とある幽霊と天気予報   作:車輪軸

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I's a new world ②

ぼくはジャッジメント第一七七支部というところに連れてこられた。

ジャッジメントというのはスタンド名かと思っていたが、どうやらそうではなかったらしい、その名を冠した施設があることから何かの組織の名前だろう。

 

「初春ただいま戻りましたの」

「あ、白井さんおかえりなさい」

 

ぼくをここへ連れてきた彼女は白井黒子と名乗った。

いままでの状況や所持品、それに彼女の名前からここは日本だと推測できる。

 

「ってどなたですか?」

「先ほど街中で不審な様子でいましたのを見つけましたの、それで質問をしても何やら要領を得ないようで『虚空爆破(グラビトン)事件』のこともありますので連行しましたの」

「へ~、ってその制服うちの学校のじゃないですか」

「あらそうでしたの、それなら話は早く済みそうですわね。とりあえず初春は彼の身元確認を頼みますわ」

 

支部には白井さんと同年代だろうと思われる少女がいた。

彼女もジャッジメントとかいう組織の一員なのだろうか?

 

「さて、とりあえず座って下さいですの」

「はい」

 

白井さんに促されてソファーに腰掛ける。

 

「それでエンポリオさん、何かあったのですか?」

「……」

 

どうする?素直に状況説明を求めるべきか…それとも適当にでっち上げた話で誤魔化すべきか…

 

「その前に少し…確認してもらいたいことがあるんですが…」

「なんですの?」

 

…今必要なのはぼく自身の事じゃない、この世界がいったいどの世界なのか確認するべきだろう…

 

「『グリーンドルフィン刑務所』、『SPW(スピードワゴン)財団』、『空条徐倫』、『空条承太郎』、『プッチ神父』、これらの事を調べてもらえませんか?ちなみにプッチ、空条は人名のはずです」

 

「……分かりましたの…初春聞いてましたの?」

「はい、今調べています」

 

少し怪訝そうな顔をしながらも白井さんは応じてくれた。

プッチは言っていた、やつに相反する因縁はすべて『向こう』に置いてきたと…

ならこちらには彼女達は存在しないはずだ、それを確かめる…

 

「出ました白井さん、『グリーンドルフィン刑務所』は該当するものが一件ありました、それと『プッチ神父』についてもその刑務所で神父をやっていたみたいです、ただ現在はすでに亡くなっているみたいです。その他については該当するものは見つかりませんでした」

 

おねえちゃんはともかくそこそこの有名人だと聞いていた承太郎さん、なによりも世界的な組織であるはずの『SPW財団』が検索にかからないはずがない。それにプッチが死亡していること…

間違いない…ここは『向こう』とは別の世界、プッチが『時を加速』して辿りついた世界でもない、さらに『別の世界』ッ!

 

「だそうですわよ?ああ心配されずとも初春の情報処理スキルは折り紙つきですのよ?」

「…ありがとうございます。改めて聞きたいのですが…ここはどこでしょうか?」

「またそれですの?先ほども申し上げたように、ここは『学園都市』第七学区、ジャッジメント第一七七支部ですの」

「…ここはアメリカ…ではないんですか?」

「??何をおしゃっりたいのか分かりませんが、ここは日本ですのよ?」

 

どうする?別の世界から来ましたなんてことを素直に話してみるか?

…いや駄目だ、そんなことを言っても頭のおかしな奴だと思われるだけだ…

 

「白井さんありました。彼の名前はエンポリオ・アルニーニョ、柵川中学校の一年で、無能力者(レベル0)念動使い(テレキネシスト)です。もともと置き去り(チャイルドエラー)だったそうですが、現在は自立し寮住まいだそうです」

「なるほど…これといっておかしなことはありませんの…」

 

レベル0?テレキネシスト?チャイルドエラー?聞いたことのない単語ばかりだ…

 

「それで、アメリカがどうのこうのと言ってらっしゃいましたが…どういうことですの?」

「…ぼくにもよくわかりません…ただ思いついた単語を聞いてみただけです…」

 

詳しいことはまだ分からないけど、ひとまずここは嘘をついておこう…

 

「気がついたらあの場所にいたんです…」

 

これは嘘ではないな…気がついたらあの場所にいたのは事実だ。

 

「どういうことですの?」

「なぜだかわからないのですが、ぼくはさっきまでアメリカにいたような気がするんです…ただそこで何をしていたのかは覚えていません…ぼくの名前はエンポリオでアメリカにいたような気がする、それだけしか分からないんです…」

「…これは『記憶喪失』というやつなのでしょうか?」

「ぼくが覚えていないということはそうなのかもしれません…」

 

真っ赤な嘘というわけではない。この世界のぼくの過去をぼくが知らないのは本当のことだ。

 

「はあぁ、仕方ありませんの…初春、病院に連絡を」

 

病院か…ここはおとなしくしているべき従っておくべきかな…

 

「それでは行きましょうかエンポリオさん」

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「これといって脳に異常は見られないね、おそらく精神的なだろうと僕は思うね」

 

医者の診断結果は異常無し。

当たり前のことだ、ぼくは本当は忘れていないのだから。

それにしてもこの医者は顔が『カエル』に似ている…初め見たときは新手のスタンドかと思ったほどだ。

 

「何か心当たりはあるかい?…と聞いてもその心当たり事態忘れているんだろうね」

「……」

「それで彼の記憶は戻るのでしょうか?」

 

ぼくが黙っていると付き添いでここまで付いてきてくれた白井さんが聞いた。

 

「僕も精神面(そっち)方面は専門外で詳しいことは分からないけど、精神的な記憶喪失というのは一種の自己防衛だ。精神の許容範囲を超えた出来事の記憶を忘れることで、心の崩壊を防ごうとするものだ。時が経てば自然と思い出すかもしれないし、記憶を失う要因になった出来事と同じくらいのショックを与えても思い出すかもしれない、けど彼の精神がそれを拒む限りは難しいね。つまりは彼の気持ち次第だ」

「そうですの…」

「周囲の人の支えによって多少は改善することもあるだろうから、なるべく人と関わったほうがいいだろうね。君の風紀委員(ほう)でもしばらく様子を見てもらえるかい?」

「分かりました、これも風紀委員(ジャッジメント)としての務めですの」

「そうかい助かるよ、エンポリオ君もそういうことだからたまに彼女たちの所に行って様子を見せるようにしてもらえるかい?」

「分かりました」

 

この世界のぼくがどうだったかは分からないけど、少なくとも今のぼくの交友関係はリセットされている、知り合いを作っておくにはいいチャンスだ。

 

「それじゃあ記憶のほうに少しでも変化があるようだったらまたすぐに来てくれ」

「はい、ありがとうございました、行きましょう白井さん」

 

白井さんと共に診察室をあとにした。

 

「まったく厄介なことになりましたの…」

「白井さんも、ありがとうございました」

「お礼を言われるようなことはありませんわ、これも風紀委員(ジャッジメント)として当然のことですの」

 

またジャッジメントか…相手の立場が分からないのも面倒だから今のうちに聞いておくか…

 

「ところでジャッジメントというのは何なんですか?」

「あなたそこまで何も覚えてないのですね……いいですわ風紀委員(ジャッジメント)というのはこの街の治安を守るために学生により結成されている治安維持組織のことですの」

「学生が警察の真似事をやっているんですか?」

「真似事ではなく正真正銘の警察のような組織ですの…とは言っても実際の管轄は基本的に各学校の校内に限られていますの…」

「この街に警察はいないんですか?」

「あ~そこからですの…」

 

白井さんが溜め息をもらしていると、突然何かの音がした。

スタンド攻撃かと思って一瞬身構えたがそれは白井さんの携帯電話の音だったようだ。

 

「失礼、…どうしましたの初春?」

 

電話の相手は初春さんか…

 

「ええ、わかりましたすぐに現場に向かいますの」

「何かあったんですか?」

「ええ何でも能力者同士の喧嘩があったそうで、わたくしはすぐに向かわなければなりませんの。明日また支部のほうに来てもらえますの?そこで詳しく説明しますので…」

「はい、分かりました」

 

能力者というのは何の事なのか…まさかスタンド使いのことではないだろうな…

 

「それでは失礼しますの」

 

ッ!!白井さんが『消えた』…!?

目の前に立っていた白井さんが瞬きをした瞬間には消えていた…何が起こっているんだかさっぱり理解できない…

やはり彼女はスタンド使いなのか?

 

「言い忘れてましたの」

「うわあッ!」

 

今度は突然後ろから現れた!どうなっているんだ!?

 

「おそらく覚えていないと思いますので、あなたの自宅についてですが、生徒手帳に寮の住所が書いてあるそうなのでそれを参考に帰ってくださいな」

「う、うん…分かったよ…」

「それでは今度こそ失礼しますの」

「ッ!また…消えた…!!」

 

落ち着くんだ…何が起きているのかは分からないけど、彼女は少なくとも敵ではないのだから警戒する必要はない…明日また詳しく聞けばいい…

とにかく今はぼくの自宅とやらに帰ることにしよう…

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