ようこそ綾小路清隆が本気を出した教室へ   作:俺がいる最高

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第4話 『自室にて』

 午後5時を回る頃、オレは今日から自分の家となる寮へと帰り着いた。

 

 1階フロントの管理人から401と書かれたカードキーと、寮でのルールが書かれたマニュアルを受け取り、エレベーターに乗り込む。

 

 渡されたマニュアルに目を通すと、ゴミ出しの日や時間、騒音には気を付けること。

 

 水の使い過ぎや無駄な電気の使用を控えることなど、生活の基本の事柄ばかりが記載されていた。

 

「電気代やガス代も、基本的に制限はないのか.......」

 

 てっきり、ポイントの中から支出するものだとばかり思っていた。

 

 本当にこの学校は生徒のために、あらゆる手を尽くし万全の体制を築いている。

 

 男女共用の寮になっていることにも少し驚いた。

 

 さすがに高校生にそぐわない恋愛をしてはいけないと書かれてあるが。

 

 要は表向きエッチはご法度ってことだ。

 

 .......当たり前か。

 

 聖職者が不純異性交遊やりまくってオッケーなんて言うはずがない。

 

 しかしこんな楽な暮らしで、本当に立派な大人に育成出来るのかは甚だ疑問だが、生徒側としては喜んで今の状況を利用させてもらった方がいい。

 

 僅か八畳ほどの1ルーム。けど、今日からここはオレだけの家だ。

 

 学校の寮とはいえ、初めての一人暮らし。

 

 卒業するまでの間、外部との連絡を一切断って生活することになる。

 

 その状況にオレは思わず笑みがこぼれてしまった。

 

 この学校は高い就職率を誇り、その施設や待遇も他校の追随を許さない日本屈指の高校。

 

 でも、オレにとってそんなものは些細なことだ。

 

 この学校を選んだ唯一にして最大の理由。

 

 中学時代の友人であれ肉親であれ、許可なく在校生と接触することは出来ない。

 

 それがーーどれだけありがたいことか。

 

 オレは自由だ。自由。英語で言うとフリーダム。

 

 フランス語ならリベルテ。

 

 .......自由って最高じゃね?好きな時間に食べたいものを食べたり、寝たり、遊んだり出来るってことだろ?

 

 卒業したくねーわー、オレ。

 

 この学校に受かる前は、正直どっちでもいいと思っていた。

 

 合格でも不合格でも、些細な違いでしかないと思っていた。

 

 だけどやっと実感が湧いてくる。

 

 オレはこの学校に受かって良かったんだ、と。

 

 もう誰の目も、言葉も、オレに届くことは無い。

 

 やり直せる.......いや、新しく始めることが出来るのだ。人生を。

 

 とりあえず、これから不自由なく生活するためにはしなくてはいけない事がある。

 

 それも目立たずに。

 

 オレは携帯から櫛田の連絡先を探し、電話をかける。

 

『あ、もしもし、綾小路くん?』

 

「あぁ、オレだ」

 

『用があるって言ってたよね?何かな?』

 

「実はな、今日1日、学校内を視察していて分かった事があるんだ」

 

『視察?綾小路くん、そんなことしてたんだ』

 

「あぁ。自由度の高い学校なんだ。何かあるかもと疑うのは当然だろう?」

 

『確かに.......そうかもしれないね。で、何か分かった?』

 

「まず、敷地内の殆どの場所に監視カメラが設置されていた」

 

『え、本当!?全然気づかなかったよ!』

 

「確かに普通に過ごしてたらまず見つけられないよ」

 

『へぇ〜。綾小路くん、良く見つけられたね』

 

「言っただろ、視察してたって。良く見れば見つかるもんだよ」

 

『そっか.......。他にも何かあるの?』

 

「あぁ。帰りにコンビニに寄ったんだが、『1ヶ月3つまで無料』のコーナーがあったんだ」

 

『無料?おかしいね.......』

 

「だろ?月に10万貰えるならそんなものは必要ない。つまり月に10万は貰えない、ということになる」

 

『でも.......何で?』

 

「恐らく、今月貰えた10万はただの入学祝い金みたいなもので毎月貰えると思わせるフェイクだ。そして最高額、10万からポイント式に引かれた分が、その月の支給額になる」

 

『納得出来るけど、それって綾小路くんの考えでしょ?』

 

「あぁ。だが、敷地内に置かれた監視カメラ、コンビニの無料コーナーからその可能性は十分に高い。授業態度や生活態度からポイントととして引かれるというシステムだとしたら納得がいくだろう?」

 

『うん.......。綾小路くんの言う通りかもしれない。でも皆に言っても信じてもらえるかな?』

 

「大丈夫だ。入学して1日目でそこそこの信頼を置かれてるお前や平田が言えば大半は信じてくれる。他の奴らはしょうがない。来月になれば嫌でもオレらの言うことを聞かざるを得なくなる。それまで、なるべく被害を少なくしたいんだ」

 

『それは分かったけど.......、綾小路くんって結構熱血なんだね』

 

「別にそう言うわけじゃない。ただ、『退学』という最悪の状況を避けたいだけなんだ。まだ入学したばかりだが、オレはこの学校を気に入ってる。だからーー」

 

『分かった。綾小路くんに協力してあげる。その代わり、わたしが困った時は助けてね』

 

「あぁ。約束する」

 

 櫛田が電話を切るのを待ってからこちらも電話を切った。

 

「ふぅ.......」

 

 初めての女子との会話だ。緊張したが普通に話せた.......よな?

 

「さてと、平田にも電話しなくちゃな」

 

 平田にも櫛田と同様のことを告げると、平田も協力すると言ってくれた。

 

 一通りやるべきことはやったので、制服のまま整えられたベッドにダイブする。

 

 だが、眠気が襲って来るどころか、わくわくする状況に気持ちが落ち着かず目が冴えていくのだった。

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