二人が活動を始めてから数日が経った。仕事自体は単純だ。役場などから仕事の依頼が舞い込む。そして内容によっては証人や盗難品の捜索、更には高額の報酬を見込める被疑者の逮捕や脱獄犯の追跡に至るまで幅広い。
特に被疑者の現行犯逮捕は破格の報酬を得ることができる。
「いいか、ラーシュ。現行犯での逮捕は報酬の等級が一番高くなる。となると悪知恵を働かせる奴らが出てこねぇとも限らない」
「うむ。不届き者を自らの手で生み出せば半ば永久的に金銭もおのずと懐に入ってくる。然るに制度上の欠陥を抱えているというわけだな?」
「その欠陥を解決するのが位置情報伝達システム搭載型マイクロチップだ」
「むっ、小指ほどしかないではないか!?」
「ブレーダーのかかと部分に開閉できる蓋がついてるだろ?そこにこのマイクロチップをはめ込むのさ」
「御意」
ラーシュはマイクロチップを埋め込もうと、指をプルプルさせながら針に穴を通すように押し込んでいく。
口から安堵の空気がもれた。
「おい、ラーシュ!マイクロチップはパチッって音がなるまで押し込めって説明書に書いてあるだろ!そんなんじゃ走ってる間に取れちまう」
「クッ、こういった手際を求められる作業は不得手なのだ……」
「ほらっ、貸してみろ」
ヒューガーは義手にも関わらず、すんなりとマイクロチップをはめ込んでしまった。
「フッ、さすがは我が主君。天晴れなり」
「お前、バカにしてんだろ……」
「さて、少しばかりの休息を挟みつつお茶でも致すか――」
「まだ何もしてねぇだろ!勝手に内のコップを引っ張り出してくるな!」
ラーシュは勝手にお茶を淹れ出した。
「一つ聞き忘れてたんたが、ラーシュはまだブレーダーの免許を持ってないんだよな?」
「何か不都合でもあるのか?」
「まあ何て言うか、免許がねぇと報酬がもらえないんだ」
ヒューガーはあっけらかんと答えた。
「何を申されるか!?主君は私に無意味な時間を過ごしただけだと申されるか!?」
ラーシュは立ち上がり、鬼の形相で腰に差した小刀を引き抜こうとした。
「お、落ち着け!ラーシュ、話にまだ続きがあるんだ」
「むっ……申してみよ」
「あ、ああ。まあ、免許を取れる学校みてぇなものが内の近くにある。『ブレーダー教習中央本部』って言うんだ。費用のことだが役場に登録されてる奴なら一部補助してくれるっていう話だし、ラーシュはどうするんだって先に確認しなきゃいけなかったんだ。すっかり忘れてた」
「その中央本部とやらに足繁く通えと?」
「それでついでなんだが、この娘を見つけて来てほしいのさ」
ヒューガーは胸ポケットから一枚の写真を取り出した。眼鏡をかけた小柄な女の子だ。隣には父親らしき口髭を蓄えた人物が肩を寄せ合っている。
「この娘は何者なのだ?」
「中央本部の構内では知らないものはいない。なぜならこの女がケイコ・エディンソンだからだ」
「エディンソン?聞き覚えのある名だ。素性は存じ上げぬが」
「世界的企業『エディンソン・カンパニー』の創業者。ノーマン・エディンソンの娘だ」
「そうであったか」
「あんまり驚かないんだな」
「大層な血筋を持った娘であることはわかった。だがしかし、親がいかような人物であったとしても子というものは常に親の影がつきまとうもの。例えそうであったしても私は詰まらぬ物差しでその者たちを測るつもりはない」
「ラーシュってたまに真っ当なこと言うよな」
「フッ、褒め言葉として受け取っておこう」
「それでケイコ・エディンソンのことなんだが、発明好きとして世間では有名な話だ。反面、知り合いはほとんどいないって構内では噂になってる」
「役に立たぬ外聞は聞き飽きた。だがもし発明を得意とするならばブレーダーの造詣も深いのではないか?」
「そうだ。だが、かなりの偏屈な性格で講義がない時は研究室に籠りっぱなしらしい」
「一筋縄ではいかぬか。しかし相手は一人、さすれば好機はある」
「一応受講手続きも兼ねて明日からラーシュに行ってもらう。任せても大丈夫か?」
「我が初陣としては申し分ない。フッ、主君の望みとあらば全てを擲ってでも叶えてみせよう!」
調子のいいラーシュの言葉にヒューガーは心から叫んだ。
「やっぱり駄目だッ!不安しかないッ!」