龍神ボーラスで東方暮らし 作:名無しの永遠衆
第十話 企む邪と龍
《不滅の満月》の捜索は思った以上に難航した。
諏訪子との話で、新アモンケットや永琳の住んでいた都市の話なんて聞いたこともないと言うから、時代がだいぶ下って統治者がいなくなった両都市は忘れ去られたのだと思っていたのだが、自由に動けるようになった身体で都市の残骸を探しても欠片も見当たらないことからして当時の爆発の余波で破壊されてしまったのかもしれない。
埋もれているなら掘り出せばいいが、何処を掘り返せばいいかすらわからないのは困る。
何か頼りになる情報を得るため、俺は其処ら中で長生きしている奴の所に行って話を聞いた。
とはいえ、永琳たちに遠く及ばない技術レベルになったこの時代、人間の平均寿命は短い。
そこで、長い時を経てなお生きている妖怪たちに目を付けた。
まだ本調子ではないのか、それとも長い間精神だけで生きてきて癖になったのか、俺はある程度の時間なら本体から精神だけで抜け出て動き回ることが出来るようになっていた。
これを使って人里で昔からいる妖怪の噂を集めて回り、夜にその妖怪の
そんな事を繰り返すうちに、どうやら何者かがそれらしき物を掘り返して運んでいった、と言う話が得られた。
ずいぶん昔の話らしく、興味もない物だったが、巨大な物を必死に運んでいたことを覚えていたそうだ。
その妖怪には礼をして*1すぐにお暇し、似たようなことを見た覚えがないか・聞いた覚えはないかと周辺で情報を集めていく。
その結果、いつのまにか俺は海に面した沿岸地域までやってきていた。
「龍神さま、この集落には碌なものはございませぬ。どうかこの老体一つでお許しください……」
「そんなことはどうでもいい! この辺りから、光を放つ巨大な円盤状の物を運んだ話は残っていないか!?」
なぜか集落の老人に生贄志願に来られたが、そんな事より話が聞きたい!
俺の必死な声に老人はポカンとしていたが、年の功なのか、今まであった妖怪達よりよほどはっきりとした声で受け答えをした。
「……生憎ですが、そのような話は寡聞にして聞いた覚えがございません」
「そうか……」
クソッ、陸路ならともかく海路で運ばれたんじゃ何処に着いたか分かりようがない。
あれは元となったアーティファクトをさらに改造したものだから、もう一度出しても意味が無いんだ。
失意に沈む俺に、老人はおどおどしながら話しかけてくる。
「ご期待に沿えず申し訳ございません。……かくなる上はこの老体を」
「いや、いいから」
老人の提案に断りを入れて、俺は思案する。
どうしたものか、ここから沿岸の寄港地になりそうな所をしらみつぶしにするか?
いや、もし遠洋に出られていれば意味がない、どうすれば……
「ならば御身のお出ましを祝い、集落で祭りを開かせます。この集落自慢の"海の月"をご覧になって御心をお慰めください」
めげずに話しかけてくる老人。
俺の姿が怖いのは分かるが……海の月? たしかに
せめてエチゼンクラゲ並みじゃないと。
そう言って俺が断ろうとした時、老人は聞き捨てならないことを言った。
「"海の月"はこの村の名物でしてな、夜になると沖合の海に月齢を問わず満ちた月が映るのです!」
「それだ──ー!!」
思わず大声を出してしまい、驚いた老人がそのまま失神する。
申し訳ないが、そんな事よりその"海の月"だ!
ここに昔から住んでいる老人にはいつもの風景なのかもしれないが、そんなことは普通はありえない。
月齢に関わらず水面に満月が浮かぶなら、それは水面下で何かが光っているのだ。
《不滅の満月》あったじゃん! っていうか沈んでるじゃん!?
何処の誰かは知らないが、《不滅の満月》を運んでいった奴らは船に乗せて行って、見事に沈んだようだな。
それなら呼吸の必要が無い永遠衆達に引き上げさせれば何とかなる!
希望が見えて落ち着いた俺は、とりあえず気を失った老人を介抱することにした。
引き揚げ作業は水中で動きやすい姿をしている《ナーガの永遠衆》や《呪文織りの永遠衆》*2、《ラゾテプのビヒモス》*3などで行った。
対象が光っているので見つけるのはそれほど手間ではなかったが、沖合のかなり潮の変わりやすい場所にあったため、作業には時間がかかった。
それでも休みなしに動ける永遠衆のおかげで人力でやるよりよっぽど早く引き上げは終わったんだが、情報集めで方々に奔走したのも合わせると半世紀以上経ってるのに気付き愕然とする。
「どうしました? お風邪でも召しましたか?」
そんな俺に、これっぽっちも心のこもっていない言葉をかけてくる女性。
青い髪を∞の形に結い、変わった形の
大陸にある国からこの国へとやってきたという自称・仙人だ。
「お前、俺が風邪ひくなんて思ってもないだろうに」
「あら? 私はいつも御身を心配しておりますよ、ウフフ」
殊勝なことを言っているが、ニヤケた顔を見れば言葉だけであるのは明白だ。
この女、会った時から慇懃な態度を崩していないが、言葉の節々に毒があるので不審に思い、《結束の限界》*4で聞き出したら案の定だった。
本人は悪意というつもりはないのかもしれないが、強い者が好き、だけど強い者が破滅するのを見るのも好き、となれば気を許すことは難しい。
毒婦という言葉がこれ以上ないほど似合う存在で、俺はその食指に触れてしまったようだ。
ある日、「龍神の噂を聞いてやってきました」と言って、沿岸に構えた拠点に押し掛けたかと思えば、それからずっと居座っている。
関係は……気を許せないが、利用しあう仲、ともいえる。
「目的の物が引き揚げられた……つまり、ついに
「ああ、最初の直接接触はお前の仕事だ。俺も精神で付いて行くが、出会いがしらに斬られたら運が悪かったと思え」
「あらら、随分薄情ですねぇ。私、これでもか弱い女なのですが」
「抜かせ」
この女なら敵対しそうなら口八丁で何とかやって、俺に罪をかぶせるくらいしてもおかしくない。
だが、こいつの能力はこの任務にぴったりなのだ。
『壁をすり抜けられる程度の能力』。
この能力を使えば、たとえ都の朝廷の警備と言えどザル同然である。
それに、永遠衆達ではどうしても最初に嫌悪感が来るかもしれんしな。
権力者に繋ぎを取るこの計画では、やはり頭に話を通してトップダウンで進めたい。
「……さぁ乗れ、音に聞こえた権力者。
「カードとしての効果」と「ストーリーでの役割」、どちらを重視して欲しいですか?
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「カード効果」に準拠して欲しい
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「ストーリーの役割」っぽく柔軟に