龍神ボーラスで東方暮らし   作:名無しの永遠衆

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第三十一話 発明と褒賞

 長い間研究を進めてきたが、ついにこの世界に新たな技術体系が誕生した。

 

 エーテリウム電池動力から更に先に進んだ、土地に宿るマナを拝借してエーテリウムで増幅して駆動する機構──────霊気動力機関の発明である。

 

 これは、死者の労働力により軽減された労苦がある程度自動化できる可能性をも示している。

 実際に報告のために作られた試作品"霊気動力車壱号"はカラデシュ*1の《高速警備車》*2ほど洗練されてはいないものの、自動車といっていい外見になっていた。

 エーテリウム電池の頻繁な交換も必要なく、夢の動力かと思われたのだが、思わぬ落とし穴があった。

 土地から微量ではあるがマナを借りて動力機関を動かす都合上、霊気動力機関が一つの土地に集中すると出力が落ちるという問題が発覚したのだ。

 まあ、都では貴人の牛車の代わりに霊気自動車が納入されたので"速すぎるのは雅ではない"との意見が多く、さして問題にはならなかったのだが。

 だが、エーテリウム電池の備蓄があるとはいえ、俺がマナを使うための制限に加えてこの問題があるとすぐに一般民に普及というのも難しい。

 結果として、未開拓域の開拓作業機械などの動力に優先して採用が決定され、耕作地がすごい勢いで増えた。

 

 豊聡耳の中央集権政策の過程で公地公民という私有地・私有民の否定が行われたため、土地の所有者が死ぬと所持していた土地は政府に返還されることになる。

 だがそれは必死で開拓して土地を増やしても、子孫に受け継げないと言うことでもある。

 もちろん子孫にも冥田収受法で一定の土地が与えられるが、不公平感は否めない。

 そこで、生前に余剰した土地を政府に献上することで対価として褒賞を与える制度ができた。

 死ぬ前に開拓して増やした土地を政府に渡せば、別の形で子孫に受け継げるという寸法だ。

 ……それを利用した開拓集団が現れたのは予想外だったが。

 

 開拓の為に支給される霊気動力機械は僻地であるほど出力が上がる。

 それに気づいた開拓団は、開発度合いが上がって出力が下がり始めると土地を献上して新たな開拓地に移動するという開拓集団へと変貌した。

 耕作に適した土地をひたすら開拓して回る、フロンティアスピリッツの塊のような連中だ。

 おかげで着々と国土の開発は進んでいるが、あいつら耕す場所が無くなったらどうするんだろう……? 

 金はふんだんに持ってるし、どこかに定着するか土建屋にでもなるのかな。

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 今回の霊気動力の発明、特に功があったのがテゼレットと青娥だ。

 テゼレットは公式な身分として内匠寮の外局の技官であるので豊聡耳経由で褒賞が与えられたが、青娥は存在が秘されているので個人的に労うしかない。

 故に何か望むことはあるかと聞いたのだが……

 

「……で、その女性の遺体は何だ?」

 

芳香(よしか)ちゃんです」

 

 答えになってない。

 褒賞に望むものを聞いたら、遺体の入った棺桶持ち出すとかどういう神経をしているんだ? 

 

「どこから盗ってきたか知らんが、遺族に返してきなさい」

 

「手に入れたのは百年以上前ですから、遺族は残っていませんし問題ありませんね」

 

 問題しかない。

 だが、実際問題として受け取る者がいないものは返せないし、訴える者がいなければ罪は公にならない。

 こいつ……やはり邪仙……

 

「この娘を僵尸(キョンシー)として蘇らせようと思うのですが、そのためにぼぉらす様の例の護符を頂ければと……」

 

 つまりはラゾテプ製のカルトーシュが欲しいというわけか。

 青娥め、屠自古の時から機をうかがってんたんだな。

 正直言って断りたいが、豊聡耳帝王学講座いわく”綸言汗の如し、軽々に言葉は撤回してはいけない”という。

 口惜しいが、褒賞を与えると言ったんだ、吐いた唾は飲めん。

 

「……分かった、受け取れ。《活力のカルトーシュ》」

 

「おお、前とは少し違いますね……」

 

 屠自古の時と同じ《野望のカルトーシュ》を渡して僵尸(キョンシー)に絆魂を付けられたら、青娥が良からぬ企みをする気しかせんからな。

 青娥は俺から受け取ったカルトーシュをしばらく眺め、棺桶の中の芳香の首に掛けて術を練り始めた。

 

「しかし百年前の遺体を使うとは、何か思い入れでもあるのか?」

 

「フフフ、それは乙女の秘密でございますよ」

 

 お前が乙女って齢か。

 だが煙に巻いたということは、何かしらはあったんだろう。

 使役される僵尸(キョンシー)とはいえ、大事にされることだろうな。

 それが世間一般の”大事”とは限らないが。

 そうこうするうちに術が完成し、触媒として光を放っていたカルト―シュが明度を落とす。

 パチリと目を開いた芳香とやらは、未だ焦点の定まっていない瞳で覗き込んでいる青娥を見つめ返した。

 

「ん~、おー?」

 

「芳香ちゃん、おはよう。気分はどう?」

 

 声をかける青娥を見て目をパチクリさせた芳香は、心底不思議そうに応えた。

 

「だいじょぶ~。で、おまえ、だれだ~?」

 

「あらあら……」

 

 状況が分かっていないどころか、主人の認識もできていない様子の芳香に苦笑する青娥。

 気の抜けるようなやりとりに、俺は青娥に疑問を呈する。

 

「おいおい、大丈夫なのか? 記憶どころか色々と吹っ飛んでるようだが」

 

「うーん、施術までに時間が開きすぎてオツムがちょっと弱くなっちゃったみたいですねぇ」

 

「む~、わたしはバカじゃないぞ~!」

 

 芳香は抗議しているが、まだ起きたばかりなせいもあって舌がうまく回っておらず雰囲気がさらに幼さすら感じる。

 芳香も死人だが、永遠衆と違って普通に喋るので印象がだいぶ違うな。

 

「まあなってしまったものはしょうがない。青娥、責任持って面倒を見るんだぞ」

 

「心得ておりますよ」

 

「んあ~?」

 

 

 こうして青娥は自分に忠実な死体『宮古(みやこ)芳香(よしか)』を手に入れた。

 素直だし勤勉だが、ちょっと抜けたところがあって頭が足りない。

 しかし、彼女と接している時の青娥はどこか楽し気であった。

*1
ゲートウォッチの一人、チャンドラ・ナラーの故郷の次元。霊気に満ちており、それを利用したアーティファクトの発明が盛ん。

*2
カラデシュの霊気動力で動くスーパーカー。パワーが5もあるモンスターマシン。




ひね様 様 誤字報告ありがとうございます。

これからの展開について

  • まだまだ時代順に見ていきたい
  • そろそろ原作時期の絡みが見たい
  • 過去の原作勢が概ね出たら時代飛ばして
  • 並行して書け
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