ようこそ綾小路清隆が本気を出した教室へ   作:俺がいる最高

3 / 6
第3話 「放課後の出来事」

 用事といってもコンビニで買い物をするだけなので、平田達と一緒に来てもよかったが、自分の買い物くらい一人でゆっくりしたいものだ。

 

 コンビニに入り、適当に必要な物を買う。

 

「ありがとうございました〜!」

 

 学生証端末をかざし、ポイントを払う。

 

「本当に金として使えるんだな」

 

 学生証端末のポイントが減ったのを確認しながらポツリと呟く。

 

 1クラス25人で各学年4クラスだから、全校生徒は300人。全員に毎月10万も支給していたら年3億6千万の出費.......。

 

 いくら国が運営してるといってもーー

 

「ん?」

 

 人の気配がしたので視線を向けてみると、日用品売り場の前に隣の席の黒髪の女の子が立っていた。

 

「.......またとして嫌な偶然ね」

 

 彼女は横目でオレを睨む。

 

「.......そう警戒するなよ」

 

「.......」

 

 本当に偶然かどうか疑っているらしい。

 

「.......まぁ、隣の席同士、今日からよろしく。.......名前は?」

 

「.......」

 

 しかし反応がない。

 

「それくらい答えてもいいんじゃないか?」

 

「拒否しても構わないかしら」

 

「隣同士で名前も知らないなんて居心地悪いと思うんだけどなぁ.......」

 

 オレがそう言うと彼女は呆れた目でこちらを睨む。

 

「.......堀北鈴音よ」

 

「.......堀北.......確か生徒会長も.......」

 

 オレの話など聞かずに、手に取ったシャンプーなどの日用品を、テキパキとカゴの中へ運ぶ堀北。

 

 適当に選んでいるのかと思いきや、安価なものばかりをピックアップしている。

 

「安いのかうんだな?金はあるんだし、もう少し高いの買ってもいいーー」

 

「必要ない」

 

 高めのクリーミーそうなヤツを手に取って見せると軽く拒否された。

 

「しかしーー」

 

「必要ない、と言ったでしょ?」

 

「.......はい」

 

 睨まれたのでオレはそっと棚に洗顔料を戻した。

 

 怒られても構わないからある程度会話を弾ませようと思ったが、失敗した。

 

「.......あなた、人付き合いが得意じゃなさそうね。会話が下手だもの」

 

「.......そうだなぁ。お前も似たようなものだと思うが」

 

「そうね。でも、わたしはそもそも友達を作る必要性を感じない.......無料?」

 

 堀北は話しながら視線の端で何かを見つけたようだ。

 

 オレもそこに目を向けてみると、歯ブラシや絆創膏といった日用品が『無料』と書かれたワゴンに詰められている。

 

『1ヶ月3つまで』と但し書きも添えられており、明らかに周りから浮いた異質さを放っていた。

 

「ポイントを使い過ぎた人への救済措置.......かな?」

 

「月10万も与えておきながら随分と甘い学校ーー」

 

「なめてんじゃねぇぞ!あぁん!?」

 

 突如、和やかなBGMを掻き消し、やたらと大きな声がコンビニの外から聞こえた。

 

「お前、1年のDクラスだろ?」

 

「あぁ?だからなんだよ!」

 

「おうおう、ひでぇ口のききようだなぁ。上級生に対してよぉ」

 

「うっせぇ!」

 

 どうやら揉め事らしい。男同士の睨みを利かせた言い合いが、コンビニの中まで聞こえてくる。

 

「あれ、確かウチのクラスの.......」

 

「関わったらわたしの品位まで落ちそうね」

 

 堀北は会計を済ませながら素知らぬ顔でそう言う。

 

「やるのか、やらねぇのか?まとめて相手してやるよ!かかってこいオラ!あぁん!?」

 

「ふっ.......。今日は見逃してやるよ。惨めなお前ら不良品を、これ以上虐めちゃ可哀想だもんなぁ」

 

「はっはは!」

 

「逃げんのか!オラ!」

 

「吠えてろよ。どうせお前らこれから地獄を見るんだからなぁ」

 

 地獄を見る?

 

 彼らからは明らかな余裕の色が見て取れた。どういうことだろうな。

 

 と言うか、てっきりお坊ちゃんお嬢様ばっかりの学校かと思ってたけど、ああ言う連中や須藤のようなタイプまで、派手な連中が結構いるんだな。

 

「んだよっクソがっ!」

 

 ガシャン!

 

 大声を出していた赤髪の男は怒鳴りならがら近くにあるゴミ箱に八つ当たりする。

 

「ちっ.......」

 

 舌打ちをしながら去っていく赤髪。

 

 ん?そこでオレは天井についている2台の監視カメラの存在を認識する。

 

「.......はぁ」

 

 オレはため息をつきながらゴミ箱を片付けることにした。

 

 

 

 それからオレは平田と連絡をとり、ショッピングモールで合流した。現在時刻は13時前。まだまだ遊ぶ時間はあるようだ。

 

「やぁ、綾小路くん。随分と早かったね」

 

「まぁ、コンビニに行ってただけだしな」

 

 オレたちが話し込んでいると、軽井沢たちが平田の方に寄ってきた。

 

「ねぇねぇ〜平田くん〜。あ、綾小路くん。もう来たんだ〜?」

 

 軽井沢は相変わらず明るいな。

 

「用事はもう終わったの?」

 

 確かこの子は.......松下だったかな?

 

「あぁ。ところで本当にオレまでついて来て良かったのか?」

 

「うん。綾小路くんなら大歓迎だよ!」

 

 と松下は嬉しそうに言う。

 

「そっか。なら良かった。ところで随分と買ったんだな?」

 

「だってここ、可愛い服がいっぱいあんたんだもん!ね?」

 

「「「うんうん」」」

 

 佐藤.......森.......篠原.......だったかな?三人は松下の言葉に頷く。

 

「楽しそうなところ、悪いんだが、あまりポイントを使い過ぎない方がいいんじゃないか?」

 

「何言ってるの、綾小路くん。だって毎月10万も貰えるんだよ?」

 

 軽井沢はオレの言葉に反論する。

 

「いや、毎月ポイントが貰えるとは言っていたが、毎月10万貰えるとは言っていない」

 

「そうかもだけど〜。じゃあ根拠があるわけ?」

 

「まだ確信は出来ないけど、コンビニで無料コーナーがあったんだ。毎月10万もらえたらそんものが存在するはずがないだろ?」

 

「それはそうかもだけど.......皆はどう思う?」

 

「僕も綾小路くんの意見に賛成かな?」

 

「私もさんせ〜」

 

「平田くんがそう言うなら.......」

 

 しかし軽井沢はあまり納得がいっていないようだ。

 

「まぁ、これはあくまでのオレの見解だ。どう使うかは好きにするんだな。けど、後で困っても知らないぞ」

 

「.......分かったわよ。使い過ぎないように気をつけるわ」

 

 軽井沢達はオレの意見に賛成してくれたみたいだ。

 

 後は.......。

 

「どうしたの?まだ何かあるの?」

 

 考え込んでいると、平田が顔を覗いてくる。

 

「いや、何でもない。せっかく楽しそうなところ、悪かったな」

 

「ううん。綾小路くんの意見は正しいと思うから」

 

「そっか。なら良かった」

 

 それから、平田達は必要なものだけ買って、解散となった。

 

「今日はありがとう、綾小路くん。また明日」

 

「ばいば〜い、綾小路くん」

 

「また明日、綾小路くん」

 

「じゃあね〜」

 

「ばいば〜い」

 

「また明日〜」

 

「あぁ。また明日」

 

 大きく手を振る平田達にオレはそっと手を上げてその場を去った。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。