アルマダ・ブレーダーズ   作:公私混同侍

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ジェット・ストライカーズ

闘技祭当日を迎えた。中央本部が一ヶ月かけて設営した特設闘技会場には大観衆がつめかけている。教習生や本部職員は最前列に陣取る。

『ブレーダーズ・ファンクラブ』のプラカードを掲げた賑々しい一団が右翼に座り、興味本意でやって来たとおぼしき子供たちは左翼を占領している。

 

「むせかえるような熱気だな……」

 

ヒューガーは大観衆を目の当たりにして唾を飲みこんだ。

 

「特設会場は五千人収容できる。そして闘技場は半径三百メートルでブレーダーの最速値を出せる限界の広さ。リーダーたちはわかってると思うけど、最速値を出すために必要な距離が三百メートルって意味じゃなくて、ブレーダーを高速で安全を維持しながらコントロールするために必要な距離が三百メートルって意味だよ」

 

「それと闘技戦を公平に裁くために教官が一人置かれるってさ。教官は現役の軍人、警察官だけじゃなく元傭兵もいるってパンフレットに書いてあるぜ」

 

ケイコとパドンが大まかな詳細を説明した。しかし、ヒューガーとラーシュは会場の熱気に完全に飲まれている。

 

「我々の敵は役員やジェットだけではないということか」

 

「フフッ、ラーシュでも肩に力が入ることあるんだ」

 

「私はこのような群衆の中で舞を演じたり、歌に興じたりした経験がないのだ。ネフェルは殺伐とした雰囲気に慣れているのか?」

 

「まあね。最初は凄い嫌だったけど毎年参加させられてたから、人に見下ろされるのも苦にならなくなった。それが良いことか悪いことかはわからないけどね」

 

ケイコがラーシュに耳打ちする。

 

「ネフェルはね、中央本部一の人気者。ファンクラブまであるんだよ」

 

「なんと、そうであったか!さすれば私のような流浪人でも、そのファンクラブとやらに入れるのか?」

 

「ちょ、ちょっとケイコ!?ラーシュに闘技祭と関係のないこと吹き込まないで!」

 

「クスッ、ごめんなさい。ラーシュの緊張を解してあげたくて、ネフェルの秘密教えちゃった」

 

「ねぇ、ラーシュ?私のファンクラブに本気で入りたい?」

 

「叶うのならば私のファンクラブを立ち上げてもらいたいものだ」

 

「私、入ろうかな。ラーシュのファンクラブ。ケイコもでしょ?」

 

「うん。私もネフェルと一緒に入る」

 

「ラーシュの兄貴のファンクラブならアリな気がするぜ。コスプレ好きが集まったりして」

 

パドンの空気の読めない弄りにラーシュはそっぽを向いた。

五人が談笑しているとシレジアが闘技場の中央に設置された壇上に上がり、開会を宣言する。観衆たちのボルテージは最高潮に達し、シレジアの名を声高に叫ぶ。鳴り止まない大合唱に手を振り応える。大地が割けるような歓声を浴びながら壇上を降りた。

ヒューガーやランバーには冷たい視線を浴びせられているが、シレジアは余韻に浸りつつ王者の貫禄を見せつけた。

観衆が静まり返ると入場口からブレーダーが起動する音がけたたましく響く。風切り音がフィールド全体に伝導し、その場にいる者たちはとっさに耳を塞いだ。

 

「この耳障りな起動音、懐かしい気分だ。ずっと忘れようとしていた記憶が甦っちまった」

 

「主君、雑念は捨てよ。真の敵を見失っては本末転倒」

 

三方向からロウ、サザン、ティアラが登場する。まるでダンスを踊ってるかのような足さばきだ。

 

「まさか闘技祭でジェット・ストライカーズと対面することになるなんて夢にも思わなかった」

 

ネフェルはジェット特有の異物感に面食らっている。

隣でケイコがジェット三人衆をざっくり紹介する。

 

「百人の構成員を束ねるロウ・ダーヴィンは早撃ちの名手。右腕のサザン・シュナイダーは異国かぶれの東洋人。そして派手な服装のお姉さんはティアラ・インダスキー」

 

サンブレロを取ったサザンはラーシュに握手を求める。

 

「オークション以来の再会ネ。お手柔かに頼むよ、無敵のサムライさん」

 

「むっ?その手の包帯はいつぞやの怪我か?」

 

「んんん?こ、これはオークションでおサムライさんに斬られた時の傷ダヨ。ナハハハ」

 

「そうであったか。手負いにも関わらず道場破りとは感服致す」

 

ラーシュはサザンと固く握手を交わした。

体が蝋人形のような質感をしているティアラはネフェルの顔をベタベタ触っていた。

 

「ウフ!綺麗な肌。こんな透き通るような肌に触れていると赤く染めたくなるってもんさ」

 

「君の趣味は理解できない。ジェットって変わったメンバーの集まりとは聞いてたけど、君たちとは仲良くなれそうにない」

 

「別に構わないさ。あたいらの姿を見るだけで市民は跪いて感謝する。嬉し泣きする光景を毎日見れるなら、みんなハッピーになれると思わないかい?」

 

「人は見かけによらないと思っていたけど、君のような見かけだけ繕って中身の伴わない人のことを見かけ倒しって言うんだ」

 

「ウッ!?人を小馬鹿にして恥をかかせようたってそうはいかないよ!あたいから見たらアンタみたいな可愛いげのない小娘が一番気に入らないのさ!」

 

激昂したティアラはネフェルの髪を掴もうとしたが、ロウの視線に気づき控え室に駆け込んだ。

 

「お前の周りには情緒不安定なお仲間しかいないのか?」

 

「なんだ?人のチームを心配してる余裕がおめぇにあるってのか?」

 

ロウはヒューガーの胸を小突いた。

 

「人材不足が顕著のようだな。そのまま雲一つ残さず、お前ごと地上から消え去ってくれれば万々歳なんだがな」

 

「ケッ!昔に比べて随分お喋りになったもんだ。あのおサムライさんの風に当たり過ぎちまったんじゃねぇか?」

 

「そうかもな」

 

「一つ忠告してやる。オレの仲間をあんまり見くびらない方が身のためだぜ」

 

二つの陣営が火花を散らす中、闘技祭は幕を開けた。

対戦順が発表され各々がウォーミングアップを始める。

一戦目はラーシュ対サザン。

ジェットの思惑が渦巻く中、ラーシュの免許を賭けた大一番が始まろうとしていた。

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