ようこそ綾小路清隆が本気を出した教室へ   作:俺がいる最高

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第5話 『友達』

 翌日。朝のHRが終わった後、櫛田と平田からオレが導き出したこの学校のシステムについて告げられた。

 

「ーーだから皆にはこれから遅刻や欠席、授業中の居眠りやスマホの操作等を控えて欲しいんだ」

 

「ちょっと待てよ」

 

 ガラの悪い赤髪、確か.......須藤だったかな。

 

 平田達の提案に不満があるのか、ドン!と机の上に足を乗せて言った。

 

「何で俺達がいちいちお前らの言うこと聞かなきゃいけないんだよ」

 

「これは僕だけの問題じゃなくて君達にも関係ある事なんだ」

 

「けどそれはあくまでお前らの想像だろ?それに俺らを巻き込むな。真面目にしたけりゃお前らだけやってろ」

 

「そうはいかないよ。君だってポイントが貰えなくなったり、退学は嫌だろう?」

 

「だからそれはお前らの想像だって言ってんだろ。そんなに言うなら証拠を見せろよ」

 

「それは.......」

 

『証拠』と言われて言い淀む平田。

 

 横で見てる櫛田も困ってる様子だ。

 

 さて.......どうするか.......。

 

 悩んでいると、昨日一緒に遊んだ軽井沢、篠原、佐藤、森、松下が手を挙げた。

 

「あたしは平田くんにさんせ〜」

 

「わたしも」

 

「あたしも」

 

「軽井沢さん.......」

 

 すると、櫛田の友達である井の頭、王、小野寺も手を挙げた。

 

 残っているのは幸村、三宅、長谷部、佐倉の静かなグループと池、山内、須藤、沖谷、外村の悪目立ちグループ、そして孤立している高円寺だ。

 

 つまり丁度半分のクラスメイトがこの提案に賛成したということになる。

 

 過半数なら十分だ。

 

 オレは平田達にアイコンタクトをする。

 

「ありがとう、皆。僕達の意見に賛成してくれたのが半分、もう半分は自由に過ごしてくれて構わない。僕達半分はさっき言った事に注意して学校生活を楽しもう」

 

 やはり櫛田、平田達と仲良くなっておいたのは大きい。

 

 クラスの半分がこの2人の友達となっている。

 

 お陰で過半数がとれた。

 

 2人には後で労っておかないとな。

 

 

 

 

 それから一週間が過ぎた。

 

 この一週間はこの前の会議通り、真面目に授業を受けるものが半分、自由に過ごすものが半分となっていた。

 

 かくいうオレも事の発端となっているので真面目に授業を受けていた。

 

 手を挙げなかった堀北は元々、優等生なのか真面目に授業を受けていた。

 

「桔梗〜ちゃん。お昼ご飯食べに行こう?」

 

「ごめん。ちょっと用事があって.......」

 

 珍しいな.......。櫛田が井の頭の誘いを断るなんて。

 

「ほんの8万程でござる。毎月10万も貰えるからなぁ」

 

「おれは携帯ゲーム買っちまったぜぇ」

 

 池と外村は平田達の意見など聞かずに自由に過ごしているらしい。

 

 さて、オレは友達作りに失敗したらしい。

 

 平田や軽井沢達、櫛田とは話す事はあるがいつも一緒にいるわけじゃない。

 

 一緒に登校や下校をする友達など、1人も居ないのだ。

 

「哀れね」

 

「ん?」

 

 一人でサンドウィッチを食べている堀北に馬鹿にされた。

 

「お前だってボッチだろう?」

 

「そうね。私は1人が好きだもの」

 

 .......学食でも行くかぁ。

 

 席を立ち、廊下に出ると櫛田に話しかけられた。

 

「綾小路くん、ちょっといいかな?」

 

 櫛田の後を追い、廊下の隅に移動した。

 

「綾小路くんって堀北さんと仲良いよね?」

 

「いや、良くはないと思うが.......」

 

「でも、堀北さんが話すのは綾小路くんだけだよ?」

 

「.......」

 

「わたしね、学校中の皆と友達になりたいんだ。だから堀北さんにも連絡先を聞いたんだけど、断られちゃって.......。誰とも仲良くする気はないって」

 

「あぁいう性格だからなぁ」

 

「でもわたし、堀北さんとも友達になりたいの!」

 

 櫛田はそう言って手を握ってくる。

 

「協力してもらえないかな?」

 

「協力って言っても.......」

 

 確かに櫛田に借りはある。だが.......。

 

「ダメ.......かな?」

 

「.......分かったよ。櫛田には借りがあるからな」

 

「ありがとう!」

 

 決して櫛田の上目遣いにやられた訳じゃない。

 

 借りがあるから、それだけだ。

 

 

 

 

 放課後。

 

「.......本当に甘い学校ね。授業中に生徒が遊んだり居眠りしても注意さえしない。本当にここは国が運営する進学校なの?」

 

「生徒の自主性に任せるって事じゃないか?」

 

「.......そうね」

 

「.......なぁ、帰るんだったら少し付き合って欲しいんだが」

 

「.......何が目的?」

 

 堀北は目を細めて言った。

 

「オレが誘うと狙いがあるように見えるのか?」

 

「具体的な要件があるなら、聞くくらい構わないけど」

 

「ショッピングモールにカフェあるだろう?女の子がいっぱいいる。あそこに一緒に行かないか?」

 

「どうして私が?」

 

「.......1人で行く勇気がないんだ。男子禁制って感じがするだろう?」

 

「他に誘う相手は.......居るはずもないわね」

 

「.......情けないが、その通りだ」

 

 堀北は心底呆れたようにこちらを見てくる。

 

 オレ達は黙ってカフェへ移動した。

 

 

 

 

 

「.......凄い人数ね」

 

 カフェに入るなり堀北がそう言った。

 

「堀北も初めて来たのか?.......あぁ、ボッチだもんな」

 

「嫌味のつもり?幼稚ね」

 

「お、あそこが空いたな」

 

 コーヒーを頼み、空いた席に座る。

 

「.......あれだな。周りから見たらオレ達、カップルに見えたりし.......ないだろうなぁ」

 

 堀北の怖い無表情で言いかけた言葉を止めた。

 

 これから起こることを想像すると.......胃が痛い。

 

「あ、堀北さん。.......偶然だね。綾小路くんも」

 

 偶然をよそおった櫛田が自然の流れで堀北の隣に座った。

 

「2人もここ、よく来るの?」

 

「今日はたまたまだ」

 

「そうなんだ〜。わたしは1人でーー」

 

「帰るわ」

 

 堀北は何かを悟った用で急に席を立った。

 

「.......おい、まだ来たばっかだろ?」

 

「櫛田さんがいるなら私は必要ないでしょ」

 

「いや.......ほら.......オレと櫛田はクラスメイトってだけだし.......」

 

「私と貴方の関係も同じよ。それに.......気に入らないわね。何がしたいの?」

 

 堀北は櫛田を睨みつける。

 

「や、やだな〜.......偶然だよ?」

 

 .......櫛田、そこはどういう意味?が正解だ。

 

「さっきここにいた2人もテーブルにいた2人も、皆Dクラス生徒だった。偶然?」

 

「良く知ってるんだなぁ。全然気づかなかった」

 

「.......私達は放課後直ぐにここに来たのよ。とすると彼女達がここにいた時間はせいぜい数分。帰るには早すぎるわ」

 

「えっと.......」

 

 櫛田を見ると何を言ったらいいか分からない、といった様子だ。

 

「.......悪い。ちょっと根回しした」

 

「.......でしょうね」

 

 決意を固めた櫛田は席を立って堀北に言った。

 

「堀北さん!わたしと友達になって下さい!」

 

「.......私のことは放っておいてほしいの。クラスには迷惑をかけないわ」

 

「え!?でもずっと1人ボッチじゃ寂しすぎるよ.......」

 

「私は1人を寂しいと感じたことはない」

 

「.......」

 

「時間の無駄ね。貴方の発言全てが不愉快よ」

 

「おい、本当にいいのか?このまま誰ともならないってことは3年間ボッチってことだぞ」

 

「9年間続けているから平気よ。幼稚園を含めればもっとね」

 

 堀北はそう言ってカフェを出ていった。

 

「.......ごめん、わたしのせいで堀北さんに嫌われるようなマネさせちゃって.......」

 

「いや、気にするな」

 

「.......友達には、なれないのかな?」

 

 櫛田は1人呟いた。

 

 

 

 

 帰り道、櫛田はまだ堀北のことを引きずっていた。

 

「クラスの子とも仲良くなれないんじゃ、目標は遠いいな」

 

 堀北が特別なだけだと思うが.......。

 

「あ、一之瀬さんだ」

 

 ロングヘアでスタイルがいい美少女が櫛田に向かって手を振っている。

 

「Bクラスの一之瀬帆波さん。昨日、友達になったんだ」

 

「.......違うクラスの生徒ととも仲良くなってるのか?」

 

「うん。Bクラスは話しやすい人が多いから。でもさ、この学校って凄いよね!お店もいっぱいあってお金もいっぱい貰えて。でも来月は貰えないかもしれないんだよね?」

 

「あぁ。ただの勘だけどな。それより助かったぞ。櫛田達のお陰で被害を半分にまで抑えることが出来そうだ」

 

「綾小路くんが感謝することじゃないよ。わたしだってポイントが減るのは嫌だからさ」

 

「そうだな。今度またあのカフェに行こう。今度は2人で」

 

「2人で.......?」

 

「.......嫌なのか?」

 

「ううん。嬉しいよ!綾小路くんから誘ってくれるなんて!普段、全然話しかけてくれないんだもん」

 

「オレは元々1人が好きだからな」

 

「なんか堀北さんと同じこと言ってる」

 

「まぁ、オレとあいつは似たようなとこあるからな」

 

「なにそれ.......」

 

 夕日が沈む中、オレ達は寮の入口で別れた。

 

 

 

 

 多くの生徒は深く考えることなく、学園生活を満喫していった。日々の生活で10万という金を湯水のように浪費して。

 

 授業では教師は放任主義で私語や居眠り、遅刻欠席は日常茶飯事。

 

 散財と放蕩と怠惰を続け、そうして5月1日を迎えた。

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