龍神ボーラスで東方暮らし 作:名無しの永遠衆
読んでくださる皆様のおかげです。
第六話 村の守り神と龍師範
暗い、暗い海の中にいるような気持ちがしていた。
何も見えない空間で、ただひたすらに揺らめく流れに揺られているような気がしていた。
そんないつまでも続いて行くような空間に、湖面で揺らめくような光が差し込む。
俺は、無意識に光の方へと進み、水中から浮かび上がっていった……
──────そしたら、また森の中な件について。
既視感のある状況に手で眉間を抑えようとするが、できない。
っていうか手が無い、腕すらない。
見回すように動かしたが身体もない。
(……まさか幽霊になっちゃった?)
最悪の予想が脳裏をよぎるが、5年の歳月で習慣になっていたマナの確認を行うと、そうではないことが分かった。
俺の意識がある場所からへその緒のようなものがずっと地中深くへ続いていて、その先に5つのマナがあるのが感じられる。
今の俺の身体は障害物など関係ないようで、へその緒をたどると俺の身体が地中深くに埋まっていた。
最初は死んでいるのかと思ったぐらい傷だらけだが、わずかに拍動している。
どうやら深い傷を負って休眠状態になり、今の俺は精神だけが飛び出た状態にあるようだ。
(死んでないのは良かったけど、幽霊の一歩手前だな。とりあえずマナで永遠衆を……ってあれ?)
体内のマナを動かそうとするのだが、へその緒の向こうのマナはうんともすんともいわない。
小一時間頑張ってみたが、本体のマナを今の時点で使うのは無理そうだ。
それなら周辺の土地マナを使えばいい話なのだが、なぜか近くの土地のマナも動かせない。
いや、正確には動きそうなのだが、誰かが押さえているような感触がある。
(どうしよう、体もマナも使えないんじゃ本当にただの幽霊と同じだぞ……)
途方に暮れそうになった俺だが、とりあえずは周辺と行動できる範囲を確認しよう、と森の中を彷徨いだした。
森はそれほど広くはなく、木々が途切れると、大きな湖とその湖畔に小さな集落があった。
永琳が住んでいた都市など比べるべくもないが、そこには確かに人間の営みの香りが感じられる。
(思えば、森の木々も種類自体が違うのかそれほど大きくなかった。だいぶ時間が経っているのか……新アモンケットはどうなったんだろう)
フラフラと集落へ近づいて行くと、集落の中から金髪の幼子がこちらへ向かってきた。
袖の余り気味な服を着て、幼さの残る顔は愛らしい。
集落の外に何か用事でもあるのだろうか?
集落に近づくのを一旦止めて幼子の様子を見守っていると、彼女は俺のすぐそばで立ち止まった。
「あーうー、何か近づいてきた気がしたんだけどなぁ。誰もいない、気のせいだったのかな?」
この子、今聞き捨てならないこと言ったぞ!
幽霊みたいな俺の存在に気付いてくれる人間がいるのなら、この辺のマナを仕切っている存在について聞けるかもしれない。
俺は逸る気持ちを抑えて幼子に話しかけた。
(君には俺が分かるのか?)
「うあっ、なになに? 誰もいないのに声がするー!?」
飛び上がって驚く女の子。
どうやら姿は見えていないようだが*1、声は聞こえるようだ。
最初は何が起きるのかと警戒している様子だったが、何も起きない(というか俺は何もできない)のが分かると、徐々にこちらの声に応えてくれた。
「ふぅ、びっくりさせないでよね。新手の妖怪が襲いに来たのかと思ったじゃん」
(まぁ俺は今話すことくらいしかできないからなぁ。でも妖怪が出るなら集落から出ない方がいいんじゃないか?)
俺の忠告に幼子はふふーん、と胸を張る。
……うん、ひらt、いやなんでもない。
「私はこの村の守り神、
へぇ、神……神!? そうは見えないなぁ、こんな姿で破壊不能*2とか持ってるんだろうか。
話を聞いていくと、彼女はこの村の周辺の土地神であり、村へ来る妖怪の撃退や作物の成長を促したりしているらしい。
ゆくゆくはこの村を大きくして、自分の王国を築くべく人々の信仰を集めているのだとか。
MTGの次元世界で神が人の姿を取っているのはまぁ珍しいことじゃないが、こんなに小さい*3のは中々ないんじゃないか?
だが、村を大きくしたいというなら俺がマナを使えるようになれば力になれるだろう。
なんたって"新アモンケット"を造った実績があるし。
「え? 土地のマナ? を仕切ってるのは誰かって?」
(そうだ、土地が生み出す魔力のようなもので、それが使えれば君の力になれると思う)
「そんなの私に決まってるじゃん! この村と湖、周囲の森と山々くらいまでは私の領域なんだー」
自慢げに胸を叩いて言った洩矢は、ふと何かに気付いて言う。
「んぅ? ……あー! さっきそのマナ? とかいうの勝手に動かそうとしたの君でしょ! 私の所で勝手してー!」
(すまなかった、マナを使うのは俺にとっても死活問題でな)
まぁ今の俺は半分以上死んでるようなもんだが。
怒った洩矢がぶんぶん両手を振るって怒りを表すが、そもそも体のない俺には痛くも痒くもない。
少しして落ち着いた彼女は納得いかなそうに膨れっ面をしていたが、俺が(可愛い顔が台無しだぞ)と言うと頬から空気を抜いた。
「むぅ、神様に対して失礼だと思わないの? もうちょっと崇めてもいいと思うんだけど」
(残念だが、神の相手をした経験が無いもんでなぁ)
身体があったら頭を搔いていたくらい困った声で俺が言うと、洩矢は子供っぽく口をとがらせて問う。
「で、君は何者なワケ? まだ名前も聞いてないんだけど」
彼女の問いに、永琳にしたのと同じ自己紹介をしようとして、待てよ、と考える。
永琳はそこまででもなかったが、同じ都市の連中は俺の事を"穢れた龍"と呼んで忌み嫌っていた。
俺の名前が伝わっていれば、彼らと同じとはいかないまでも印象が悪くなるかもしれない。
洩矢には悪いが、ここは偽名で通させてもらおう。
(俺は
「カードとしての効果」と「ストーリーでの役割」、どちらを重視して欲しいですか?
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「カード効果」に準拠して欲しい
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「ストーリーの役割」っぽく柔軟に