龍神ボーラスで東方暮らし   作:名無しの永遠衆

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第二十八話 激突!宝船(前編)

 夜な夜な空を飛ぶ宝船(仮)に、それを操る妖怪と尼僧。

 まあ流石にこの尼僧が噂の主だとは思わんが、仏教関係者がここにいる時点で件の尼僧の疑わしさは格段に増した。

 というか、妖怪が動かしてた船を"宝船だ”と吹聴した事だけで引っ張っていけそうな気もする。

 そうなると、こいつらを確保できれば俺の仕事は終わりだな。

 

「あー……なんだ。抵抗せずに投降するなら酷い事にはならんよう斟酌(しんしゃく)するが?」

 

 正直、俺たちとしては政治不信につながる噂の尼僧を排除できればいいのであって、妖怪の一人や二人くらいよそへ送れば命を取る程ではない。

 立場上は目上の俺の発言だから遮らないだけで、布都はスゲェ不満そうにしているが。

 俺の降伏勧告に、濡れ髪の妖怪は鋭い目つきでビシッと手に持った柄杓を突きつけながら言った。

 

「馬鹿にするんじゃないわよ! いきなり私の聖輦船(せいれんせん)にちょっかい出して来たかと思えばなめくさって!」

 

「ちょっとムラサ、いい加減落ち着きなさいよ。無闇に争いを起こすのは止められてるでしょ」

 

 完全に喧嘩腰の濡れ髪の方と違って、尼姿の方は幾らか理性的なようだ。

 相方を抑えながら、逆に俺に問い返してきた。

 

「この船が人騒がせだったかもしれないけど、実害は出していないわ。貴方たちみたいなのに捕まるいわれはないのだけれど?」

 

 確かに、この尼姿の女の言う通りではあるんだが、その言い分は通りはしない。

 極論してしまえば、俺たちが手に入れたいのは不埒な妖怪の身柄ではなく噂の尼僧"白蓮法師"の失脚の材料なのだから。

 

「お前たちと関係が疑わしき人物がいる。それさえ確かめられればお前たちを害するつもりは無い、その後で都以外の何処へなりとも行くがいい」

 

 もし白蓮法師が妖怪から援助されて力を借りてる場合やギブ&テイクな関係なら、妖怪側にとってこれはかなりの好条件だ。

 白蓮法師との関係を切ればこれまでの事はお咎めなし、受けてくれれば俺も仕事が楽に済む。

 

 

 ──────だが、こういう時に限って物事とはうまく運ばないものである。

 

 

「……ムラサ、前言撤回。返り討ちにするわよ!」

 

「おうとも!」

 

 あっれー? 好条件出したら逆に敵対に舵を取られてしまった。

 察するに、白蓮法師とこの妖怪たちの関係は対等ではない。

 徳か思慕か支配かは知らんが、むしろ白蓮法師を上に置いた主従に近いと見た。

 だとすると俺の出した好条件は、こいつらの虎の尾を踏みつけただけか……

 

「仕方ない……布都、実力行使だ! ……布都?」

 

 二対二だが俺は小回りが利かないからな、連携するべき相方の布都に声をかけるが、彼女はなにやら(うつむ)いてぶつぶつと呟いている。

 

「せいれんせん……(せい)(れん)(せん)だと……?」

 

「おーい? 布都、聞いてるかー?」

 

 俺の呼びかけにも反応しなかった彼女は、しばらくして顔をあげると怒りを滲ませた声で叫んだ。

 

「妖怪風情が、なんたる増長! なんたる不遜(ふそん)! その増上慢、物部布都が打ち砕いてくれようぞ!」

 

「おっ、おい。どうした急に」

 

 やる気があるのは構わんが、どっちかというと『()る気』が溢れているように見える。

 相手方の発言にそんなに引っかかる所ってあったか? 

 不思議がる俺に、布都は熱弁した。

 

「【(れん)】とは時の天子様が御座上する(くらい)高き乗り物。その名を妖怪が操る船が僭称(せんしょう)するなど、許されることではありませぬ! ぼぉらす殿、あの濡れ髪の女怪の相手はお任せを。分をわきまえるという事を叩きこんでやりますとも!」

 

 いや、できれば連携して当たりたかったんだが……こりゃ無理だな。

 ならいっそ一対一の形にした方がマシか。

 濡れ髪の妖怪も船をディスられて戦う気になっているようで、両者とも相方を放り出してヒートアップしている。

 俺は同じく相方に置いていかれた形になっている尼姿に声をかけた。

 

「まあ、そんな訳だ。そっちの相手は俺がするが、異存はないな?」

 

「ええ、いいわよ。()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 尼僧は意味深な言葉を口にして、"付いてきて"と船の後部へと俺を先導した。

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 宝船(仮)──────いや、聖輦船の後部甲板。

 俺と尼僧は距離を取って向かい合っていた。

 

「最後にもう一度言うが、投降する気はないか? 手加減ができるとも限らんぞ」

 

「舐めないでよね、姐さんの敵は私たちの敵。悪いけど、無事に帰れるとは思わないで」

 

 俺の最終勧告にも、尼僧は一顧だにしない。

 噂の白蓮法師とやら、なかなか人望のある御仁のようだ。

 僧職だから人徳というべきか。

 

「しかし、こう言っては何だが一対一(サシ)で勝てると思うのか?」

 

 尼僧は見た目普通の少女とほとんど変わらん。

 パワフルなエルダードラゴンボディーとガチンコできるようには見えないが。

 

「一対一? 残念でした、()()()()!」

 

 彼女が余裕たっぷりに口にした瞬間、突然現れた巨大な拳が俺の顔面に迫った。

 

「なっ……!?」

 

 急いで翼を大きくはためかせ、空へ逃げることでその一撃をかろうじて躱す。

 体勢を調えた俺の眼には、先程まで存在しなかったものが映っていた。

 

 尼僧の傍に付き従うように出現した桃色の雲のような巨体。

 禿頭に髭を蓄えた壮年の男の姿をした()()は、拳を構えて油断なく俺を見据えていた。

 

「私は"入道使い"の雲居一輪、彼は相棒の雲山よ。私たち二人が貴方の相手をしてあげる」

 

 アイエエー! ニ対一、ニ対一ナンデ!? 

 いや待て落ち着くんだ、結局は尼僧……一輪の方が俺に匹敵しそうにないことは変わらないから、雲山とやらとの一対一プラスアルファだと考えるんだ……

 でも俺は小回り利かないからなぁ、やっぱり劣勢か。

 せめてもの救いは、雲山とやらが俺よりは小さい事か? 

 

 そんな事を考えていたら、雲山の桃色の巨体がブルリと震え、みるみるうちに俺ですら見上げるほどに巨大化していく。

 驚きに目を(みは)る俺に、一輪は得意気に言った。

 

「ふふ、"見越し入道"って知ってる? 雲山は"見上げるほどの"妖怪。貴方が大きければ大きいほど、雲山の身体も大きくなるの」

 

 ゲッ! 相手依存のサイズ変化能力持ちか!? 

 完全に後出しジャンケンじゃないか! 

 クリーチャーのボーラスを参考にしてもパワー/タフネスが7/7以上の相手なんてまともに相手していられないぞ。

 

 巨大化した雲山が嵐のような拳の乱打を俺に向けて放つ。

 俺は空の上を縦横無尽に飛ぶことで何とかそれを躱すが、反撃を入れられるほどの余裕がない。

 これは結果論だが、布都が一緒だとこんな無茶な空中機動はできなかったからむしろ良かったのかもしれん。

 かといって、俺との相性が良い訳じゃないんだが。

 

「雲山、まかせて!」

 

 一輪との連携も面倒だ。

 彼女の得物は諏訪子の鉄の輪に似た円月輪(チャクラム)っぽいもので、かの神威ほどの威力ではないが俺の進行方向を的確に邪魔してくる。

 雲山もそれに合わせて軌道が直線の小さな乱打から妙に追尾してくる大きな強打に拳の大きさと性質を変えてきた。

 

 ……仕方ない、殺すつもりは無かったが、このままではジリ貧だ。

 俺は自身の中にある"マナとは違う力"を動かし、練り上げ、雲山の巨体へと放った。

 

「かぁっ!!」

 

 咆哮と共に放たれた不可視の力が直撃し、雲山の身体が砕けたガラスの様に粉々に分かれていく。

『龍神、ニコル・ボーラス』の忠誠度能力その2、【クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体を対象とし、それを破壊する】

 長年の努力によってようやく使えるようになったが、問答無用で命を奪う殺意の塊なので使いどころのなかった能力だ。

 使った次の日から凄い脱力感を伴うので、あまり使いたいものでもないが背に腹は代えられない。

 

 あとは、一輪を確保して布都を回収すればミッション終了か……

 疲れた溜息を吐いた俺の前で、体を砕かれ霧散したはずの桃色の雲が再び逆巻き収束を始める。

 

「何っ!?」

 

「……驚いた。でも無駄よ、雲山の身体は雲。千切れても砕けても、失くすことはできないわ」

 

 

 ──────再生能力まで持ってるのかよぉ! 

 

 これは……本格的にヤバイことになってきたかもしれん。

 




太陽のガリ茶 様、誤字報告ありがとうございます。

これからの展開について

  • まだまだ時代順に見ていきたい
  • そろそろ原作時期の絡みが見たい
  • 過去の原作勢が概ね出たら時代飛ばして
  • 並行して書け
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