龍神ボーラスで東方暮らし   作:名無しの永遠衆

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驪駒早鬼ちゃんカワイイね。
東方鬼形獣は未プレイなので、設定練るための情報収集で知ってびっくりした。


第十四話 龍神の神馬

 どんな世界でも富める者たちがいればその陰に貧する者たちがいる。

 衣食足りて礼節を知ると言うように、足りぬ者は生きるための手段など選べないのだ。

 

 その弱みにつけこむように『冥田収受制』という制度が施行された。

《仕える者たち》によって既に開墾された田畑を条件付きではあるが、一代限り無償で与える制度。

 与えられる土地は野生の獣や妖怪の蔓延る都の外だが、冥府の戦士たちによる警備が昼夜を問わず行われる。

 田畑を開墾した《仕える者たち》はそのまま労働力として農作を補助してくれ、人口が増えれば増員も認められるという。

 制度による土地の授受を受けるための条件は『死後、子孫の為に働く事に同意する』こと。

 

 明日の見えぬ生活をしていた貧民たちは、訝しみながらもこの制度に飛びついた。

 折りしも、衛士たちに従う形で冥府の戦士たちが都の警備と治安維持の強化を行ったことで、追剥ぎや窃盗ができなくなったことも追い風であった。

 こうして貧民の救済をお題目にして死者の労働力の導入は始まったのである。

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

「────という訳で、下層民の間での死者の労働力の普及は順調だね。初回の収穫が終われば、領地を持つ豪族たちも座視できなくなるほどに」

 

 今日も今日とて謁見に来た豊聡耳の報告を聞く。

《仕える者たち》の増員を急かされたから何かと思えば、そんなことまでしてたのか。

 しかも、貧困層の最後の逃げ道である犯罪を治安強化で潰して行うあたり、流石えげつない。

 そこまで齢を食ってるようには見えないが、ここら辺はやはり統治者としての経験が違うのだろう。

 

「そうか。……だが、武力としての永遠衆はあまり普及していないな? 戦力としては優秀だと思うのだが」

 

「そちらは生者の武官との兼ね合いがあるからね。なに、不満を爆発させた豪族の叛乱の一つも潰せば遅れは取り戻せる」

 

 叛乱の鎮圧か……確かに圧倒的な戦果を叩き出せれば、武断的な者たちも口をつぐむな。

 あとは指揮統率する者として生者を戦力化すれば、住み分けができて問題も少なくなるだろう。

 無論、《戦慄衆の将軍、リリアナ》*1のように全権を委ねたりは絶対しないが。

 

「だが、そんなに都合よく叛乱など起きるか?」

 

「その時は布都が物部を煽る。死者の穢れに強い懸念を抱いている彼らはすぐに暴発するだろうさ」

 

 ……で、叛乱自体は布都から情報が洩れてるから簡単に鎮圧可能、と。

 黒い、びっくりするほど真っ黒だ、人当たりの良い笑顔が薄ら寒く見えるくらいに。

 (まつりごと)が綺麗事ではすまないとはいえ、これで"聖徳王"と称されてるんだから何をかいわんや。

 

「ハァ……分かった。万事恙なしという事だな」

 

「ああそれと、今日は別件で少し頼みごとがあるんだ」

 

「頼みごと?」

 

 前にゾンビの増産を頼まれた時はかき集めたマナをやりくりして昼夜問わず創り出して結構大変だったんだが。

 思わず身構えると、豊聡耳は一旦謁見の間から出て、一頭の馬を連れて戻って来た。

 ドラゴンの俺からすれば小さいが、この国の馬にしては立派な体躯の黒毛の馬、四つ足の根元だけ靴下のように白くなっているのが特徴と言えば特徴か。

 

「その馬は?」

 

「君が大人しくしているから、侮る声も少なからずあってね。ここいらで君の力を穏便に見せつけておきたいと思ったのさ」

 

「話が見えんな。それとその馬に何の関係がある?」

 

「この馬は王の命で国の各地から献上された馬の一頭、そして私が龍神の加護ある神馬だと宣言した。それに相応しい箔を君が付ければ、元々私に名声がある分、君へ賛美の声が流れるというものだろう?」

 

 ほほう、つまりこの馬は俺の加護を示す広告塔という訳か。

 ならば何かしら目に見えて分かる派手さがあった方がいいな。

 純粋な強化より、目に見える異能とかがいい、そう……例えば飛行、空を飛ぶとか。

 飛行を与えるエンチャント、と考えた時、昔の思い出が脳裏をよぎり胸がチクリと痛む。

 アレの方がマナコストが軽いが、思い出を大切にしたいという感傷的な気持ちに従い、土地のマナと自身の保有マナの大部分を注ぎ込む。

 

「《古老の熟達》*2

 

《古老の熟達》は名前からでは察しづらいが、まさにボーラスの加護と言うべき呪文だ。

 原語では『Elder Mastery』、エルダー(Elder)ドラゴンであるニコル・ボーラスの支配下(Mastery)に入り、力の一部を授けられた様子を表す。

 効果も受けた者を劣化ボーラスといった感じの存在にするもので、今更だが普通の馬にはちょっとやりすぎかもしれない。

 

 赤と黒と青、グリクシスカラー*3のもやが黒馬へと吸い込まれていく。

 馬は本来臆病な生き物と聞いたことがあるが、この馬は豊聡耳を信頼しているのか身を震わせながらも力の奔流にじっと耐えている。

 もやが完全に黒馬を包み込み、それが消え去ると、馬の背には俺と同じドラゴンの翼が付いていた。

 

 ウギンみたいな鳥っぽい翼ならペガサスといっていい姿なんだが、ボーラスと同じコウモリみたいな皮膜の翼だとむしろキメラっぽいな……

 呪文をかけられた当人……当馬? に失礼なことを考えていると、豊聡耳がせっかくだから試し乗りをしてみるという。

 彼女が乗ろうとすると黒馬は翼を畳んで乗りやすいよう足を折って座る、すごい賢いな! 

 騎乗した豊聡耳が手綱を持つと黒馬は翼をはためかせ、宙に道があるかのように軽やかに空を駆けた。

 調子がノッてきたのか徐々にスピードは上がっていき、空の上をまるで流星の如く走る一人と一頭は東の空へ消えていった……

 

 

 

 

 ──────3日後、やっと帰って来た豊聡耳は溜まった政務に奔走することになったが、"国一番の霊峰を飛び越えて来た"と終始ご機嫌だった。

 

 よく落ちなかったもんだ。

 

*1
屍術師の女性プレインズウォーカー。ボーラスが契約を盾に命と引き換えに永遠衆を指揮させていたが、死すら覚悟した彼女は最後にボーラスに反旗を翻した。

*2
クリーチャー単体に付けられるオーラと呼ばれるエンチャントの一つ。パワー/タフネスに+3/+3の修正と飛行を与えるだけではなく、ダメージを与えたプレイヤーの手札を2枚捨てさせる効果がある。

*3
黒と、その友好色である青と赤の3色の配色。アラーラ次元の断片であるグリクシスに溢れていたマナの色であるためこう呼ばれる。




六四さん、誤字報告ありがとうございました。
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