龍神ボーラスで東方暮らし 作:名無しの永遠衆
他国からの侵攻を受けた時にノリで『永遠衆の精鋭』と銘打って"戦慄衆"を組織したけど、内実は今のところ箔付けのために名前を変えただけで他の永遠衆とそんなに違いが無い。
また同じような侵攻があった時のためにも、名前負けの現状は打破するべきだろう。
ちょうどよく隣国戦士団に課すために設置した"試練"があるから、そこで合格した武官の上澄みを戦慄衆に持ってくる形にしようか。
義勇兵になる戦士団の永遠衆より弱いと流石に設立理由からしてもダメだしな。
頑張れ武官たち! 合格者は年俸査定に上方修正だぞ!
とはいっても、専業武官で食うに困るやつなんていないから主な目当ては選抜される栄誉、ということになるかもしれないが。
言うなればエリートの証を目に見える形で授けようって話になるからな。
まあ頑張ってくれるなら何でもいいか。
隣国との技術交流で、火薬武器の情報が続々と入ってきている。
てつはう、と訳されているが、実態は鉄砲というより手榴弾だな。中に火薬を詰めた容器が爆発する感じ。
この国でも一応技術研究してみているんだが、材料の一つの硝石が湿気の多いこの国では採れないのでなかなか難しい。
俺発案で、便所や土間の色が変わった土から抽出を試みたり、糞尿やらなんやらを混ぜて作った硝石丘を準備してみたりしたんだが、周りの反応は鈍い。
霊気機関で代用すればいいじゃん?というのが率直な感想らしい。……それはそう。
そっちはマナ発生源と独自開発の射出機を介せば《ショック》*1もどきみたいなものが出るところまで来てるからなぁ。
何年もかけて準備してできる量はたかが知れてるとなれば、あんまり乗り気になれないのも分かる。
でも、きっと将来に化学合成とかできるようになったらバンバン使えるようになるし、俺の歳費から支援しつつ技術研究は続けさせておこう。
永遠衆の攻撃手段が、近接攻撃と弓がメインなのは更新していかないと時代に置いて行かれるからな。
永遠衆の装備の更新はなかなか頭が痛い問題なのだ。
基本的に永遠衆は自由意志の存在しない絶対服従のゾンビなわけだが、生前使った武器や修練した武術、生前覚えた魔法なんかも使えるのが普通のゾンビと違う点だ。
そんな彼らに生前使ったことの無い銃を渡して『それで戦え』と言えばどうなるか……指揮権を部分委譲した指揮官がちゃんと命令すれば一応射撃はできはするだろう。しかし、どうしても指揮する部分でラグが発生する。
かといって指示を出さずに使わせれば、極論すれば『銃で殴る』という手段に出る個体も出るだろう。
そこらへんには生前の地頭の良さとかも関わってくるから、教育は大事ってことだな。
銃『も』使える永遠衆はこれからの教育で補充していくとして、こういった装備更新は先々を見据えて始めておかないといかん。
元の世界での世界大戦もそうだが、有事の際には技術ってのは恐ろしい勢いで進歩するものだし。
急いで適応しようとするより、先回りしておく方が安全安全。
前に桜見物に行った時にも思ったが、息抜きというのは大事だ。
特に俺は図体がデカくて隠れられないから、気軽にそこらを散歩、というのは立場上難しい。
そういうわけで龍洞御所内でできる趣味を探してるんだが、なかなかしっくりくるものがないな。
ある時はボトルシップ的なものを作ってみようと思い、実際良い息抜きになったのだが、俺の身体と比較してちょうどいいサイズのボトルを作る方が大変なので却下になった。
今のこの国の先王を見習って刀でも作ってみるか……?
鳥羽だったか後鳥羽だったかという名の先王は非常に多趣味で、和歌の歌会などの文化的活動に飽き足らず、自分で鍛冶場に入って刀を作ってみる程だという。めっちゃ余生をエンジョイしてるな。
各地から名のある刀工を交代で出仕させて師事するくらいで、実際スジが良いのだとか。
呼びつけてる刀工のリーダーは先王に教授していることから同系統の刀工グループの一文字派の中でも特に王家の菊の家紋にあやかり『菊一文字』と呼ばれている。
ずいぶん入れ込んでいるようだが……そんなに楽しいのかな?鍛刀。
ものは試しだし、ちょっとやってみるかな。
何事も、やるからには全力だ。
材料にもこだわり、造幣過程でだぶついたエーテリウム合金と永遠衆の外殻用の魔法金属ラゾテプ。あと嘘か本当か、太陽の女神が隠れた時の岩戸の欠片と言われていた謎物質。
最後のに関しては本当によく分からない謎の鉱物?石材?なので、化学反応的な変化を期待して投入する。いわくのあるものを入れた方がそれっぽいしな!
普通の炉では全然溶けてくれなかったので、やむなく《古呪》で『プレインズウォーカーの火種』を収穫して白熱している永遠衆に突っ込んで熔解。この時点でなんか呪われそうだな……
ちょっと冷えて固まったらドラゴンパワーでガンガン叩いて、折り返して、また叩いて、冷えすぎたらもう一回過熱して……
徐々に熱耐性でも加わってきたのか、白熱した状態の永遠衆でもなかなか軟らかくならなくて、なんとかまともな武器の形になるまで総期間十年近くかかってるんじゃないか?
刀の形にするには俺の技量が伴ってないので、反りとか入れず両刃の直剣にした。
まあ直剣、と言い切るには剣身がデコボコ、というかトゲトゲな感じもするが。
そんなこんなで俺作のオリジナル剣が完成しました!最後の冷却過程になって全然冷めないので《古呪》で無理やり冷却したところ、刃部分が真っ黒になったけど。……あれれーおかしいぞー?(現実逃避)
本物よりだいぶ拙い出来だけど、これ、大体の特徴が《黒き剣》*2と一致してない?
……いや、怖いとかじゃなくてね、アレな能力とかついてても嫌だし、これは蔵の中にでもしまっておくしかないな。
けっこう楽しかったけど、鍛冶を趣味にするのはやめよう……