ラーシュはケイコを連れてヒューガーの元へ向かった。
ちょうどブレーダーの調整をしていたようだ。驚きの表情と共に二人を出迎える。
「本当に連れてくるとは思わなかった……」
「少々手こずったが、取るに足らない初陣であった」
ラーシュは誇らしげだ。
「私はケイコ。あなたがリーダーのヒューガー・ソレイユね。体のことは熟知してるから可能な限りサポートする」
「あ、ああ。よろしく頼む」
「それでね、ラーシュとリーダーのために試作品を用意したの」
ケイコは背負っていたリュックから様々な部位のパーツを取り出した。
「俺のは……これを被れってか?」
ヒューガーは漆黒のヘッドギアを物珍しそうに手に取る。
「ヘッドギアには脳波で手足をコントロールできるシステムを搭載したの。手足の繊細な感覚までは本人しか分からないから、教えてくれれば私が微調整する」
「これはありがたいな。このジャケットは着なきゃいけないのか?」
「うん。ボディの耐久性を高めれば弱点はほぼなくなるし、嫌なら外せばいいよ」
「むしろ助かる。仲間のために体を張れるなら本望さ」
「ラーシュの分もあるよ――」
ラーシュは困惑を隠し切れなかった。自分用に用意してくれたパーツが多かったからだ。
「いやはや少しばかり張り切り過ぎではないだろうか?」
「ラーシュのことちゃんと調べて作ったんだよ。だってラーシュは私の友達だから」
「むっ、そこまで申されたら私もうかうかしてはおれぬ」
ラーシュはパーツを着け始めた。
まずは赤い肩当て――。
「武士の甲冑だよな?」
「ショルダーシールドだよ。ラーシュのイメージぴったりでしょ?実戦で使えるように鋼で作ったんだよ」
「重量はあるみたいだが大丈夫か?」
ラーシュは肩当てを指で叩いた。
「うむ、申し分ない」
次は赤い胸当て――
「それも武士の甲冑だよな……?」
「そう。見た目は地味で重さもあるけど、特殊な仕組みになってるの」
ラーシュは訝しげに胸当てをさする。
「それはブレーダー連動式バッテリー搭載型冷却機付きチェストガード 。熱を出して水蒸気を発生させることができるの。光の屈折や密度の変化を利用して人工的に蜃気楼を起こすんだよ。バッテリーは背中に取り付けてある」
「ちょっと待て!色々ツッコミどころがありすぎる!」
「なに?」
「胸当てから熱が出たらラーシュは耐えられるのか?」
「外気の影響を受けるけど最高で百度までなら加熱できる。もし死の危険を感じたら冷却機が働くし、
「ラーシュ次第ってことかよ……それだけじゃない。蜃気楼を発生させるって自分の思い通りにできるってわけじゃないんだろ?」
「もちろん。風の影響や空気中の水分量によって成功率も変わる。でも蜃気楼を起こせる条件が揃わないと発生させられないから熱も発生しないよ」
「それなら良いんだが、ラーシュは聞きたいことないのか?」
「いや、胸当ての色彩も頑強さも文句のつけようがない。肩当ても然り。ケイコは天才か」
「満足するのはまだ早いよ、ラーシュ」
次は赤い脛当て――
「全部赤かよ。もしかして脛にも仕込んでたりするのか?」
「変わったことはしてない。ブレーダーの重心を補正する普通のプロテクター」
「機能性を追求したと申せば聞こえは良いが、いかんせんもの足りぬ」
「まだ足りねぇって言うのかよ……」
「武器が欲しいんでしょ?」
「もしやあるのか?」
ケイコは等身大の槍を取り出した。
「これを私に?」
「うん」
「いくらなんでも槍は使いにくいだろ!もっと実用的ものはねぇのか?」
「これもただの槍ではないな?」
「さすがラーシュ。今日は勘が冴えてるね」
ケイコは穂先を開き始めた。中はアーム状になっており先は鉤爪のように鋭い。
「その名も
「そんな物騒なもんが必要とは思えないんだが……」
「趣があって目の付け所も良い。なによりケイコは私の人となりを理解している」
「ラーシュは使い方、本当にわかってんのか?」
「無論、これは逃げ足の早い子悪党を捕らえる隠し刀。そうであろう?」
「良くわかったね。槍で武器にもなるし、逃走するターゲットを捕獲するアームにも変形できて電気も流れるの。ブレーダーとの相性は一番いいはずだよ」
「電気は余計だと思うが……まあ何はともあれラーシュはその分働かなきゃ飯を食っていけねぇな」
「なれば明日から実務に備え鍛練あるのみ!」
「因みに費用はラーシュの出世払いで大丈夫だからね」
「うむ!」
「『うむ!』、じゃねぇから!まずお前は免許を取れ!」