ラーシュはヒューガーから連絡があり、公道を使ってブレーダーの練習を行うことにした。
「いいか、ラーシュ。まず俺が手本を見せる」
ヒューガーは義手義足をつけブレーダーを装着した。ブレーダーの車輪が回転を始めゆっくりと動き出す。
「ブレーダーのコツは体重移動だ。前に体重を掛ければ前に、後ろに体重を掛ければ後ろに進む。難しくはないさ」
ラーシュはあぐらをかきながらブレーダーに食いついている。
「よし。今度はラーシュがやってみろ」
「御意」
ラーシュはヒューガーから手渡されていた予備のブレーダーを装着した。左右の足がバラバラに動く。ラーシュの表情が険しくなる。
「まずは歩くことをイメージするんだ」
ブレーダーは同じ場所をクルクル回っている。
「いささか思うように動かぬ」
「最初はそんなもんさ。要は慣れだ。時間をかけてやっていくしかない」
ブレーダーが思うように動かないことに苛立ちを感じ始めた。ラーシュはコツを掴もうと必死に体全体でバランスを取ろうとしている。
「少し休もう。止まれるか?」
「おのれぇ……ぐおっ!?」
ラーシュはバランスを崩し転倒した。
「そのまま座っていた方がいい。立ち上がるとまた同じ結果にしかならないからな」
ラーシュは息を切らしながらブレーダーの裏を覗きこんだ。
「たまげたものだ。このようなカラクリを仕込んでいるとは」
「完全に止まるには体重を左右均等にしなきゃいけない。まあ、進むより難しいんだがな」
「まだまだ精進が足りぬということだ。主君、ブレーダーを借りても良いだろうか?」
「あ、ああ。構わねぇが場所を考えて練習しろよ。大怪我でもされたら俺の免許に傷がつくからな」
「承知した」
その日からラーシュはブレーダーを履きながら生活を送った。立ち上がっては転び、立ち上がっては転びを繰り返し体はアザだらけになってしまった。その甲斐あってかバランス感覚と体重移動は習得した。
「だいぶ様になってきたな。ラーシュも体が軽く感じるようになったんじゃないか?」
「うむ。感覚はあらかた掴めたようだ」
「そんじゃ役場に行くか?」
「遂にチームが始動するのだな?」
「まあそうは言っても、まだチーム名が決まってないんだ」
「主君に任せる」
「ちょっとは考えろ」
「う~む……なれば『天下無敵集団・
「なんだか暴走族みたいな名前だな。ラーシュに聞いた俺がバカだった」
ラーシュは腕を組んでヒューガーを睨みつける。
「あっ、『無敵』と言えば『アルマダ』みてぇな言葉があったよな?」
「『無敵艦隊』の意であったはず。よもや我がチーム名に『アルマダ』を冠する腹積もりか?」
「『アルマダ』……『アルマダ・ブレーダーズ』ってどうだ?響きは悪くねぇだろ」
「よもや『艦隊』を冠するとは主君には叶わぬ。さりとて名前負けせぬと良いのだが……」
「そうと決まれば届け出出さねぇと――」
ラーシュとヒューガーは役場に向かった。受付の女性の案内に従い、申請を申し出る。ヒューガーが手続きをしている間、ラーシュはふらふらとうろついていた。すると、受付の女性に話しかけられた。
「綺麗な目をしていらっしゃるのですね」
「……私のことだろうか?」
「青と赤の目なんて、まるで宝石のようです」
ラーシュの目は右が青色、左が赤色に染まっている。
「母上と父上は私と同じ目をしていない。詮索もしないで頂きたい」
「そ、そうなんですね……」
ちょうどヒューガーが手続きを終えた。
「待たせたな。登録は済んだから明日からでも活動できる。ラーシュ、改めてよろしくな」
「うむ!
熱意のこもったラーシュの言葉に受付の女性が吹き出した。ヒューガーは恥ずかしさに耐えきれず、逃げるように役場を後にした。