龍神ボーラスで東方暮らし   作:名無しの永遠衆

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第七話 洩矢の王国と侵略者

 結果として、集落の守り神・洩矢と龍師範こと俺は契約を交わした。

 洩矢は俺に自分の管理する土地のマナを提供する。

 俺はそのマナを使って集落と支配領域の拡大に協力し、余ったマナで傷を癒す。

 互いが利益を得るWin-Winの関係だ。

 

 だが、マナで出すものに関しては必ず一度彼女の確認を得ることになった。

 これは洩矢が純粋な信仰のみから生まれた土着神であるため、俺の協力を己の神威として見せる関係上、無軌道に増やすと神格がぶれてしまうから……らしい。

 信仰さえあれば飛躍的に力を増す代わりに、信仰の形があやふやになると神の形もあやふやになるとは洩矢の言だ。

 確かに他の次元世界の神も、信心*1が足りなければ顕現できなかったりする*2し、そういうものなのかもしれない。

 

 洩矢との協議の末、基本的に出すクリーチャーは《ナーガの永遠衆》*3のみになった。

 これは彼女の御使いが豊穣と再生を意味する蛇であったため、まだ自分の神威の範囲に近いだろうという事である。

 元となったナーガは蛇の頭と下半身をもつ種族だから、アリ……なのか?

 まぁ蛇の頭蓋骨なんて見たことあるやつはそうないだろうし、人間の頭蓋骨の感じがそのままの人間を元にした永遠衆より全体的に青い蛇っぽいナーガの方がマシかもしれない。

 

「本当は私もでっかい建物をばばーんて出してあげたいけど、そーいうおっきな建物は()への信仰の象徴になるからすぐ出すんじゃダメなんだよねぇ」

 

(よく分からんが、神ってのも大変なんだな)

 

「ふふーん、信仰する気持ちが湧いてきた?」

 

(いや、それは全然)

 

「なんでさー!?」

 

 洩矢との掛け合いを楽しみながら、将来広げていく集落の展望などを語り合う。

 彼女には夢見ている(自分)を頂点にした王国があるし、俺はマナで出した建物が大半だったとはいえ一つの都市を治めていた過去がある。

 時に夢見がちに、時に現実的に、時に無責任に、時に民を想って、一人と一柱の話題は尽きなかった。

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 永遠衆という人外のパワーと疲れ知らずで休みなく働く身体を併せ持つ戦力を得た洩矢の集落は、勢力を急拡大していった。

 集落を襲う妖怪の退治、用水工事で出た岩の粉砕、開墾作業での重機的役割、果ては畑のカカシ的立場まで。

 頼り過ぎないようにそこそこ人々に仕事を振りながら、ここぞというところを楽にして感謝の気持ちを高める。

 そうして数十年としないうちに洩矢を国主とした神治の王国は湖の近くから広がっていった。

 

 

 

「うんうん、今年の作物もいい(みの)り! 今年の冬は楽に越せそうだねー」

 

(そうだな、君の『坤を創造する程度の能力』とは便利なものだ)

 

 洩矢は照れくさそうにしながらも、それは違うと首を振る。

 

「私がどれだけ加護を与えても、最後は人の努力が無いと穣りは無いよ。上に立つ者として、そこは押さえてないとねー」

 

(立派なものだ。……しかしその帽子、本当に奇妙だな)

 

「言わないでよ、今でもちょっと恥ずかしいんだから……」

 

 上に目のようなものが付いた奇妙な帽子を深くかぶる様にして顔を隠す洩矢。

 これも彼女が最初に言っていた『神格のぶれ』によるものだ。

 

 彼女の支配域が広がり集落の人口が増えるにつれ、住民の中には不心得者も現れ始める。

 そういう連中を懲らしめるため、洩矢は周囲の祟り神の信仰を己の信仰に習合してその権能を得た。

 そのせいで普通の蛇だった御使いは瞳の赤い白蛇となり、住民には「白き(くちなわ)、洩矢の(まなこ)。青き(くちなわ)*4、洩矢の手足」と口ずさまれるようになる。

 ここまでは彼女も予想していた内容だったのだが、ここから信仰に予想もしていなかったぶれが出る。

 御使いや永遠衆がみんな蛇に類するものだったため、民が捧げ物としてカエルを積極的に渡すようになった。

 その話がどこでどうねじ曲がったのか、「洩矢様はカエルが大好き」という話になってしまい、結果として彼女の神格にはカエルの意匠が混ざり込んでしまった。

 この姿になってすぐの頃は、俺も初見では絶句してしまい、彼女に激怒されてしまったものだ。

 今でこそこの姿でも堂々と謁見したりしているが、最初はずっと御簾越しから姿を見せようとしなかったものである。

 

(しかし君が、仕えてくれている神職に子供を産ませるとは思わなかったぞ?)

 

「うっ! ……いいじゃんか! 私にとって姿も性別も移ろいゆくものなんだから、一夜の過ちぐらいおかしたって!」

 

(まぁ子供を認知してれば話も違ったんだがなぁ……)

 

 洩矢の子である神官職の女性の子供は、その女性の家の子として神官職を引き立てられてて特に問題にならなかったからいいものの、現代だったら家族ぐるみの大修羅場である。

 幾らか力を受け継いでいるとはいえ、定命の子に自分の王国を引き継ぐような立場にはさせられないという洩矢の意見にも一理あるから強くは言わなかったが、俺の倫理観からしたら結構大事なのでネチネチいうのは我慢して欲しい。

 その子の子孫も変わらず神職として洩矢に仕えているし、ある意味綺麗に納まっているのかもしれないが。

 

(それで、鉄の生産は順調なのか? 侵略者が迫っていると聞いたが)

 

「あちゃー、もう噂になってるかぁ。ま、今年は来ないよ。来るのは明年の夏くらいじゃない?」

 

(それなら大丈夫そうだな、冬は薪を製鉄に使えんし)

 

 永琳の住んでいた都市を思うと驚くべきことなのだが、ここでは鉄製の物でも最先端だ。

 開墾で出た木材で製鉄を行っているといえど、冬はどうしても防寒に割かれがちになる。

 永遠衆がいれば負けることは無いと思うが、やはり武器はあっても困らないだろう。

 

(侵略者か……100年ぶりか?)

 

「うーん、この辺が完全に私の支配下になってからだから120年くらいじゃない?」

 

 こういう会話をしてると神って本当に息が長いんだなと思う。

 それに付き合ってる俺もそう変わりはないかもしれないけれど。

 

 洩矢と出会ってから正確に何年過ぎたのかはもう覚えていないが、俺の本体の傷はあまりよくなっていない。

 原因は回復ができる呪文の不足だ。

 本来回復は白のマナが得意とするところなのだが、これは平地という土地が生み出すマナなのだ。

 洩矢の支配域は山、森、湖・川(島扱い)、水田(沼扱い)がほとんどで平地が無い。

 その為、他のマナはたくさんあるのに本体が回復できない悲しい状況にある。

 

(敵なら、回復の手段にしてもいいよな?)

 

「師範、ほどほどにね?」

 

 

 

──────開戦の時は、近い。

 

 

*1
戦場にある呪文のマナコストの色がある部分の数の合計。例として、マナコストが「赤+不特定マナ2」の場合、赤の信心が1である。

*2
テ―ロスという次元世界の神の特徴。信心が特定の数以上無いとクリーチャーとして存在できない。

*3
https://mtg-jp.com/products/card-gallery/0000178/460987/

*4
《ナーガの永遠衆》のこと。




神奈子様逃げて!超逃げて!

「カードとしての効果」と「ストーリーでの役割」、どちらを重視して欲しいですか?

  • 「カード効果」に準拠して欲しい
  • 「ストーリーの役割」っぽく柔軟に
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