俺はこの世界に『黒霧(こくむ)』として、生を受けた。家は俗に悪忍と呼ばれる忍者の中でも名家に産まれた俺は小さい頃から厳しい修行の日々だった。だが、俺には才能が無かった。俺の次に産まれてきた妹である忌夢と紫は俺に無いものを持っていた。忌夢は知識を、紫は禍根の力を、そして俺は家族の縁を切られた。せめてもの情けとして命だけは取られなかった。
その日からは、苦労の日々だった。一日を生きるのすらギリギリの生活が続き、死にかけていたところを梟と名乗る人物に助けられた。助けた理由を聞くと『ただの一興だ』としか言わなかった。梟さんも忍者の1人で、少しだけ教えを受けた。違ったのは今まで出来なかったことが出来るようになっていった。これも理由を聞くと『教えた奴が下手だっただけだ』とクツクツと笑っていた。そして、梟さんは『やる事がある』とだけ言い去っていった。今までの感謝を込めて、姿が見えなくなっても俺は頭を下げていた。
それから俺は教えてもらった知識を活かしながら、バイトや忍学校の臨時講師として働きながら生活し縁を切られ3年を過ぎる頃には忍としての実力もあると評価され正規の忍職員にならないかと誘いを受けていて、正規になれば給与も良く今まで買えなかった物も買えると物欲のままに受けようと考えていた時に俺は誘拐された。
物欲に囚われて警戒を怠っていたが為に、一瞬で気を失わされ気づいた時には、黒を基調とした部屋にいた。ベッドの上に寝かされており、鎖などで拘束されている訳では無いが、1人の女性が体の上に跨っていた。
「誰だ……」
紫色の長髪を腰より下の辺りまで伸ばし、眠そうな目をしていて……何より胸が大きい。同時に、何処か懐かしい感じもして
「紫……なのか?」
3年以上も前に家族の縁を切られ、別れた妹の紫の面影を感じた。
「兄さん……」
昔は一緒に寝たり過ごす時間が長かった。確かに妹と比べられ、辛い目に合うことはあったが、自分の中で割り切り優しく接していた。縁を切られてから大丈夫かと心配していた。修行の後に自主練をして、帰りが少し遅くなっただけでも泣き出す様な泣き虫だったから、縁を切られ家を出ていったらどうなるのかと思っていたが、
「兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん」
と、昔のように服を抱きつき匂いを嗅いでいる。どうしたものかと考えていたら、部屋の扉が開いた
「兄さん。目が覚めたんだね」
忌夢が顔を出す。
「兄さんが居なくなってから大変だったんだ。特に紫が兄さんが居ないことで禍根の力を暴走させちゃって一時はどうなるかと思ったよ」
「そうだったのか……」
「だから、みんな兄さんを探していたんだけど見つからなかったんだ。私も探そうと思ったんだけど……ちょっとあってね。それで、やっと見つけた兄さんを捕まえたっわけ」
そうだったのか。梟さんも見つかると面倒だからと隠れて修行していたからか。
「父さんと母さんは?」
「2人なら療養中だよ。紫の暴走を受けてね、それに兄さんの縁を切った2人を私も紫も許さないけど」
縁を切られた事は辛かったけど、その代わりに今の俺が居るし、切られなかったら無かった出会いも多いし、何とも言えないけど…
「俺は……これからどうなる?」
「紫の暴走を止める為に、兄さんの残した物で『べべたん』って人形を作って禍根の力を抑制してたけどそろそろ限界で、そんなの時にやっと兄さんを見つけたから連れてきたの」
なるほど。つまり、紫は俺が居ないと禍根の力を暴走させてしまう。だから、紫には俺が必要。…………昔より酷くなってるじゃん。
「やっと、正規で働けるようになったのに少し厳しいなぁ」
「それなら大丈夫。ちゃんと『死塾月閃女学館』には退職を伝えてあるし、働くなら蛇女で働けばいいよ。そうすれば、紫も変に暴走しないし働けるしで一石二鳥だよ」
「仕事が早いなぁ……」
やっと、働けるようになったのにここまで一瞬で終わるのか。心残りがあるとすれば……………最悪の場合は考えないとな
「でも、縁を切られているわけだから俺が居ても大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ。兄さんをわるく言う人達はボクと紫が消してあげるから」
「兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん」
紫もそろそろ匂い嗅ぐの辞めような。
「わかったよ。紫の事も心配だし」
「わかった。後は、ボクが手配しとくからさ紫を頼むよ。兄さんに1番会いたがってたんだから……………あと兄さん」
「どうしたんだ?」
「いくら縁を切られたからって、私達に何も言わずに出ていくのは酷いな」
「あの時は、自分の不甲斐なさや色んなことが恥悔しくてさ。言えなかったんだよ。俺が弱いから2人に迷惑かけたり、泥を塗るんじゃないかって」
「別に良いんだよ兄さんなら。だけど、今度何も言わずに出ていくような事があれば、足を切り落としてでも………」
「もう行かないさ」
「なら良いけどさ。ボクは少し蛇女に行ってくるよ。紫も、今日は兄さんを好きにして良いけど、明日は私も話したいこと多いから変わってね」
「うん…………」
そして、忌夢は手を振りながら扉から出ていった。以前から、自分が力をつけていれば紫や忌夢に心配をかけずに済んでいたのに
「兄さん………」
「どうした?」
「昔みたいに一緒に寝てくれる………?」
昔と違って、俺は二十五になる所で紫はまだ十七になるくらいだろう。昔みたい寝るってのは、それは
「嫌だ……よね。兄さんも……大人になって……」
だけど、まだ俺を家族と言ってくれる妹達にまた兄として接していけるように、兄として妹の頼み事くらい叶えるのが兄だろ
「良いよ。また、昔みたいな兄妹に戻れるように」
「兄さん……」
俺達2人は、昔のように一緒に寝た。
その頃
「我はまだ信じない」
「ええ。まさか、先生が悪忍の出身だったなんて」
「ワシはまだ先生から聞くまでは」
「先生は、みのりの鬼ごっこやかくれんぼに付き合ってくれたし良い人だよ!」
「先生とメアド交換してたし、聞いてみよっと」
これからの波乱の始まりに過ぎなかった……
とりあえず、最初はプロローグって感じになっています。次の話から、蛇女メンバーが出始めて順番で他のキャラも登場させる予定です。では、次のお話で
ちなみに推しは雪泉と紫です。つまり、この2人接待になる可能性がございます