龍神ボーラスで東方暮らし   作:名無しの永遠衆

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第四十話 外国との付き合い

 新興国……いや、前の国を滅ぼしてからもう結構時間が経っているし、新興国と呼ぶのも変か。まあとにかく、海を挟んで大陸側の隣国となったその国と盟約を結んで変わったことが結構ある。

 前に話に上がった通貨や暦もそうだが、前の国がかなりの大国だったこともあって周辺国家にも影響は出ている。

 たとえば、半島。前の国に服属していた国が治めていて、大国の威を借る狐みたいな立ち位置でうちの国にも対等以上を求めているのが透けて見えるような国だったのだが……立場を保証する大国が入れ替わってうちの国と対等の盟約を結んだものだから、相対的に国際上の立場が沈下してしまった。

 前の国の滅亡に合わせて独立とかができればよかったんだろうが、征服した国が引き続き服属を要求してきたので結局属国のままである。

 征服した側の国はうちにも侵攻軍を送ってきたくらいだからな、陸続きで地理的に近い半島を見逃すはずもなかったか。

 侵攻軍編成の時には徴兵させられて、返り討ちに遭った時にかなりの兵を失い、強制徴兵を受けたからだと戦後賠償からは逃れたものの、賠償にかこつけて戦力増強を狙ったあっちの国と比べて立場は悪くなるばかり。踏んだり蹴ったりだな。

 まあそんな感じの国だがご近所さんには違いない。ぎくしゃくしたり険悪になったりしないように大陸を牛耳った国と同じく年に数回、使節を送り合って交流を図っている。

 最初はおっかなびっくりだったみたいだが、回を重ねるうちに慣れてきてくれているようだし、やはり最後は慣れだな。

 

 他国からの使節は国際的な賓客、つまり国賓になるわけだが、当然だが国賓に適当にその辺の宿に泊まれという訳にはいかない。

 現代日本に迎賓館があるように、この世界にも"鴻臚(こうろ)館"という施設があって、国賓や大陸に出発する前のうちの国の使節なんかが利用している。

 宿泊費・食事代無料! 霊気温泉完備(源泉かけ流し)! 宿泊客一人に対してゾンビ従者が三人も付いて着替えから団扇で扇ぐ係までこなしてくれるラグジュアリーハウスだ。ゾンビだから休憩・睡眠・食事時間無しでおはようからおやすみまで働いてくれるぞ! 

 ここの設備やサービスはこの国の国力を他国に見せつける意味合いもあるから、出来るだけ豪華に、出来るだけ便利にと趣向を凝らしている。

 時代を先取りした水洗の洋式便所と専用の便所紙はこの国でも朝廷と一部貴族の家にしか設置されてない最新式だ。なお、考案者が俺であることと洋式便所の便座が湾曲した二又になった構造が特徴的な角に似ているから、最新式便所が旧来の便所と区別して『龍神所』と呼ばれているのは大変遺憾である。俺は便所の神様じゃない! *1

 霊気温泉は字面だけだと特殊な感じがするが、なんのことはない、霊気機関で湯を沸かす普通の風呂だ。

 大浴場くらいの広さで湯を薪で沸かそうとすると尋常じゃない費用が掛かるが、霊気機関なら安上がり+クリーンでエコ。追い炊き機能にしても良かったが、潤沢にお湯が使えた方が豪華だよな? 

 普通の風呂は湯船を張らずに蒸し風呂に入った後に垢をこすり落とす感じだから、度肝を抜かれるほど豪華な風呂だ。

 ……俺も風呂に入りたいと思うときはあるが、この図体だし、熱耐性が尋常じゃないドラゴンボディだから諦めている。俺は風呂は熱めが好きなんだ。

 一応馴染みが無くて落ち着かない場合のための配慮として通常の蒸し風呂も併設している。ついでに水風呂も。俺はサウナーじゃないから温度とかは害がない程度に適当だが。

 幸いなことに、この風呂は使節の人々に大変好評で、毎回のぼせるまで入っていってゾンビ従者に団扇でクールダウンさせてもらうまでがワンセットである。

 

 大陸に接する部分をほぼ一つの国が支配している、というと一抹の危うさを感じるが、うちの国は今のところ国の中だけで回していけそうな地力がある。対岸の国を無意味に仮想敵国とするのは危険だ。

 大陸に領土を獲得して橋頭保とする、みたいな案が無いでもないが、それをすると飛び地を守るためにひたすら大陸の国に喧嘩を売り、引っ搔き回し、飛び地に手を出せないよう混乱させ続ける必要があるだろう。ブリカスムーブじゃん。

 表向きは周辺国に備えるためというお題目で、いつかゲートウォッチや新ファイレクシアみたいな脅威が来た時のために*2戦力を増強しつつ、友好的な関係を現地勢力と築き上げるのだ! そしてゆくゆくはこの国と同じくズブズブな関係になって、いざというときは俺のために命乞いをしてもろて……

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 この国の西には巨大な大陸があり、現在騎馬民族を祖とする国が席巻しているわけだが、東には果てが無いような大海原が広がっている。

 国際的にも制度的にもこの国は盤石といっていい感じで、余裕が出てきたからこの次元世界の探索にも力を割いていこうと思う。

 妖怪という特殊なクリーチャーがいるから『神河』に近い次元世界だと思うのだが、世界というだけあって広いのが次元世界。

 この国の外にはどういう環境や文化が広がっているかは分からないのだ。そう、アモンケットの都市ナクタムンが《ヘクマの防御》という障壁で外界の砂漠から守られていたように。

 故に、東の海へと探索隊を送る。ドミナリアみたいに洞窟の奥に別次元へのポータルがあったり*3しても困るし。

 先遣隊は空を飛べる《エイヴンの永遠衆》。食事なし無休息で飛んでいけるので、地球でいうところの南北アメリカ大陸が無くても一周して帰ってくるだろう多分、この世界が球形なら。

 もし陸地があって、現地に住んでいる人々がいるなら、こちらも船で使節を向かわせて交流を図ろう。ここらへんは隣国と扱いは同じだな。

 でも多分言葉通じないだろうなぁ……大陸の隣国でも言葉が違うんだから、交流の無い海の果てと言語が同じだとは思わない。

 敵対的接触の可能性も踏まえて、友好的になるまでは永遠衆たちで接触。十分に交流できたら生身の人間も送って言語理解とかも目指したい。

 ……まあ、埒が明かなかったら向こうの住民の死体を現地で《仕える者たち》にして通訳にしよう。文字がある文化圏だと良いんだが*4

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 陽が沈む海の彼方から、手足の生えた『青い鷲』が飛来した。

 高貴なる青の顔料で染められた石でその身を覆った『青い鷲』、初めはあれこそ南の者たちが言う『日没の太陽の怪物』の使いではないかと噂は広まった。

 しかし、彼らは民草の命を奪うことはなく、信心深いものが成熟したトウモロコシを捧げたところ、近場の野の獣を狩って返礼として渡してきた。

 危険が無いと分かれば人々の心を安んじることは簡単で、彼らは我々メシカ(Mexica)の日常へと溶け込んでいった。

 何も食わず、寝ることもなく、ただ我々を見守る『青い鷲』。

 時に数体が成熟したトウモロコシを持って陽が沈む海へ飛び立ち、代わるようにやってきた者が不可思議な黒い種をもたらした。

 そうして奇妙な隣人関係が築かれていたその後、彼らに先導されて巨きな船が海からやってきた。

『青い蛇*5』『青い巨獣*6』、そして虚ろな頭蓋を晒した者たち。

 それが彼ら、大いなる冥界(ミクトラン)の住民たちとの交流の始まりだった。

*1
そもそも本物の神様でもない。

*2
新ファイレクシアはともかく、ゲートウォッチは君だけの脅威です。

*3
コイロスの洞窟。ドミナリアとファイレクシアを繋げる次元ポータルがあった。

*4
ゾンビは喋れないため。

*5
ナーガの永遠衆

*6
ラゾテプのビヒモス

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