アルマダ・ブレーダーズ   作:公私混同侍

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大本命登場!

「ネフェル、お疲れ様」

 

控え室のモニターで観戦していたケイコがネフェルを労う。パドンがタオルを手渡しにきた。ヒューガーはモニターの前でヘッドギアの状態を確かめている。ラーシュの姿はない。

 

「ラーシュがいないようだけど……」

 

「ラーシュの兄貴なら傷の具合が気になるから、一度医務室で診てもらうってさ」

 

「そっか、ラーシュに私の仕事ぶりを見てほしかったんだけどなぁ」

 

とっさにケイコが通路に飛び出した。ラーシュが帰ってきたようだ。

 

「ラーシュ早く早く。ネフェルが感想を聞きたいって」

 

「私のような教えを請う立場にある人間が批評しても良いのか?」

 

「指導法に改善すべき点があれば今後の参考にしたいんだ。ラーシュなら舌鋒鋭く指摘してくれると思ったんだけどね」

 

「親身に寄り添うネフェルの姿を想像した。さぞ教え子たちも充実した日々を送っていることであろう」

 

「点数をつけるとしたら?」

 

「甲乙つけがたい」

 

「えっ……」

 

ネフェルは虚を衝かれた。ケイコはパドンの腕を引っ張り控え室から出ていく。

 

「今日までネフェルのブレーダー指導を受けられなかったからだ」

 

「それなら一緒に居残りした時に言ってくれれば良かったのに。フフッ、ラーシュって結構嫉妬深いんだ――」

 

扉をノックする音が二人の会話を遮る。

 

「お、お前が何でここにいる!?」

 

ヒューガーがいきり立つ。扉を開けるとロウが立っていた。

 

「ジェットの代表として勝者を称えにきたんじゃないか。おっと、手洗い歓迎ならよしてくれよ」

 

「今度は何を企んでやがる?中央本部を乗っ取るつもりか?」

 

「おいおい、スケールがデカけりゃ何でもいいってわけじゃないのさ。オレたちにも社会秩序に即した行動原理っつう邪魔くさい制約があるんだよ。お前さんたちみたいな自由気ままなブレーダー・ライフを満喫しているチームとは背負ってるものが違うんだよぉ。わかるか?」

 

「わからねぇよ。たった一人で乗り込んできて自分たちの正当性を主張しにきたってんならお門違いだ。それに俺とお前のどちらかが大観衆の前で跪くことになる。今さらどう足掻こうとお前が望む結末にはならない」

 

「お前さんはオレの手の内を熟知している。本気で殺り合えば刺し違えるなんてこともあるだろう。それならこっちが取れる選択は一つしかない」

 

ラーシュは凶極刀に手をかけた。

 

「やめろラーシュ。コイツの拳銃には弾の代わりに化然石が込められているんだ。こんな狭い場所で早撃ちなんてかまされたら、怪我をしているラーシュなんてひとたまりもない」

 

「トリガーを引くことが化然石の発動条件か。それに発射されるまで色を確認できないから対処もされにくい。ロウ・ダーヴィン、さすがはジェットのトップにまで登りつめただけのことはある」

 

ネフェルがラーシュを庇うような体勢を取った。

 

「三人を相手にするほどオレだって馬鹿じゃない。むしろ、これ以上の茶番を終わりにしようと提案にきたのさ」

 

「どういう意味だ?」

 

「ついさっきエディンソン社長から電話がきたのさ。すぐ戻ってこいってな。せっかく旧友と腕試しできるチャンスだと思ってたのに、ツキに見放されちまったみてぇだ」

 

「闘技戦を放棄するのか?」

 

「ああ、どっちみちオレたちは祭りに参加するのが最優先事項だったからな。勝敗なんてジェットの活動に影響を与えるもんでもない。おっと、理由は聞くなよ。時間が惜しいからな。お前さんたちはせいぜい祭りを楽しんでればいいさ」

 

「お主は魔刀を取り戻しにきたわけではないのか?」

 

「あん?凶極刀(タライ)のことか?そんな趣味の悪い刀なんてプレゼントされても手放しに喜べないね。サザンとティアラはオークション会場で早とちりしたみたいだが。それよりおサムライさんが刀を靡かせる姿はまるで別人みたいだった」

 

「……」

 

「かつて魂を吸うだとか、主にとり憑くだとか、身内が病魔に冒されるだとか根も葉もない噂が絶えなかったと聞く。お前さんはどうか知らないが、刀の声が聞こえるなんて言い出したら手遅れだな」

 

「時間はいいのか?君が私たちに構ってる場合じゃないんだろ?」

 

「おっとごもっとも。お互い次会う時までチームの看板が無くなってなければいいが――ケッ、あばよ!」

 

ネフェルの機転で事なきを得たが、ラーシュはロウの背中が見えなくなるまで睨み続けた。

ロウが闘技戦を放棄したことによってヒューガーの不戦勝が確定する。

役員席に座っていたシレジア、ランバー、バランゴが移動を開始した。

いよいよ大本命のお出ましだ。

対戦順が電光掲示板に映される。

第一戦はヒューガー対バランゴ、第二戦がネフェル対シレジア、そして最終戦はラーシュ対ランバーに決定した。

準備万端のヒューガーが闘技場に足を踏み入れる。バランゴはブレーダーを起動させたまま入場口を突破し怪気炎をあげた。

 

「中央本部執行役員雑用担当のレアンドロ・バランゴだぁ!この前の借りを返してやる!」

 

「威勢の良さしか取り柄のない下っ端役員なんかに負けてたまるか。以前の俺だと思ってたら大間違いだ」

 

入場口からラーシュが激励する。

 

「主君、健闘を祈る!」

 

「ヨッシャア!お前の出鼻をもう一度へし折ってやるよ!レアンドロ・()()()()!」

 

「だからレアンドロ・バランゴだって言ってんだろ!!」

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