龍神ボーラスで東方暮らし 作:名無しの永遠衆
永琳は物怖じしない少女だった。
自己紹介を終えると、俺から視線を外して《権威の殿堂》の方を眺める。
「随分原始的だけど、こんなに大きな建物がここにあったなんて知らなかったわ。貴方達が造ったの?」
原始的かぁ……まぁアモンケットでは人力で造られてた石造りの建造物だから妥当な評価か。
この口振りだと、この次元は文明がかなり進んでいるのかもしれない。
次元世界の中には高度な機械文明が発展している所もあるのであり得ない話じゃない。
そうなると、マナで色々な物を出す俺の能力は高い評価を得られるかもしれないな、元手ゼロだし。
早速アピールしていこう!
「これを建てたのは俺の能力だ。俺は建物や
どうだい? 今なら土木工事にもぴったりなドラゴンボディも付いてくるぞ!
内心では猛アピールしながら表面は平静を装う。
何事も足元を見られちゃ条件が厳しくなるもんだし。
しかし、俺のプレインズウォーカーとしての能力に永琳は食い付いてこず、何やら納得した様子で頷いている。
「そう、それが貴方の能力なのね。奇遇ね、私にも能力があるの」
永琳の発言に思わず「本当か!?」とこちらが食い付いてしまう。
言ってからバツが悪く俺の顔は歪んだが、永琳は逆に得意気な顔になったのでどうやら考えが見透かされていたらしい。
これがチャラい兄ちゃんならドラゴンパンチのひとつもお見舞いしてやりたくなるが、このくらいの女の子のやることなら微笑ましくて簡単に流してやれる。
可愛いって得だなぁ。
「私の能力は【あらゆる薬を作る程度の能力】なの。もちろん、材料は必要だけどね」
自慢気に言う永琳には悪いが、スゴいという感想よりプレインズウォーカーでなくてよかったという気持ちの方が大きい。
今の俺はこの体に慣れてないから、
俺の反応が芳しくなかったのが気に入らなかったようで、「何よ、貴方も薬を軽く見てるクチ?」とじっとりとした目で見てくる。
なんでも、永琳は住んでいる都市で薬の研究者兼発明家として名が知れているのだが、天才的な頭脳で画期的な発明を幾つもしているせいで、薬より発明に重点をおいて欲しいという者もいるのだという。
永琳としては発明は研究の片手間なので、薬を軽視するのは許せない……らしい。
「怪我や難病を患った時だけ『新薬が欲しい』なんて言って! 日頃の研究がなくて新薬なんてできるわけないでしょ!」
いつの間にか永琳の日頃の鬱憤を話す場になってきているので、俺は話を変えることにした。
「それで薬の材料を採りに来て、妖怪に襲われていたのか?」
「武器さえあれば、あんな妖怪になんか負けなかったわ! ……武器は転んで落としちゃったけど」
最後はゴニョゴニョと口ごもりながらだったが、俺のこの無駄に高性能なドラゴンイヤーは聞き漏らさない。
……この子、結構ドジなのか?
武器もないそうだし、このまま帰すのは危ないか。
「住んでいるところまで送っていこう。ついでに住人に俺を紹介してくれると助かる」
永琳の護衛にかこつけた都市への案内を提案したが、反応は渋かった。
「うーん、初めは貴方と一緒は難しいと思うわ。私が一日帰ってこなくて捜索隊がでてるか、そうでなくとも警備隊はピリピリしてると思うもの」
むむむ、確かにそれは俺が一緒だと即座に攻撃されそうだなぁ。
しょうがない、最初は《不気味な修練者》に護衛をさせて、俺が都市に行くのは永琳が話を通してからにするか。
無慈悲ではあるが、倒されても惜しくはないしな。
俺は軽く残酷な判断をしていたが、永琳の言葉で俺自身も残酷な現実を突きつけられた。
「送ってもらえるなら話は通しておくけど、都市の住人がどう思うかは微妙な所ね」
「何っ! どうしてだ!?」
この次元の住民と親密になっておかないとゲートウォッチ*1やウギンに見つかったら悪・即・斬されてしまう……!
正直、衣食住の衣以外が保障されるなら*2だいたいの条件は呑んでもいいとさえ思ってるのに、何故?
物分かりの悪い生徒に教えるように、永琳は簡潔に言った。
「答えは簡単。貴方が穢れを持っているから」
「穢れ……? さっきも言っていたな、それは何なんだ?」
永琳が溜息を吐きながら教えてくれた話によると、都市のお偉いさんである"ツクヨミ"と言う人が発見した生き物が発生させるもので、近くに多くあると生き物の寿命を縮めるんだそうだ。
不死者などは穢れの塊みたいなもので、それを使役する俺も強い穢れがある……らしい。
穢れなんて持った覚えは──────あるな。
黒マナ、こいつは間違いなく穢れ扱いでいいだろう。
ゾンビなどには大概関わっているマナだし、腐敗などにも縁深い。
特に俺の保有マナは半分以上黒マナだからな、強い穢れを持ってると言われても否定できない。
マナは毎日回復するみたいだし、これは都市に住むのは無理かぁ……グッバイ文明的生活……
思った以上に俺はしょぼくれていたようで、永琳は慌ててフォローするように言った。
「だ、大丈夫! もしダメでも助けてもらったんだもの、私のできる範囲で必要なものは融通してあげるわ!」
「おお! 本当か!? 助かる!」
よっしゃぁ! 神は俺を見捨てていなかった! ボーラスは神を大勢殺してる*3けど!
巨体を揺らして喜ぶ俺に、永琳は困った子供を見るような目で微笑んだ。
そして、そんな永琳との出会いから5年の月日が流れた──────
永琳という少女との出会いから5年、俺は最初に出した《権威の殿堂》を拠点として建造物をマナが続く限り出していき、岩山を中心に"新アモンケット*4"という都市を造った。
ネーミングについては怒る人もいそうだが、俺の頭ではこのくらい安直なのしか思い付かなかったから許してほしい。
住民は鳥や虫、獣の妖怪などの中の比較的力の弱い者たちだ。
基本的に来る者拒まず去るもの追わずだが、都市の中で乱暴狼藉を働くと最寄りの永遠衆が駆けつけて取り押さえて叩き出す。
そのおかげか、都市の治安はすこぶる良く、外では暴れまわるような輩もここでは大人しくしている。
永琳の住んでる都市との交流は……まぁ付かず離れずといったところか。
相変わらず向こうの都市の連中は俺や永遠衆を近づけようとしないが、向こうの依頼で暴れまわる妖怪の退治なんかを請け負っている。
完全に未来都市な向こうの方が技術は上だが、幾らでも湧いてくる妖怪相手には永遠衆のような物量の方が適任だ。
それでも敵の敵は味方にはならないらしく、退治の途中で向こうの都市に近づきすぎた部隊が依頼主に殲滅されたこともあった。
永琳は……かなり頻繁に新アモンケットに遊びに来る。
会った時のように武器を失くすようなことはそれ以降なく、護衛もなしに都市間の移動を容易くこなしている。
《権威の殿堂》、《王神の玉座》、《神々のピラミッド》*5のような古代エジプト風の建物が物珍しいようで、仕事の良い息抜きになっているようだ。
端々で伝え聞く彼女の天才具合を見込んで、あるアーティファクトの解析と改造を頼んだところ、たった2年で改造をしてのけたのだから驚いた。
改造したアーティファクトは、《不滅の太陽》。
かつてアゾールというスフィンクスがウギンと協力してボーラスを倒すために作ったアーティファクト。
その機能は、配置された次元のプレインズウォーカーが次元移動能力『プレインズウォーク』をできなくなるというものだ。
しかし、これでは俺が出られないだけで他の次元のプレインズウォーカーはこの次元に来れてしまう。
そこで永琳に解析して貰って機能を反転、『この次元にプレインズウォークできない』アーティファクト……《不滅の満月》*6へと改造した。
これで多少はウギンたちに見つかる可能性が低くなったんじゃないかな?
でも機能停止の呪文はオミットできなかったし、この次元で生まれたプレインズウォーカーはウギンたちに告げ口に行けるんだ。
そうなったら是が非でもこの次元に来ようと方法を模索するだろうし、制作者の一人であるウギンが無力化する方法を思いつかないとも限らない。
やはり地道に交流を進めつつ、もしもの時に時間稼ぎできる戦力を確保していくしかないな。
「どうしたんだ? こんな時間に来るなんて珍しい」
永琳はある日の夜更けに新アモンケットへやって来た。
夜は妖怪たちの時間だ、都市の外では妖怪が活性化し、獲物を求めて動き回る。
たとえ彼女が圧倒的な武器を携えているとはいえ、危険なことには変わりない。
5年来の友人としてここは注意を促すべきだろうか。
あの出会いから5年が経ち、永琳は美しく成長した。
長く美しい銀髪は緩く三つ編みに纏められ、腰にも届かんばかり。
あの日と同じ彼女のお気に入りの赤青ツートンカラーの服に身を包んだ姿は振り返る男も多いだろう。
この都市では妖怪以外は永遠衆しかいないから心配はないだろうが、暗いうちに向こうに返すのは二重の意味で危ないかな。
「今日は泊っていくか?」と聞こうとしてギョッとする。
──────彼女は目を腫らして泣いていた。
「伝えなくちゃいけないことがあるの」
服の端を握りしめ、そう言う彼女の真剣な様子に、俺も首を下ろして視線を合わせる。
「大丈夫か? なんなら明日でも「駄目、今日中に帰らなきゃいけないの」……」
俺の言葉を遮り、一泊することすら拒む永琳。
なんだろう、都市間の交流断絶だろうか、でもそれくらいならこっちは遊びに来ても歓迎するのに。
そう考えていた俺は、甘すぎた。
永琳は言った。
「明日の夜、地上を離れることになったの」
「カードとしての効果」と「ストーリーでの役割」、どちらを重視して欲しいですか?
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「カード効果」に準拠して欲しい
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「ストーリーの役割」っぽく柔軟に