「古傷が疼くんだよぉ、アンタに殴られた所がよぉ」
バランゴは鼻に触る。違和感があるようだ。
「ならもう一度、お前の腐り切った根性を叩き直してやろうか?」
ヒューガーは先手をとり背後に回った。バランゴがその場で回転を始める。
『見て驚け!
ブレーダーの裏に仕込まれていた赤色の化然石が発動し拳大の火の玉を撒き散らした。
「アッチ!?アチチ!?」
ヒューガーは体の至るところに火球を浴びる。電光掲示板のバランゴのポイントが『0』から『1』になった。
「どうしたどうした?祭りはまだまだこれからだぞぉ?」
「ブレーダーにも石を仕込めんのかよ……」
「化然石に直接触れていなくても役員クラスになら発動できるんだよ!ご存知ないんですかぁ?」
「あっそうですか!それなら俺もお前に直接触れずに一発ぶちかましやる!」
ヒューガーは両腕を伸ばすとロケットのように発射した。バランゴの両頬をすり抜けていくと二つの手が頭上に漂う。
「アンタのスナイピング・パンチは直線的で予測しやすいから楽々回避できちゃうんだよ。オレ様ぐらいになると発射する前に予測しちゃうけどね」
「そいつはどうかな?上を見てみな――」
「上?」
バランゴが真上を見上げるとパチパチと何が弾けるような音が会場に響く。音は大きくなり両手から雷が発生した。
『
「うわぁあぁあぁ!?!?」
電気を浴びたバランゴは卒倒した。闘技戦をさばく教官が安否を確認する。白目を剥いていた。これ以上の続行は不可能と判断しヒューガーの勝利を宣言しようと手を上げた。
「おーい!バレンゴ君、シャキッとせんかーい!」
「――だからバランゴだって言ってるじゃないですか!?」
レインの耳をつんざくような声量でバランゴを夢の国から連れ戻した。条件反射で飛び起きたバランゴにヒューガーを唖然としている。
「一体どういう原理なんだ?雷を浴びてピンピンしてるだと……?」
「まだ体の痺れは残ってるが体力はあり余ってるんだよねぇ。次は何を見せてくれるのかな?」
余裕綽々のバランゴにヒューガーは足を飛ばす。
「手の次は足か?手から電気が流れるとしたら、足なら水がプシューって出ちゃうんでしょ?」
足は地面を這うようにバランゴに襲いかかる。ブレーダーを急加速させ器用に足首を使いかわした。
「へっ、片足だけで立つなんてフラミンゴかよ」
「お前は学習しねぇみたいだな。よそ見する暇あんのか?」
「なにぃ?」
無造作に放置されていた足には鎖が繋がっている。ヒューガーは一気に巻き取るとバランゴを縛り上げた。
「ぐっ!?なんだよこれ!?動けねぇじゃねぇか!」
「チッ、右腕だけ自由が利くのか……」
バランゴは右手に化然石を握っている。
「ヘッヘッヘ、右腕さえあればアンタを倒すには十分過ぎるぐらいだ」
「くっ……」
化然石の赤い光が指から漏れる。
「火翔術――」
「もはやこれまで……なんてな」
バランゴの拳が炎に包まれたその時、微かに風が吹き火の粉が舞う。火の粉が鎖に滴り落ち引火した。
「どわぁあぁあ!?」
鎖に油が塗られており全身を火の大蛇に焼かれる。見るも無惨な姿に観客が悲鳴をあげた。
「どうだ?ご自慢の火翔術とやらで焼かれる気分は?」
「さ……」
「ん?最高だろ?」
「最悪だぁぁぁッ!!」
怒り狂うバランゴは二つの赤色の化然石を近づけた。
「お、おいマジかよ!?確か同色の化然石を接触させると凝縮されたエネルギーが暴走するんじゃなかったか?」
「役員クラスならエネルギーの暴走だって制御できて当たり前なんだよぉ!火翔術――
二つの化然石の中心から火龍が現れ凄む。猛烈な熱風が酸素を奪い尽くす。ヒューガーは一歩も動くことができず、目を開けることもままならない。火龍は頭からヒューガーを貪り尽くした。
「ぐぅ……ぐぉぉぉッ!?」
ヒューガーの足元にはクレーターができる。ふらつきながらも目線をバランゴから外さない。
「はぁ……はぁ……」
「ぜぇ……ぜぇ……ゲホッゲホッ!」
二人はゆっくりと距離を詰めていく。激闘に終止符が打たれようとしていた。観客が様々な思いを巡らす中、二人は予想外の行動に出る。
「ハァァァッ!!」
「てぁぁぁッ!!」
額と額が激しくぶつかり、それっきりしばらく動かなくなった。教官が様子を確認するため覗き込むと、バランゴの体から力が抜けヒューガーに抱えられた。
「悪いな、俺の
まさかの結末がヘッドギアだとわかり、観客の罵声の嵐が会場内に吹き荒れた。