爆弾魔を追って路地裏に入る、思った通り表の喧騒とは打って変わって静かなものだ。逃げるには最適なルートだろう。
路地を曲がった先から声が聞こえる、声は2つ爆弾魔ともう1人男の声、仲間か?
ともかく先手必勝だ。
「ウェザーリポート・・・」
今朝試してみたがボクがウェザーリポートを使うとやはり十全に使いこなせない。
パワーはあまり変わっていないようだが、精密性が幾分か下がっているように感じる、能力も精々が知覚出来る範囲での軽い天候操作だけだ。
神父と対峙した時のようにな素濃度の調整は難しい。
スタンドとは精神の力だ、あの時は一時的に精神が高ぶっていたからかなり完全な形でスタンドを扱えたんだと思う、今の状態では相手を行動不能に出来るだけの酸素濃度は実現出来ない。
だから僕に出来ることは相手の知覚出来ない間にスタンドのパワーを急所に叩き込むこと!
「なにこれ!?霧っ!!」
ウェザーリポートで霧を発生させた!
相手は二人だ、『爆弾魔』の方はこちらに背を向けて辺りを伺っている、男の方は突然の濃霧に驚いたのかへたり込んでいる。
これは好機だ、連携を取られる前に爆弾魔の後頭部にウェザーリポートの拳を叩きつける!
なるべく気配を立たせないようにゆっくりと背後に移動する、『爆弾魔』は視界以外の感覚を頼る積もりなのか目を塞ぎじっとしている。
だけど遅い!今からでは聴覚も嗅覚も触覚も間に合わない!
「ウェザーリポートォォッ!」
確実に捉えた、そう思ったのにあろうことか爆弾魔は身をかがめあっさりと拳を避ける。
「急に霧が出てきたから驚いたけど、よくよく考えたら水流操作系ならこれくらい出来る人なんて結構いるわよねっ!!」
直感で横に飛ぶ、それとほぼ同時に自分がいままで立っていた場所に雷が落ちた。
空は快晴、雷が落ちるような天気ではない。ならば間違いない、この雷、電撃こそが彼女の『スタンド能力』!
電撃を操るのは厄介だ、例え掠っただけでも感電してしまう。電撃による筋肉の収縮は整理現象である、一撃でも貰えば痺れて動けなくなってしまう可能性が高い。
だがしかし疑問が出る、電撃と爆弾とが繋がらない。勿論、電気的な信号や刺激によって起爆する爆弾もあるだろう。だけどあの爆発はそういったものとは無縁だったと思う。ならば『爆弾魔』は彼女ではない!もう一人の男の方だ!全力で走って彼女の横を抜ける。一瞬送れてその後ろにまた雷が落ちる。
彼女の方はどういう仕組みなのか、ウェザーリポートの拳をこの濃霧の中で避けて見せた。おそらくなんらかの方法でこちらの動きを知覚している。ならいまだに腰を抜かしている男の方を叩く!
「うあああああ―――ッ!!」
今度は決して外さないようにかなり近距離まで近寄る、濃霧の中であっても近ければ人の形くらいは認識出来る。近寄った僕の影に気が着いた男が声を上げる。足を止めた所で電撃に打たれるだろうが、それも『覚悟』の上だ。負傷しても確実に一人は倒す。
バチリッと電撃が体を貫くのと拳を繰り出すのはほぼ同時だった。手ごたえはあった、ただしそれは人間の皮膚の感触では無かった。
「壁がッ!?いつのまに!!」
拳に伝わる感触は鑢の表面を殴ったようなものだった。男との間には黒い砂のようなものが密集して出来た壁が存在していた。
「残念だったわね」
痺れた体が崩れる落ちる。意識を手放していないことはまだ良かったがすぐには体を動かせそうにない。スタンドの操作が不安定になり霧も晴れていく。
「本当ならもう少し大きいのを作ってカウンターでも決めたいところだったけど、周りがコンクリートじゃあこんなものかしらね」
電撃の余波なのか体から火花を散らしながら彼女が向かってくる。男のほうも助けられたことに気がついたのかようやく立ち上がっている。非常に拙い状況だ。でもまだ諦めない、もう一度電流を受けてしまえば絶望的だが、それ以外ならチャンスはある。爆発なら直接体を吹き飛ばされでもしない限りは一度くらいなら耐えられるだろう。今は攻撃を受ける『覚悟』をする、そして体の痺れが治まったらすぐにでも体勢を立て直す。
「なんで…だよ…」
電撃か爆発かのどちらかを『覚悟』していたが、男の方が何かを喋りだしたので少し拍子抜けしてしまった。
「なんで僕を助けたんだよ!?お前は僕をボコボコにするんじゃなかったのか!!いつもいつもお前らはそうだ!自分勝手に好き勝手にやって、高位の能力を振りかざして人を痛めつけて偽善で人を助けてッ!!」
男の声は僕ではなく僕の攻撃を防いでいた彼女の方に向かっていた。仲間割れなのか?いやそんな様子じゃあないな。
「別にあんたを助けた訳じゃあないわよ。この後いろいろと取調べとかもあるだろうし、そいつ手加減しそうに無かったから喋れなくなるまでされても困るのよ。…っていうのはまあ建前かしらね。あんたを倒すのは私がやりたかったから、偽善とかそんな綺麗な感情じゃあないわ。あんたは私の友達に手を掛けた、つまり・・・私は怒ってるってことよ!!」
彼女の体から電撃が迸る。バチバチと音が鳴るたびに男の方はビクビクとする。そんな状態にも関わらず男は気丈にも声を上げる。
「ふざけるなよ!そんなのは僕だってそうだ、ちょっとレベルが高いだけの能力者、偽善者ぶったジャッジメント、誰も僕を助けない! 僕だって怒ってもいいだろがッ!」
違う、そうじゃあない。彼女の怒りと男の怒りは全く違うものだ。彼女は友のためと言った、それに対して彼の怒りはまるで子供の癇癪だ。怒りの皮を被ったちっぽけな復讐心、そこには輝ける『黄金の精神』も無く、どす黒い『漆黒の意思』も無い!
こいつは気にいらない、あのプッチ神父でさえ目的を果たすための意地のようなもの、そんな『意志』があった。そんなちっぽけな『意志』もないくせにただ闇雲に暴れまわっているこいつが、僕は気に入らないッ!!
「言いたいことはそれだけか?」
まだ少し痺れが残る体を無理矢理立ち上がらせる。二人の視線が僕に集中する。
「ごめん、どうやら誤解してたみたいだ」
男の目からは何も感じられない空虚な瞳だ、だけど彼女の瞳にはお姉ちゃん達のような『黄金の精神』が見えた。
「僕はお前が気に入らない!その空虚な目が!確かな『意志』も無しにただのちっぽけな復讐心しか持たないお前が気に入らないッ!」
思ったよりも早く立ち上がったであろう僕を見て彼女は呆気にとられている。
「ウェザーリポォォォトッ!!」
その隙に男にラッシュを叩き込む。男は懐から何かスプーンのようなものを取り出すが何をしようと手遅れだ。ウェザーリポートの拳が男の顔面に突き刺さる、胸に腹に足に腕にと抵抗の間もなく男に決まる。止めにもう一発顔面に叩き込む。
「安心しろ、彼女の言うとおり手加減はしてやった」
数メートルほど殴り飛ばした位置で男は仰向けで動かなくなった。おそらく気絶しただけだ。
―――虚空爆破事件犯人、介旅初矢―――『再起可能』―――
うちのエンポリオさんはプッチ戦のテンションを引きずっている感じなのでかなり男前な仕様になっております。
執筆の為の…時間が…無い…!!