限定解除はブレーダーとの相乗効果が見込める。ブレーダーが表なら化然石は裏。表裏が一体となることで緻密性をより一層要求されるが、ブレーダー戦略における職務遂行能力そのものに破格の恩恵をもたらす……合ってるわよね?」
「わあ!久々に聞いたぁ。教習生になりたての頃が懐かしいなぁ!確か魔女さんの格言だったんだよね~」
「ちげーよ。教本に載ってるブレーダー応用理論だろうが。それに最高責任者のことを魔女って呼ぶのやめろ。誰かに聞かれたらテメェの免許剥奪されるぞ」
「わあお、レインちゃん大ピンチ!」
「ホント緊張感ないわね、あなた。それよりレアンゴの奴、遅すぎるわ。どこほっつき歩いてるのかしら?」
シレジアも名前を覚える気はないようだ。
「はっ、報告するの忘れてたー!あちゃー、なんてこったい」
レインはわざとがましく机の上に寝そべる。
シレジアはお構い無しと言わんばかりに、パンプスでレインの頭を何度もひっぱたいた。
「どさくさに紛れてヨダレ吹きっとってんじゃねーし!ちゃんと消毒しときなさいよ、全く」
「もう痛い痛い!バレンゴ君なら喜んで拭き取ってくれるのにぃ」
「気持ちわりぃこと言ってんじゃねぇよ!テメェらどういう神経してんだ!?」
「バレンゴ君ならアルマダのリーダーに打ち負かされたって教習生の間で評判になってるよー」
「何ですって!?どうしてそんなことになってるのよ!早く説明しなさい!」
「詳しいことはわからないけど、バレンゴ君が火ならアルマダのリーダーは油って感じ?」
「何が言いたいのよ!はっきり言いなさい!」
「火に油を注いだならアルマダのヒューガーって奴が喧嘩を売ったことになるが、喧嘩を買ったバランゴが負けるとはにわかに信じられねぇ……」
「バレンゴ君が化然石を使ったところを目撃した人もいるぐらいだしぃ」
「相手のヒューガーって男は確か限定解除してなかったわよね?リストに名前はなかったはずだしレアンゴは化然石の使用規約に違反してるし、芳しくない状況じゃないかしら?」
「ちげーねぇな。ったくよぉ、事務委員がでしゃばるからオレたちが尻拭いしなきゃいけねぇじゃねぇか。詳しい事情も聞かなきゃなんねぇ。オイ、アルマダの二人をここに呼べ」
「へっ、あたし?」
レインはキョトンとしている。
「あなた以外誰がいるっていうのよ!会長のワタシをパシリにする気?」
「えー、じゃあ後でバレンゴ君に美味しい物でも奢ってもらわなくちゃ――」
レインは喜びを爆発させながら部屋を飛び出した。
「あー、肩が凝ってきたわ。いつもならレアンゴが肩揉んでくれるのにホント大事な時にいないのね、あのスケコマシ」
ランバーはソファに横になり顔に雑誌を被せた。
「なんだかバランゴが気の毒に思えてきたぜ」
化然石の使用制限について
その1
無免許者または不携帯者は化然石を用いてはならない。
その2
無免許者に対して原則として化然石を攻撃、または防御の手段として用いてはならない。
その3
免許者が急迫不正の侵害があると認めた時、または免許権者(役員を除く)が使用を許可した場合のみ化然石を用いることができる。