龍神ボーラスで東方暮らし   作:名無しの永遠衆

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第二話 己の内のマナ

 俺自身のことながら、木々の間を抜け、森をうろうろするニコル・ボーラスとは……シュールだ……

 

 最初はボーラスの身体のシェイプシフター*1の能力で自分が小さくなっているのかと思ったが、どうやらエルダードラゴンのこの身体より森の木々が馬鹿でかいらしい。

 しかし、森の中ではち合わせた野生の獣は牙やツノがでかかったり妙ちきりんな姿をしていたものの俺よりかなり小さく、体格差でこちらが強いと判断して勝手に逃げてくれた。

 中には化け物みたいな見た目のやつやエイヴン*2みたいな鳥と人の合いの子みたいなのもいたので地球ではないだろう。

 MTGの次元世界に地球があるのか知らんけど。

 

 一方的に野生動物の縄張りを荒らしながら直進していると、ふと森が途切れ、切り立った崖と岩山が視界に広がった。

 ボーラスの大きさで見上げるのだからかなり大きい。

 近くに見える動物もサイズ差*3で羽虫のような小ささに見える鳥ばかりだし、ここなら腰を落ち着けられそうだ。

 

 早速崖にトカゲのように張り付いて登っていく。

 人間だった時は無理だったかもしれないが、ドラゴンのパワーは並ではない。

 しっかりしたとっかかりさえあれば腕力にものを言わせてスルスルと登っていける。

 唯一、この2本のツノが非常に邪魔だが、取り外せるような物ではないので諦めるしかないな。

 

 崖の上に登り終えると、平らな所を選んで丸くなるように寝そべる。

 こういうことが自然にできるのは、体に精神が引っ張られているのかな?

 健全な精神が健全な肉体に宿るなら、ボーラスの肉体に健全な精神が宿りようがない気もするが……それは今はいいだろう。

 

 現実は受け入れなきゃいけないけれど、今はとにかく不貞寝していたい。

 目が覚めたら、その時の俺はきっと良いことを思いついているさ。

 

 現実逃避以外の何物でもないことを考えながら、俺は目を閉じ微睡みに落ちていった。

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 意識がどこかはっきりとしない、ふわふわとした浮遊感の中でとても広い湖のような場所を俯瞰している。

 ああ、これは夢だ。

 なんとなくそう確信して自分を見ると、そこにはやはりドラゴンの身体がある。

 

 なんだ、せっかくの明晰夢なんだから、夢の中でくらい人間でいさせてくれたっていいだろうに。

 夢だし、念じれば人間の体になれないかなぁと試してみると、体は変えられなかったが、体の中に色のついた玉が5つあるように感じられた。

 

 色付きの5つの玉は全部で3色、黒が3つに赤と青が1つずつ。

 

 揺らめくような色合いの玉を綺麗だなー、と暢気に眺めていると、玉は突然ぐるぐる荒ぶり始め、夢特有の浮遊感は急激に失われていった。

 

 

 

 目が覚めると、岩山にはしとしとと雨が降り出しており、俺の身体はすっかり濡れてしまっている。

 流石のドラゴンボディのおかげで寒さなどは感じないが、やっぱり屋根がある場所で寝るべきだったか……?

 体が入るくらいの洞穴を探すべきだな、と身を起こした時、ふと先程の夢が脳裏に浮かぶ。

 

 突然動き始めて驚いたけど、あの玉綺麗だったなー、などと考えていると、さっきの夢と同じように体の中に色付きの玉が動いてるのを感じる。

 ──────夢じゃなかった!?

 

 驚きに呼応するように身の内で荒ぶる玉を感じながら、俺はどれだけ効果があるかは分からないが深呼吸して落ち着こうとする。

 すると、気持ちが落ち着いてくるとともに玉の動きもゆっくりになっていき、止めようと意識を向ければピタリと止める事すらできた。

 それでもドキドキしたり意識が逸れたりすると途端に動き出しそうになる玉を感じ、その色合いにハッとする。

 

 コレ……()()()()()()()

 

 プレインズウォーカー・カード《龍神、ニコル・ボーラス》のマナコストも青マナ・黒マナ×3・赤マナの構成だ。

 ボーラスになった俺の中にあるこれは、もしかして俺の保有マナなのか……?

 

 そう考えながら玉を見ていると、体の外にも1つ赤い玉を感じ取ることが出来た。

 場所は俺の身体の下、この岩山からである。

 

 山……基本土地*4の山扱いってことかな? このマナもしかして使える?

 

 岩山から感じられる赤マナ(仮)を手繰り寄せるように念じると、山の中にあった()()はスーッと俺の方に移動し、体の中に抵抗なく入った。

 体に岩山の赤マナ(仮)に入った瞬間、俺は何とも言えない充足感が体中に広がるのを感じた。

 まるで何でもできそうな全能感、しかしそれはまるで潮が引くようになくなり、俺は思わず溜息を吐く。

 

 そして己の内に感覚を向けると、赤い玉が加わって玉が6つになっていた。

 しかし、元からあった赤マナ(仮)と比べると、岩山の方は幾分ぼやけていてどこか頼りない。

 土地から生み出したマナはターンごとになくなるから、そういう事なのかもしれないな。

 

 

 ならば消えないうちに、この岩山の赤マナ(仮)を使えないかな?

 さっき岩山から引き出したのとは逆に、朧げな赤い玉だけを体から押し出すように動かしてみる。

 イメージしにくいせいかゆるゆるとだが玉は動き出し、少し抵抗があったが一気に手から赤マナ(仮)を押し出す。

 

 ──────!?

 

 体から赤マナ(仮)が出た途端に幾らかの喪失感を感じたが、それよりも驚いたのは赤マナ(仮)が玉から形状を変化させ始め、最終的に人型になって地面から立ち上がったからだ。

 顔は明らかに頭蓋骨を想起させる生者ではない風情で、右手にはショーテルのような反りの大きい武器を持っている。

 そしてその全身は青みを帯びた鉱物で鎧のように覆われており、異様な風貌を強調していた。

 

 ……ってかこれ《不気味な修練者》*5*6じゃん、灯争大戦のパックで出たボーラスの尖兵の。

 コストが赤マナ(仮)──いや、もう(仮)はいらないか──1つだからこいつが出てきたんだろうか?

 じゃあ青黒赤の3色が関わる呪文なら使えるのだろうか……エンチャントに弱いなぁ……*7

 

 MTG脳になっていた俺の前で《不気味な修練者》は地面に武器を置き、流れるような動きで……土下座をした。

 ……いや、跪いてるんだろうけどね! 俺の視点からだと完全に土下座にしか見えない。

 

 

 土下座をする者とされる者、静かに降る雨の中の痛いような沈黙*8に俺はもう一度溜息を吐いた。

 

 

 

*1
体を大きくしたり縮めたり、自在に変身する能力を持つ者。《大修復》前のプレインズウォーカーは大体できていたが、《大修復》後はほぼ失われた。ボーラスは《大修復》後もシェイプシフターの能力を保持していた数少ない者である。

*2
複数の次元に存在する人型の種族。鳥の頭部と、腕とは別に背中に翼がある。

*3
パワー・タフネスの差ではない。

*4
MTGのデッキに何枚でも入れられる単色のマナを生み出すカード。赤マナの山、青マナの島、緑マナの森、白マナの平地、黒マナの沼がある。土地の絵の美しさもMTGの楽しみの1つ。

*5
アモンケットという次元の修練を積んだ戦士を、ボーラスが戦力としてゾンビ化させたクリーチャー。

*6
https://mtg-jp.com/products/card-gallery/0000178/461057/

*7
赤・青・黒、どの色もエンチャント・呪文に干渉する手段が乏しい。

*8
《不気味な修練者》はゾンビなので喋れない。

「カードとしての効果」と「ストーリーでの役割」、どちらを重視して欲しいですか?

  • 「カード効果」に準拠して欲しい
  • 「ストーリーの役割」っぽく柔軟に
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