アルマダ・ブレーダーズ   作:公私混同侍

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盗みのパドン

「ラーシュ、いいか?ヤツは俺たちが絶対に捕まえる。作戦通りに頼んだぞ」

 

アルマダ・ブレーダーズの初任務がやって来た。ターゲットは窃盗犯。

太陽がアスファルトに照りつける中、ブレーダーのけたたましい音が鳴り響く。

 

『ターゲットはパドン・シュスタ、男。年齢は十代後半。窃盗品は不明。青いターバン、黄色いタンクトップ、赤の短パン。ブレーダーを履いてないから、現在位置まではわからない。二人共、頑張って』

 

ケイコがヒューガーの自宅から指示を出す。

 

「ターゲットは信号機みてぇな格好をしてるみたいだな。まあ、ブレーダーを履いてなきゃ捕まるのも時間の問題だ。ラーシュ、お前がヤツを袋小路に追い詰めろ。俺がトリを務める」

 

「子悪党め、待っていろ。アルマダの露払いことラーシュ・ダスティヒが成敗してくれる!」

 

ラーシュはやる気に満ちている。

胸、肩、脚に装備をつけ、黒色の包帯を手のひらにグルグル巻き身長と同じくらいの槍を背負い先陣を切る。

免許を持っていないため報酬はヒューガーと折半。ケイコも免許を持っていないが、ブレーダーの学科試験を突破しているため手当てがつく。

 

「ブレーダーの調子はどうだ?」

 

「うむ、まずまずといったところか」

 

「法定速度は八十キロ。スピードの出しすぎには気をつけろ。まあ、そんな重装備じゃせいぜい四十キロ程度しか出せねぇか」

 

「さしあたりケイコの調整で事足りる。なれば今は任務に集中するのみ」

 

車通りの激しい大通りを奇妙な出で立ちをしたサムライがすり抜ける。ふらつく度にクラクションを鳴らされているが、脇目も振らずに突き進んでいく。

ブレーダーが自転車やバイクと同じように走り抜けていく光景は今や珍しいことではない。若年層から一定の理解を得られるようにはなったが、年齢が上がるにつれ不支持が上回るのが現状。

それはブレーダーの存在価値を世間に正しく認知されていない証でもあった。

交通ルールを守らない者も少なくなく、トラブルも後を立たない。免許制度も確立したが、人々の冷たい視線はそう簡単には変わらない。気が遠くなるような努力と時間をかけて信頼を勝ち取らなければならない。そうでなければブレーダーというのは所詮『子供の玩具(オモチャ)』という認識を覆せないのである。

 

「こんな時にこんなことを言うのもあれなんだが、ブレーダーって俺の生き様にピッタリなんだ。まあ、何て言うか見た目で損してるだろ?それに貧しい人間や立場の弱い人間と共に存在するみたいに扱われてるのが俺と一緒なのさ」

 

「主君に対して卑しい振る舞いをするような輩など放っておけば良い。我々が日頃から善を成してゆけば、おのずと周囲の目も変わっていくはず」

 

『ラーシュの言うとおり。私たちが見返せばいいんだよ。だからリーダーは前だけ向いてれば大丈夫』

 

「弱者だから特別扱いしろとは言わねぇが、そういう風潮があるのは確かだ。俺はブレーダーの存在を認めさせてやりたいんだ。お前だってやればできるんだってな」

 

「初志は貫くべき。その心を忘れなければ必ずや成就するであろう。そのためにもこの任務ますます成功させねばならぬ。我が心は常に主君と共にあり!」

 

「何でアイツあんなに張り切ってんだ?」

 

『私のあげた装備が嬉しかったんだね。ラーシュって面白い人――』

 

ラーシュはイヤホンを通して異常を察した。

 

「ケイコ、何事か?」

 

『今、監視カメラにターゲットが映ってる!ラーシュ、その陸橋を越えて!最初の信号機にターゲットがいる!』

 

「ターゲットは信号機みたいな格好で信号待ちしてるのか……?」

 

「煩わしいことを申されるな――そこの子悪党、しばし待たれよ!」

 

ラーシュは陸橋の坂道を使い加速する。火花を散らすブレーダーの音に信号待ちをしていたターバン男が振り向いた。

 

「げぇっ!サムライィィィッ!?何で居場所がバレたんだ!?」

 

「対象を捉えた。年貢の――」

 

男の目の前を通りすぎた。装備が重すぎて止まり切れなかったようだ。

 

「ぬかった!?」

 

「おい、ラーシュ!どうした!?」

 

陸橋の反対側からやって来たヒューガーがラーシュを受け止める。

 

「なーにやってんだか。ブレーダー初心者ならパドン様の敵じゃねーぜ」

 

ターバン男は手提げ袋を肩にかけ我が物顔で横断歩道を渡っていく。人混みに紛れ行方をくらました。

 

「すまぬ、主君。己の力を見誤ったようだ」

 

「反省なら終わってからにしろ。もう一度態勢を立て直す。ケイコ、ヤツの場所はわかるか?」

 

『うん。そこから西の駅近くにある公園のカメラに映ってる』

 

「何故人混みのあるところばかりいるんだ?誰かと合流するのか?いや、まさかな……」

 

「いささかきな臭くなってきたかもしれぬ」

 

「ヤツは何かを仕掛けてくるかもしれないが、用心するには越したことはない。気を引き締めていくぞ。万が一ってこともある。ラーシュ、その槍でターゲットの動きを止めろ、いいな?」

 

「承知、次こそは必ずや――」

 

ラーシュは背負っていた槍を持ち、パドンのいる公園に向かう。

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