とある幽霊と天気予報   作:車輪軸

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Side-S She have a dream①

 佐天涙子という少女はいかにも平凡な中学生であった。それなりに容姿は整っているようではあるが、全体から見ればやはりそれは並レベルであろう。特にこの街、『学園都市』においては尚更だ。

 彼女はこの『学園都市』において、もっとも人を図る基準ではもっとも下に位置されていた。ただ最下層だからといって負の方向において特別性を有するわけではない。『学園都市』では教師や研究員などを除いて、ほとんどの住人が学生である。その人を図る基準は学生が対象であり、そして最下層が最も人数が多いのである。民主的、多数決の考えからしてみれば割合が最も大きい事柄が『普通』なのだ。

 しかし、『学園都市』が求めているものは『特別』なのだ。『特別』を求めている人間にとっては、『普通』も『平凡』も結局はマイナスと同じ価値になる。

 結果として佐天涙子も『普通』ではあったが、『学園都市』の基準では落ちこぼれの烙印を押されている。

 

 その基準となっているものは『超能力』と呼ばれている。

 

 レベル0からレベル5までの六段階で優劣が示されるそれにおいて、佐天はレベル0であった。学校の寮の彼女の部屋のベッドの上、そこに寝転んでいる彼女が手にしているのは検査結果。『超能力』の優劣を測ったその結果は何度見直しても0であった。

 

 「はあ…」

 

 いつもは自らが落ちこぼれであることは心の奥底にしまいこんでいるはずだった。しかし、検査を受けるたび、『超能力』に関する授業を受ける度に彼女はそのことを思い出す。他には誰もいない部屋で、自らへの落胆や呆れ、優秀なものへの羨望と嫉妬、そんな感情が出たり引っ込んだりしながら彼女の心の中で渦巻いている。

 

 「やっぱり凄いなあ…」

 

 ふと目を瞑った瞬間に脳裏に過ぎるのは、最近知り合ったばかりの一つ年上の少女の姿だった。その少女は佐天とは対照的に、基準において最高位の5であった。『学園都市』でも両手の指で数えられる人数しかいない5の評価を受けている者に対して、佐天はあまりいい印象は持っていなかった。きっと優秀なのをいいことに自分勝手でいけ好かない連中だろうと思っていた。表向きは羨望であったが、本心は嫉妬であった。だけれでも彼女が出会ったレベル5の少女、御坂美琴は想像とは違い気さくで話も弾む、確かに少し独善的な感じもあるかもしれないが、ちゃんと周りの事も見ている。

 佐天涙子は御坂美琴と話してみて、より羨望を強めたがそれと同時に尊敬も抱くようになった。ただ、尊敬している故に、尊敬されるようなレベル5に対して、心の奥底では嫉妬も大きくなっていた。

 

 「あーッもうやめやめ!」

 

 じっと考えこめば込むほど増していく複雑な感情を振り払うようにしてベッドから跳ね起き、おもむろに机の上においてあるパソコンに向かう。同じ用に机の上に乱雑に投げ出していた音楽プレイヤーをパソコンと繋ぎ、何か新しい曲でも探して気分転換をしようと考えていた。

 

 「う~ん代わり映えしないなあ…ん?」

 

 馴染みの音楽配信サイトに接続し、いろいろと探してはみるが目ぼしいものは見つからない。闇雲にマウスのカーソルを動かしていると、本来何もない位置でクリック出来るようになっていたことに気がついた。ボタンの色を背景と同色にして隠していたそれは、所謂、裏サイトへの入り口ではないかと彼女は興味本位でクリックしてみた。

 

 「よっと、どれどれ…」

 

 そうして接続した裏サイトは見た目は表と代わり無かった。ただのジョークの類かと思い、ページを閉じようとした時、配信音楽の中にとある文字を見つけて手を止めた。

 

 「なになに…れ、れべる、あっぱー?」

 

 レベルアッパー、その名前に彼女は聞き覚えがあった。何の苦労も無しに『超能力』の位を挙げてくれる夢のアイテム、そんな触れ込みの噂話。勿論、初めは嘘臭いと思った、ウイルスの可能性もある、不用意にダウンロードするべきではないと。しかし、もしかしたら本物ではないのかという考えも浮かんでしまった。これを使えば自分も『特別』になれるとそう思ってしまった。気がついた時には既にダウンロードのボタンを押していた。もしかして自分は悪い事をしているのではないかと思ったが、治安維持の組織に勤めている友人、初春飾利がこれの情報を必要としていたことを思い出した。

 

 「そういえば初春がなんか探してたなあ…」

 

 自分にそう言い聞かせるように呟き、治安維持のお手伝いだとそう言い訳のようにして罪悪感を押し込める。レベルアッパーが転送された音楽プレイヤーと携帯電話を摑み、玄関に向かう。初春飾利に連絡をとりどこかで待ち合わせするように約束しながら、炎天下の中へと出てゆく。季節は夏であり気温も高く、日差しも強かったが、部屋に籠もっていた彼女にはむしろ心地良かった。

 

 街へと繰り出す彼女の視線からは外れたとある廃ビルの中で、CDやDVDのdiscのような円盤が太陽の光を反射し輝いていることには、当然ながら彼女が気がつくはずはなかった。

 




Side-SのSは佐天のSだったりする感じ
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